きまぐれな日々

柳沢伯夫厚生労働大臣の「女性は産む機械」発言が波紋を呼び、世論調査では柳沢の辞任を求める声が圧倒的多数だ。

柳沢の首を切ることさえできない安倍晋三首相の任命責任は、むろん厳しく問われるべきだが、今回は、柳沢発言を生み出した背景を考えてみたい。

安倍内閣閣僚の「不規則発言」は、何も柳沢厚労相だけには限らない。久間章生防衛相が、アメリカの対イラク戦争開戦について、「ブッシュ大統領の判断が誤っていた」と批判した。これ自体は、正当な批判だと思うが、これまでタカ派色を露骨に示してきた安倍内閣の閣僚からこのような発言が出るとは驚きで、政府・与党内では問題視されているようだ。

安倍内閣が発足したばかりの昨年には、久間発言とは逆向きのベクトルを持つ「核兵器保有の議論はあってもよい」とする中川昭一政調会長や麻生太郎外相の発言が話題になったこともあった。この時、安倍首相は曖昧な態度に終止した。何度も指摘するように、安倍はかつて官房副長官時代の2002年に「戦術核の使用も違憲ではないと、かつて岸信介元首相が言っている」と講演会で述べたことがある。実は岸が「違憲でない」としたのは戦術核の「保有」までであり、安倍は、岸でさえ言わなかった超絶極右発言をしたのであって、これこそが安倍の本音にほかならないのだが、首相就任後は一転して「非核三原則を守る」と言っている。

この発言が話題になった頃、朝日新聞の星浩編集委員が「政態拝見」という同紙のコラムで、『核論議を考える 哲学なき問題提起の空虚さ』(2006年11月14日付)という記事を書いている。これに興味深い指摘があるので、紹介したい。

  核論議について考えたい。
  北朝鮮の核実験を受けて自民党の中川昭一政調会長が「核兵器保有の議論はあってよい」と火をつけ、麻生太郎外相も「議論は必要」と追随した。
  与野党から批判が相次いで、中川氏が「しばらくは様子見」と発言を控えたため、事態は沈静化しているが、この問題に決着がついたわけではない。この間に聞いた3人の話を中心に論じてみよう。
  まず、高村正彦元外相。自民党内きっての外交通だけあって論理は明解だ。
  「私の知る限り、自民党内で外交や安全保障に影響力のある人の中に核武装論者は1人もいない。ほかの党にも見当たらない。『核武装の是非について議論しよう』といっても、賛成論者がいないので論争にはならない。だから、核論議容認論は意味がない」
  日本の核武装を最も警戒しているのが中国だ。これはいけないと思った中国は、核開発を断念するよう北朝鮮を懸命に説得するはずだ。中川氏らの発言には中国を牽制する狙いが込められている??といった解説が自民党内で聞かれる。これにも、高村氏は冷静に反論する。
  「中国を含めて海外では、日本の核武装に対する警戒心は以前から強く、日本国内とは比べものにならない。いま核武装論をちらつかせたからといって、中国があわてるわけではない。むしろ、核廃絶を求めてきた日本が核武装の可能性に言及することで、国際社会の信用を失うマイナスの方が大きい」
(「朝日新聞」 2006年11月14日付 「政態拝見 『核論議を考える 哲学なき問題提起の空虚さ』」=星浩編集委員執筆=より)

この高村氏の発言に従えば、建前はともかく本音では核武装論者である安倍晋三は、「自民党内で外交や安全保障に影響力のある人」ではないということになるのだが(笑)、まあそれはおいといて、自民党内でも閣外ではまともな発言が聞かれることは救いだろう。

しかし、このコラムを読み返して本当に面白いと思ったのは、上記に続く部分だ。引き続き引用する。

  次に、ある官房長官経験者の見方である。
  「核問題についての安倍首相の考え方は、幅広いというか、曖昧だ。かつては、核保有も憲法上は許されるという発言もした。だから、閣僚や自民党幹部は『このぐらい発言しても構わないだろう』と見透かしているフシがある。安倍氏や塩崎恭久官房長官がきちんと仕切らないと、問題発言は続くだろう」
  確かに、小泉前首相に比べると、安倍氏の政策の立場は、核問題に限らず幅広い。小泉政権下で郵政民営化法案に反対して離党を強いられた無所属議員たちも、安倍政権になって復党が許されようとしている。首相の動向に敏感な与党議員が、首相の「許容範囲」を見計らって発言しても不思議はない。
  だが、首相や側近が閣僚や党幹部の「好き勝手な発言」を放置しておくと政権の基本姿勢が不明確になって求心力を失う。中川氏らの発言を軽視していると、いずれは安倍政権の土台を揺るがすというのだ。
(前掲コラムより)

このコラムで元官房長官氏が予言した通り、安倍内閣の閣僚は「不規則発言」を続出させ、政権は急速に求心力を失ってきて、それらは政権の土台を揺るがすようになった。

この元官房長官氏の慧眼には敬服するが、発言の主はいったい誰なのだろう。私には、福田康夫氏であるように思えてならない。

ところで、安倍が柳沢の首を切れないのは、総裁選で柳沢にお世話になった恩義からだ、などといろいろな説明がされているが、本当のところは安倍が柳沢の発言に同感だから、発言の重大さを理解できなかったせいだろうと私は思っている。

なぜなら、下記「成城トランスカレッジ! ?人文系NEWS & COLUMN?」の記事が示すように、安倍は熱烈にジェンダー平等論を敵視する政治家だからだ。

「成城トランスカレッジ!」より
『特濃ソース。 自民党とつくる会のジェンダーフリーバッシングに関するソース』 (2005年11月1日)

本当は、こういう話題は、盟友のたんぽぽさんがとても詳しいのだが、たんぽぽさんは、貴重な情報を目立たないところに置かれる傾向があるので(笑)、知識の浅い私が紹介することにする。この記事も、以前たんぽぽさんに教えてもらったものだ(読者の方は、是非リンク先をご参照ください)。

「成城トランスカレッジ!」の記事にも書かれているように、官房長官は本来は男女共同参画を担当するのだが、過去に安倍が官房副長官を務めていた第2次森改造内閣、第1次小泉内閣の頃から、男女共同参画特命大臣が置かれていて(この頃は福田康夫氏が担当大臣)、安倍は大キライな男女共同参画の仕事を免除されてきた。そして、「郵政総選挙」での自民党大勝を受けて安倍が官房長官になると、男女共同参画は猪口邦子氏が担当大臣になったのである。

安倍は男系天皇に熱心にこだわっており、この点で女系天皇容認論者だったコイズミとは鋭い対照をなすことはよく知られている。その安倍が、なぜ父方の祖父にして、大政翼賛会の非推薦で当選した平和主義者・安倍寛を完全にないがしろにして、母方の祖父であるA級戦犯・岸信介を崇拝しているのか、私には全く理解できないのだが、それはともかく、柳沢の発言は、すなわち安倍の本音でもあると、私は理解している次第だ。

だから、話を柳沢の辞任くらいで終わらせてはならないだろう。野党には、これを機に一気に安倍内閣を倒すくらいの気迫が欲しいと思う。


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ご紹介、ありがとうございます。

>貴重な情報を目立たないところに置かれる傾向があるので(笑)

こうおっしゃられると、苦笑しちゃいますね。

じつは、わたし、むかし掲示板で、相手の興味におかまいなしに、
自分のしゃべりたいことを、一方的にやって、
すごい嫌がられたことが、何度もありまして...
それで、自分の関心ごとを、自分から切り出すことは、
あまりしないようにしているのでした。

実際、どの文章が、だれにとって、どのような観点から、
興味を惹くかなんて、ぜんぜん見当がつかないですからね。
(ご紹介の文章のように、思いがけず注目されるのは、
きわめてかぎられていますし...)


>官房長官は本来は男女共同参画を担当するのだが、
>安倍は大キライな男女共同参画の仕事を免除されてきた。

ああ、そうだったんだ。
(これは、寡聞にしてはじめて知りました。)

2007.02.04 17:30 URL | たんぽぽ #ZiqE0vWU [ 編集 ]













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