だから、当ブログではそこらへんにはあまり突っ込まず、代わりに、ちょっと斜(はす)に構えた記事を書きたいと思う。
AbEndキャンペーン参加以来、私は新聞や雑誌の記事や書籍を題材にすることが多い。
もちろん、ネット情報からだけでもブログの政治記事は書けるのだが、ネットで流れている政治・経済関係の情報は、その多くが断片的だ。いち早くそれをかき集めるだけでも、ファストフード的なブログ記事は書けるし、特にウヨ系のブログには、そういうとても安易な作りのものが多いように思う。しかし、ネット情報に頼るだけでは、とっつきは良くても、底の浅い記事しか書けないと私は思う。
そういう意味でも、情報の流れを追うだけではなく、ブロガー個人個人が、どれだけ自分の歴史観、社会観を持った上で、量やスピードを追うだけではなく、さまざまな角度からものごとを考える立体感を記事に付与することができるかが、ブロガーには問われているのではないかと思う今日この頃である。
そうは言いながらも、現実にはワンパターンな記事しか書けない当ブログだが、今日は、安倍内閣の支持率低下をめぐる朝日新聞の報道ぶりを俎上にあげてみたい。
安倍内閣発足当初の内閣支持率は、比較的数字の低く出る朝日新聞の調査でも63%あったが、昨年11月調査では53%、12月調査では47%、そして今年1月調査ではついに39%と、4割を割り込んだ。
問題は、支持率低下を分析する同紙社説の主張だ。たとえば、昨年12月12日付の朝日新聞社説は、「改革の敵は党内にある」というタイトルで、安倍の政治姿勢がコイズミ改革から後退していることを批判している。そもそも、12月の内閣支持率調査には、「首相の改革姿勢は維持されていると思いますか、後退していると思いますか」などという設問がある。これは、「コイズミカイカク」を無批判に肯定した、それ自体偏向した設問だと評するしかない。
このひどい社説の終わりの方を引用する。
首相が深刻に考えるべきは、「国民にわかりやすく説明していない」と首相を見る目が80%にも達したことだろう。国民には、首相の顔が見えていないし、声も届いていないのだ。
「与党と対決する小泉時代が異常だった」。首相周辺からはそんな声も聞こえる。党内融和の安倍流改革もあっていい。そう言いたいのかもしれない。
だが、道路財源の結末を見ても、既得権益にしがみつく自民党の体質は変わっていない。世論はさておき、党内みんなで仲良く改革をする。安倍氏らがそんな甘い夢を見ているとしたら、小泉氏に仕えた5年余に何を学んだというのか。
首相はいま、岐路に立っていることを自覚する必要がある。安倍首相の下で、自民党が「古い自民党」に戻ると見る人は40%、戻らないと見る人は37%、どちらの道を選ぶかである。
「古い自民党」へと時計の針を戻そうとする勢力は、まず党内にある。彼らとの対決を恐れては改革はできない。
(「朝日新聞」 2006年12月12日付社説 「改革の敵は党内にある」より)
空恐ろしいまでの「コイズミカイカク」マンセーの社説である。朝日新聞は、外交・国防政策に関しては左派的かも知れないが、経済政策に関しては「極右」と言ってよいほどの新自由主義応援団であるといえる。
それから1か月半後の、今年1月26日付の社説もひどい。「改革への覚悟はあるか」という、経済財政諮問会議を論じた社説である。この社説も、「既得権を奪われかけた勢力」の復活を危惧し、覚悟を持って「カイカク」を実行せよ、と安倍に迫っている。「小泉時代に批判の矢面に立ちながらも諮問会議を切り盛りしたのは、竹中平蔵氏だった」などと、格差社会の元凶・竹中平蔵を英雄視までしている。
安倍は、自民党総裁選を控えた昨年、オフレコの場で、「格差とかアジア外交とかは、もともと朝日新聞がつくり出した争点だからね」「自民党の総裁選だから、聞かれたら答えているけど、格差なんていつの時代でもある。じゃあ朝日新聞の給料はいくらなんですかと言ったら終わっちゃう話なんだよ」などと言ったそうだ。朝日新聞が実は経済政策に関しては安倍自身よりもっと「右」の、筋金入りの新自由主義支持であることを知らずに、朝日さえ批判しておけばウヨに受けると思い込んでいる安倍もみっともないが、安倍の朝日に対する批判自体は当たっているところもある。朝日新聞の給料は、確かに破格の高額らしいし、朝日新聞の記者たちの多くは、本音では新自由主義を支持しているのだろうと私は想像している。
コイズミや竹中の「カイカク」に甘かった新聞としては、朝日の他に毎日新聞がある。政治思想的には中道から左派にかけての読者の多い朝日と毎日が「コイズミカイカク」を支持したことが、コイズミ内閣の支持率を高止まりさせた要因の一つではないかと私は考えている。
しかし、前のエントリで紹介したように、毎日新聞は最近、コイズミ内閣時代に格差が拡大したことを示す記事を掲載するなど、朝日よりは先に「コイズミカイカク」の迷妄からさめるかもしれない。
最近、安倍晋三と朝日新聞は「同じ穴の狢(むじな)」のような気がしてならない。「最近の朝日はおかしい」「朝日から東京新聞(あるいは毎日新聞)に替えた」という声をよく聞く。一方、朝日が右傾化したことを評価する声はほとんど聞かれない。
安倍晋三もそれと同じで、熱心なネオコン勢力の支持者からは、期待に反してはっきりしない態度だと批判を浴びる一方で、現実には教育基本法改定の与党単独での可決に続いて、国民投票法までも与党単独採決を示唆するなど、安倍のフニャフニャした物言いとは裏腹に、やることは数の力を頼んだごり押しなので、安倍は味方の支持を失うだけで、リベラル層は決して安倍支持に回ったりはしない。
昨年12月27日付の朝日新聞での早野透、星浩、根本清樹3編集委員の座談会記事「見えぬ安倍流 どこへ向かう」で星編集委員が指摘するように、安倍は実際には「反小泉」なのだろうと私も思う。何度も書くように、安倍は政治思想的な右派イデオロギーにはご執心だが、経済政策では必ずしもコイズミ?竹中の新自由主義には賛成でないようにも思われる。星さんの表現を借りると、『竹中平蔵氏的な市場原理主義にくみしない気分もある』(2006年12月27日付朝日新聞より)ということになるが、それはあくまで「気分」に過ぎない。何より安倍は小泉政権下で副官房長官、幹事長、幹事長代行、官房長官という中心ポストを歴任した男であり、コイズミや竹中が押し進めた「格差拡大」を招いた経済政策には重大な責任がある。そして、本質的には経済政策にはなんの興味もないから、ホワイトカラー・エグゼンプションが「少子化対策につながる」などとトンチンカンなことを言うし、こともあろうに竹中平蔵が次期日銀総裁になる、などのとんでもない観測記事を書かれたりする。いくら本心では必ずしも新自由主義マンセーではなかろうが、こんな安倍に期待できるところなど何一つない、と私は断言できる。
結局安倍や朝日新聞こそ、既得権にあぐらをかいているのである。右派が安倍を見捨て、リベラルや左派が朝日新聞を見捨てるのは当然だと思う今日この頃である。
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Kojitakenさま
コメント有難うございました。
安倍総理に期待する、はパロディーの積もりと、安倍総理が、党内の先輩に対する怒りと絶望から、解散してくれたら良いのにな~という淡い期待もこめた積もりだったのですが、冗談でも期待するは、許せない言葉だったのでしょうね。勉強させて頂きました。
2007.02.14 09:33 URL | わこ #- [ 編集 ]
>首相が深刻に考えるべきは、「国民にわかりやすく説明していない」と首相を見る目が80%にも達したことだろう。
説明するも何も、自分が何をしようとしているのか、よく分かっちゃいないのかもしれませんね。それにしても朝日のコイズミを持ち上げる論調にはゲンナリします。
2007.02.15 00:47 URL | vannsonn #- [ 編集 ]
朝日新聞と,その英字紙 International Herald Tribune とを読み比べると,その違いが良く分かります。IHT は後半3分の1が朝日の翻訳になってますけど,はっきり言って読むところないですね。前半3分の1の The New York Times の縮刷版 IHT の方がずっとリベラルです。(今は The New York Times と The Japan Times とを交互に講読。販売店はみんな朝日さんなのですが(笑))
日本では既にリベラルな新聞は,The Japann Times だけになってしまったんでは?と思いますね。高校時代から The Asahi Evening News と The Japan Times を 30年ほど講読し続けてきて,日本語の朝日は夕刊の文化面以外読むとこないなと(笑)
2007.02.15 19:47 URL | kaetzchen #HfMzn2gY [ 編集 ]
わこさん、
コメントありがとうございます。
安倍が衆院を解散することはあり得ないでしょうね。
だって、与党が再びあんな圧勝を収められるはずはなくて、今の支持率だったら、下手したら民主党に第一党を奪われることだって考えられますからね。
多くの人が分析しているように、安倍は必ずしも新自由主義支持ではない、というより経済政策には何の関心も持っていないのですが、これまで結果的にコイズミ-竹中の新自由主義政治に大々的に加担してきた責任は免れません。安倍が「日本版ネオコン」と評すべき極右政治も展開してきたことも許せませんし、安倍の政治生命を断ち切るべく、今後もブログ言論を展開しようと思っています。
2007.02.17 05:28 URL | kojitaken #e51DOZcs [ 編集 ]
朝日新聞は、最近、民主党批判も激しくなっていませんか?いやに読者の欄が民主党批判の意見を多く載せます。
社説もそうですね。
最初は、民主党にはっぱをかけて、奮起せよという応援のメッセージかなと思っていたのですが、民主党は柳沢発言を利用したから、愛知知事選に負けた、とか、審議拒否はよくなかった、といった意見を載せています。
あんまり、ことの本質に迫った意見でないので、賛否両論ある意見でも、しらけてしまいます。
良心的な記者もいるそうですが、最終的には上層部の方針でへ~なんていう紙面になってしまうのでしょう。
一生懸命、小さい扱いの記事を探して読んでいます。そういう記事のほうが、大きく扱っている記事よりずーと大切なものが多いです。載せていない記事はもっと大事なのに、、、と気が付いたときは、愕然とします。
2007.02.17 09:19 URL | 非戦 #tRWV4pAU [ 編集 ]
kaetzchenさん、
コメントありがとうございます。
残念ながら、私には英字紙を抵抗なくスラスラと読めるほどの英語力はないのですが(一応、ニューヨーク・タイムズのネット版のアカウントは持っていますが、あまりアクセスしてません)、確かに日本の新聞でリベラルといえる新聞は存在しないかもしれませんね。
ネットで見る限り、東京新聞(中日新聞)は比較的マシなように思えますが、変な記事も多いから、朝日より少しマシという程度のようですし。
2007.02.17 09:39 URL | kojitaken #e51DOZcs [ 編集 ]
vannsonnさん、非戦さん、
コメントありがとうございます。
朝日は、コイズミに迎合したあたりからまともな言論を失い始め、NHK番組改編問題で安倍晋三に屈したあとは、紙面が死んでしまったように見えますね。
エリートには反発力は乏しいものなのかもしれない、最近の朝日新聞の紙面を見ていると、そんな気がします。
上層部と衝突しても主張したい、という気概のある記者は、すでに朝日を去っていったのかもしれません。
2007.02.17 09:43 URL | kojitaken #e51DOZcs [ 編集 ]
kojitaken さん,こんにちは。
>東京新聞(中日新聞)は比較的マシなように思えますが
はははは。えーころかげんな新聞だなも。何せ愛知県民の8割が読んでる新聞だがね。残り1割が朝日でその他が毎日だがや。(読売はダンピングで追放されたはず)
>上層部と衝突しても主張したい、という気概のある記者は、すでに朝日を去っていったのかもしれません
初任給がええだがも。どえりゃあ肝っ玉ないといかんがや。
# なぜか名古屋弁バージョンで決めてしまった……
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