きまぐれな日々

昨日のエントリで指摘した、教育に新自由主義を導入することの弊害は、深刻な問題だと思うのだが、「AbEnd」でも議論されることはほとんどないという印象を持っている(政治思想面からの批判に偏りがちだと思う)。そんな中、昨日トラックバックしていただいた、Zarathustra(ツァラトゥストラ)さんのブログ 「アヴェスターにはこう書いている?」 の記事 『稲垣佳世子、波多野誼余夫 『無気力の心理学 やりがいの条件』(その2)』 は、書籍の紹介記事だが、教育心理学の実験結果を紹介し、『「自由な競争によって社会の活力が高まる、活性化する」という神話が信じられているが、実証研究はそれを否定している』と指摘している。今年1月に公開された記事だが、一読に値すると思うので、下記リンク先に飛んでご参照いただければ幸いである。
http://zarathustra.blog55.fc2.com/blog-entry-98.html

しかし時代の趨勢は「新自由主義」全盛であって、財務省は国立大学の運営交付金を、研究実績に応じて傾斜配分する「競争原理」の導入を財務省が検討している。

これには地方国立大や文部科学省が猛反発し、文科省は24日、地方の中堅国立大4校が地元経済に与える影響を初めて試算し、「年間400億?700億円近くの経済効果と最大9千人の雇用を生み出している」という試算結果をまとめたとのことだ。

5月25日付「四国新聞」の記事によると、文科省は、競争原理の導入を迫る財務省に対し、従来の「知の拠点」という大義名分だけでは対抗できないため、初めて地方大学が地元に与える経済効果を試算したもののようだ。文科省は「(地方大学は)既に経営の効率化には取り組んでいる。大学の役割は教育、研究、社会貢献の三つなのに、(財務省は)一面しか見ていない。大学運営が脅かされると、地方の基盤が失われる」と主張しているとのことだ。

最近、メディアなどでもてはやされている「大学発ベンチャー」だが、私はこれには非常に懐疑的であり、実用に結びつき社会に役立っている例は極めて少ないと考えている。中には、「トンデモ」と言わざるを得ない実例も散見され、「疑似科学」や「疑似技術」が跋扈(ばっこ)しており、大学はここまで劣化したのかと愕然とする。

だから、文科省の「地方大学の経済効果」なるものを読まずに批判するのも何だが、どうせ眉唾ものだろうと想像している。
こう書いたからといって、財務省の方針を支持しているわけではなく、その正反対であって、文科省は「知の拠点」の大義名分だけで財務省と対抗できるようであってほしいと思う。

昨日のエントリでも紹介したように、立花隆さんは大学での哲学教育の後退を嘆いておられるが、このまま哲学や数学などの、経済効果には結びつかない研究を圧迫するようだと、日本人の知的レベルはますます後退を続け、取り返しのつかない事態を招くと予想し、これを強く恐れるものである。

そもそも、東大を出てたって菊川怜や丸川珠代程度の知性しか身につかない例も多いワケだから、大学はいまや「痴の拠点」というべきかもしれない。

既に報道されているように、元テレビ朝日アナウンサーの丸川は、2003年には金子勝と共著で、「ダマされるな! 目からウロコの政治経済学」(ダイヤモンド社、2003年)で、「コイズミカイカク」をコテンパンに批判していた。
丸川の自民党からの出馬は、かつての自らの主張を否定するもので、記者会見ではそこをずいぶん突っ込まれたそうだし、テレビ朝日側は、どうやら丸川から出馬についてほとんど相談を受けていなかったらしく、社長が不快感をあらわにしていたとも伝えてられている。

しかし、丸川は、あの田原総一朗が司会をしている「サンデー・プロジェクト」なる御用番組を垂れ流しているテレビ朝日の社員だから、ああいう行動に走ったのではないかと私などは思ってしまう。丸川の「反コイズミ」がポーズに過ぎなかったことは、いかにもテレビ朝日の体質をそっくり反映しているのだ。

田原というのは、よく指摘されるように経済問題に関してはまったくの素人であり、竹中平蔵の主張を鵜呑みにしている人間だ。5月23日の「きっこの日記」(「アベ内閣の自作自演」)は、田原が沖縄の反基地運動について、「土地の値段を吊り上げるための利権絡みの運動だから、中央のマスコミは報道せずに静観している」と発言し、こんなのは大ウソだと怒っているが、田原のことだから、どうせ誰か御用学者が言ったことをそのまま鵜呑みにしただけだろう。

田原総一朗とはその程度の人間だ。前にも書いたかもしれないが、この男は、コイズミ内閣の支持率が低下傾向にあった2002年に「それでも、小泉純一郎を支持します」という究極の「バカ本」(バカボン?)を書いたほどのゴマスリ人間で、特にコイズミ、竹中平蔵、石原慎太郎の三人には極端に弱い。この三人の共通点は「ポピュリスト」ということであり、要は田原自身がポピュリストだから、本家本元には頭が上がらないのだろう。

田原のような、もともと無思想だった人間が新自由主義を称揚したことが、教育や研究の破壊につながったのではないかと思えてならない今日この頃である。


[追記] (2007年5月25日 22:47)

「下記リンク先に飛んでご参照いただければ幸いである」と書いておきながら、Zarathustraさんのブログへのリンクを張り忘れていました。Zarathustraさん、どうも申し訳ありませんでした。遅すぎるかもしれませんが、リンクを追加して、再度「安倍晋三TBP」にトラックバックしました。同じ記事を二度目にされる読者の方々にはお詫び申し上げます。


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大学教育の競争主義というのは、新制大学になった時から強化されて続けていたのではないかと思います。戦争に例えられた入試ほどではないにせよ、テストやレポートに追われて、哲学する余裕はあまり無くなりましたから。少子化で入試が易しくなってからは、学内の管理が強化されています。それに対して旧制高校・旧制大学は、そもそもが『階級社会』の権化のようなものでしたが、一旦その集団に入ることが許されれば、中で不毛の競争を強いられる事はあまり無かったみたいですね。
私が大学生だった時代、ちょうど旧制高校を経験した教授たちが続々と退官される時期でした。医学部教養課程の教授で、最も偏屈かつ厳格と思われていた方が、退任の挨拶文で、「本学の教養課程では2年間で85単位必修だが、同じく2年間の旧制高校の内容を現代の『単位』に換算すると20単位に満たなかった。その分、昔の学生は本を読んだり自分の頭で考えたりする余裕があった。今の学生諸君は、楽をしているように言われるけど、そういう点でむしろ気の毒だ。」というような意味の事を書かれていました。
後任は当然、戦後教育を受けた新進気鋭の研究者たちだったわけですが、哲学の香りを感じる事が少なかったと思います。専門分野の知識や研究実績は必要十分だったのでしょうけれど、『知識人』としてのオーラを放っていないというようなイメージでしたね。
最近、東大卒とか元政治家とか、あるいは医師や弁護士の資格を持っている事などを売りにしているタレントが目立ちますけど、現代日本のテレビ文化が、『エリート』とされる人々を貶める事で視聴者の受けを狙っている事が良く判りますね。映画全盛期に雲の上の人だった大スターを地平に引きずり下ろしたテレビは、次のターゲットとしていわゆる芸能人以外のエリートに同じ事をしているのでしょうし、視聴者もそれを望んでいるのでしょうね。ひがみ根性、いじめ根性が日本人の本性かと思うと実に情けないです。
これでは、いくら高学歴でも、倫理観や責任感に裏打ちされた正しい『エリート意識』あるいは『帝王学』を持った人が育つとは思えませんし、もしそういう人がいても、報われる事が少ないと思います。

2007.05.25 17:02 URL | #mQop/nM. [ 編集 ]

kojitakenさん、こんにちは。
昨日TBした記事を取り上げていただき、ありがとうございます。(まさかエントリーの中でまで取り上げていただけるとは思ってなかったので、ビックル一気飲みしてしまいました。)


田原総一郎と言えば、今日は朝生の放送日ですね。憲法についての話らしいので、久しぶりに見てみようかと思ってます。あの番組も議論が深まって片方が負けそうになると、田原が話を遮って話題を変えてしまうのがむかつきます。討論こそ自由主義的になされるべきなのに、「言論は司会者が規制かよ?」って感じがします。(苦笑)


ちなみに、先日、こんな記事もありましたので、ご参考まで。

「財務省の試算では、研究実績を重視する配分方式に改めると、全国八十七大学のうち東大、京大、北大など十三校で交付額が増える一方、九割近い残りの七十四校で減額。」

http://www.hokkaido-np.co.jp/news/politics/27525.php

こうやって様々な分野で「一極集中化+全般的地盤沈下」を起こす政策を連発しておきながら、「ふるさと納税」などという自治体間の税源配分の総体にはほとんど影響しないやり方で「地域活性化」のイメージ作り(空想的な)をしている政府・与党の欺瞞には怒りを感じます。

2007.05.25 22:26 URL | Zarathustra #- [ 編集 ]

新自由主義は何から何まで糞。
イギリスの教育がサッチャーのせいでどれだけ壊されたか、英語の分かる人間だったら、いくらでもレポートを見つけられる。
それを真似る安倍晋三とその仲間たちは国を滅ぼす姦賊。
新自由主義は保守にとって敵。
田原も国賊。
奴はもともと共産党。その時代ごとの前衛を気取っていられれば満足な似非ジャーナリスト。

2007.05.26 00:12 URL | 岩・保守本流 #- [ 編集 ]













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