きまぐれな日々

石原慎太郎はいうまでもなく極右であり、人間として許しがたい暴言を次々と吐いている。これについては、多くの方々が批判されていることと承知しているが、これらの石原発言はあまりに程度が低くて、私自身としては、わざわざ文章を書く気にもならないほどの嫌悪感を催してしまう。こんな人物を二期八年にわたって日本の首都の知事としていただいていたことは、東京の恥にとどまらず、日本の恥と言うべきだろう。

だが、石原の暴言を批判する論法では、このバカの勇ましい言葉に心酔する人たちの支持を切り崩すことはできない。右寄りの有権者たちの認識を改めてもらうためには、石原都政を実務面から批判する必要がある。そうずっと思っていた。

月刊「現代」 4月号に掲載されている青木理氏の 『石原慎太郎 「モノ言う知事」の品性と功罪』は、その意味からもとても良い記事だと思うので、ここに紹介したい。

青木氏は1966年生まれ、昨年共同通信を辞職し、「週刊金曜日」昨年6月23日号で安倍晋三の統一協会への祝電問題に関する記事を書き(昨年6月28日付当ブログ記事 『AbEnd的にはよしりんもかっちゃんもペケ』 参照)、「現代」の昨年12月号では、魚住昭さんと共著で「共同通信が握りつぶした安倍スキャンダル」(昨年11月3日付当ブログ記事 『共同通信が安倍晋三事務所のスキャンダルをもみ消した』 参照)を発表した気鋭のフリージャーナリストで、最近私が注目している一人だ。

その青木さんが「現代」4月号の記事で俎上に載せるのが、『石原が推し進めて様々な波紋を巻き起こした主要政策のうち、銀行税、ディーゼル車規制(以上1期目)、新銀行と新大学の設立(以上2期目)』(二重カギ括弧は青木氏の記事からの引用、以下同様)である。

まず、銀行税こと大銀行への外形標準課税は、2000年2月7日に石原が発表するや、ただちに議論を巻き起こしたものだ。
『銀行税とは都内に本支店を持つ資金量5億円超の銀行を対象とし、5年間の時限措置で法人事業税に外形標準課税を適用する』というもので、当の銀行や財界のほか、自民党や大蔵省(当時)からも、「課税の公平性」の観点から批判を浴びる一方で、民主党や(都議会における)共産党に歓迎された政策である。マスコミでも、朝日新聞が社説でこれを支持する一方、読売新聞が「ポピュリズムだ」として批判するなど、普段石原を支持していた勢力ほど反発し、石原に批判的な勢力ほど歓迎するということで、当時ずいぶん話題になったものだ。

しかし、青木さんによると、これは別に石原独自のアイデアでも何でもなく、美濃部亮吉都政時代(1967年?1979年)にも検討され、都庁では主税局を中心に長らくの悲願としていた政策だったという。ちなみに、石原は1975年の都知事選に、美濃部知事の三選を阻止すべく立候補し、僅差で敗れている。いわば石原にとっての宿敵が検討していた政策を、人気取りのために横取りしたようなものなのである。

石原が銀行税に先立って打ち出したディーゼル車規制も、世論に支持され、石原の人気を押し上げた。以下青木さんの記事から引用する。

 銀行税をめぐっては、条例の無効確認などを求めて提訴した銀行側に一審、二審とも敗北したとはいえ、全国の自治体で課税自主権論議を活発化させ、国が外形標準課税を導入する誘い水となった。ディーゼル車規制も、東京の取り組みが03年10月に埼玉や千葉、神奈川も含む首都圏にまで拡大しての走行規制実施につながった。

(月刊「現代」 2007年4月号掲載 青木理 『石原慎太郎「モノ言う知事」の品性と功罪(前編)』より)

青木さんも書くように、石原の1期目はそれなりの成果があったかに見える。しかし青木さんは、『都知事・石原を間近で見てきた都庁幹部たちの評価は厳しい』として、下記のような都の部局長経験者の言葉を引用しながら、以下のように書いている。

「石原さんはいわば究極のポピュリスト。何が世論受けするかを嗅ぎ取って派手な打ち上げ花火を上げる感性は鋭いが、常に拙速と思いつき。体系的、持続的な思考ができない人なんだ」

(中略)

「石原さんはいつも一時の思いつきで強引に突き進むが、後が続かない。もっと問題なのは、石原さんに、そもそも『公』という発想がない点だ。だから自己顕示欲を満たすような思いつきで動き、周囲に側近やイエスマンを侍らせ、組織がおかしくなっていく。石原都政の問題点は最初っから一貫していた」
 こうした都庁幹部たちの石原評を踏まえて冷静に振り返ると、石原の号令に基づくアクティブな試みが肯定的効果を及ぼしたように見えても、それは都政初期のわずかな期間に限られていることに気づく。また、そこにはすでに石原流トップダウンの病理も透けて見えており、実際にその後の石原都政を眺めれば、強引な独善と場当たり的な施策の悪弊が極大化し、都政の現場は混乱と怨嗟ばかりが渦巻いているのである。

(前掲誌より)

1期目は、それでも石原の施策にも評価できる部分はあるかもしれない。しかし、2期目になるとそうはいかない。

青木さんは、2期目の石原の公約のうち、「中小企業の能力を引き出す新しい銀行の創設」(「新銀行東京」の設立)と「これまでにない新しい大学の実現」(「首都大学東京」の設立)を俎上に上げる。

前者の「新銀行東京」については、都庁内では当初から「うまくいくはずがない」と囁かれていたもので、実際、2006年9月期決算で154億円もの赤字を記録した。青木さんの記事には書かれていないが、最近、都議会で民主党の田中良幹事長から「都知事は業績悪化の責任を取るべきだ」との追及を受けた石原は、議長から発言を許されてもいないのに、「馬鹿な質問すんな!」などと怒鳴り、その行為を議長に注意されてもなお、周りにだけ聞こえるような声で、「バカなこと言ってんじゃない」と繰り返し、しまいには「卑怯で下賤だ」と吐き捨てた。このことからも察しがつくように、石原にとってもっとも突かれたくない失政の一つが、この「新銀行東京」なのである。

「首都大学東京」に至っては、もはや呆れるばかりだ。東京都と都立大、都立科学技術大、都立保健科学大、都立短大がまとめつつあった東京都の大学改革案を、石原は2003年8月に突如白紙に戻し、都立の4大学を廃止し、「首都大学東京」の新設を通告したのだ。当然、都立大はこれに激しく反発したのだが、石原がトップダウンのゴリ押しでこの改革を推し進めた理由は、リベラルな校風で知られる都立大のイメージを石原が嫌ったためではないかと、青木さんは推測している。実際、都立大にはかつての美濃部革新都政のブレーンとなった人材がいたのだそうだ。石原とは、私怨を晴らすために「大学カイカク」を行う男なのである。

石原都政というと、浜渦武生(はまうず・たけお)元副知事のやりたい放題が問題となったことがある。この高知県出身で石原の衆議院議員時代から秘書を務めてきた男については、佐野眞一が、石原の批判的評伝である 『てっぺん野郎』 (講談社、2003年)で厳しく批判しているが、まるでヤクザのようだと評されたこの浜渦という男は、2005年6月、都議会自民党の実力者を追い落とすために、民主党都議にやらせ質問を依頼し、虚偽の答弁をしたことがばれて、更迭の憂き目にあった。

浜渦という片腕を失ったのは、石原にとっては大きな痛手となった。それでなくても、周囲をイエスマンばかりで固めて急速に独善化していた石原都政は、浜渦を失ったことによって、ほとんどレームダック化してしまっている、というのが青木さんの見立てである。

なお、浜渦は2006年7月、都参与の職に引き戻されたが、かつてのような権勢をふるう立場にはないそうだ。

そんな「死に体」の石原は、それでも3選を目指しているのだが、『複数の都庁幹部と都議が口を揃えて指摘することによると、「ファミリーと側近のためだろう」という呆れ果てた理由』からだそうだ。青木さんの記事から以下引用する。

「最大の理由は家族のため。都政への不透明な関与が問題となった芸術家とされている四男もそうだが、衆院議員となった三男の宏高氏も知事の後ろ盾がなければ今の座を維持するのは苦しい。都の参与に舞い戻った浜渦氏や他の特別秘書の連中など知事にぶら下がっている側近もたくさんいて、今さら辞めるに辞められないんだろう」(都庁幹部)
「いくら親バカとはいえ、息子たちの能力くらいは石原知事も分かっている。このまま3期目に入れば、石原都政は"ファミリーの生命維持装置"とでも言うべき状態になる」(都議)

(前掲誌より)

『都政新報』という都政専門紙が昨年11月に実施したアンケートによると、石原の3選出馬について都職員の56.3%が「出馬すべきでない」と答え、その数字は部長級以上の幹部職員で62%、課長級でも66%に達したという。また、石原の都政運営や印象については「側近政治的な姿勢が目立つ」「独断専行」とするものが80%以上に達したそうだ。

このように、都政にかかわっている都の職員は、石原都政に対して極めて冷淡な見方をしている。しかし、TBSやテレビ朝日で石原を礼賛し続けているみのもんたや田原総一朗が垂れ流す石原へのお追従が効いているのか、いまだに石原の支持率は高く、いま現在都知事選の投票が行われるなら、石原が大勝するだろうといわれている。

しかし、心ある都民は、まともな人間であるとも思えない石原の圧政下にいる恥辱に耐えられないだろう。それは、東京都民ではない私にもよくわかる。そして、都民の悲鳴にも似た叫び声に耳を傾けた浅野史郎さんが、石原を倒すべくついに立ち上がった。

きたる東京知事選では、都政を私物化する石原慎太郎に、何が何でもストップをかけなければならないと私は思う。


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