きまぐれな日々

昨日(3月22日)、「落日燃ゆ」「男子の本懐」などの小説で知られる、作家の城山三郎(本名・杉浦英一)氏が79歳で亡くなられた。城山さんのご冥福をお祈りする。

私は城山さんの小説の読者ではなかったが、城山さんというと、2002年に個人情報保護法などの、いわゆる「メディア規制三法案」反対の言論が盛り上がった時に、激しく法案を批判されたことが印象に残っている。

下記は、2002年4月10日の「東京新聞」に掲載された記事だ。
http://www.tokyo-np.co.jp/media-k/toku020410.html

この記事を抜粋して紹介する。

(前略)

 城山さんのノンフィクション小説は膨大な資料収集と取材に支えられている。個人情報保護法が成立すれば、その基本原則が適用され、取材への制約は免れない。

 「ある人について物を書く時に、『あなたのことを書きますよ』と許可を得て、『あなたの知っているこういう人に話を聞きに行っていいですか』と了解を得る。調べてきたことを報告して、最後に原稿を書き上げたら全部みせて検閲を受けなければならない。そんなことをしていたら何も書けないじゃないですか」「伝記だって、いろんな話を聞いて報告しなければならないとなったら、悪い話はひとつも出てこない。みんな神様みたいな人になって、小説が官報になっちゃう」

(中略)

 「役人が言いましたよ、内閣官房のね。大きな網をかけるんだって、何度も。国民に向かって。雑魚じゃあるまいし、大きな網をかけるなんて。主権者に向かって、この官僚たちは何を考えてるのか。データが集中する『行政に厳しく』が当たり前でしょ。それが、公務員には処罰規定がなくなって、公務員、主務大臣が国民を罰するという。逆転ですよ」「言わせまい、書かせまいの意図を感じる。スキャンダルを書かれて総理も失脚してしまう。国民を、言わず、見ざる、聞かざるのサルにしてしまおうということですよ」

(中略)

 「憲法で、あるいは自由のなかで、最も大切なのは言論の自由。いったん言論の自由をなくしてしまったら、とめどない暗黒時代に深入りしていくことは戦前をみれば分かるじゃないですか。治安維持法で言論の自由がなかったからですよ。みんな何も言わないし、言えない。世間のことも分からないし、行動の自由だって奪われる。だから、少しでも言論の自由が危うくなったらそれを指摘して、批判して批判して守っていかなければならないんです。言論の自由のあるうちに」(後略)

(「東京新聞」 2002年4月10日付記事 「メディア三法を考える ー 譲れぬ言論の自由」より)


「左派」でもなんでもない城山さんの激しい批判に対し、自民党は城山さんを「もうろくジジイ」呼ばわりする誹謗中傷を行った。どこかの誰かさんの「ババァ発言」といい、この国の権力側にある人たちの下品さには呆れ返ったものだ。

城山さんはこれに反発し、2002年5月24日に民主、自由、共産、社民の野党四党が国会内で開いた個人情報保護法案の廃案を求める緊急集会で、「これからの作家は、死を覚悟してでも書くくらいの気持ちでないとできない」と発言された。

それまであまりメディアへの露出を好まなかった城山さんだが、この頃はテレビの政治番組などにもしばしば出演されていたので、ご記憶の方も多いだろう。

なお、メディア規制三法案については、東京新聞(中日新聞)のウェブページが残っており、この件を振り返るのに役に立つ。
http://www.tokyo-np.co.jp/media-k/

当時、雑誌は法案反対で一致団結していたが、新聞はずいぶん権力に協力的だったことが印象に残っている。狡猾な権力側は、新聞を個人情報保護法案の「義務規定」の適用除外にして、メディアの分断を図ったのである。

喜び勇んで思いっきり権力にすり寄ったのが、ナベツネ(渡邉恒雄)率いる読売新聞であった。当時、週刊文春や週刊新潮といった筋金入りの右派週刊誌までもが、ナベツネや読売新聞を厳しく批判したことは記憶に新しい。毎日新聞も、城山三郎さんらに変節を厳しく批判された。

朝日新聞を「愛読者」の立場から厳しく批判したのが魚住昭さんである。2001年に「ダ・カーポ」に掲載され、昨年発行されたちくま文庫の「国家とメディア」に収録された、魚住さんの朝日新聞批判を以下に紹介する。

 個人的な話で恐縮だが、私は40年来の朝日新聞ファンである。物心ついた時から朝日を読んできた。新聞といえば朝日。それ以外はものの数にも入らないと思っていた。共同通信記者として同じ業界で働くようになってからもその考えは変わらなかった。朝日の事件記事はどこよりも正確だったし、隠された事実を丹念に掘り起こす調査報道も素晴らしかった。

 ところが最近、その朝日が変わった。かつての鋭い批判精神が影を潜め、大勢順応の安直な記事が目立つようになった。世の矛盾や不条理に対する記者たちの怒りが感じられなくなった。なぜだろう? 以前はこんな新聞ではなかったはずだが。そう思っていたら、朝日の「個人情報保護法案提出へ」という記事(3月27日付夕刊)に出くわした。前回書いたように、この法案は政府が雑誌メディアやフリーライターの首根っこを押さえるため企んだものだ。もし国会で成立したら報道の自由は大幅に制限され、ジャーナリズムは窒息してしまう。それぐらいのことは朝日ならきちんと把握しているはずだと思いながら記事を読み進んだ。

 《政府は二十七日午前の閣議で「個人情報の保護に関する法律案」の国会提出を決めた。商取引などで個人情報を利用する側に配慮しながら、プライバシー侵害を防ぐのが目的。適正な方法による取得などを求めた『基本原則』は個人情報を扱うすべての人や機関に適用される。報道や政治活動も一定の制約を受ける。またデータベース業者らには本人の求めに応じて保有する個人情報を開示する義務が課される……》

 驚いた。呆れた。そして腹が立った。まるで官僚の作文のような記述がこの後もつづき、雑誌メディアやフリーライターが受ける規制については本文で一言も触れていないのである。新聞が「義務規定」の適用を免れたからそれでいい、雑誌やフリーライターなんか知ったことではないと言うのだろうか。何という脳天気さ。政府が雑誌の抑え込みに成功したら、次は新聞を狙ってくるに決まっているではないか。この記事に表れているのは、恐ろしいほどの想像力・感受性の欠如である。

(中略)

 冗談じゃない!新聞記者であれ、フリーライターであれ、報道に携わる者にとって最も大事な表現の自由が奪われようとしているのに、なぜ大声で「こんな法案を通 してはいけない」と叫ばないんだ。結局のところ、朝日はこの問題を他人事としか受け止めていないんじゃないか。(後略)

(魚住昭 『国家とメディア』(ちくま文庫、2006年)より。初出は「ダ・カーポ」 2001年5月2日号)


魚住さんの記事は、以下記者クラブ制度への批判へとつながっていくが、長くなるので割愛させていただいた。

なお、個人情報保護法は、2002年12月に廃案に追い込まれたが、翌2003年3月にメディア規制の色合いを薄めた新法案が国会に上程され、同5月に可決された。

城山さんが活発に発言されていた頃からはや5年。当時はまだ雑誌が元気だったし、前述の東京新聞のサイトを見ていただければわかるが、4野党が結束して与党に立ち向かう姿勢を見せていた。

それが、あの悪夢のような郵政総選挙を契機に大きく流れが変わり、「物言えば唇寒し」の時代になってしまった。一市民である私がブログでこんな記事を書くようになったのも、大手メディアがあまりにだらしなくて全然頼りにならないからだ。本当だったら、こういう記事を書くかわりに、趣味に時間を費やしたいのだが、今は声をあげ続けるしかない。そんな内的必然性というか、衝動に突き上げられて、ブログの記事を更新し続けている毎日である。


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あらためて、城山さんの見る目の確かさ、鋭い危機感、説得力ある論調の2002年の「東京新聞」記事を読ませていただいて、城山さんが亡くなったことの大きさを思いました。
「メディア三法」のとき、大きい声をあげたのは、城山さんとあとわずかの人たちで、マスコミも沈黙状態でした。声を大にしてあげるべきでした。その後、マスコミは堕落していく一方です。
そして、あの時マスコミのみならず、言論人の動きも決して活発なものではありませんでした。
気骨ある本が少なくなってしまった、小説もしかり、と思います。

2007.03.24 09:19 URL | 非戦 #tRWV4pAU [ 編集 ]

人間のクズのマスゴミが何を偉そうに(笑
おまえらは、雲仙普賢岳の火砕流の時に避難した家に土足で上がりこんで電気を盗み、警戒区域から出るよう要請した警察の言葉を無
視して消防団員や警察官を巻き添えに殺したクズの仲間だろ?
阪神大震災の時に、建物の下敷きになって、助けを求める声をヘリコプター見物の騒音でかき消し、まだ煙の立っている現場にくわえ
煙草で降り立ち、被災者の、「そこには無くなった方がいるので踏まないでください」との声を無視して「まるで温泉地にきたみたい
ですね~(笑)」といいはなったクズの仲間だろ?
日航123便の事故の時に、より悲惨な死体を求めて駆け回り、お棺をまたぎ、あまつさえ、棺のふたを開けて中を撮影しようとしたクズの仲間だろ?
新潟地震では、山古志村に入り込み、被災者に混じって救助され、おまけに救援物資のパンを我先に食い散らかしたクズの仲間だろ?
女性を色仕掛けでたぶらかして国家機密を漏洩させたくせに、悪びれもしないで「不当な起訴で名誉を傷付けられた」などと主張して裁判を起こすウジ虫の仲間だろ?

2007.05.01 08:14 URL | 失せろウジ虫 #- [ 編集 ]

松本サリン事件の時なんて、あれほど無実の人を犯人扱いしたのに、真相が明らかになったら、すべて警察の所為。
アレで責任をとってやめたマスゴミの人間なんて誰一人いない。
戦前は戦争翼賛で、人々を死地に送り込み、戦後は一転して、共産主義におもねり、文化大革命翼賛。
戦後の混乱の中で、闇市でものを買わずに餓死した裁判官はいたが、マスゴミの人間でそのように清廉潔白な人間はひとりもいない。
政治家や役人の不祥事には辞職を要求し、民間会社の不祥事でも社長の辞任を求めまくるのに、自社の不祥事では、担当者の出勤停止1日。
芸能人や、一般会社の社長の息子が麻薬をやれば批判しまくるのに、自分の会社の社長の息子が麻薬をやっても知らんぷり。
人殺しはする、酒飲み運転はする、少女買春はする、麻薬は吸う、脱税はする、放火はする、詐欺はする、横領はする、暴力はふるう
、痴漢はする、泥棒はする。
捏造記事なんて星の数ほど。
再販制度を批判するくせに、自分たちの再販制度はしっかり維持を主張する。

そ う い う ク ズ ど も の 何 が 「社 会 の 木 鐸」 だ、 何 が 「正 義 だ」(笑
失 せ ろ ウ ジ 虫 !  

2007.05.01 08:15 URL | 失せろウジ虫 #- [ 編集 ]













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