きまぐれな日々

メロディさんのブログ「あんち・アンチエイジング・メロディ」に紹介されているように、私は最近いろんな方のブログにお邪魔しては、コメントを残すことが多い。半ばキーボードを打つ指が勝手に動く状態で、内心の衝動に突き動かされての文章なので、一部の方には不快感を与える表現も含まれているかとは思うが、批判の意図はあっても、誹謗中傷の意図は全くない。政権の圧政に反対する仲間だと思えばこそ、遠慮のない批判をしているという面もあるので、どうかご容赦願いたいと思う。

今回は、安倍内閣についての私なりの現状分析を行いたい。

安倍内閣は、いうまでもなく昔でいう岸派?福田派の流れを汲む内閣である。この派閥は、1978年に福田赳夫が自民党総裁選で大平正芳に敗れて以来、22年間政権から遠ざかっていた。これは、日本の政治にとって非常に好ましいことだったと私は考えているが(笑)、不幸なことに2000年に森喜朗が首相になり、21世紀最初の2001年には、小泉純一郎という史上最低の総理大臣が就任し、日本をメチャクチャにしてしまった。そして、それにトドメを刺そうとしているのがアベシンゾーだ、なんていうときっこさんみたいな物言いになってしまうが、実際その通りだと思う。

ここで、岸信介とはどういう人物であったかを簡単に述べておく。

戦後の保守政治家の大物というと、吉田茂と鳩山一郎が挙げられる。吉田茂は、「親米・軽軍備」の立場で、日本国憲法を改正する必要はない代わり、軍事力はアメリカに依存しようという立場だ。いわゆる「保守本流」は、この吉田の流れを汲んでいる。一方、鳩山一郎は、「自主外交・憲法改正」の立場で、アメリカ一辺倒の外交を改め、ソ連や中国と国交を結ぼうとした(実際、鳩山内閣時代の1956年に日ソの国交が回復した)。その代わり、憲法九条を改め、自前の軍隊を持とうという立場だ。

日本の「ご主人様」アメリカは、実はどちらの立場も好まなかった。アメリカは、日本に軍事力を持ってもらって、軍事的な同盟国にしたい一方で、アメリカにとって敵方の陣営に属するソ連や中国などの共産主義国と日本がつき合うのは好まなかった。

そこに、A級戦犯容疑で逮捕されながらなぜか起訴されなかった岸が忽然と現れたのである。岸は、外交政策では親米で、憲法九条改正指向という、アメリカにとって吉田と鳩山の都合の良いところをかけ合わせたような、理想的なパートナー(というよりイヌ)だった。アメリカは、岸を総理大臣にするための工作をずいぶん行ったそうだ。このあたりは、今、宮崎学さんが岸信介について書いた本の論評をまとめようとしているところで、上記の記述も、実はかなりの部分が宮崎さんの本の受け売りなのだが、本のレビューについては、近日中にブログに公開したいと思う。

上記のような成り立ちだから、岸派、福田派は自民党の中でも「タカ派」であり、何かというと軍事力を強化し、外交政策ではアメリカの言いなりになる傾向が強かった。しかし、戦後日本の歴史においては、実はこの派閥が政権を握っていた時代は短かかった。岸信介も福田赳夫も任期は短く、最後は不本意な形で政権を手放している。なお、岸の弟・佐藤栄作は岸派ではなく吉田派に属していた(そのくせ、政権を自派閥の田中角栄にではなく岸派の福田赳夫に譲ろうとしたあたりは、岸の弟らしいといえるかもしれない)。

基本的には、吉田茂の流れが戦後の保守政治を支配してきた。もっとも正統的な吉田の流れを汲むのが、池田勇人、大平正芳、宮沢喜一らを輩出した「宏池会」であり、自民党内でもハト派に属する。加藤紘一もこの流れに属する。これに対し、やや傍流で右とも融和的なのが田中派で、これが派閥を乗っ取った竹下登の経世会につながり、長く実権を握った。いずれにしても彼らは基本的に経済政策を重視する派閥であって、結果的に戦後日本を繁栄に導いたのは彼らであったと評価すべきだと思う。

彼ら、特に宏池会の経済政策は、ケインズ主義的であるとよく指摘される。これに対し、70年代末からハイエクに代表される新自由主義経済理論を信奉する英サッチャー、米レーガン政権が現れた。日本では、1982年から87年まで政権を担った中曽根康弘が彼らに対応するが、中曽根は岸の流れではなく鳩山一郎の流れを汲む政治家だ。中曽根はタカ派で、レーガンとの間で「ロン・ヤス」と呼び合う親密な関係を築く一方、1985年に靖国神社に参拝して中国・韓国に批判を浴びるなどした。また、中曽根は統一協会と露骨に結びついており、なんと、桜田淳子や山崎浩子が参加したことで話題となった、1992年の合同結婚式に「元総理」の肩書き付きで祝辞を送ったという、安倍晋三の先駆けみたいなこともやったことがある(笑)。

こんなトンデモ総理だった中曽根だが、それでも靖国参拝が批判を浴びると、以後参拝を取りやめるなど、したたかなバランス感覚も見せた。このあたりが売国派閥の岸?福田の系列と違う中曽根らしさだろう。そういえば、この男は「風見鶏」という異名をとっていた。そして、「三角大福中」と、添え物のように言われていながら(そもそもそれ以前は「三角大福」と言われており、中曽根は無視されていた)、結果的に三角大福の誰よりも長く政権を担ったのである。その経済政策は、民活路線などで新自由主義への傾きを見せたものの、今にして思えばレーガンやサッチャーのような徹底したものではなかったのではなかろうか。

日本の政治が本当に「売国」へと舵を切ったのは、2000年の森内閣以降だろう。それでも、経済政策にあまり関心のなかった森は、旧保守の経済政策を継承していた。日本で初の本格的な新自由主義政権、それが小泉純一郎内閣だった。コイズミが政権を握っていた5年間で、いかに日本がメチャクチャな国になってしまったかは、多くの人が実感していることだろう。

実は、早い時期に新自由主義を信奉していた人ほど、のちに新自由主義批判側に回る傾向がある。日本では小沢一郎がその例にあたる。新自由主義は、社会の格差を広げ、国を荒廃させてしまう悪魔の経済政策なのだ。英米の新自由主義経済政策の弊害が表面化し始めていた2001年に、コイズミなんかが政権を握ったのは、日本国民にとって実に不幸なことだった。

ひとたび社会が新自由主義に侵されてしまうと、資本の論理が暴走を始める。1月9日のエントリに寄せていただいた三輪耀山さんのコメントがいみじくも指摘するように、社会が「資本家独裁」へと向かっていくのである。日本でこれを招いたのはコイズミであり、実質的には竹中平蔵である。私は、後年の歴史書は、彼らを東条英機に匹敵する「戦犯」として裁くことになるだろうと予想している。しかし、そんなコイズミを、日本人の多くは愚かにも熱狂的に支持したのである。

私は、安倍晋三が政権を取ったら、こういったコイズミの売国的新自由主義経済政策に、国家主義的政治思想を加えた史上最低の政権になるであろうと予想し、安倍内閣成立を阻止するための「カナダde日本語」の呼びかけに、真っ先に応じた

残念ながら安倍内閣は成立してしまったものの、政権発足後3か月で安倍内閣の支持率は急落し、週刊誌では早くも「ポスト安倍」が取り沙汰されるようになった(笑)。この原因を分析してみたい。

マスコミは、「郵政造反組」の復党問題が支持率を下げたなどと馬鹿なことを言っているが、与党の内輪もめが国民の関心事であるはずがない。私は、安倍政権の経済政策が露骨に国民イジメ、私に言わせれば「国民皆殺し政策」になっていることが、支持率急落の最大の原因だと考えている。

安倍は、国家主義的な極右思想には興味があるようだが、経済政策にはほとんど関心がなさそうだ。でも、コイズミ時代からの慣性で、どんどん国民イジメの政策が導入されていく。安倍内閣は、右派の政治思想にしか興味を持たない人が多いから、財界の言いなりに次々とめちゃくちゃな政策が導入される。昨今話題になっている「ホワイトカラー・エグゼンプション」など、その最たるものだ。それに対し、ボンボンの安倍は、国民感情から乖離したノーテンキな発言をする。国民の心がさらに離れる。

こういった具合に、安倍内閣の支持率は落ちていったのだと思う。

要因はもう一つある。コイズミの場合、都合が悪くなると、党内の「抵抗勢力」や、中国・韓国を仮想敵に仕立てて支持率を浮揚させるという卑怯な手を使った。実はコイズミには政治思想など何一つないにもかかわらず、である。
しかし、コイズミよりは常識のありそうな安倍は、せっかく極右思想を持っていながら(笑)、意外と現実指向で中国や韓国との関係改善を図るなど、ネットウヨの期待を裏切る行動を取った。
よく指摘されることだが、ネットウヨには社会弱者が圧倒的に多く、彼らは自分たちをもっとも苦しめるコイズミの政策を支持するように仕向けられてきた。だが、安倍はコイズミほど露骨な人気取りができない。実はコイズミよりはるかに極右的なのに、中国・韓国を挑発するようなパフォーマンスは、コイズミほどには見せない。しかも、気づいてみたら新自由主義的な経済施策のせいで、生活はますます苦しくなってくる。こんなことでは安倍政権を支持する気になどならない。

だいたい上記のようなメカニズムで、特に若年層で安倍内閣は大幅に支持率を落としたのだと思う。あとは、もういくつかスキャンダルが大きくなったら、安倍は本当に持たないかも知れない。

そうなったら、「AbEnd」が現実のものとなり、万々歳といきたいところなのだが、万一コイズミなんかが復帰したら、喜びは一瞬にして吹っ飛んでしまうだろう。

昨日のエントリで、栗本慎一郎さんがコイズミ復帰の可能性を指摘し、「そのときこそ日本が本当に沈没することになるだろう」との不気味な予言をしていることを紹介したが、万一コイズミが復帰したら本当にそうなると私も思う。

今、日本の国民は安倍内閣によって、「言論の自由への脅威」「戦争の脅威」「国民皆殺しにつながる経済政策の脅威」の三つの脅威にさらされている、とは私が繰り返して主張していることだが、私はその中でも三番目に挙げた「国民皆殺し経済政策の脅威」が、国民生活にとってもっとも切実な脅威であると思う。

また、戦争の脅威にどう対応するかという問題では、野党の足並みは必ずしも揃わないが、民主党が「ホワイトカラー・エグゼンプション」への反対をはっきり表明していることが示すように、安倍政権の経済政策への反対については、野党の足並みは比較的揃いやすいはずだ。そして、見逃してはならないのは、この経済政策の問題については、森・コイズミ・安倍らの一派によって圧殺されているとはいえ、保守勢力の中にも新自由主義に反対する良心的な人たちが結構大勢いるであろうことだ。非人間的な新自由主義を打ち破るためには、彼らとの連携を模索する必要がある。声を大にしてそう主張したい今日この頃なのである。


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kojitakenさん、こんばんは。お玉さんのところでもかなり突っ込んでましたね。でも、私も、改憲派は一朝一夕で今になったのではないとこのごろつくづく分かります。用意周到に一つ一つ積み重ねてきた。観念ではないんですね。本当に彼らは民主主義が嫌いです。憎悪している。ホント、小泉に投票した人はこの責任とって欲しい。

2007.01.13 00:58 URL | メロディ #- [ 編集 ]

お邪魔します。
小泉政権の評価は政治的にはその通りだと思いますが、経済指導者が不況下でその牙を明らかにしたと言う面もあると思います。

文中にある
「ネットウヨには社会弱者が圧倒的に多く、彼らは自分たちをもっとも苦しめるコイズミの政策を支持するように仕向けられてきた。」
がどのような仕掛けになっているのか考えていますが良く分かりません。「自らの閉塞感をぶち壊すのにウヨ思考が効果がある」ような気はしますが??
ご見解を教えてください。

2007.01.13 01:26 URL | 飯大蔵 #- [ 編集 ]

立派な説得力ある政治評論に敬服します。
 しかし最近の政党(派閥もふくめ)は政治信条や理念で動いていないと思います。党利党略、打算第一ですね。選挙ではより多くのハートをどれだけつかめるか、どの層に訴えれば効果的かということでしょう。
 民主党は年金問題だそうですが、素人には難しくてアピールしませんね。

2007.01.13 11:11 URL | ましま #- [ 編集 ]

いつも勉強させて頂いています。
小泉純一郎が総理になる前しきりに郵政民営化を主張していたのも、アメリカの手代になりますよと言うアピールだったのですね。
政治の事も経済の事も何も分からないで、只ムードで小泉を支持していた自分を恥ずかしく思っています。(気がついた時は、もう手遅れ)
でも何とか踏み止まりたいものです。

2007.01.13 16:42 URL | わこ #- [ 編集 ]

ご訪問有難うございました。
先にも書きましたが、いつも色んな事を教えていただいて感謝しています。
それから名前の件、失礼しました。
早速訂正させて頂きました。

2007.01.13 22:03 URL | わこ #- [ 編集 ]

>よく指摘されることだが、ネットウヨには社会弱者が圧倒的に多く、彼らは自分たちをもっとも苦しめるコイズミの政策を支持するように仕向けられてきた。

これはあたっていてると思います。
何の苦労もしていない、社会の底辺の悲惨さも知らないから、だから威勢の良い言葉を噴出できると言う事でしょう。

>だが、安倍はコイズミほど露骨な人気取りができない。
>実はコイズミよりはるかに極右的なのに、中国・韓国を挑発するようなパフォーマンスは、コイズミほどには見せない。

これは誤解だと思います。
安倍晋三は基本的に右翼的ではないのです。
彼は「拉致問題解決のみ」を売りにして、北朝鮮を敵とするパフォーマンスで人気を取ろうとする戦術だったから、その振り付けを継続しているだけです。

彼は基本的には「何もわかっていないのが武器」なのです。
良心がそもそもない小泉の後継として、小泉の政策を完成させるタメの道具でしかありません。

>しかも、気づいてみたら新自由主義的な経済施策のせいで、生活はますます苦しくなってくる。
>こんなことでは安倍政権を支持する気になどならない。

いえ、それが支持するのです。
「安倍は愛国者だ、だから俺達を守ってくれる」と思い込んでいます。
情緒先行のB層とはそう言うものです。

自分の思い込みを他人が適えてくれると思い込んでいるのです。
お人よしのポリアンナでももうちょっと現実的ですね。

ともかく、野党が足並みを揃えられる課題がWCEであるとご理解願えただけでも、多少無作法でも声を出した甲斐がありました。

この件で明記すべきは、WCEはグローバリズムの酷薄さのほんの一端でしかない事、その後の三角合併では恐るべき惨禍が日本中に降りかかってくるだろう事。

ホリエモンの追求の最中に、リーマンブラザースの顧問として「外資系企業に天下っていたのは現厚生労働大臣の柳沢その人でした」が、その事を皆様覚えてらっしゃるでしょうか?

もう外資系といわず、経団連といわず、日本の政治は政商に牛耳られているのですよ。
柳沢が日銀総裁だった時に、日本国は35兆円もの金を「出来レースの為替操作で外資に渡している」のです。

そんな犯罪的な行為を行ったものが、今度は国民の負担で企業負担を減らし、国民の生活をどん底に落とそうとしているのです。

ここで徹底的に政商どもの横暴を暴き、外国資本への日本売却を防がねばなりません。
日本が日本人のものであるために。

ちなみに、ネットウヨといえば、先ほど一人蹴飛ばして置きました。
http://klingon.blog87.fc2.com/blog-entry-41.html

アニメのテンプレートで忍者の格好をして、拙者と名乗りつつ、左翼を心底から憎悪する、痛い輩です。

連中と連中の支持者のこれまた痛い輩になんと言われようと、どう思われようと構わないです。
貴方がたと同調して左翼と言われるなら、それも仕方ありません。
ネットウヨの反対のアンチネットウヨと言う事ならば、それは名誉な事でしょう。

でも、出来る事ならC層と呼んで貰いたいと言うのが、私のささやかな見栄であり、願いなのですがねw

2007.01.14 01:28 URL | 三輪耀山 #X.Av9vec [ 編集 ]

>メロディさんのブログ「あんち・アンチエイジング・メロディ」に
>紹介されているように、私は最近いろんな方のブログに
>お邪魔しては、コメントを残すことが多い。

わたしの知らないあいだに、こんな議論をなさっていたのね。

いくつものウェブログに、またがっているお話のようだし、
全体がわからないので、具体的なコメントは控えるけれど...
(↓リンク先で引用されている、kojitakenさまのコメントが、
どこのブログの、どのエントリなのか、ぜんぜんわからなかった...(泣))
http://blog.goo.ne.jp/ibis083/e/b6d37d82680724cc18f622ff629db8cb

そう言えば、わたしのウェブログにも、
2回ほど、おなじ主旨のコメントをくださったけど、
そのときは、発言のコンテキストがわからなくて、
わたしは、的外れなレスをしていたかもしれないです。
(なんだか、たんぽぽとは、お話が噛み合わないなと、
思ってしまっていたら、その場合は、ごめんね...)

2007.01.19 23:34 URL | たんぽぽ #ZiqE0vWU [ 編集 ]













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