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きまぐれな日々

プロ野球・中日ドラゴンズで入団テストを受けていた中村紀洋選手が、ナント年俸400万円の「育成選手契約」で同球団入りすることが決定した。背番号は「205」とのこと。

『ノリが中日と契約、年俸2億円→400万円』
(「日刊スポーツ」 2007年2月25日)
http://www.nikkansports.com/baseball/f-bb-tp0-20070225-161755.html

なぜいつもと趣向を変えて、突然プロ野球の話題から始めたかというと、新自由主義者の言う「頑張ったものが報われる社会」というのは、頑張れなかった時には当然こういう結果を招くものだと言いたいからだ。

プロ野球のような実力の世界では、父が大選手だからといって、その地位が息子にまで引き継がれるわけではない。引き合いに出して悪いが、ミスター・ジャイアンツとうたわれた長嶋茂雄の息子、長嶋一茂や、南海ホークスのスター選手にして、ヤクルトスワローズで名監督とうたわれた野村克也の息子、野村克則(カツノリ)は、いずれも凡庸な選手だった。そして彼らは、その結果に応じた報酬しか球団から得られなかった。

私は、新自由主義の思想には反対だが、新自由主義的なルールを当てはめた方が良い世界もあると思っている。プロ野球選手はその典型だし、芸能界もそうだ。そして、企業の経営者なども同様だろう。経営者も、ちょっと経営が傾けば、いつでもクビを覚悟しなければならない立場だ。

彼らが「頑張ったら報われる」のは、大いに称賛すべきことだ。私は12年前にアメリカに渡った野茂英雄選手を応援しているが、彼の浮き沈みの激しさは、まさに新自由主義的といえる。日本で故障して、球団ともめて近鉄バファローズを退団した野茂は、マイナー契約でドジャース入りし、メジャーに上がってほどなく、得意のフォークボールでメジャーリーガーから三振の山を築いた。ノーヒットノーランも達成した。かと思うと故障で再びマイナー落ちしたあと、再び不死鳥のように復活し、二度目のノーヒットノーランと二度目の奪三振王に輝いた。しかし、三度故障して現在に至っており、年齢的にももう苦しいかもしれない。だが、ここまで頑張ったのだから、彼は悔いを残さず選手生活を終えることができるだろう。

野茂のように、天職ともいうべき仕事にめぐり会えた人間が、頑張って結果を出した時は高給を得て、そうでない時は屈辱的な境遇で過ごすのは、悪いことではないだろう。しかし、一度実績を得た選手が、成績の悪い時もずっと高年俸を得ていたらどうだろうか。または、全然実力もないのに、かつてのスタープレーヤーの息子だとか孫だからという理由で、打線の四番に居座っていたりしたらどうだろうか。

いずれの場合も、チームの成績の悪化を招き、ファンからも見放されて、球団経営は成り立たなくなるだろう。

今の新自由主義的主張をする政治家のおかしさは、一つにはそこにある。三世の政治家が「頑張った者が報われる社会を」などと言っても、何の説得力もない。そもそも彼らは、中村紀洋がなめたような辛酸を味わうことはないのである。

もうひとつは、野球でいうと野茂のような卓越した能力に恵まれなかった選手にも、生活に困らないような最低報酬を保障する必要がある。つまり、新自由主義的な施策を適用しても良い人たちと、適用すべきではない人たちがいるということだ。プロ野球選手の場合、多くの選手にとっては、第二の人生は文字通り「再チャレンジ」となる苦しいものになるから、ある程度の最低報酬額が保障されていないと、プロ入りはリスクが極めて高いものになる。

企業の従業員についても同じことがいえる。たとえば、青色発光ダイオードを開発した中村修二氏のような卓越した能力を持つ人は、新自由主義的な世界で生きれば良いと思う。しかし、そうではない大多数の従業員に、不必要なリスクを負わせるべきではない。ましてやそれが、本来経営者が負うべきリスクを従業員に転嫁するようなものであるなら、論外というほかあるまい。

ちょっと前、安倍政権が導入しようとして問題になった「ホワイトカラー・エグゼンプション」とは、そういう性格を持つものだった。こういう傾向は、90年代から現れており、多くの企業で導入された「成果主義」は、つまるところリストラの口実でしかなかった。ある電機メーカーでは、成果主義を全然うまく運用できなかったのに、二期連続で赤字を出した経営者が居座って問題になった。社員の士気はずいぶん低下したそうだ。

社会的地位が上に行けば行くほど、成果を求められるのは自然なことだ。国政を預かる政治家など、その最たるものであって、政治家は家柄などよりも実力で選ばれなければならず、成果を厳しく問われねばならない。

ところが、今の政治家は二世、三世ばかりである。昔からそうだったのかというと、決してそんなことはない。

70年代から80年代にかけて相次いで総理大臣になった「三角大福中」こと三木武夫、田中角栄、大平正芳、福田赳夫、中曽根康弘の5名に、世襲政治家など一人もいない。その後も竹下登、宇野宗佑、海部俊樹は世襲ではなく、宮沢喜一は「世襲」ということになっているが、父は政治家の秘書に過ぎなかった。

時代が変わるのは、細川護煕首相からである。細川は、殿様の家系だった。以後の首相のうち、社会党の村山富市を除いて、羽田孜、橋本龍太郎、小渕恵三はいずれも世襲議員であり、森喜朗は世襲ではないことになっているが、祖父と父が町長を務めていた。そして、小泉純一郎と安倍晋三は三世議員、「ポスト安倍」として有力とされる麻生太郎に至っては、ナント「五世議員」である。

その他、やはり「ポストコイズミ」候補といわれた福田康夫、谷垣禎一、それに現自民党幹事長の中川秀直、同政調会長の中川昭一、内閣官房長官の塩崎恭久ら、みーんな世襲議員たちだ。世襲でなければ政治家にあらず、といわんばかりだ。

これは、プロ野球にたとえてみると、長嶋一茂やカツノリのような選手ばかりで打線を組んだチームのようなものである。彼らが、本来パフォーマンス本位でなければならないはずの新自由主義政策を推進していること自体が自己矛盾である。誰が、世襲で職業を継げるような政治の世界に、市場原理が働いているなどと信じられるだろうか。ことに、家柄だけは立派だが能力はまるでない安倍晋三など、「格差固定の象徴」以外のなにものでもあるまい。

社会の中で、一番成果主義が適用されなければならない政界が、一番硬直した格差固定の世界になっているのは、大変大きな問題だろう。

同じ保守思想、場合によってはネオコンというべき思想を持っていても、世襲でない場合、自民党では出世できないので民主党入りするという、半分冗談の話があるが、半分本気にとらざるを得ないところが恐ろしい。

ちょっとでもましな政治を望む場合、やはり自民党政権を倒して政権交代させるところから始めなければならないと思う。

ここまで政治が劣化してしまうと、最初から最善の政権を実現することなど望むべくもないのだから、とりあえず最悪ともいうべき今の安倍政権から倒すところから始めなければならないと思うのである。


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 残念ながら、民主党の小沢代表も、鳩山幹事長も生粋の世襲議員です。
 旧民社党は当然、旧社会党にも世襲議員がいました。

2007.02.26 13:30 URL | 眠り猫 #2eH89A.o [ 編集 ]

眠り猫さん、
小沢氏も鳩山氏も元自民党ですね。
もともとの野党政治家で世襲というと、江田五月氏の印象が強いです。
もっとも、江田氏は優秀な法律家で、学生時代に何をしていたかもわからないコイズミやアベシンゾーと比較しては失礼でしょう(笑)。
江田さんはもと社民連ですが、仰るように、旧社会党には世襲議員が結構いるという印象は、私も持っています。

2007.02.26 23:51 URL | kojitaken #e51DOZcs [ 編集 ]

頑張る人が報われる世の中自体は間違っていないのですが、問題は、私たちの現在の生というものが、幾重もの自然的・社会的偶然性の上に築かれていることだと思います。そして何らかの偶然によって、人として享受すべき自由や機会、財産や自尊を失う可能性があるからこそ、国家による最低限の保障が必要になってくるはずなのです。ところが新自由主義はその保障を明確に放棄するわけです。世の中には、努力や勤勉だけではどうにもならない次元が存在するのにも関わらず、新自由主義者は自然的・社会的偶然性に恵まれていることを当たり前だと思い上がっているのかもしれません。本当は、恵まれているからこそ、恵まれない立場の人を思いやる必要があるのではないでしょうか。そうすることで、いつかは自身に恩恵といった形で返ってくるはずです。

2007.02.27 18:30 URL | vannsonn #- [ 編集 ]

【雇用問題】各政党メール・フォーム

雇用に不満がある人は政党に直接メールした方がよい。
メルアドを知られるのが嫌なら、使い捨てのフリーメールを取得して使用すればよい。
今がチャンス。というより、今が「ラストチャンス」かもしれない。

●民主党 web-site
https://form.dpj.or.jp/contact/
●民主党 ネクスト厚生労働大臣 藤村修
衆議院議員 藤村修
ttp://www.o-fujimura.com/voice.html
●民主党 ネクスト厚生労働副大臣 山井和則
衆議院議員 やまのい和則(かずのり)
ttp://yamanoi.net/
山井和則 <kyoto@yamanoi.net>, 山井和則 <tokyo@yamanoi.net>
●民主党 ネクスト厚生労働副大臣 中村哲治
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2009.08.07 08:21 URL | #gUK8S.K2 [ 編集 ]













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