きまぐれな日々

松岡前農水相の「自殺」から10日以上が経過し、政府は何食わぬ顔で、「自殺総合対策大綱」を発表した。

警察庁のまとめによると、昨年(2006年)の自殺者数は32,155人で、9年連続で3万人を超えたそうだ。大綱は、「2016年までに自殺者数を20%以上減少させる」とうたっているが、「決め手となる具体的対策を打ち出せたとは言い難い」と評されている。

そりゃそうだ、内閣から自殺者を出すような政府が、自殺対策を打ち出すこと自体噴飯ものだ、と思ったのは私だけではないだろう。

当ブログは、まだほとんど読者のいなかった昨年5月20日に、『キーマンが「自殺」した大事件』 という記事を公開した。読み返すと、これらのニュースを聞いた時の衝撃をまざまざと思い出す。

特に、リクルート事件で疑惑まみれとなった竹下内閣が総辞職を表明した翌日に「自殺」を遂げた竹下首相秘書・青木伊平氏の死(1989年)や、一つの事件に絡んで2人の「自殺」者が出た西武グループインサイダー株取引事件(2004?05年)は、今回、松岡前農水相ら3人の「自殺」者を出した緑資源機構に絡んだ巨大汚職疑惑を直ちに連想させるものだ。

西武グループの総帥だった堤義明は、コイズミを筆頭とした自民党・旧森派(町村派)とべったりだったことで知られているが、西武について書き出すと長くなるので、今回はやめておきたい。ここでは、同じように暴力団との関係が取りざたされ、周辺から「自殺」者が続出した竹下登と安倍晋三を対比させてみたい。

竹下の最初の妻・政江さんは、終戦の年の1945年に自殺した。政江さんと竹下の父は不仲だったが、竹下が妻ばかり叱ったのが政江さんの自殺を招いたともされる。

竹下の秘書の自殺というと、前記の青木伊平氏があまりにも有名だが、その他にも竹下の地元の「金庫番」と言われた桑原安俊氏も自殺している。

そして、竹下というと、戦後の政治家として初めて暴力団の助けを借りて総理大臣になった男とも言われている。1987年に起きた、高松に本部を置く右翼団体「日本皇民党」による「ほめ殺し」事件はよく知られているが、竹下は、広域指定暴力団・稲川会の二代目会長・故石井進を介して、皇民党に「ほめ殺し」をやめさせたと言われているのだ。

安倍晋三もまた、「安晋会」理事だったとされるエイチ・エス証券副社長の野口英昭氏が沖縄で怪死し(「自殺」として処理された)、戦後初めて内閣から現職大臣の「自殺」者を出した。地元事務所が暴力団に火炎瓶を投げ込まれる「火炎瓶事件」をめぐって裁判も起きており、周囲に「死」の影が漂うことに関しては、竹下登といい勝負だ。

ただ、違うところもある。竹下は、東京佐川急便問題に関与した疑惑を持たれて国会で証人喚問を受けた際(1992年11月26日)、竹下の秘書たちの自殺に言及した野党議員の質問に、こう答えたのだ。

『今おっしゃいました、私という人間の持つ一つの体質が今論理構成されましたような悲劇を生んでいる。これは私自身顧みて、罪万死に値するというふうに私思うわけでございます。』

(1992年11月26日、第125回国会衆議院予算委員会より)

少なくとも、竹下は自らの体質を自覚していた。だが、安倍晋三が自らの体質を自覚し、反省しているようには全く見えない。

そして、何よりも違うのがマスコミなどの批判に対する対応である。竹下は首相在任当時、皇民党事件や金権政治を批判する記事に対して、秘書が7通の告訴状を持って行ったところ「権力者はこのようなことを絶対にしてはならない」と一蹴したという。一方、全くの無知無能とされる安倍が唯一得意とするのは、マスコミへの恫喝である。全く取るに足らない「週刊朝日」の記事にいちゃもんをつけ、相手が謝罪しているのに「秘書」が朝日新聞社を告訴した件は記憶に新しいが、昨年10月にも、安倍批判の記事を繰り返して掲載していた「週刊現代」の取材を拒否し、出版元の講談社に「通告書」を送りつけたことがあった(昨年11月7日付当ブログ記事 『安倍晋三が講談社に「取材拒否」』 参照)。

本来なら、メディアはこのような安倍の横暴に、正面切って対決の姿勢を鮮明に打ち出すべきなのだ。メディアがそれをしないから、こうしてブログで繰り返し繰り返し安倍の実像を指摘せざるを得ない。

朝日新聞の政治担当編集委員だった故石川真澄氏は、森政権時代の2000年に、『「中曽根以前」と「竹下以降」で首相の質が明確に分かれる』 (「週刊金曜日」 2000年6月23日号、「戦争体験は無力なのか」=岩波書店、2005年=に収録)と指摘しているが、私はそれに付け加えて、『「小渕以前」と「森以降」で首相の質が明確に分かれ、一段と激しく劣化した』 と言いたい。

毎度毎度同じような結びになって恐縮だが、きたる参議院選挙で、国民の手で 「AbEnd」 を実現させるしかないと思う今日この頃だ。


※今回の記事を書くにあたり、岩瀬達哉著 「われ万死に値す ドキュメント竹下登」 (新潮文庫、2002年)を参考にしました。


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 安倍の狭量さと軽さは、見ていればわかります。東武線の踏み切りで、自殺仕様とした人の身代わりのように死んだ警察官の名前を間違えて連呼した事件のように、「死」や「死んだ人」に対して、意を用いる能力が欠如しているとしか思えません。
 マスコミに対しての恫喝や、首相就任前からのNHKへの干渉など、些細な批判なども許容できずに目くじらを立てる、自己保身の神経質さが感じられます。
 まぁ、国会答弁や委員会審議などをテレビで見れば、追及されたときのうろたえぶり(事実言葉がどもったり、ろれつが回らなくなる)を見れば、彼の脳みその小ささは良くわかります。
 話し変わって、最近の異常事ですが、NHKのディレクターが3人、10日間の間に痴漢で逮捕されました。これは、植草事件と同様の、そして、NHKへの圧力ではないかと思うのです。つまり、NHKのディレクタークラスの人間には、公安か、警察の人間が張り付いて監視しているという可能性です。
 もちろん、3人が、痴漢をするような人間であったと言う可能性は否定できませんが、ちょっと異常な気がするのですが。

2007.06.09 09:47 URL | 眠り猫 #2eH89A.o [ 編集 ]

 おはようございます。
 依然、原因不明で、こちらだけにはTBできないので、新エントリーをここで紹介させてください。
 自民党憲法改正新草案における、基本的人権の制限と、徴兵制への道筋を述べたエントリーをアップしました。
 よろしければ、http://heiwawomamorou.seesaa.net/article/44370188.html
 をご覧ください。ご意見も募集しています。

2007.06.10 05:11 URL | 眠り猫 #2eH89A.o [ 編集 ]

竹下を安倍を同一視するのはかわいそうでしょう。安倍と違い、竹下はそれなりに再分配をやっていたわけですから。

2007.06.11 00:34 URL | あああ #US7Is6OM [ 編集 ]













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ロラン・バルト対竹下登
「文」は階級的である。支配があり、内的制辞がある。こうして、完結に到る。どうし

2007.09.12 22:47 | 翻訳blog