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きまぐれな日々

 今年は例年だと仕事が楽になる12月後半に飛び入りの仕事が入った。それがようやく終わったのが3連休明けの25日で、やっと今回を含め「あと6回」を残すだけになったこのブログを更新する次第。

 このブログの更新頻度は月1回にまで減ってしまったが、最近では日常的に更新していた『kojitakenの日記』の更新頻度も激減している。

 6年前に坂野潤治の『日本近代史』(ちくま新書,2012)を読んで、強い印象を受けたことはもう何度も書いたが、坂野はこの本の巻末に、

これ(1937年7月7日の日中戦争勃発=引用者註)以後の八年間は、異議申立てをする政党、官僚、財界、労働界、言論界、学界がどこにも存在しない、まさに「崩壊の時代」であった。異議を唱えるものが絶えはてた「崩壊の時代」を描く能力は、筆者にはない。

「危機の時代」が「崩壊の時代」に移行するところを分析した筆者には、二〇一一年三月一一日は、日中戦争が勃発した一九三七年七月七日の方に近く見える。

と書いたのだった。

 その少し後の2013年春、坂野は毎日新聞のインタビューで、2012年末に安倍晋三が政権に返り咲いた衆議院選挙から現代日本の「崩壊の時代」が始まったと語った。その衆院選から丸6年が経過したが、今年ほど「言葉が力を持たない」年は今まで経験したことがなかった。

 直近の話題でいえばローラが名護市辺野古の新基地建設工事の中止を求める署名を呼びかけたことが「政治的発言」とされて批判される騒動があったが、いうまでもなくこの基地建設の強行は安倍政権がゴリ押ししているものだ。マスメディア各社の世論調査によると、安倍内閣を支持する人と支持しない人はほぼ同程度の数だ。しかるに、安倍政権を擁護する発言をテレビでまくし立てる芸人は少なからずいて、彼らの発言は「政治的発言」とされず、ローラの発言がことさらに「政治的発言」と位置づけられる。このこと自体異常以外の何物でもない。しかし、この「崩壊の時代」においては、人々が異常を異常と認識できなくなっている。人々の考え方、感じ方にそういうバイアスがかかっているからこそ「崩壊の時代」なのだ。

 このことは、同調圧力を同調圧力と認識する能力が失われた状態といっても良い。そのことが辺野古新基地建設工事の件以上に異常な現れ方をしているのが、昨今の対韓国の「国民感情」だ。

 安倍晋三は、ロシアに対しては北方四島のうち国後島と択捉島ははっきりロシア領と認めて、下手すれば歯舞・色丹をロシアから「借りる」という、「二島返還」とさえ言い難い形で譲歩しかねない姿勢を見せている。今年秋には、これまでしきりに「火遊び」をして刺激してきた中国に対しても融和姿勢に転じたかに見える。一方で、対露、対中の姿勢とは対照的に、韓国に対してはどこまでも強圧的な態度を取る。私には、衰退、というより「崩壊」しつつある国家の「最高指導者」が晒しているみっともない醜態にしか見えないが、悪いことに、朝日新聞がソウル支局の牧野愛博がイニシアティブを取る形で対韓強硬姿勢を打ち出しており、テレビでは「リベラル」の代表的番組とされるTBSの『サンデーモーニング』が韓国に対しては一貫して批判的だ。このありさまだから、こと対韓国に関しては、「リベラル」の圧倒敵多数までもが平然と批判するようになっており、いつも風を読もうとする野党第一党・立憲民主党代表の枝野幸男も韓国批判のコメントを出した。こんな状態だから、「右」側は「韓国との断交」を強硬に叫ぶ始末だ。もはや正気とは思われないが、これもまた「異議を唱えるものが絶えはてた『崩壊の時代』」のあり方の典型例だ。

 今年は特に、3月に財務省が公文書改竄を認めたあと、人心が安倍政権から離れなかったことが大きかった。あの時には、たとえ右派メディアを作る人たちでさえ、「これでもう安倍政権は保たない」と観念して安倍政権批判に舵を切ろうとしたものだ。私が言っているのは『夕刊フジ』のことであって、あの夕刊紙は、確か3月10日頃からの一週間弱に過ぎなかったと記憶するが、連日安倍政権批判の大見出しを掲げていたものだ。しかし、すぐに従前の政権擁護・野党批判に戻り。それどころかそれをさらにエスカレートさせた。駅売りなどに頼る夕刊紙の場合、読者の嗜好と合わなければすぐ売れ行きが落ち、それがいち早く編集方針に反映される者だろうが、要するに夕刊フジの政権批判の見出しと記事が、東京・大阪などの極度に右傾化した勤め人たちの嗜好と合わなかったのだろう。

 そして、この一件のあと、これまでにも増して内閣支持率が下がりにくくなったように思う。明らかに安倍晋三の意を受けて行われた公文書の改竄や隠蔽(最悪の場合は本当に破棄されているかもしれない)でさえ「国民」に容認された安倍晋三は、「何をやっても僕ちゃんは許される」との確信をますます強めたに違いない。その割には、安倍晋三が最大の悲願とする改憲が、安倍の思うようにはいかない状態に陥りつつあるが、これにはまた別の力が働いているのだろう。

 今年、もう一つ強く印象に残って忘れがたいのが、4月に通常国会で希望の党(当時。現国民民主党)の玉木雄一郎が質問している最中に、灘高・東大法学部卒の経産官僚にして首相秘書官を務める佐伯耕三が玉木雄一郎自身の質問に対して野次を飛ばした一件だった。

 国会で議員以外が野次を飛ばしたのは憲政史上2回目で、前回は軍人の佐藤賢了が国会議員に「黙れ」と野次を飛ばした1938年のことだった。前回の「崩壊の時代」の最中に起きた出来事が、現代日本の「崩壊の時代」で再現された。

 佐伯耕三は、安倍晋三と菅義偉によって若くして異例の大抜擢を受けた経産官僚だが、それなら事務次官レースの筆頭を走っているかといえば全くそうではなく、安倍政権が終わったあかつきには、よほど安倍の「忠犬」みたいな後継者が政権の座につくのでもなければ、スピンアウトを余儀なくされるような人間だろう。異例の大抜擢とは、裏返せば政権が代わってしまえばたちまち冷や飯を食わされる立場ということだ。

 先日、城山三郎の古典的名著ともいうべき『官僚たちの夏』(新潮文庫)を読んだが、池田勇人や佐藤栄作は次官人事に大いに介入し、当時二代続けて「上がりのポスト」とされている特許庁長官に干し上げた官僚を通産事務次官につける人事が行われたようだ(今井善衛、佐橋滋。佐橋を最後に、特許庁長官を経て通産(現経産)事務次官になった官僚はいない)。安倍晋三は、あるいは大叔父の佐藤栄作に倣って好き勝手に人事に干渉しまくっているのかもしれないが、悪い時(第2次安倍内閣時代の2014年)に「内閣人事局」が設置されたものだ。これも旧民主党の「政治主導」の負の側面だろう。こうして、時の総理大臣と一体となって国会で野次を飛ばす劣悪極まりない官僚が生み出された。

 とりわけこの佐伯耕三の醜態などを見ていると、この日本という国の国民であることが本当に嫌になる。「崩壊の時代」これに極まれり。来年早々には天皇の「代替わり」前の最後の正月ということで、また無意味な言葉がメディアやネットや巷にあふれるのだろう。

 昨今は、ネットにあふれ返る「反安倍政権」、「リベラル・左派」の言葉にも、心が動かされるものがほとんどなくなった。多くの者は惰性で発信を続けているだけだし、自分たちが支持する党派や政治勢力の組織防衛にしか関心がないと思われる者も少なからずいる。そんな者が発信する言葉など、馬鹿らしくて読む気も起きない。また私自身も、言葉が力を失った時代に、ブログ記事に空しい言葉を並べる意欲を失いつつあるというのが嘘偽りのない実感だ。こうして、今年、特に年の後半にブログ記事を公開する頻度が激減した。例年より仕事がやや忙しかったこともあるが、それは副次的な要因に過ぎない。

 これでは、このブログ最後の年末であっても、「良いお年を」とは書く気になれないというものだ。
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>空しい言葉を並べる

けっして「空しい言葉」ではないと思います。

2018.12.27 10:11 URL | redkitty #- [ 編集 ]

『広河 噂』でtwitter検索で左派連中が聞いたことあったが、まさかとはみたいなコメントしてますよ。 反安倍も学生運動以来、寄ってきた若い女を食べるエセ左翼が多いこと。鳥越しかり、しばき隊の高橋や菅野しかり。日本の『反差別』連中はリンチ事件も積極的に隠蔽したのが、京都の女弁護士の流出したメールで暴露されてます。 だから、支持されない。崩壊の時代に関しては日本時代に関して、歴史よりイデオロギー優先になった韓国のが先ですよ。当時を知る世代が去った後の韓国はひどい。擁護不可である。だから、今滅びてる。どの記事見ても韓国はいまや安保経済外交惨事であるり

2018.12.27 12:31 URL | 野党共闘 #- [ 編集 ]

 このエントリをはじめ、最近のブログ管理人の発言が、しみじみとしたものになっていて、私は危険を感じます。いくら現状が絶望的だからといって、本当に絶望したらすべて終わりですよ。憎き(あえてこう書きますが)安倍晋三の思惑通りになってしまいます。外野の人間がこう書くのは無責任でしょうが。

2018.12.28 12:48 URL | にっしー #PGaXwyUs [ 編集 ]

日本社会全体が安倍晋三に忖度、また極右全体主義化した2018年でした。
3月の森友・加計事件で当然逮捕されなければならなかった安倍晋三が検察の忖度で逮捕されず、崩壊必至だった安倍政権も崩壊しませんでした。
本来なら1けたに落ちてもおかしくなかった支持率が高止まりし、9月の総裁選では不当な3選を果たしました。
12月に入り安倍政権の暴挙である辺野古の新基地建設工事の中止を求める署名を呼びかけたローラさんへのバッシングも目に余るものがあります。
そして今、安倍政権の仮想敵国づくりが功を奉し韓国に対する異様としかいいようのない嫌悪、反感が増勢しています。
マスコミもそれをアシストしているのが今回の騒動ではっきりしました。
安倍政権の異様な対応と、狂信的極右ナショナリズムに同調する国民、マスコミが常態化する日本。
救いようのない惨状です。
異議を唱える者が本当に絶え果てた日本。
崩壊する平和と民主主義。
台頭する日本軍国主義、日本帝国主義。
これが2018年の年の瀬の日本の姿です。

2018.12.30 23:05 URL | 風てん #- [ 編集 ]

こんばんは。

そんないつかの姜尚中みたいなこと言わないで下さい。これだけ滅茶苦茶な政権なのにいつまでも支持する人間がいることに私も虚しさを覚えますが諦めないで下さい。kojitakenさんが発言しなくなったら哀しいです。

2018.12.31 17:46 URL | シエスタ #QNy9MWlI [ 編集 ]

古寺さんの見方とほぼ同じです。
ただ、だからといって、諦めたら、その先にあるのは安倍政権の中枢に潜む連中による、日本売却計画の進行だけでしょう。

現在は日本の基礎研究の中核をなす国立大が、彼らの新たなターゲットにされています。
その前段階として、中核国立大では人員削減が急速に進んでいます。
おかげで4月からのカリキュラム作成もままならない状態です。

経営を財界から送り込まれた委員により支配され、霞が関の官僚主導で進む学内改変。
その結果一般企業で言うところの人件費が削減され、一時的には大学経営は改善される。
しかしその先には身軽になった国立大は、民間に売却され、その積み上げた知的資産も売り渡されることになるわけです。

しかもその前段階でも、研究者の大事なポストだった助教や講師の数が減らされ、国内での研究継続が困難になった若手研究者は、研究継続を断念するか、もしくは海外の大学など研究機関へ飛散していきます。

このままでは日本は、すべての有形無形の資産を失い、高齢化社会のなか、多くの国民は貧困の沼に沈められていく事になるのでしょう。
この流れを変えるには、とりあえずは次の選挙でどこまで野党勢力の票を伸ばせるかです。
と同時に日本の現実をいかにして国民に知らせるのかです。

戦後CIA資金投入などで作られた日本統治の為の装置である自民党。
それと同時に間接統治の装置と化した霞が関。
さらには偽りの左右対立の幻想で国民を欺き続けたマスコミの存在。
多くの国民はいまだにこの国の米軍隷属体制の現実に気が付いてはいないのですね。
この現実をいかに国民に情報拡散できるかが、この体制の変革を成功させられるかどうかの分岐点になります。

2019.01.12 09:28 URL | 風太 #seTEoywg [ 編集 ]

このコメントは管理者の承認待ちです

2019.01.13 00:16  | # [ 編集 ]













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