きまぐれな日々

 俵孝太郎という老ジャーナリストがいる。産経新聞出身の保守派の硬骨漢で、フジテレビのニュース番組のキャスターを長年務めたことでも知られているが、かつて私は、俵さんのタカ派的言論が大嫌いだった。

 少々古い話だが、その俵さんが、右派論壇雑誌である「諸君!」の2003年3月号に、石原慎太郎を痛烈に批判する文章を載せたことがある。これを以下に紹介する。

夜郎自大はもっと有害(俵孝太郎)

 朝日新聞の新年社説と産経新聞の石原慎太郎寄稿のどちらに共感するかと問われれば、朝日に軍配を揚げます。石原氏の弁は大衆の気分に迎合した政治的アジテーションです。

…安っぽいインターナショナリズムも空想的平和主義も有害ですが、短絡的なナショナリズムや夜郎自大はもっと有害です。現状はバブルの対象が土地と株からあらぬ方角に移っただけの話です。バブルとも「不況」騒ぎとも無縁な小生は、今も昔も、小国日本のモットーはビー・イット・エバー・ソー・ハンブルだと思っています。質素に、と訳すより、分相応に、と意訳する方が適切でしょう。

 ときに小生は黄金期の産経で働いていたOBですが、いまの品のない偏向紙面と無能な経営ぶりはとっくに見放しています。念のため。

(「諸君!」 2003年3月号「日本ナショナリズムの血圧を測る」より)

 私はこれを読んで、俵孝太郎というジャーナリストを見直す気になった。

 俵さんには、『我、「朝日新聞」と戦えり』(1988年、光文社)という著書がある。右派としての立場から朝日新聞を批判する代表的な論客である。その俵さんが、石原慎太郎が「産経新聞」の2003年新年の紙面に掲載した「日本よ」というコラムについて、ひどい夜郎自大だ、石原はポピュリスト(大衆に迎合する者)にして右派イデオロギーのアジテーター(煽動者)だ、あれなら朝日新聞の空想的平和主義の方がまだマシだ、と、石原や産経新聞を手厳しく批判したのだ。

 本当の論客とは、「筋の通らない味方」を「筋の通った敵」以上に批判するものだ、いや、朝日新聞なんか全然筋が通っていないから、俵さんにとっては「筋の通らない敵」に当たるだろう。そんな朝日よりも「筋の通らない味方」に当たる石原や産経新聞を厳しく批判する俵さんの態度は、立場を異にする私も見習いたいものだと思う。

 そういえば、俵さんは昨年夏、加藤紘一邸へのテロに対して当時首相だった小泉純一郎や官房長官だった安倍晋三が沈黙していることをテレビで厳しく批判したところ、その翌日ようやく小泉と安倍が重い口を開いてテロを批判したことがあった。言葉に重みのあるジャーナリストとは俵さんのような人をいうのだろう。

 それに対して、小泉や安倍もそうだが、石原慎太郎というのは言葉の重みが全くない政治家だ。

 私は小学生の頃、よく新聞に出てくる「為政者」という言葉の「為」という漢字を「偽」と混同していて、でたらめな政治をする政治家を批判する言葉だろうと勝手に思い込んでいた(笑)。小泉や安倍、石原といった政治家は、「偽政者」というにふさわしい連中だと思う。

 そんな石原を形容するのに、「夜郎自大(やろうじだい)」という以上に適切な言葉はないと思う。

 「夜郎自大」について、「四字熟語net辞典」から引用する。

■夜郎自大 (やろうじだい)

意味: 自分の力量をわきまえず、仲間うちで威張ること。知識も力もないのに尊大にふるまうことのたとえ。

用例: 日本は世界の田舎者であり、世間知らずであって、勝手放題の一人よがりとなったのである。いわゆる中国人が云う夜郎自大の類である(徳富蘇峰「敗戦学校」)

英訳: act with arrogance and recklessness (夜郎自大に振舞う)

類義語: 蜀犬吠日 井蛙之見 唯我独尊 用管窮天

メモ・補足: 【故事】自分の力量もわきまえず尊大に振る舞うこと。「夜郎」は漢の時代中国の西南部にあった小国の名前。「自大」は自分を大きく見せる尊大な態度。漢の使者がこの小国に立ち寄った際、漢の強大さを知らなかった夜郎国の王が自分の国の力を自慢したと言う故事による。

「四字熟語net辞典」より「夜郎自大」の項目

 実は、この「夜郎自大」という表現を石原に対して用いているのは、俵孝太郎さんだけではない。佐野眞一さんが書いた 『てっぺん野郎?本人も知らなかった石原慎太郎』にも、石原を「夜郎自大」だと批判する箇所がある。

 それは、三島由紀夫と石原の確執を描いた部分である。

 この本によると、石原は、一方で三島由紀夫を崇拝するような文章を書いておきながら、三島との交友を回想した『三島由紀夫との日蝕』などの中で、三島の生来の運動神経のなさや、ボディビルで促成栽培した人工的な肉体などを容赦なくカリカチュアして、不必要なほど辛辣に笑いものにしているそうだ。

 この『三島由紀夫との日蝕』の中で、なんと石原は、本当は三島は政治家になりたかったのだが、自分に先を越されてしまったのでずいぶんむくれていた、佐野眞一さんの表現を借りれば、『自分に政界入りの先を越されてしまったから、三島は世をはかなんで自決した、といっているのも同然』の書き方をしているという。

 実際にはどうだったかというと、佐野さんは辻井喬(セゾングループの実質的オーナーだった堤清二のペンネーム)の述懐を紹介している。それによると、佐藤栄作が三島に政界入りを誘ったが、三島には政界入りする気はなく、佐藤の無礼な勧誘の言葉に怒り狂った三島は、『もう、あんた(佐藤)とは会わない』と言ったという。つまり、石原の文章は石原の勝手な妄想に過ぎないのである。

 佐野さんは、以下のように書いている。

 三島の政界進出話に関しては、自分に都合のいい推論だけを重ねた慎太郎の述懐より、辻井氏の語る一連の証言の方が、三島のプライドの高さから見ても、ずっと真実に近いように思われた。
 それにしても、三島の名誉を貶めてまで自分の政界進出を合理化しようとする慎太郎の精神構造は、子供っぽさを超えて不気味である。
 慎太郎の論理の特徴は、自己を正当化するためなら、事実を自分の都合のいいようにねじまげても構わないと考える我田引水と夜郎自大の習性が、随所ににじみでていることである。

(佐野眞一 『てっぺん野郎?本人も知らなかった石原慎太郎』=講談社、2003年=より)

 東京都民は、石原慎太郎に2期8年にわたって都政を任せてしまった。なおもあと4年、この愚劣な男に都政を託そうというのだろうか?
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2007.02.17 08:25 | 石原慎太郎 | トラックバック(-) | コメント(3) | このエントリーを含むはてなブックマーク

 こんにちは。
 ここに書き込むには、初めてでしたっけ?

 先日は幣サイトにTBをありがとうございました。

 先日、件の石原慎太郎について、ウィキペディアで調べてみました。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%B3%E5%8E%9F%E6%85%8E%E5%A4%AA%E9%83%8E

 幣サイト記事でも書きましたが、ここの「活動」という項目をご覧ください。
 

>・統一教会系の勝共連合と密接な繋がりを持つ。
・法華系新宗教の霊友会の全面的支援を受けている。


 このような、非常に香ばしいことが書かれています。
 「まぢですか!?」と、驚きましたが。

 この件について、自分でももうちょっと調べたいと思うのですが……。

 ちなみに、官房長官時代に祝電送った誰かさんだけでなく、山谷えり子さんも統一協会と関わりがある、という話があります。

 どうも、日本のいわゆる「タカ派」と呼ばれる人たちや、「ジェンダー」叩きやっている人には、あの団体の関係者が結構いるような気がするのですが……。

 それにしても、国家や社会の要職に、あのような団体と関わりがある人たちがゴロゴロいて、「この国は大丈夫か?」と、深刻な懸念を感じずにはおられません。
 冗談や誇張でなく、まぢで。

2007.02.17 16:42 URL | komichi #GJBFi8KY [ 編集 ]

おひさしぶりです。
>夜郎自大

こんな言葉があるんですねぇ。
石原慎太郎にぴったりの言葉です。
昔、はじめは、私も石原慎太郎の「ものいう日本人」みたいな幻想にだまされていましたが、三国人発言、ばばあ発言、知ればしるほど短絡的ナショナリズム思想からきているような気がします。

おまけに、小国の国家予算ほどある東京都の税金使い放題。説明責任なし。おまけに、自分の息子達をコネでいろんなところに出演させたり・・・。
これだけ、いいかげんな石原都知事の実態があばかれても、選挙になると石原軍団が応援するのでしょうか?渡さんたちも、そろそろ手をひいたほうが、軍団のイメージアップになると思うんですけど。

2007.02.18 22:22 URL | あずーる #aUGMrhvE [ 編集 ]

こんばんは。

私も石原慎太郎は嫌いです。
都知事になってからババア
三国人と、いうおおよそ
都知事とは思えない発言で
ここまで都民を煙に巻く
都民を愚弄する、都民を馬鹿にしている
都知事は見たことがありません。

都知事選に慎太郎を選んだ
都民も都民でしょう。
本当に公約、マニフェスト
都の行政、都の財政を
真剣に考えているなら
東京都を知らない石原慎太郎に
票など入れないでしょう。

2009.01.08 23:15 URL | 梅吉  #pjnFEkME [ 編集 ]













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