以下紹介する。
* * *
今回の都知事選で、現職候補は、圏央道と外環道を餌に、「日本のシリコンバレーをつくる」などと言っているが、外環道こそ現職候補の政治姿勢の実像を表している。
彼は国と対峙し、自らに「ディーゼル規制をする環境派」というイメージを与えたが、実は、外環道をめぐる事実を調べると、むしろ、国と手を取り合って、東京の環境を壊して行く者の姿が見える。
最近、東京大気裁判が原告の望む方向になりつつあり、都民の中に、道路問題は終わったように思う人もいるが、実際は、外環道ができれば、東京の空も地下も破壊するものになるだろう。
特に地下水系がズタズタにされ、国分寺外線や野川などの水系も被害を被ることになる。
(管理人注:後述するように、外環道は大深度地下を利用する構想だが、地下水に与える影響は十分考慮されていないことが指摘されている)
実は私(読者の方)は、外環道の予定地近くに住んでいて、直接被害はないものの、1999年に外環道問題が浮上した時、関心を持っていろいろ調べたことがある。その結果、外環道がきたら引っ越すしかない、という結論に達したのだった。だから外環道の話には無関心ではいられない。
「東京外環自動車道 - Wikipedia」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E5%A4%96%E7%92%B0%E8%87%AA%E5%8B%95%E8%BB%8A%E9%81%93
東京外環自動車道(とうきょうがいかんじどうしゃどう、英称:TOKYO-GAIKAN EXPRESSWAY)は、東京の周りを環状のように走る東京外かく環状道路(東京外郭環状道路)の自動車専用部(高速自動車国道)であり、東京外環、外環道、外環と略す。一般国道298号と併せて東京外かく環状道路(東京外郭環状道路)、略称で外かん(外環)又は外環道と呼ぶ。なお、和光北以西には並行する一般国道はない。
東京の周りを取り囲んで、東名高速・中央道・関越道・東北道・常磐道・京葉道路・東関東道を相互に接続する計画だが、現在開通しているのは関越道(大泉IC)から三郷南ICまでの区間のみである。
未開通区間のうち、三郷南IC?松戸IC間は、一般道の供用が開始され用地買収がほぼ完了し、工事も順調に進んでいる。松戸IC?高谷JCT(東関東道)間は、用地買収等が遅れている影響で着工できず、同区間の開通は2015年度ごろにずれ込む見込み。
一方、関越道(大泉)?東名高速(東名)間は全線地下トンネルによる建設で、計画を調整中。
外環道は、現在のところ連結している他の高速道路とは別料金(均一制料金)である。
このWikipediaを見ると分かるが、現都知事はディーゼル規制を言う傍ら、就任直後から外環道の推進に手を染めている。
当時、尼崎公害裁判や、東京大気裁判などもあり、かなり道路問題の話題がメディアをにぎわしていたと思う。どちらも原告に有利な画期的な判決が出て、これからは道路を造るという時代ではない、という印象を持ったものだった。ところが、その時に降って湧いたような外環道の話。
(注)
尼崎公害裁判
http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/amagasakihannketu.htm
東京大気裁判
http://www.ne.jp/asahi/ecodb/yasui/DieselTokyo102902.htm
しかも当時東京都はとても環境先進自治都市で、「東京都環境白書2000」という報告書を出していた。
さて、「週刊朝日」3月30日号に、現職候補と対立新人候補(前宮城県知事)の対談記事が掲載されている。その中から、少し気になったところを見てみたい。
『ラッシュの緩和のために国会と霞が関を移転するよりも、いま中途半端になっている外環道と圏央道を完成させれば、渋滞は45%は緩和される。そうしたら首都機能を移転する必要はないじゃないですか』
現職知事のこういう発言があるのだが、この45%の渋滞の解消の根拠となるのが、都内の通過交通(都内に用事がないのに都内を通るだけの車両)の多さ、ということらしい。
ところが当の東京都の出している「東京都環境白書2000」で、その都知事の言っているデータが事実に基づかない事を証明しているのである。
http://www2.kankyo.metro.tokyo.jp/kikaku/hakusho/2000/tkh2k_2.pdf
このPDFファイルの34ページに以下のような記事がある。
-----------------
第2部 自動車と都市環境の危機
3) 区部の交通量の95%は区部に用事のある車
では、区部を走る自動車は、どこから出発してどこに行く車が多いのだろうか。区部を走行する自動車を大別すれば、(1) 区部から出発して区部外に出る車、または、区部外から区部に到着する車(内外交通)、(2) 区部内のみで動く車(内々交通)、(3) 区部には用がなく単に通過するだけの車(通過交通)という3種類に分けられる。図表2-20で見た発生集中交通は、(1)と(2)の合計であり、 (3)の通過交通は含まれていない。
図表2-22は、この3種類の交通の量を示したもの (平成6年度 道路交通センサス)である。(1)?(3)の総合計は、660万台であり、通過交通の35万台は、全体の5%強にあたる。したがって、区内を走行する自動車の約95%は、仕事や買い物、家事など何らかの目的のために区部に目的地や出発点を持つものである。 一方、区部の中でも都心部だけをみれば、通過交通の割合はもっと高い。首都高速道路東京線を例にとれば、一日の利用台数約94万台のうち、約3割にあたる約27万台は、都心環状線を通過するだけの交通である。
-------------------------
つまり、23区内の車の移動は95%が区内に用事があって動くもので、外環道は23区の周りに作られるものだから、外環道が出来たところで、現職候補の言うように45%も渋滞が減るとはとても思えないのだ。それに、こういう明確なデータを東京都自身が出しているのである。では、現職候補はどこのデータを使って渋滞が45%も減ると言っているのだろうか? 今度是非開示請求してみたい。
加えると、上のデータでは確かに都心環状線の交通量の3割は通過交通である。また、湾岸線などは長距離トラックでいっぱいだが、羽田や神奈川方面から千葉へ行く車がわざわざ練馬や埼玉を通る外環道を迂回していくとは思えない。しかも外環道は別料金になるのだ。
仮に環状線の渋滞が無くなったとしても、都内の一般道路の渋滞は減らないのである。道路を造ることで解決する問題とは思えないし、ある新人候補(建築家)の言うように、都心の高層ビルの建築が区部内の交通量を増やしているだろう。現職候補の言っていることは矛盾だらけである。
また、現職候補は対談の最後に、
『東京は公私を合わせて博物館・美術館の数は世界の首都で一番多いんですよ。そういったものの情報はあっても、利用度は非常に少ない。移動が難しいから渋滞を解消すると、非常に多岐に渡る高度な文化を享受できる。非常に魅力のある街になると思いますよ』
と言っているのだが、これもどうだろう。地下鉄や私鉄の発達した東京で車の移動を勧めるような発言は、地球温暖化が叫ばれる今、とても理解に苦しむ。また、絵を見るのが好きな私は、良くあちこちの美術館に行くが、公共機関の移動で不自由があるとも思えない。むしろ車で移動して、駐車場を探す方が大変だ。
ちなみに、実は外環道は高速道路で、都の管轄ではない。国(国土交通省)の管轄なのだ。国と対峙する、というよりは、一緒になって押し進めているようだ。外環道は地下40メートルに作られると言う。地下40メートルに道路を造る場合費用はどのくらいかかるのだろう。しかも高速道路だからジャンクションなども必要で、その分岐点を地中に作るのに一カ所何百億円掛かるか分からないとも言われているそうだ。地震の問題もあるだろう。
しかも既に出来ている、埼玉7都市では、周辺の街が寂れ、人通りが絶え、犯罪が増えている。経済効果も謳っているが事実は逆なのである。
汚染地への築地市場の移動といい、道路問題といい、本当に都民のことを考えているのか、結局はゼネコンや国の利権を守る為に税金を使っているのではないか、と都民として憤る話ばかりである。
* * *
このお便りを受け取って、私も外環道による渋滞緩和についてネットで調べてみたが、渋滞が45%緩和されるという現職候補の主張の根拠を見つけることはできなかった。共産党は、都知事が開発計画の根拠となるデータを示さないまま、議会を散会してしまったと主張していたはずだ。
外環道をめぐる議論を見ていて、四国に住む私が直ちに思い浮かべるのは、3つのルートで架けられた本四架橋だ。巨額の費用をかけて完成されたこれらの橋は、いずれもメンテナンスが大変で、採算が合わず、今後さらに地域住民への負担がのしかかってくる(当初はあと2ルート、計5ルートの建設計画があった)。
大深度地下に高速道路を造るという外環道構想を推し進めたいという現職候補の主張は、本四架橋の愚を繰り返すものだろう。まさしく、1964年の東京五輪の頃の発想だと思う。そして、外環道建設や東京五輪招致など、ひたすら開発指向の主張をしているのは現職候補だけなのである。
↓ランキング参戦中です。クリックお願いします。

- 関連記事
-
- 「圧勝」予測の石原慎太郎のゴーマンぶりが復活したが... (2007/04/06)
- 東京の環境を破壊する、不必要な外環道 (2007/04/04)
- 共同通信の都知事選情勢分析を読む (2007/04/02)
外環は非常に便利です。
有用性が高いが故に、自動車利用需要を強固に誘発するでしょう。
東京西郊は南北の公共交通が未整備のため、開通によりマイカー通勤が急増するでしょう。
2007.04.04 13:41 URL | Kechack #1/Y8RI0s [ 編集 ]
kojitakenさん
いつもTB有難う御座います。
先ず、私のところに入るkojitakenさんのTBが全て漢字を含む記号になっています。私は機械に弱いので、何故そうなのかは分かりません。何か解決策があれば教えてください。
そして、今回のエントリーにビックリしています。
東京の環境破壊に対する石原の外環道路計画のウソを資料を基に暴いているkojitakenさんの姿に私も学ばなければと思います。
テレビや演説の中での石原を見て、多くの人たちは環境を真剣に考えている石原と見ていると思います。このようなエントリー記事がもっと表に出ることを期待しています。
2007.04.06 11:38 URL | morichan #AU6tPF8Q [ 編集 ]
外環道の計画は、石原1期目のときからありましたね。
このときすでに、地下深くに造る計画になっていました。
「石原は造るって言っているけど、あんな住宅密集地にできるのかよ~。」
なんてお話を、そのときしていたのを、ちょっと思い出しましたよ。
(いくらイシハラの強引をもってしても、無理だと思うけどね...
用地買収に100年くらいかけるなら、できるかもしれないけど...)
2007.04.14 18:16 URL | たんぽぽ #ZiqE0vWU [ 編集 ]
本当に外環が環境に悪いかどうか、平日の日中に環八をご自身で走ってみればよかろう。あなたがどれほどおエラく、自らの正義を信じているか知らないが、これほどの惨状を目にして、なお、同じ事が言えるか一度自分で試してみればよい。
現場を見ないで理想論を語らないでいただけないだろうか。
問題の所在は「現場に来れば」あきらかだ。
練馬~多摩まで、まっとうな南北道がない状態のため、多くの物流が滞っており、しかたなしにトラックが生活道路を走り回る現在の惨状をどうするか。
現在のままでは、多くの歩行者の人命が危険にさらされているので、速やかに改善が必要だと思われる。
2007.09.08 16:58 URL | kaz #WzzJX4NY [ 編集 ]
このコメントは管理者の承認待ちです
2013.09.10 17:36 | # [ 編集 ]
トラックバックURL↓
http://caprice.blog63.fc2.com/tb.php/302-21ed03b7