きまぐれな日々

国境なき記者団」が発表した世界各国の「言論の自由」のランキングを取り上げた前のエントリの記事『日本の「言論の自由度」は世界51位』は、掲載した当初、「共謀罪反対」などの記事と比較して、トラックバックやコメント件数の増え方が鈍く、やはりこうした話題は不人気なのか、と思っていた。

しかし、「きっこの日記」10月26日の「報道の自由とは?」で同じ題材が扱われたためかどうか、徐々に多くのコメントをいただくようになった。そのうち、現時点で最新のコメントはこだんさんによるもので、「反ナチス法」が制定され、極右の言論が制限されているドイツが上位にランクされているのはおかしい、また、極度にナショナリズムが高まっている韓国が、日本より上位にいるのはおかしい、という内容だった。

これは、読者数の少ないコメント欄でのやり取りで答えるには重いテーマなので、新しいエントリを起こすことにした。

ドイツにおける戦争責任の追及および言論の自由のあり方というのは、実は一筋縄ではいかない問題だ。一般には、A級戦犯の岸信介が戦後わずか12年で首相に就任したことに象徴されるように、戦争犯罪を曖昧にしてきた日本とは対照的に、ナチスの戦争犯罪を厳しく追及し続けてきたと賞賛されることが多い。しかし、すべての戦争責任をナチスにだけ押し付けて、実は多くの戦争犯罪を不問に付したという批判もある。この説に関しては、木佐芳男の「"戦争責任"とは何か」(中公新書、2001年)という本があり、勝谷誠彦がこれを激賞しているのだが、勝谷のような右翼は、往々にして「ドイツでも清算されなかった戦争犯罪がたくさんある」ことを、日本の戦犯を免罪する論理へのすり替えに悪用する傾向があるから、騙されないよう注意する必要がある。

一方で旧東ドイツにはシュタージと呼ばれる秘密警察の問題もあり、シュタージには、ゲシュタポ関係者が多数登用されていたという説もある。少なくとも、旧東独はとんでもない監視国家だった。
このあたりの議論は、とてもでないが私の手に負えないので、下記Wikipediaの記事でも参照していただきたい。

「戦争犯罪?Wikipediaより ドイツの戦争犯罪観」

「シュタージ?Wikipedia」

ただ一つ、私が言いたいのは、確かに「言論の自由」は、本来、極右の主張にまで適用されるべきものであり、その意味で、ドイツでナチス支持の言論が制限されていることには問題があるかもしれないが、ナチスは、過去に、ホロコーストをはじめとした大規模な犯罪を犯しており、再びナチス支持の思想を持つ政党が政権をとれば、また同様の犯罪が繰り返されないとは限らず、従って、これを非合法化するのは止むを得ないのではないかということだ。ナチスをオウム真理教に置き換えてみるとわかりやすいかもしれない。

そして、法律によって極右思想であるナチスを禁止しているドイツと、極右思想を持つ首相・安倍晋三に対する批判を、マスメディアが事実上タブーにしてしまっている日本のどちらが、言論の自由が保障された国といえるのか(ブログや雑誌では安倍批判があふれ返っているが、大新聞と全国放送のテレビは、山ほどある安倍のスキャンダルへの追及がタブーになっている)。少なくとも私は、ドイツを日本よりはるか上の順位をつけた「国境なき記者団」に対して、全然違和感を覚えない。

さて、続いては韓国との比較だ。
こだんさんは、次のようにコメントされている。

それにナショナリズムの高まりが指摘されていますが、それなら韓国があんな高順位に位置してるのが理解できません。
韓国は末期的な「反日民族ナショナリズム」です。日本の植民地支配を評価しようものなら「親日派」と言われて叩かれます。
それと、これは記憶に新しいですがソウル大の黄教授のヒトES細胞の捏造研究を暴露したテレビ局の番組は「国家に恥をさらした」と批難されました。
こんなことは日本ではまずありえません。
なのに韓国の方が順位が上なんて・・・

(当ブログ記事『日本の「言論の自由」度は世界51位』への、こだんさんのコメントより)

韓国において、反日的な言論が高まっているのは確かだろう。それに対抗するかのように、日本において反韓的な言論が高まっていることと合わせて、残念なことだと思う。憎しみあうことは、お互いにとって良い結果をもたらすはずがないからだ。

ソウル大の黄教授の論文捏造事件は、日本でも大きく報道され、この疑惑を報じた韓国のテレビ局・MBCが、韓国内ですさまじいブーイングを浴びていたことに、私たちは驚かされたものだ。

しかし、MBCは激しい逆風にも屈することなく黄教授の犯罪的行為を暴き続け、ついに自らの報道が正しいことを立証したのではなかったか。

一方、日本ではどうか。旧聞に属するが、9月8日付の「朝日新聞」が、『日中関係の論文、「反日」批判で閲覧停止 国際問題研』という記事を掲載している。

これは、「産経新聞」が、外務省認可の財団法人・日本国際問題研究所がホームページに掲載した論文を「反日的」であるとして批判し、これを受けて国際問題研がこの論文を閲覧停止にして、理事長の佐藤行雄・元国連大使が「産経新聞」紙上で反省を表明したことを指摘した、驚くべき報道だ。
つまり、言論機関であるはずの「産経新聞」が、率先して言論封殺を行っていたのだ。

なんでも、『小泉首相(当時)や過去の首相の靖国神社参拝を「靖国カルト」(崇拝)と表現し、「日本の政治的見解は海外で理解されない」などとしている』ことが、産経新聞のお気に召さなかったらしい。なお、国家神道はカルト宗教であり、靖国神社はその新興カルト宗教の総本山だというのが私の持論だ。

この件を報じた朝日新聞の記事は、最近の同紙の例によって、いくぶん腰の引けたものであり、言論封殺を行おうとした産経新聞記者の名前を伏せている。しかし、米「ワシントン・ポスト」紙はこの記者の名前を報じている。あの悪名高い古森義久である。下記Wikipediaの記事を参照されたい。

「古森義久?Wikipedia?JIIAコメンタリーに端を発する論争」

この件についてネット検索で引っかかったブログの記事を下記に示す。

粟津賢太のヴァーチャル研究室【ブログ版】より「言論封殺」(2006年9月8日)

また、下記は2ちゃんねるのスレッド。2ちゃんねるでは産経新聞批判はウケが良くないらしく、記事は10本しかない。

言論の抹殺に血道をあげる産経新聞と産経記者(2ちゃんねるより)

私が思うに、不要なまでにナショナリズムが高まっているのは韓国も日本も同じだろうと思うが、日本には、信じられないことに、率先して言論封殺を行おうとするメディアが存在するのだ。ファシズム的性格を持ち、言論封殺を好む安倍政権にとって、これ以上頼りになる忠犬はいないだろう。

これでは、日本における「報道の自由」のランキングが、韓国よりはるか下に位置づけられても仕方あるまい。


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kojitakenさん こんばんは

 その国で働く外国プレスの申告によりこの報道の自由度ランクが付けられるようなので、ナチ賛美を禁ずる法があったり、日帝統治時代を評価したり朝鮮戦争を解放戦争と発言した人が捕まったりしても、外国プレスにはそもそもあまり関係がないということなのかもしれません。外国プレスの見た「報道の自由度」であって必ずしも「言論の自由度」ではない、ということなのでしょう。

 ところで、行政が自分(の関連組織)が発表した文章を、批判により撤回することは特に問題があるとは思えません。「確かに言われる通りかもしれない」等と考え撤回することは不自然なことではないのでは?批判した結果行政が論文を引っ込めたとしても、それは批判者の責任ではないでしょう。それでは行政の発表した文章を批判出来なくなってしまいます。

>>不要なまでにナショナリズムが高まっているのは韓国も日本も同じだろうと思うが、

 どうしても韓日同じくらいにナショナリスティックになっていると評価されておられるようですが、韓国には親日派とレッテルを貼り社会的名誉を毀損(!)する法や、親日派とされた人の子孫(!)から財産を没収するという近代法の原則を完全に逸脱した法が存在しています。親日派は何が何でも許さんというのが国家規範になっている国なわけです。それだけ日帝統治時代の屈辱は癒し難いということなのかもしれません。しかし「不要なまでにナショナリズムが高まっているのは韓国も日本も同じ」というのは、やはり無理があるように思います。

2006.10.29 02:39 URL | しょう #Uh60rX9Y [ 編集 ]

しょうさん
コメントありがとうございます。
日本のランクが下がった理由として、「先進国で唯一閉鎖的な記者クラブがある」ため、外国人特派員が排除されていることが挙げられていますから、国内の言論制限はあまり考慮されていないというのは、その通りかもしれません。
しかし、もう一つの理由として「ナショナリズムの高まり」もあげられています。
あと、国際問題研の論文閲覧停止の件ですが、国の研究機関にだっていろんな人がいて、中には共産党支持者もいます。だからこの件のような論文が掲載されるわけですが、政権側からしたらこんな論文は邪魔で仕方がないのは当然でしょう。何か理由をつけて隠したがるに決まっています。
私が批判のターゲットにしたのは、行政側が閲覧停止にしたことよりも、行政にそのように仕向け、自らも言論機関であるはずなのに、言論封殺を自分の手で行った、要するに自殺行為を行った産経新聞、特に古森義久です。行政は、産経及び古森を利用したに過ぎません。
あと、韓国と日本の比較ですが、韓国に好ましくない法律があるのは確かでしょう。単に法体系を見る限り、日本は言論の自由が保障された国といえると思うんですが、法律で保障された権利を日本のマスメディアが全然行使しないところに問題があると言っているのです。

2006.10.29 08:25 URL | kojitaken #e51DOZcs [ 編集 ]

同意です。

やっぱり勝谷ですね。
沈黙しちゃいました。
所詮よしもと所属タレントってわけですね。

2006.10.29 11:50 URL | どーも #a2H6GHBU [ 編集 ]

どーもさん
勝谷は沈黙してしまいましたか。やっぱりねえ。

2006.10.29 12:30 URL | kojitaken #e51DOZcs [ 編集 ]

「不要なまでに」ナショナリズムが高まっているという点では日本も韓国も同じだと思います。
もちろんナショナリズムの程度に差はあるでしょう。

2006.10.29 16:04 URL | 加持 #- [ 編集 ]

加持さん
日韓の両国政府とも(もちろん中国も)、国民のナショナリズムを煽っていますからね。
韓国のマスコミについては、「薫のハムニダ日記」が詳しいですが、韓国には「産経新聞」のように、行政をけしかけて言論封殺させるという、言論機関にとっての自殺行為を働くメディアまではありますかねえ?

2006.10.30 07:16 URL | kojitaken #e51DOZcs [ 編集 ]

最新のきっこさんの記事にもちょっと触れてあるけどナンバーポータビリティーと言論封殺は関係していると思う

ソフトバンクのように携帯番号でID登録がかってにされてしまうとどうなるか、国民総背番号制とかの危険

次のIT Pro記者の眼の反対アンケートも参照
http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/ITPro/OPINION/20031113/1/enum-no.html

言論封殺と国民監視にはNMPがもってこいの危惧を感じるのは気のせいかな?

2006.10.30 09:09 URL | MNP #- [ 編集 ]

言論と報道の違いもわからずに徹底批判するのはいかがなものかと。。。。しかも、報道の自由を縛っているのはマスコミ自身なんですよ。産経だけでなく読売朝日毎日とあとその他。こちらがもっと勉強しないと右翼に馬鹿にされるだけですよ。一緒に頑張っていきましょう。

2006.10.30 13:14 URL | yama #- [ 編集 ]

公開質問状を出したことを言論封殺という言葉にするのは無理がありませんか?
古森氏は自信でブログもやってらっしゃるようですし、コメントも受け付けているようなので意見されたらいかがでしょう。
( http://komoriy.iza.ne.jp/blog/

2006.10.30 19:24 URL | 緑亀 #- [ 編集 ]

MNPさん
コメントありがとうございます。きっこさんも書くように、これまでの情報だけでは何とも言えないと思いますが、なんとなく怪しげなニオイはしてきますね。
それにしても、きっこさんは2004年10月19日の日記では孫正義に好意的で、正直、そんなに孫氏を持ち上げて良いのだろうかと思っていましたが、2年経ってものすごくネガティブに変わってますね。

2006.10.30 21:15 URL | kojitaken #e51DOZcs [ 編集 ]

yamaさん
辛口のコメント、どうもありがとうございます。
白状すると、「言論の自由」と「報道の自由」を混用していたのは、前のエントリの記事を書いた時には気づかず、今回のエントリの記事を書いていて気づいたんですが(「きっこの日記」のタイトルは「報道の自由って?」になっていますし)、「えーい、ままよ」とばかり、そのままアップしてしまいました。
「報道の自由を縛っているのはマスコミ自身」というのは、記事でその意味のことを表現したつもりですが、なかなか伝えきれなかったようですね(あるいは「言論の自由」との混同がいけなかったかもしれませんが)。問題は産経だけに限らない、というのも、過去の記事では私も指摘しています。
でも、勉強不足は仰る通りなので、今後は正確な記述を行い、言いたいことを伝える表現ができるよう研鑽していきたいと思います。
なお、「マスコミ自身が報道の自由を縛った」というのは、先の大戦中もそうだったみたいですね。決して権力の抑圧でどうしようもならなかったばかりではなく、マスコミ自身が戦争を煽っていたようです。

2006.10.30 21:24 URL | kojitaken #e51DOZcs [ 編集 ]

緑亀さん
コメントありがとうございます。
行政をけしかけ、閲覧を停止させた古森義久記者の行動は、私は言論封殺だと考えますが、古森記者とワシントン・ポストとの間で論戦をしているようですから、記事本文で挙げたリンク先を参照するなどして、個々の読者にご判断いただくしかないと思います。

2006.10.30 21:28 URL | kojitaken #e51DOZcs [ 編集 ]













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