きまぐれな日々

最近、中曽根康弘がよくテレビに出演する。今月89歳を迎えるご老体が張り切っているのは、安倍晋三が憲法改正に意欲を燃やしているためで、半世紀以上前から改憲に執念を燃やす中曽根は、安倍を応援したい気持ちでいっぱいなのだろう。

しかし、昨日(5月6日)朝のフジテレビ「報道2001」で、中曽根が安倍を評して「保守本流に立ち返る政治家だ」と言ったことはいただけない。

中曽根は、安倍晋三を「保守本流」、コイズミを「傍流」と評した。

しかし、コイズミはもちろんのこと、中曽根も安倍も「保守本流」などではない。

Wikipediaの「保守本流」の項を見てみよう。

保守本流

保守本流(ほしゅほんりゅう)は、自由民主党の派閥系統のひとつを指す。

政治的位置は保守であるが、バラマキ事業や箱物行政、労使協調(コーポラティズム)を重視し積極的に地方への富の再配分を行い、一億総中流を掲げるなど経済的には左派である。対外的には、アメリカとの同盟関係を重視しつつもハト派外交を行い、積極的なODAを行うのが特徴である。

弱肉強食的な米国型新自由主義経済路線を進める現在主流の自民党新保守主義派とは対立し、90年代以降は政界再編で多数が野党へ移籍したり、郵政民営化問題で離党した。

概要

* 主に吉田茂率いる旧自由党・吉田学校系の流れを汲み、かつての自民党で大きな勢力を誇った田中角栄から連なる平成研究会及び池田勇人から連なる宏池会の系統の派閥議員を指して用いる。
* 言外に他の派閥は保守傍流であるというニュアンスを含む。
* 現在は平成研究会(津島派)・宏池会(古賀派、谷垣派)・麻生派が保守本流派閥と言われる。
* 佐藤栄作・池田勇人・田中角栄・大平正芳・鈴木善幸・竹下登・宮沢喜一など、かつては保守本流派閥の領袖=首相・党総裁の出世コースと言われていた。
* 民主党の保守系グループも自民党経世会(竹下派)の出身であり、保守本流の流れを汲んでいる。
* 現在は保守傍流の流れを汲む清和政策研究会(森派:現在の町村派)が党内第1派閥・党総裁派閥であり、保守本流各派は政権中枢から外れている。森派出身である小泉純一郎首相の長期政権もあって、現在では自民党内においても本流・傍流の色分けはほとんど無意味であり、もはや保守本流は実体を伴わない死語と化している。平成研究会の復権や、宏池会系三派の統合(大宏池会構想)に向けて気勢を上げる合言葉として思い出したように持ち出される程度である。

(Wikipedia:「保守本流」より)


以前紹介したポリティカル・コンパス(日本版)で判定すると、「保守左派」に位置するのが本来の保守本流である。

もっとも、社会全体が大きく右傾した現在では、政治思想的にも保守というよりはかなりリベラル寄りな人も多いと思われる。それは、たとえば加藤紘一や白川勝彦の言論に接していただければすぐわかるだろう。

まだ政権奪取の野望を持っている加藤は、時として政敵との妥協に走るきらいがあるが、ネット右翼的言論を「保守」と錯覚されておられる方は、「保守本流」を自認する白川氏の 「永田町徒然草」 を是非ご覧いただきたいと思う。

たとえば、4月30日の 『右翼反動政治家の特質』 で、白川氏は安倍晋三を「右翼反動政治家」と断定している。以下引用する。

 安倍首相が訪米中に従軍慰安婦について謝罪したことにビックリした人が多いのではないか。度重なる憲法改正発言、靖国神社参拝の有無を明言せずとの発言、教育基本法改正と愛国心重視の発言、従軍慰安婦には狭義の強制はなかったとの発言、沖縄戦における集団自決を否定する発言、集団自衛権の見直しのための有識者懇談会の発足などどれを捉えても、安部首相の政治姿勢は明らかである。彼は村山談話などの戦争についての反省を自虐史観とあざ笑ってきたのだ。過去の戦争に対する国会決議の際には、自虐史観に基づき反対をして欠席したのである。安倍首相は確信的な右翼反動思想の持ち主なのだ。

 その安倍首相がなぜアメリカにおいて従軍慰安婦問題で謝罪をしなければならないのか。またなぜアメリカに対して謝罪をしたのか。誰だっておかしいと思うだろう。小泉首相以上に反中国だった筈なのに、最初の外国訪問に中国・韓国を選んだ理由は何だったのだろうかということもこの際思い出してほしい。この二つは実は安倍首相および最近元気付いている日本の右翼言論人のもう一つの特質を表わしているからだ。それは“従属的思想”ということである。

 従属的思想とはどのようなものであろうか。独立自尊の気概がないということである。彼らの発言を聞いていると一見独立自尊の精神が強いように錯覚させられる。しかし、彼らの本質は決して独立自尊ではなく、強いものに対してきわめて従属的であるところにその本性があるのである。日本においては権力者に対してである。長い間政権党である自民党に対してである。細川内閣のとき、私は細川首相の1億円疑惑を追及したがその際右翼的な集団からずいぶんと脅しをかけられた。なぜ自民党のためにやっているのにそういう人たちから脅しをかけられるのかと怪訝に思ったが、そのような特質からみればごく自然なのことなのである。

(白川勝彦 「永田町徒然草」:『右翼反動政治家の特質』 (2007年4月30日) より。太字は白川氏による)


これは実に鋭い指摘だ。なるほど、「長いものに巻かれろ」というのが安倍を筆頭とする「右翼反動政治家」や岡崎久彦・櫻井よしこらを筆頭とする「産経文化人」たちの本質だろう。

白川氏は、5月2日付 『報道の核心は事実 (FACT)』 でも、

『二世・三世政治家たちのいちばんの問題点は、彼らが生身の人間と真剣に付き合い、そしてその人たちを組織するという政治家にとっていちばん困難なしかし意味あることをしなくても“政治家になれた”ところにあると私はいった。要するに生身の人間が好きでないと政治家はつとまらないし、大成もしないことをいいたかったのだ。

と指摘している。

また、5月3日付 『憲法記念日に誓う』 では、「護憲」とは明記していないものの、

『私は現在の憲法がなければ、今日の繁栄はないと常々思っている』

『自民党の右翼反動政治家の悲願は、憲法改正である。自民党右翼反動の系譜に育ち、そのような考えをもっている安倍首相は、憲法改正を内閣の課題として打ち出してきた』

『いま日本国民にとっていちばん大きな課題は、自民党の右翼反動が目論む憲法改正をどうやって阻止するかだと思っている。彼らが考える憲法改正を許せば、基本的人権の尊重と民主主義は危殆に瀕することは確実である。そうなったら“まさにアウト”だ。“アウト”にならないように私たちは頑張らなければならない。私がこのサイトでいろいろな意見を述べるのも畢竟そのためである』

などと、実質的に護憲を主張している。

白川氏は、「保守本流」の中でも、左派に属する人なのだろうが、本来「保守本流」とは、こうした白川氏のような人を含む一方で、中曽根や安倍晋三なんかは、間違っても含まなかったということはおさえておく必要がある。

また、同じ憲法記念日の記事で、白川氏が公明党について、故藤原弘達氏の 『創価学会を斬る』 (1969年) から、以下の引用をしていることも注目に値する。

(公明党が)自民党と連立政権を組んだ時、ちょうどナチス・ヒットラーが出た時の形態と非常によく似て、自民党という政党の中にある右翼ファシズム的要素、公明党の中における狂信的要素、この両者の間に奇妙な癒着関係ができ、保守独裁を安定化する機能を果たしながら、同時にこれをファッショ的傾向にもっていく起爆剤的役割として働く可能性を非常に多く持っている。そうなった時には日本の議会政治、民主政治もまさにアウトになる。そうなってからでは遅い、ということを私は現在の段階において敢えていう。

(藤原弘達 『創価学会を斬る』 より=白川勝彦「永田町徒然草」経由)

実は当ブログも、約1年前の昨年5月9日の記事 『「菱和」の「菱」というのは』 の中で、藤原氏の同じ著書から引用している。

もし自由民主党が過半数の議席を失うことになった場合、公明党に手をさしのべてこれとの連立によって圧倒的多数の政権を構成するならば、そのときは、日本の保守独裁体制が明らかにファシズムへのワンステップを踏み出すときではないかと思う。
(藤原弘達 『創価学会を斬る』 より)

なお、当ブログのこの記事で、「菱和ライフクリエイト」について触れているが、当時の社長が暴力団の組長と一緒に逮捕されたこの会社についても「安晋会」の絡んだ話がある。但し、菱和ライフの西岡進社長は、起訴されたものの裁判で無罪が確定したので、それ以上は突っ込まないでおく。興味をお持ちの方はネット検索をしていただきたい。

ともかく、保守本流でない「傍流」の勢力にとっては、右翼や暴力団といった勢力抜きにはやっていけなかったのかもしれない。そして、アメリカだろうが細川政権だろうが、そのときどきの「強者」におもねって、ホニャララ団やカルト宗教とも結びつきながら勢力を強めてきたということなのだろう。

中曽根は、コイズミや安倍晋三とは違って岸の系列ではなく、自主独立を目指した鳩山一郎に従って、「反吉田」を唱えていた人物だ。だから、岸派(福田派などを経て現在の町村派)の政治家たちのような売国政治家とまではいえず、総理大臣就任後、特に後期には柔軟さも見せた。しかし、基本的には政治思想的にも経済政策でも右派で、ポリティカル・コンパスでいうところの「保守右派」であって、保守本流ではない。

そんなことを百も承知であろう中曽根が安倍晋三のことを「保守本流」と言ったのは、たぶん、晩年にさしかかって、自らの示した思想の流れを「保守本流」と言ってみたかったのだろうと想像する。

だが、さすがの中曽根も僭称に気が引けたのか、遅い時間帯の「サンデープロジェクト」に出演した時には、「保守本流」と言わず、「自民党本流」と言っていたのだった。

繰り返して言うが、中曽根康弘や安倍晋三は、間違っても「保守本流」などではない。


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安倍晋三が保守本流ならば、「戦後レジームからの脱却」は「自民党体制からの脱却」ですね(大笑)。

2007.05.08 03:18 URL | ヤマボウシ #OulKM.Ac [ 編集 ]

アベ、中曽根が進もうとしているのは、狂信的なほにゃら集団、党と手をつないで、ファシズムへの道ですね。決して、保守本流でないことは、kojitakenさんの↑の緻密な分析でよくわかります。

こんな恐ろしい方向に進むのを本当に許していいのか。裏に見え隠れするどす黒い闇が遠慮なく権力の中枢まで入ってきていますね。
おりしも今朝(8日)の新聞には、アベが靖国神社に供物をささげた、と書いてあります。

もう戦争中の映像を見ているような光景がいたるところで見られるようになるような気がします。

でも、そんなことは許しませんよ。できることを精一杯しましょう。

2007.05.08 15:32 URL | 非戦 #tRWV4pAU [ 編集 ]

このコメントは管理者の承認待ちです

2010.04.22 05:12  | # [ 編集 ]

このコメントは管理者の承認待ちです

2010.04.22 13:05  | # [ 編集 ]













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