だが、これは実は軍事力というものの本質を突いた発言ではないかと思っていたところ、とむ丸さんのブログ 「とむ丸の夢」 からトラックバックをいただいた記事 『上田・自衛隊発言とか、石原・セレブ応援団とか』 に、まさにそのことが指摘されていたので、わが意を得たりの思いだった。
以下、同記事から引用する。
(前略)上田知事は、私たちがタブーとしてきたこと、見まいとしていたことを目の前に突きつけた、という気がします。
(中略)
平和を守るとか、国民の命や財産を守るとか、そんなことは嘘だと、先の戦争や今のイラク戦を見ていれば思います。
国を守るという意思は美しく尊いものだ、したがってそのために死ぬのは称賛されるべきものだ、と説く人たちにとっては、世間にもうひとつ別の死を思い起こさせた点で、失言と映るかもしれません。
(「とむ丸の夢」の記事 『上田・自衛隊発言とか、石原・セレブ応援団とか』 より)
4月2日の「きっこの日記」が指摘しているように、安倍晋三が昨年5月13日(福岡)と14日(広島)に祝電を送った統一教会系集会が同5月20日に埼玉で行われた時、民主党議員あがりのこの知事は祝電を送っているのだが、下記Wikipediaの記述を見ていただければわかるように、この男はバリバリのタカ派というより、「極右」と評した方が良い人物である。
「上田清司 - Wikipedia」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8A%E7%94%B0%E6%B8%85%E5%8F%B8
(以下、上記リンク元から一部引用)
* ジェンダーフリー反対。県立伝統高校の男女共学化反対。
* 2004年10月、県議会答弁で、「新しい歴史教科書をつくる会」を支持し、同会の歴史教科書を評価。中国・韓国・北朝鮮の抗議を内政干渉であると批判。同年12月20日、同会の副会長であった高橋史朗明星大学教授を埼玉県教育委員に指名したが、教科書の中立性維持という観点からの批判があった。
* 2006年6月議会で、埼玉県平和資料館の展示に関する質問に対し、「古今東西、慰安婦はいても従軍慰安婦というのはいなかった」と答弁。これを批判する市民との面会で知事は、当時の人々の不幸な境遇につき理解を示したものの、自説を通した。
* 岡田尊司『脳内汚染』に感銘を受け、首都圏サミットにおいて4都県・4政令指定都市共同で文部科学省と別にゲーム脳の実在証明を研究することを提唱。少年犯罪はゲームが原因であると主張。
* 2006年5月20日にさいたま市で開催された世界基督教統一神霊協会(統一協会)の関連組織・天宙平和連合の会合に祝電を送っていたことが判明し、「全国霊感商法対策弁護士連絡会」が質問状を送付している。
さて、ちょっと上田知事の人物紹介が長くなってしまったが、「わかりやすい言葉で言い換える」ことによって、物事の本質が浮き彫りになる例を、今回の都知事選に立候補している前宮城県知事が、昨年春に出版した著書に書いているので、その要点を紹介したい。
宮城県で「食糧費の不適正支出」というのが問題になったことがある。「食糧費」というのは、当ブログの以前のエントリでも触れたことがあるが、「霞が関の役人を接待した懇親会や、その他のパーティー、宴会の経費として使われている支出科目」のことだ。早い話が、宮城県庁の職員はこれをちょろまかしていたのだ。
前宮城県知事は、情報公開によってこの件を白日の下に晒したのだが、当時この件は「不適切な事務処理」と表現されていた。
ある時、NHKテレビの「週刊こどもニュース」の取材を受けた前知事は、テレビのスタッフから「そんな言葉遣いでは、子供たちが理解できません」とクレームをつけられ、「不適切な事務処理」と言う言葉を「書類にウソを書いた」と言い直した。言ってみて、前知事自身が愕然としたのだという。官僚出身の彼は、『役所言葉では、やったことの罪深さが薄まってしまう。「書類にウソ書いた」というのが、紛れもない事実である。罪深さが実物大で迫ってくる。こども記者に教えられた』 と率直に告白している。
上田知事も、意図せずして同じことをやったのだと思う。戦争とは殺し合いであり、軍事力とは人間を殺傷する能力のことにほかならない(この不思議な男によると、「人殺し」と言ったら問題でも「殺傷」ならかまわないらしいのだが、この論理は私には全く理解できない)。
こう書いたからといって、自衛隊員の尊厳をおとしめるつもりなど全くない。人間の生存権が脅かされた時、それを守るための正当防衛の権利はあると考えている。
だが、国は外交によってぎりぎりまで軍事力の発動を回避するよう努力しなければならない。それは、護憲派だろうが改憲派だろうが同じことだと思う。
しかし、著書「美しい国へ」で特攻隊員を賛美してみせたり「敵基地攻撃」や「戦術核の使用」に言及したことのある、現首相・安倍晋三の考え方は、そうではないらしい。私はそういう政権は間違っても支持できないが、安倍と思想が近いように思われる上田知事が、東京都知事選で現職を応援したと聞いても、さもありなんとしか思えないのである。
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取り上げてくださりありがとうございます。
毎日腹を立てながら、ふと思えば、単なる一主婦の私にあれこれ言わせる状況を作る政権とは、ある意味すごいな、と感じました。もちろん、そのすごさはterribleのすごさですが。
ああ、毎日にこやかに微笑んで過ごせる日本をつくってほしい!
2007.04.04 11:43 URL | とむ丸 #rZtJR6xo [ 編集 ]
上田知事は、軍隊の本質を言ったんですね。
自衛隊を自衛軍にしたくてたまらないのでしょう。
自衛隊は武器、装備等で明らかに軍隊の形ですが、憲法9条に違反していないという前提で存在が認められているので、人殺しない組織だよ、と国は入隊する自衛官や国民を欺いてきたのでしょう。
改憲すれば、軍隊は「人を殺さない」なんていううそは言えなくなります。戦争の本質は「人を殺すこと」「それは名誉なこと」「たくさん敵を殺したら英雄」「戦って殺されらば、それも英雄」。(←交戦権)
戦争は「殺されるか、殺すか」の世界です。
それを「美しい」だの「国際貢献」だのという言葉で、だまされてはいけないです。
国民は戦争のために一つの方向を向くことを強要され、自分だけはあっち方向を向いて好きなことをしていたいわ、なんていうことは許されないのですから。無関心な若者が、無関心のままいられなくなって、ある考えを強制されるのですよ、と無関心を楽しむ?若者
にも言いたいですね。
わたしも、とむ丸さんが言われるように、
>毎日にこやかに微笑んで過ごせる日本をつくってほしい!
2007.04.04 13:06 URL | 非戦 #tRWV4pAU [ 編集 ]
私も
>毎日にこやかに微笑んで過ごせる日本をつくってほしい!
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