きまぐれな日々

前回、本島等・元長崎市長の受けたテロを紹介したが、今回は、今年8月に実家をテロリストに焼かれた自民党の加藤紘一代議士が、「創」2006年11月号掲載の「加藤紘一代議士が語った放火事件の背景」という記事でインタビューに答えているので、これを抜粋して紹介する。

放火事件は、小泉純一郎前首相が靖国神社を参拝した8月15日に起きた。加藤代議士の実家には、97歳になる母親が住んでいたが、散歩に出かけていたため無事だった。

事件の犯人は、堀米正広(65)という男で、右翼団体「忠孝塾愛国連盟」の常任参与と、その下部団体「大日本同胞社」の相談役を兼ねているが、この「忠孝塾愛国連盟」というのは、指定暴力団・住吉会総裁の西口茂男氏が最高顧問を務める「日本青年社」と同系列の団体だ。つまり、堀米は、住吉会系のヤクザだということだ。
堀米は、放火した現場で切腹自殺を図ったが、未遂に終わっている。

加藤代議士は、かつて故大平正芳元首相の側近だったこともあって、若い頃から何度もテロに遭遇してきた。加藤は、下記のように述懐している。

 「1978年暮れに大平正芳さんが総理になり、私は官房副長官でした。総理になった大平さんは、元旦の来客をどこで接遇するかで悩んでいましてね。自宅は厳戒体制ですから、そこで首相官邸の隣にある総理公邸を使えないか、見に行こうということになりました。記者団20人くらいを引き連れて大平さんは行ったのですが、そこに短刀を持った男がいて攻撃してきたのです。
 大平さんの傍には若い首相番の記者たちが取り巻いていたのですが、そこに男が突っ込んできた。ちょうど一番良い位置をキープしていた毎日新聞の記者が男に「冗談じゃない。ここはオレの場所だ、割り込むなよ」と押し返しため、大平さんの心臓を狙った短刀が、それた。
 翌日、大平さんと食事をとっていたら「加藤な、昨日、オレの脇の下を『死』が通っていった。でもな、人間っていうのは本来、死んでいる姿が常の姿、常態なのであって、生きているというのは、たまたま60年か70年の仮の姿を神様にもらっているだけなのだ。いつか、人間は元にもどっていくのだよ」と。かなり淋しげに言うんですね。諦観なのか、あれだけの事件があると、やはりこうなるんだな、と思いました。」

(「加藤紘一代議士が語った放火事件の背景」?「創」 2006年11月号掲載?より)

加藤自身へのテロもあとを絶たなかった。たとえば、拉致問題が話題になった頃について、こう語る。

 2003年の秋でしたかね。拉致被害者5人が一時帰国という形で日本に来た時、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は約束通り彼らを戻してほしいと言い、政府はもうこの人たちを帰さないと言ったんですが、私は自分のホームページに「安倍官房副長官が付き添って北朝鮮まで行けばいいじゃないか。そして『この人たちの安全が保障されない限り、私は日本に帰らない』と言えばよい」と書いたんですよ。さらに、「北朝鮮は何と言っても日本と比べれば小さい国。日本のように大きな国が小国との約束を守らなければ、国際的に信用を失う」と。そしたら鶴岡・酒田の事務所、それに私に近いと思われる人にまでピストルの実弾が送られてきました。ちょうど、辞職後の出直し選挙の間際だったんですが、県警の警備が入りました。
 我々は選挙最後の目に「桃太郎」というパレードをするんですね。これはオープンだし、何時何分に候補者が来ると事前に告知してやる。これが一番危ないと、さすがにあの時は緊張しましたね。

(前述の加藤紘一インタビューより)

これらの件のほかにも、何度もテロに遭遇してきた加藤は、今回のテロをどう思っているのだろうか。

 そんなふうにいくつかテロを経験した中で、今回の放火事件を見ると、全体として淋しい印象があります。確たる信念というより世間の風潮でやったのではないか、という気がします。でも風潮というのは怖い。そば屋の近くに男が乗ってきたレンタカーが残してあったというのですが、その助手席には『SAPIO』があった。『SAPIO』と言えば、小林よしのりの連載「ゴー宣・暫」が連載されていて、靖国問題を激しく論じています。そうした誌面が彼に、どう影響を与えたのか。詳しいことはまだわかりませんが、とにかく危ない状況だという気がします。つまり、火がつきやすい世の中になったということでしょうか。
(中略)
 みんなそれぞれ「何か」から「自由」になった。同時に、それぞれの人生パターンとか、付き合いのパターン、友人との関係とか、自分自身の価値観というのをもつことが、簡単ではなくなってしまったのかもしれません。
 みんな「糸の切れた小さな風船」のように、地上2メートルくらいのところを漂っている。だから、そこにちょっとしたナショナリズムの風が吹けば、わーっと、一挙に流されてしまう?それが闘争的なナショナリズムの要因なんじゃないでしょうか。

(前述の加藤紘一インタビューより)

加藤は、靖国神社に対して、下記のような見解を持っている。小泉純一郎安倍晋三のそれとはかけ離れており、加藤が右翼のターゲットになるのもうなずける。

 靖国神社は神道の神社ではないのですからね。神道の各宗派が入っている神社本庁にも加盟していないですし、明治時代に国家神道になったのが間違いなんでしょうね。

(前述の加藤紘一インタビューより)

これを突っ込んで言うと、私が常々主張しているように、国家神道は明治政府の作り上げたカルト宗教であり、靖国神社はその総本山だ、ということになる。

最後に、言論の自由を巡る現状について、加藤は以下のように述べている。

 私が今一番強く感じているのは、日本全体に、何となくものを言いづらい雰囲気が生まれていることです、自民党の中は安倍さん支持一色で、「何となく」しゃべりにくい。社会全般にも同じ雰囲気があるんではないでしょうか。
(中略)
 政府に批判的な文化人の間でもテレビの討論番組に出る人が減っていると聞きました。日本は今0.7%ぐらいの傾斜で傾いているのかもしれない。よくよく足下を見ないと気づかない傾斜だと思います。10度になれば、誰にでも分かる傾斜です。しかし、ちょっと分からないような傾斜に立っている時こそ、我々は注意しなければならない、そんなことを思いながら政治家として今まで通り、しっかりと自分の考えていることを発言し続けていきたいと思っています。

(「加藤紘一代議士が語った放火事件の背景」?「創」 2006年11月号掲載?より)

加藤紘一はよく「ダーティーなハト」と言われる。一部の評論家は小泉純一郎を「クリーンなタカ」と呼んで比較することがある。たとえば魚住昭さんなどは、「クリーンなタカ」より「ダーティーなハト」の方がよっぽど良い、という意見だ。
私も基本的に同意見だが、そもそも小泉が「クリーン」といえるかどうか自体疑問だと思っている。安倍晋三に至っては、毎週のようにスキャンダルを書き立てられるありさまで、「真っ黒な極右」と呼ぶにふさわしいだろう。いうまでもなく、最低最悪の政治家だ。

そんな安倍晋三が得意とするのは、マスコミへの恫喝などの言論封殺である。今後は、ネット言論の封殺も視野に入れているだろうことは、想像に難くない。

だから、今のうちネットでの「反安倍」の主張を、声を限りにあげていきたいと思うのだ。決してひるんではならない。


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koitakenさん、今日の記事も読み応えがありました。加藤さんがおっしゃたさまざまなこと、そのとおりだな、と思います。加藤さんのことを見直しましたよ。それと、私は政治的なことは別にして、大平さんの人生観というか「死んでいる姿が常の姿」と言う考え方が衝撃的で、そんな考え方も確かにできるな、と思いました。
「靖国は、国家神道というカルトの総本山」だからこそ、A級戦犯の合祀を取り下げようと、首相が参拝をやめようと、問題ありです
ね。
政府の政策を批判すれば、必ず、その人や団体に嫌がらせ、脅迫、果ては殺害、放火まで
なんでもありの社会、そしてそれがあたりまえという雰囲気が、おかしいのです。それは、権力者にとっては、都合のよいことなのでしょうが。政府は、相手側へのテロに対して、怒りをまったくあらわしません。共謀罪とともに成立が図られるサイバー法をいうのは、まさにネット上の取り締まりです。やはり、共謀罪というのは、「政府による国民に向けた脅迫とテロ」かもしれません。

2006.11.27 08:31 URL | 非戦 #tRWV4pAU [ 編集 ]

 こんにちは、kojitakenさん。
 土日はまた旅に行っていたため、記事は更新していませんが、こちらの加藤紘一氏の意見は、氏のホームページにも公表されていて、特に「0.7%の傾斜」と言う表現にはうなづかされた覚えがあります。
 加藤氏の自宅放火テロについて、小泉も安倍も何も意見を言わないでいたのですが、筑紫哲也に次いで、かろうじて、右派に堕することなく意見を述べている俵孝太郎が、テレビで、「小泉と安倍の沈黙は、言論へのテロを容認するものだ」と批判したら、翌日2人とも、「テロはいかなるものも許さない」と声明を出しました。マスコミの力もそのように働けば良いのですがね。
 加藤氏のホームページは良く見ています。自民党ですから歯がゆさは感じますが、基本に「護憲」があるのははっきりしていて、将来彼が何か動いてくれないかな、と期待するものです。
 なお、今朝の毎日新聞の報道ですが、ミニ地新聞の世論調査で、安倍内閣支持率が13%も下落。自民党支持率も9%下落との報道です。また昨夜見た読売新聞も、「安倍わっしょい」の記事は見当たらず、見出しはそうでも中身は「反美しい国」だったりする記事が載っていました。
 私たちも声を上げ続けましょう。
 ではでは。

2006.11.27 10:20 URL | 眠り猫 #2eH89A.o [ 編集 ]

テロはただの犯罪で問題外ですし、加藤氏の言うことはほとんど妥当なものだと思います。ただし、「安倍官房副長官が付き添って北朝鮮まで行けばいいじゃないか。そして『この人たちの安全が保障されない限り、私は日本に帰らない』と言えばよい」という点は、やっぱりちょっといくらなんでもないんじゃないかと思う。ここを外してしまってはテロ反対もハトもヘッタクレもないでしょう。拉致された人々を再び北朝鮮に戻すべきという発想は、やっぱり病的なものを感じます。

2006.11.27 10:29 URL | くう #etbfE.eg [ 編集 ]

非戦さん
加藤紘一は、このところ吹っ切れたのか、歯切れの良い言論活動を展開しています。
「文藝春秋」の何月号だか忘れましたが、靖国問題で上坂冬子と対談して、完膚なきまでに上坂を叩きのめしたのは痛快でしたが、そういった加藤の言論がテロを招いたのかもしれません。
ここで加藤が口を閉ざしてしまったら、テロリストの勝ちなのですが、屈服しないあたりはさすがだと思います。
あと、大平元首相の死生観には、私も衝撃を受けました。大平さんは香川県出身のクリスチャンです。おそらくは自らの思想信条に背いて、靖国神社に参拝したこともありますけど。

2006.11.28 20:22 URL | kojitaken #e51DOZcs [ 編集 ]

眠り猫さん
コメントありがとうございます。
俵孝太郎の発言は知りませんでした。
俵さんは、元産経新聞の記者で、フジテレビではタカ派のキャスターとして知られていたと思います。かつては朝日新聞を右から批判する本も出版しています。しかし、世の中が右傾していっても立場を動かさなかったので、相対的に「右派に堕することなく」と眠り猫さんに評される立場になったのですね。
実際、石原慎太郎を「夜郎自大」、石原の文章を載せている古巣・産経新聞を「下品」だと激しく批判し、何年前か忘れましたが、朝日と産経の元旦の社説を比較して、朝日の方がまだましだと言って、産経新聞の堕落ぶりを一刀両断していました。
こういう人こそ、真の保守と言えると思います。
それにひきかえ、俵さんに批判されるまで口を開かなかった小泉と安倍の、なんと卑怯なことでしょう。
一刻も早く、「小泉的なるもの」「安倍的なるもの」を葬り去りたいものだと思います。

2006.11.28 20:33 URL | kojitaken #e51DOZcs [ 編集 ]

くうさん
コメントありがとうございます。
しかし、ご意見には反論があります。
加藤紘一の実家への放火、あるいはその少し前に起きた、日経新聞社への火焔瓶の投げ込みは、「ただの犯罪」などではなく、言論の自由に挑戦する「重大な犯罪」であり、これらの事件の犯人は、真の意味での終身刑(一生刑務所から出さない)に処するくらいの厳罰が必要だと思います。
それから、4年前、拉致被害者を北朝鮮に戻すという約束したのは日本政府です。いくら相手が「ならず者国家」ではあっても、約束したことは守るべきだという加藤氏の主張の方に、私は説得力を感じます。安倍の二枚舌外交は、国の信用を損なうだけでしょう。

2006.11.28 20:38 URL | kojitaken #e51DOZcs [ 編集 ]













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