「年末年始に読んだ本」の感想文シリーズを連載すると宣言した舌の根も乾かないうちにイイワケするのもなんだが、感想文を毎日公開するのは結構大変なので、感想文と感想文の間に読んだ本に関連するエッセイをはさむことにした。今回はその第一回。タイトルの「インテルメッツォ」はイタリア語で「間奏曲」を意味する。
昨日のエントリで取り上げた加藤紘一は、昨年コイズミの靖国参拝を批判して実家がテロに遭って以来、いやそれ以前から靖国神社へのA級戦犯合祀に反対する論客として、当ブログでしばしば取り上げてきた人物である。
テロの遠因になったといわれている「文藝春秋」2006年8月号の上坂冬子との対談についても、昨年7月18日のエントリ「手ごたえあり!」で軽く取り上げたあと、同8月8日のエントリ「国民が戦争を知っていた頃」でも、この対談における加藤の発言を紹介した。
その時にも書いたことだが、加藤紘一は、決して清廉潔白な人物ではない。事務所代表の脱税事件で自民党離党に追い込まれたこともあるし、この時に責任を秘書に押しつける加藤の態度に失望した人も多いだろう。この他にも、かんばしくない噂がいろいろ聞かれる人物である。しかし、その主張には傾聴すべき点が多い。政治思想的にハト派であるだけでなく、経済思想的にもコイズミやアベシンゾーが推進する新自由主義とは一線を画した立場に立つ。
安倍にストップをかけるにあたって、野党共闘ももちろん大事だろうが、こういう自民党内にあって平和主義や格差拡大反対の立場に立つ加藤のような政治家との連携を模索する必要もあろうかと思う。民主党内に多くいる「松下政経塾」出身のタカ派議員たちなんかより、加藤紘一の方がどんなに信頼できることか。
私がもっとも信頼するジャーナリストである魚住昭さんは、加藤紘一に代表される「ダーティーなハト派」を高く評価する人の一人だ。
以前のエントリでも取り上げた、「サイゾー」2005年11月号での岡留安則さんとの対談で、魚住さんが「ダーティーなハト派」擁護論を展開しているので、ここに紹介する。
忌憚なくいわせてもらうと、コイズミや安倍晋三らを「クリーンなタカ」などと評すること自体褒めすぎであって、暴力団との癒着の噂が耐えないコイズミや安倍など「ダーティーなタカ」(安倍に至っては「真っ黒な極右」)だと私は思うが、魚住さんの指摘は傾聴に値する。田中角栄や鈴木宗男に代表される「金権政治家」に対する従来の評価は「過小評価」だったと私も思う。旧田中派よりさらに穏健な思想を持つ宏池会は、さらに評価されるべきだろう。私が香川県に住んでいるから言うわけではないが、故大平正芳氏には、戦後の自民党政治家の最良の部分を見ることができると思う(大平氏は、香川県三豊郡和田村=現在の観音寺市=出身)。
そして、政治家になる時、自ら選んで大平氏の門を叩き、大平氏が首相に就任した1978年から、大平氏が現役首相のまま世を去った1980年まで官房副長官を務めたのが加藤紘一なのである。
加藤には、今後の政局でキーマンとなる働きを期待したいものだ。
PS
社民党や共産党の支持者は、魚住さんの指摘に反発されることと思うが、私の感覚は魚住さんに近く、社民党や共産党は自分たちの小さな枠組にこだわり過ぎていて、実際には護憲に対して大した貢献をしていないのではないかと思う。
さらに強く言いたいのは、右へ左へとふらふらと振れる民主党に対してであって、民主党の政治家の多くは、波に流されやすく自分の信念のない人たちではないかという、強い疑いを持っている。曲がりなりにも護憲の信念を持っている社民党や共産党の政治家に対してより、さらに強い疑念を民主党の政治家たちに対して感じる。
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昨日のエントリで取り上げた加藤紘一は、昨年コイズミの靖国参拝を批判して実家がテロに遭って以来、いやそれ以前から靖国神社へのA級戦犯合祀に反対する論客として、当ブログでしばしば取り上げてきた人物である。
テロの遠因になったといわれている「文藝春秋」2006年8月号の上坂冬子との対談についても、昨年7月18日のエントリ「手ごたえあり!」で軽く取り上げたあと、同8月8日のエントリ「国民が戦争を知っていた頃」でも、この対談における加藤の発言を紹介した。
その時にも書いたことだが、加藤紘一は、決して清廉潔白な人物ではない。事務所代表の脱税事件で自民党離党に追い込まれたこともあるし、この時に責任を秘書に押しつける加藤の態度に失望した人も多いだろう。この他にも、かんばしくない噂がいろいろ聞かれる人物である。しかし、その主張には傾聴すべき点が多い。政治思想的にハト派であるだけでなく、経済思想的にもコイズミやアベシンゾーが推進する新自由主義とは一線を画した立場に立つ。
安倍にストップをかけるにあたって、野党共闘ももちろん大事だろうが、こういう自民党内にあって平和主義や格差拡大反対の立場に立つ加藤のような政治家との連携を模索する必要もあろうかと思う。民主党内に多くいる「松下政経塾」出身のタカ派議員たちなんかより、加藤紘一の方がどんなに信頼できることか。
私がもっとも信頼するジャーナリストである魚住昭さんは、加藤紘一に代表される「ダーティーなハト派」を高く評価する人の一人だ。
以前のエントリでも取り上げた、「サイゾー」2005年11月号での岡留安則さんとの対談で、魚住さんが「ダーティーなハト派」擁護論を展開しているので、ここに紹介する。
岡留 ただ、やっぱり、僕は民主的な市民政治の最終的な行きどころは、"クリーンなハト"じゃないと困るという立場なんです。もちろん、今の"クリーンなタカ"(kojitaken注:コイズミやアベシンゾーらを指す)が跋扈する事態のままでは困るし、確かに、田中角栄にしても鈴木宗男にしても、彼らの良い面はあまり語られてこなかったと思います。でも、それは、目に見える箱物をいっぱいつくっていたから、語るまでもなかったとも言えるし、市民政治論としては語りにくいことも確かですね。
魚住 いや、でもね、"クリーンなハト"って、なんの実効性もないと思うんですよ。というのも、取材の過程でいろんな本を読んで気づいたのですが、護憲勢力というと、杜民や共産といったイメージがあるけれど、実際に憲法9条を守ってきたのは、実は、自民党の中の"汚れたハトたち"なんですよ。さまざまな政治局面で、「この一線を超えてはいかん」とブレーキをかけてきたのは、"汚れたハト"と宏池会なんです。金権政治家と言われた、金丸(信)さんや竹下(登)さんもそうですが、地元と密着したところから成り上がってきた辺境の政治家たちが、相当な護憲勢力になっていた。ちなみに、海外では、富裕階級のエリートたちが国を統治するのが普通ですが、日本の場合、辺境から出てきた、どちらかと言えばエスタブリッシュメントではない政治家が中央の政治家を押さえて、支配してきているんですよね。だから、よく「日本は、経済は一流、政治は二流」と言われてきましたが、僕は、一流とまでは旨えなくても、一・五流くらいだとは言えるじゃないかと思うんです。
岡留 うーん、褒めすぎ(笑)。
魚住 褒めすぎかな(笑)。でも、そもそも政治って、利害の分配でしょう? と同時に、権力の行使なんですよ。とすると、汚れないわけがない。それは必然だし、本質的に汚れるわけですよね。だから、その汚れたものに対して、クリーンさを過剰に求めるメディアの在り方って、僕はやっぱり間違いだったなあ、と思うんです。それは岡留さんも、僕もそうです。それによって、日本の政治のバランスを崩してしまい、今や、"クリーンなタカ"が幅を利かせてしまっている。
(「サイゾー」 2005年11月号掲載 岡留安則 vs 魚住昭 『"クリーンなタカ派" 安倍晋三をめぐる「NHK番組改編事件」の闇』より)
忌憚なくいわせてもらうと、コイズミや安倍晋三らを「クリーンなタカ」などと評すること自体褒めすぎであって、暴力団との癒着の噂が耐えないコイズミや安倍など「ダーティーなタカ」(安倍に至っては「真っ黒な極右」)だと私は思うが、魚住さんの指摘は傾聴に値する。田中角栄や鈴木宗男に代表される「金権政治家」に対する従来の評価は「過小評価」だったと私も思う。旧田中派よりさらに穏健な思想を持つ宏池会は、さらに評価されるべきだろう。私が香川県に住んでいるから言うわけではないが、故大平正芳氏には、戦後の自民党政治家の最良の部分を見ることができると思う(大平氏は、香川県三豊郡和田村=現在の観音寺市=出身)。
そして、政治家になる時、自ら選んで大平氏の門を叩き、大平氏が首相に就任した1978年から、大平氏が現役首相のまま世を去った1980年まで官房副長官を務めたのが加藤紘一なのである。
加藤には、今後の政局でキーマンとなる働きを期待したいものだ。
PS
社民党や共産党の支持者は、魚住さんの指摘に反発されることと思うが、私の感覚は魚住さんに近く、社民党や共産党は自分たちの小さな枠組にこだわり過ぎていて、実際には護憲に対して大した貢献をしていないのではないかと思う。
さらに強く言いたいのは、右へ左へとふらふらと振れる民主党に対してであって、民主党の政治家の多くは、波に流されやすく自分の信念のない人たちではないかという、強い疑いを持っている。曲がりなりにも護憲の信念を持っている社民党や共産党の政治家に対してより、さらに強い疑念を民主党の政治家たちに対して感じる。
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2017.07.04 03:57 | # [ 編集 ]
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[憲法]上品なタカより下品なハトの方がまし
いま日本はタカ派ばかり 佐高信の政経外科 15 ↑私は「清潔なタカ」より「汚れたハト」の方がまだましだと思うほどだが、今の日本は最悪の「汚れたタカ」ばかりじゃないか
2013.03.17 13:59 | OLDIES 三丁目のブログ