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きまぐれな日々

 先週金曜日(25日)に、政府やマスメディアが「働き方改革法案」と呼んでいるいくつかの法案を束ねたものが、衆議院の厚生労働委員会で強行採決の末可決された。これについて、概略を元民主党衆議院議員の小宮山洋子氏がまとめたブログ記事(下記URL)が『BLOGOS』に掲載されていたので、以下に引用する。
http://blogos.com/article/299828/

働き方改革法案 委員会で強行採決

政府、与党が、この国会の最重要法案と位置づける働き方改革関連法案が、先ほど、衆議院厚生労働委員会で採決が行われ、一部修正のうえ、自民・公明・日本維新の会の賛成多数で可決されました。

この法案は、何回も指摘しているように、規制強化と規制緩和のいくつもの法案をひとつにまとめたもので、これは分けて十分な審議をすべきものです。

委員会採決について、立憲民主党、国民民主党、共産党は、厚生労働省が平成25年に行った労働時間の調査結果の一部に誤りの可能性が高いものが確認されたことなどから、「審議は不十分で、採決には応じられない」と主張し、昨日25日に審議、採決を、という与党側と折り合いませんでした。

このため自民党の高鳥委員長が25日に委員会を開いて、法案の質疑採決を行うことを職権で決めました。

野党側は加藤厚労相の不信任決議案を提出しましたが、本会議で否決され、委員会採決となりました。

働き方を改革することは、超少子高齢社会で働き手が少なくなっていくことからも喫緊の課題です。

方向性としては、男女を問わず、人間らしく働ける、心身ともに健康で能力を発揮できる環境整備のはずです。ところが、同一労働同一賃金も実効性が疑われるもので、長時間労働の規制も過労死の限度時間を上限とするなど、働く側にとっては不十分なものです。

一方で、経営者が強く望んだ高度プロフェッショナル制度は、過労死の危険が増すという、労働組合や過労死家族の会など多くの反対を押し切って導入されることになってしまいます。

この高プロ制度というのは、対象者は専門的で高度な知識などが必要な職種で、新たな契約によって全労働者の平均の3倍(1057万円)の年収が見込まれる人たちです。

それなら関係ないと安心してはいられないのは、経団連などが、すでに年収要件の引き下げを求めているからです。

派遣労働のように、一度堰を切ったら、どんどん広げられる恐れがあります。

問題なのは、経営者が法に基づいて労働者を長時間労働させることが可能になることです。

経営者は「年間104日」かつ「4週で4日」以上の休日を確保すれば、1日何時間でも働かせることができることになります。

必要と考える労働者がどれ位いるのか、厚労省は12人の研究者などからしかヒアリングをしていません。

日本維新の会が、高プロで働く本人が制度適用への同意をした後に撤回できる規定などを設ける修正案を出し、そうなりましたが、経営者と労働者の力関係があり、このことで改善されるとは思えません。

安倍首相は、面会を求める過労死家族の会のメンバーとの面会を断りました。

都合の悪い人たちとは会わず、お友達とは秘密裡に会う、ということなのでしょうか。

この法案では、働き方改革ではなく、働かせ方改革になってしまいます。

参議院で、さらに審議を尽くしてもらいたいと思います。

(『BLOGOS』掲載記事 小宮山洋子 2018年05月26日 08:23)


 少し前に厚労省のデータの誤りが発覚して、本来この「働かせ方改革法案」に盛り込もうと安倍政権が狙っていた「裁量労働制」に関する法案の提出断念に追い込まれたが、その裁量労働制と同じ問題をはらんでいる上、裁量労働制よりさらに悪質な「高度プロフェッショナル制度」を定めた法案が、政権の狙い通り衆議院の委員会を、強行採決の形をとったとはいえ私の目には簡単に通ってしまったように見えた。

 私自身について書くと、四半世紀前の1993年に短期間裁量労働制下で働いたことがある。その後ほどなくして、残業代のもらえない身分になった(私が当時勤務していた企業では、係長級以上になると残業手当がつかなかった)。しかしその企業のうち一部の部署には長時間労働の悪弊があり、私が属していた部署もそうだった。そして私自身あわや過労死の病気を患った経験があるし、その数年後には単身赴任者が月200時間以上もの時間外労働を強いられて脳内出血で倒れてしまった事例にも遭遇した(この時、彼の上司は「事情により出向元の関連会社に戻ってもらうことになりました」とだけ言って真相を社員から隠した)。また、その後転職して働いた企業では、小泉純一郎政権時代の2004年に製造業にも解禁された派遣労働者を部下に持って、全国から職を求めて集まってくる派遣労働者の低賃金が動機となって犯した犯罪行為の実例にも遭遇した。それは、雨宮処凛氏が著書に書いた実例とそっくりのものだった。

 以上の経験を持つ私から見て、下記つしまようへい氏の一連のツイートの指摘は的確そのものだと思ったので、以下に引用する。

https://twitter.com/yohei_tsushima/status/1000364781973393408

1993(平成5)年の裁量労働制に関する国会での議論の読むとかなり興味深い内容。 裁量労働制について、遂行方法の裁量はあるが、業務量の裁量はない場合どうするのかという質問に対して政府が答えている。高プロの議論とよく似ている。ちょっと長いけれどぜひ読んでみて。 http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/126/0340/12604230340009a.html


 以下、1993年4月23日の第126回国会・労働委員会の議事録から引用する。

○石田(祝)委員 安易な拡大をしないということですから、これはどういう形になるのか、ぜひ厳しくやっていただきたいというふうに私は思います。
 それで、この裁量労働制で私は一番大きな問題だと思うのは、要するに、裁量できる範囲というのは、仕事のやり方とか時間を裁量はできるわけですけれども、仕事の量そのものを裁量はできないということだと思います。
 例えば、私が読んだ鼎談というのでしょうか、労働基準法についてのそういう座談会の中でフランスの例を挙げている方がいらっしゃいまして、その中に、その方が企業調査でフランスへ行った、そのときに、フランスの労働省の説明では裁量労働が認められるのはいわゆるガードルという管理職だけと聞いていたけれども、ある研究所に行くと事務員からテクニシャンを含むほとんど半分ぐらいの人が裁量労働の契約を結んでおった、こういうことを知ってびっくりしたという話もあったのです。そしてその中で、裁量労働を結ぶときに条件があった、三つあるということでその方は述べておりましたけれども、一つには本人と必ず書式、書面の契約を結ぶ、それから二番目として、原則として時間の拘束はなくフレックス、これは日本でも同じなようでありますが、そして三番目に仕事の量が適切なものである、こういう三つの条件があったようであります。
 ですから、私は、最初に申し上げましたように、この裁量労働の大きな問題は仕事の量そのものは自分では裁量できない、こういうことではないだろうかと思うのです。企業というものは、例えば一年間でやる仕事の量、これこれの人数の裁量労働のグループはこれこれの量の仕事だ、こういうふうにやっておっても、年度の途中でも仕事が入ってくる。こういう仕事をぜひおたくのこの部門でやってもらいたいというふうに来られたら、いや、うちは裁量労働で労使で協定を結んでこの一年間はこういう仕事しかやりません、お引き受けできませんといって断るところはまずないと私は思うのです。ですから、仕事の量が裁量できないということを考えてどういうふうな歯どめをお考えになるのか。これは私は大事な問題ではないかと思いますが、どういう歯どめを考えていらっしゃるのか、お答えをいただきたいと思います。


 赤字ボールドの部分は、前記つしま氏のツイートに引用された画像で赤字ボールドになっていたのに準じたが、そうだ、それこそが裁量労働制の問題点なんだよ、と私も強く思った。そしてそれと同じ問題が高プロにはある。しかも裁量労働制ではまだみなし残業代がついたが(この手当がつくこと自体、経営者が残業を必要とする労働を前提としていることを意味するが)、高プロには残業手当すらない。もちろん深夜業手当もない。

 上記に続くつしま氏の4件のツイートを続けて引用する。

https://twitter.com/yohei_tsushima/status/1000366290295390208
https://twitter.com/yohei_tsushima/status/1000368703458852865
https://twitter.com/yohei_tsushima/status/1000369670988349440
https://twitter.com/yohei_tsushima/status/1000370343549194240

 政府は最初、裁量労働制は裁量で判断できるから大丈夫だと説明する。でも業務量が増えたらどうすればいいのかを繰り返し聞かれて、最終的に政府は、業務量が過大になった場合は、みなし労働時間を見直すか、人員を増やすことが必要になるので、労使協定を見直せばいいと言っている。

 で、それから25年がたってどうなった? みなし労働時間と実労働時間が大きく乖離しても、労使協定が見直される事例はまれだろう。裁量労働制の適用労働者が過労死する事例すらある。このときの政府答弁が想定した仕組みは機能していない。

 みなし労働時間と実労働時間が「●時間」乖離した場合は、裁量労働制の適用除外になるとか、裁量労働制適用労働者に対しても、「時間外労働」の上限規制を設けるなどの規制を設けるべきではないか?

 そして、これ、高プロでも必ず同じことが起きると思う。今政府は「対象労働者の裁量を失わせるような過大な業務を課した場合は制度が適用されない」と説明するが、何が過大な業務なのかの説明はまったくない。

  「過大だったら後から見直せ」だけでは、裁量労働制の二の舞になる。具体的な上限が必要だ。


 本当にその通りだ。

 ところで、今回の「働かせ方改革」法案の審議に関して全く予想もしていなかったことは、裁量労働制の間違ったデータの件ではあれほど批判の論陣を張った野党やマスメディア、それに市井の反安倍政権の人々の抵抗がいたって弱かったことだ。裁量労働制のデータ偽造の際にあれほど注目された上西充子氏が、各紙の報道を比較してそれを批判したツイートを上げても、彼らの反応は鈍かった。朝日新聞や東京新聞が、委員会強行採決の翌日の社会面に取り上げなかったことが、「怒りの温度」のどうしようもない低さを示している。

 11年前に同じ安倍晋三がホワイトカラーエグゼンプションを労働基準法に盛り込もうとした時とは、あまりにも違い過ぎる。これもつしまようへい氏のツイートから引用する。

https://twitter.com/yohei_tsushima/status/1000189039905914880

約10年前、安倍首相がホワイトカラー・エグゼンプションを断念したとき、なんて言ったか。 「現段階で国民の理解が得られているとは思わない。働く人たちの理解がなければうまくいかない」 今回も理解は得られていない。世論調査でも明らか。でも強行採決した 今の政権の強引さを表している。


 当時の状況で思い出されるのは、第1次安倍内閣発足直後から、『週刊現代』と『週刊ポスト』の2誌が競って安倍政権批判を展開し、ホワイトカラーエグゼンプションは「残業ただ働き法案」とあだ名をつけられて徹底的に叩かれた。内閣支持率は急落し、自民党からも労基法「改正」に慎重論が続出して、安倍晋三はあっけなく法案の改正案提出断念に追い込まれたのだった。

 だが今回はそれもない。前回から今回までの間に、2度政権交代があって、そのたびに(つまり民主党への政権交代時も含めて)「官邸主導」が強まり、その結果自民党内から高プロを見送るべきだという反対意見は出なくなった。また世論の反発も弱く、5月に入ってから(連休直後にはよくあることとはいえ)内閣支持率がわずかながら上昇するありさまだった。

 それにも増して違ったのは野党の態度だ。私が一番呆れたのは、今回の「働かせ方改革」法案強行採決の直前に共産党の志位和夫が上げたツイートだった。

https://twitter.com/shiikazuo/status/999598901098246144

「小泉元首相、池田氏にエール」 小泉純一郎元首相からの嬉しいエールです! 今日から開始された新潟県知事選挙! 「原発ゼロ」の声を新潟から発信しよう! 私も2日には応援にうかがいます!


 前述のように、小泉政権時代に派遣労働が製造業に解禁になった。これと、派遣労働の対象を一部限定から原則容認へと変えた1999年(小渕政権時代)の二度の法改正が、派遣労働による貧困を招く元凶となった。

 小泉純一郎は、それにとどまらず竹中平蔵と組んで新自由主義の悪政を敷いた。なんと言っても「格差のどこが悪いんですか」と国会の答弁で言い放った男だ。そんな小泉が新潟県知事で「野党共闘」の候補を応援すると言って狂喜する共産党の委員長。これも11年前には考えられなかった光景だ。

 そして、この志位のツイートに「いいね!」をつけた人間がこの記事を書いている時点で1,345人もいる。どうしようもない。これでは「高プロ」が易々と国会を通るはずだ。

 共産党は、今回の「働かせ方改革」法案の審議に関連して、国民民主党、立憲民主党と競うように労働基準法の改正案を出した。残業時間の上限は月45時間、年間360時間というリーズナブルなものだった。これと比べると立民の案では80時間、国民の案では100時間だが、立民の案だと1日平均4時間、国民の案だと同5時間残業させても合法になってしまう。とうてい労働者の側に立った方改正案とは言い難いものだ。それに比べて共産党の案はもっともすぐれている。

 また、同党の機関紙『しんぶん赤旗』の経済面には、欧米では労働生産性と賃金がセットで上昇しているのに対し、日本では、生産性アップの果実が労働者に還元されておらず、大企業の内部留保と高額の役員報酬に消えてしまっていることを指摘する記事が、それを一目瞭然で示すグラフとともに掲載されたという。これは、共産党系の「カクサン部長」氏のツイート(下記URL)に示されている。
https://twitter.com/kakusanbuchoo/status/999607445126172673

 こうしたせっかくの下部の活動をぶち壊しにしているのが、小泉純一郎の新潟県知事選応援に狂喜し、昨年秋には希望の党設立に小沢一郎が関与したことを不問に付した上、岩手3区で小沢を支援までさせた志位執行部だというほかない。

 これは、土台と上部構造とが合致していない状態にしか私は見えないが、このように土台と乖離した上部構造を守っているのが「民主集中制」なのではないか。強い疑問を感じる。

 もちろん、問題は共産党だけにあるのではない。微温的な労働基準法改正案しか出せなかった立憲民主党や国民民主党なども強く批判されるべきだし、与党でも25年前に裁量労働制についての質問をした「石田(祝)委員」というのは、現在も公明党衆院議員を務める石田祝稔のことではないだろうか(議事録の一番最初にフルネームが記載されている)。その石田は、今後行われる衆院本会議での採決では間違いなく法案に賛成票を投じるはずだ。

 自民党に至ってはもう論外で、委員会採決の時にぴょんぴょん跳び跳ねながら両手を振り上げて議員の規律を促すなど、軽薄に喜んでいた堀内詔子という議員は、希望の党から立候補して落選した小沢一郎系の元衆院議員・木内孝胤のさらに上を行く、究極の超エスタブリッシュメント階級の世襲議員だ。なんと、明治の元勲・大久保利通から数えて6代目の人で、係累や配偶者には歴代のエスタブリッシュメントたちが目白押しだ。山梨の選挙民は、よくこんな人に投票したものだと呆れ返る。

 この堀内詔子のような議員を抱えた「階級政党」たる自民党がゴリ押しした「働かせ方改革」法案によって日本の労働者はますます疲弊し、国力は衰える一方だ。深い絶望感を抱かずにはいられない。
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厳しい意見がかえって空転し、左翼サイドの鼻つまみ扱いされる。
これも崩壊の時代たる由縁かもしれませんね。
それでも、言うべき意見は言うべきだと思います。後世のためにも。
応援してます。

2018.06.16 21:08 URL | 朱の盤 #oa/5Bao6 [ 編集 ]

http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20180612

以下のブログをアベノミクス支持者であるお前がよく読めやクソブロガー。
http://totb.hatenablog.com/entry/2018/06/16/104424
金融緩和だけをすればすべてうまくいくと妄言を振りまいたアベノミクス支持者ども。

「今後立憲民主党がかつての民主党のような新自由主義色を強めることがないかどうか、厳しい監視と批判が必要だ。」とあるが上記のブログだと
「自民党がネオリベラル化したために、主要政党がすべて広義のリベラル政党となり、日本の伝統・歴史・文化や国民生活を重視する保守勢力がほぼ絶滅してしまいました。」
と主張しているがクソブロガーは自民党の厳しい監視と批判は必要だと思っていないのでしょうか?

2018.06.17 00:36 URL | #- [ 編集 ]

アベノミクス支持者の屑。これどうするんだよ。

https://asahi.5ch.net/test/read.cgi/newsplus/1529668497/

2018.06.23 19:50 URL | #- [ 編集 ]













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