管理人の財布の都合もあるので(笑)、講談社発行の一般誌をすべて買い揃えるわけにはいかないが、月刊「現代」は、当面毎月買おうと思っている。
その「現代」の2007年1月号が発売されたので、買い求めた。
ここ数ヶ月連続で組まれていた安倍晋三批判の特集が掲載されていないのは残念だったが、魚住昭、鈴木邦男、溝口敦の三氏による「徹底討論・メディアは国家と戦っているか」(副題・「右傾化と言論の役割を問う」)と、自民党の加藤紘一代議士による「反言論テロのシンボルとしての覚悟」の2本は、期待にたがわず良い記事だった。
この中で、魚住さんと加藤代議士が、図らずも同じ指摘をしていたので、今日はこれを取り上げたい。
まず、魚住さんは座談会で以下のように発言されている。
小泉首相の靖国神社参拝に疑問を呈していた加藤紘一衆議院議員の自宅兼事務所が放火された右翼による言論テロに対して、メディアの反応はたいへん鈍いものでした。また、この事件に対してなかなかメッセージを出さなかった政府に厳しく詰め寄ろうともしなかった。五輪誘致問題では、石原慎太郎東京都知事が、都のライバルだった福岡市の応援演説をおこなった姜尚中東大教授に向かって、「あやしげな外国人」と言い放ったけど、この発言を徹底批判しようともしなかった。
いまメディアは権力を激しく追及しようという気概を失っているのではないか。
(中略)私がさらに危惧しているのは、政治の右傾化にともなって、メディア全体、あるいは記者たち自身の右傾化が進んでいるのではないかという点です。
たとえば、加藤さん(注:加藤紘一代議士)への言論テロに対するメディアの反応の鈍さには、報じている記者たち自身に、どこかで右翼的な考え方を許容する素地ができているのではないかとすら感じた。政府がメッセージを出さないことに対して追及しないのは、逆に彼らがある種のメッセージを発していたのと同じことのように受け止められたんです。
(月刊「現代」 2007年1月号掲載「徹底討論・メディアは国家と戦っているか」における魚住昭氏の発言)
同じ号の「現代」に載った別記事で、加藤紘一代議士は次のように述べている。
放火事件当時の小泉首相、安倍官房長官のテロ行為に対する反応が遅かったのではないかとよく問われることがあります。実際、私にもなぜだったのかはわからない。けれどテロに対して、政府が一定の「沈黙」を置いたことである種の負のメッセージが広がったようにも思います。
あの事件以降、テレビや新聞などの言論の場で積極的な発言をする人が少なくなったような気がします。実は、いま政治家だけではなく、評論家やジャーナリストのもとに脅迫の手紙が届くようになっているそうです。
(月刊「現代」 2007年1月号掲載 加藤紘一「反言論テロのシンボルとしての覚悟」より)
ジャーナリストの魚住さんや、ましてや政治家の加藤さんが雑誌の誌面では言いづらいだろうことをはっきりと書くと、「小泉純一郎や安倍晋三は、実質的に言論テロを容認しており、マスコミはそれを追認している」ということだ。
それに対して、小泉や安倍の政策に普段反対しながら、反テロの声を大きくあげないブロガーや国民もまた、テロを追認しているも同然だと私は考える。
それにしても、テロと戦うというのは、文章で書けばひとことだが、実際に行うのは大変なことだ。自らや肉親の生命を危険にさらさねばならないからだ。
以前にもブログで記事にしたことがあるが、「現代」1月号の座談会にも出席している溝口敦氏は、かつて「週刊現代」の取材に、次のように答えたことがある。
私のような職業には(暴力テロに対する)『被害者の責任』というものがあると考えていて、たとえ自分や肉親が暴力にあっても、降参してはならないんです。降参すれば、相手に対して暴力の効果を認めたことになります。
(中略)
加藤氏が今回の暴挙に対して降参しなかったのも『被害者の責任』を果たしてのことだと思いますが、残念なのは加藤氏をバックアップする言論が少ないことです。
靖国参拝をめぐって意見の相違があろうと、このような暴力には政治家はもっと怒りの声を挙げるべきです。
それがないのは、政治家が自己保身に走っているといわれても仕方がない。このままでは、日本はとんでもない暴力社会になるかもしれません。
(「週刊現代」 2006年9月9日号『「言論封殺テロ」を徹底追及しないメディアの大罪』より)
溝口氏は、自身が1990年に暴力団に襲われたことがあるばかりか、20今年1月には、「週刊現代」に連載していた記事が原因で、長男が山口組系の暴力団に路上で刺されている。それでも、言論テロには屈服しないという不屈の意志を貫いておられる。
加藤紘一代議士も、「現代」1月号で次のように述べている。
あの事件があって、私は図らずも、反言論テロのシンボルのようになりました。世の中で3本指に入るぐらいの言論を守る責任が与えられた。ここで私が口をつぐんでしまったら、日本中が静かにならざるを得なくなる。だから、これからも、発言はいままでと同じトーンで同じことを話し続けます。ここで姿勢を変えたりすれば、最後の砦がなくなってしまう。重大な任務を負ったと感じています。
(月刊「現代」 2007年1月号掲載 加藤紘一「反言論テロのシンボルとしての覚悟」より)
あっぱれな覚悟だと思う。
溝口氏や加藤氏は、命をかけて言論活動をしていると思う。彼らに比較すれば、匿名のブログで安倍の言論封殺に反対する声をあげることのリスクなど微々たるものだろう。
何回も何回も書くように、多くの国民、多くのブログがしつこくしつこく声をあげ続ける方が、下手に弾圧を恐れて沈黙するより、よっぽど権力にとってダメージとなるのだ。
安倍政権の言論封殺に対抗する声をあげ続けることをためらってはならないと思う。
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そもそも加藤紘一は、政党政治の原則を無視した、無残な結末に終わった頓珍漢な反乱の首謀者であって、ある意味既に「終わった」政治家でしょう(本人はちっとも気付いてない雰囲気もしますが)。
放火した右翼男も切腹して失敗するような、何と言うか「恐ろしい右翼」というより「ピンボケで哀れな初老の男」という印象を持ちます。火達磨になった車で首相官邸に突っ込んで大火傷した人とか、首相官邸前の車中で切腹した女性と同じように、ちょっと「イッちゃってる人」という感じ。
溝口さんのことはよく分かりませんが、こと加藤紘一宅放火事件に限っては「終わってる(しかし本人だけそれに気付いてない)政治家」 VS 「いい年こいて間抜けな右翼」という印象しかない。といいますか靖国参拝問題自体が現代の日本人にとってそれほどビッグイシューではない。聞かれれば賛成反対言うでしょうが「絶対に」賛成だ反対だなんてごく少数でしょう。そんな浮世離れした切実さの薄い問題を巡って二人とも何やってるのか、、、って感じがします。
靖国問題を巡っては「熱い人達」が珍妙なパフォーマンスを繰り広げているようですが、その全てにいちいちコメントしないことがイコール言論封殺容認とは大袈裟じゃないか。放火男が無罪放免になったとかなら別だけど。「俺のような大物が襲われたのにコメントしないとはテロ容認じゃないか」なんてちょっと違う気がする。
2006.12.03 23:58 URL | suke #etbfE.eg [ 編集 ]
kojitakenさん、
加藤氏も溝口氏も藤田氏と同じで、権力を恐れずに国民のために戦っている戦士ですね。こういった人達がもっと増えれば、日本もましな国になるのに、メディアまでが右翼化した現在の日本は、本当に危ない国になってしまいました。
又、加藤氏や溝口氏や藤田氏の必死の抵抗をばかなことやっているとしか見られない国民が増えていることも事実ですが、悪政を行い続けた自滅等のおかげで、国民の心もかなり荒(すさ)んできてしまったことを憂わずにいられません。
2006.12.05 00:38 URL | 美爾依 #- [ 編集 ]
加藤の評価などどうでも良い。
言論に対する報復としてテロが行われていることに怒りも不安も感じないふりをすること、それがテロを容認し、この国を狂わせている。
訳知り顔でテロを過小評価し、その危険や恐怖を直視しないことは、テロを行う側、テロを行わせている側を応援しているのと同じことなのだ。
>靖国参拝問題自体が現代の日本人にとってそれほどビッグイシューではない。聞かれれば賛成反対言うでしょうが「絶対に」賛成だ反対だなんてごく少数でしょう。
その通り。
だが、その賛成でなければいけないと思っているものの中には、テロで訴えてでも言うことを聞かせようとする狂信者たちがいるのだ。
そして、今やそう言う連中が私たちのこの国を動かしているのだ。
これは恐ろしいことだ。
2006.12.05 06:54 URL | 元道 #GCA3nAmE [ 編集 ]
美爾依さん、元道さん
返信が大変遅くなりましたが、コメントありがとうございました。
一番最初にこのエントリについたsukeのコメントは、典型的なネットウヨの論法で、議論をすり替えてテロを容認するものですが、加藤紘一氏も溝口敦氏も、こうしたテロを容認する空気に抗して声をあげ続けている勇気ある人たちだと思います。
おそろしいことに、前職および現職の総理大臣は、加藤氏や溝口氏より、ネットウヨに近い人たちです。断固としてそんな為政者と闘う声をあげることが、われわれには求められていると思います。
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日本各地で言論テロ発生!! -12年前の悪夢再来か-
……もう、この車内吊り広告を見た途端、私は12年前に発生した「地下鉄サリン事
2007.03.04 13:09 | さかぽよすの記 with To LOVEる