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きまぐれな日々

 予想通り何の成果もなかった日露首脳会談のあと、安倍晋三はNHKとテレビ朝日とTBSのそれぞれのニュース番組に出演して成果をアピールしたらしい。私はテレビ朝日の『報道ステーション』を見ようとしてテレビをつけたら安倍晋三が破顔一笑しているシーンだったのでテレビを消したため見ていない。その後の『NEWS23』も、そもそも毎週金曜日はほとんど見ないので、安倍晋三の不愉快な姿を見ずに済んだ。

 その日露首脳会談について、おそらく読売新聞や産経新聞は「成果」を大々的にアピールしているだろうが、朝日新聞は比較的冷淡な報道だったように思うし、毎日新聞や東京新聞はそれなりに「酷評」しているようだ。たとえば毎日の社説は「首脳同士では異例の頻度で会談を重ね、領土問題を解決しようとしてきた安倍首相の努力は評価したい」としながらも、

だが、むしろ領土交渉の土台は、1回目の「4島」から、2回目は「2島」へ、そして今回は事実上「0島」からの出発へと大きく後退してしまった印象を受ける。

と論評している。

 一方ネトウヨは、どうやら「北方領土などどうでも良い。中国に対抗するためならロシアへの譲歩は止むを得ない」などと言っているようだ。90年代くらいから、反中・反韓に凝り固まるネトウヨの行き着いた姿だが、1980年前後の右翼を覚えている私としては隔世の感がある。

 今を去ること36年、1980年12月の朝日新聞1面左上に掲載された連載記事は、「ソ連脅威論」への懐疑を示した「ソ連は脅威か」だった。この連載記事は右翼の猛反発を受け、同じ朝日新聞社が出していた(現在は朝日新聞出版から刊行)『週刊朝日』で巻末のコラムを書いていた朝日新聞編集委員にして右翼として知られた百目鬼恭三郎が自社の連載記事を批判していたことを覚えている。当時の『週刊朝日』は東の百目鬼、西の谷沢(たにざわ)永一(ともに故人)という東西の右翼言論人に「おきゃがれ あほかいな」と題したコラムを書かせていた。新左翼に迎合する『朝日ジャーナル』と保守層に迎合する『週刊朝日』で、朝日新聞本紙の論調に不満を持つ読者層をなだめるという「朝日商法」といえた。それは今も健在で、部数が昔より相当減った『週刊朝日』は「小沢信者」的な体制批判層を読者のターゲットにしている。だから、私の大嫌いな室井佑月がコラムを持っているのである。

 朝日をめぐる昔話にそれてしまったが、昔の右翼と言えば「反ソ」と相場が決まっていた。いや、ソ連は左翼からも敵視されていて、同じ朝日新聞の本多勝一は昔も今も大のソ連(ロシア)嫌いであって、日本共産党の「全千島返還論」を熱烈に支持している。今回の日露首脳会談についての共産党の志位委員長の談話(『しんぶん赤旗』)も、

 第一に、ロシア側は、これは「ロシアの主権の下で行われる」とくりかえし表明している。「共同経済活動」の具体化の過程で、日本の領土に対する主権が損なわれることが懸念される。

 第二に、ロシアによるクリミア併合に対して、G7、EUなど国際社会が経済制裁を行うもとで、日本がロシアとの経済協力を進めることは、対ロシアの国際的な取り組みを崩すことになりかねない。

としてロシアとそれに迎合する安倍政権を強く批判している。

 共産党の立場は1980年と今とで全くブレていないが、ネトウヨ(1980年当時の右翼)の態度は180度変わった。もちろんその間には冷戦の終結があったわけだが、この事例から類推して、今から36年後の2052年には(私自身はそれを目にすることができない可能性が高いが)、右翼の言うことは今とは全然違うんだろうなと想像する。

 なお、私自身は日本には日本独自の外交があっても良く、必ずしもいつもいつもアメリカやヨーロッパと共同歩調を取る必要もないと思うが、安倍晋三のような「中国に対抗するため」という下心に基づいたロシアへの接近など愚の骨頂だという認識だ。

 たとえばシリアの内戦について、在日シリア人たちが「プーチン出て行け」と抗議デモを行うことは理解するが、日本のリベラル・左派が「プーチンを逮捕せよ」とデモを行ったらしいことについては、それよりも小泉純一郎のイラク戦争加担の責任を不問に付したまま、小泉が「脱原発」派に転向したくらいで仲間扱いする「リベラル」仲間たちをどうにかしろよ、と思ってしまうのだ。小泉を不問に付すことは、今後相当に高い確率で予想される、あの極右にして新自由主義者である小池百合子を担いだ新自由主義勢力の再台頭を許すことに直結することを強く危惧するからだ。

 その兆候は、都議会公明が自民党との連立を解消すると表明したことで、ついに表面化した。また国政でも、カジノ法案で公明党が自主投票を行い、山口代表が法案への反対票を投じた。都議会公明の動きが国政に波及する可能性があり、今後自公の間で水面下で活発な駆け引きが行われるだろう。民進党代表の蓮舫は、先週の記事で批判した通り、早々と来年夏の都議選での小池百合子への協力の意向を表明した。

 今夏の東京都知事選の頃から、私は「反小池」の論陣をずっと張っているが、その評判は全くはかばかしくなく、『kojitakenの日記』でも、小池を取り上げた記事は他の記事と比べてアクセス数が減る。同日記の読者であっても、私の「反小池」論を快く思わないか、または反発する読者は少なくないのだろうと想像している。

 さとうしゅういちさんの『広島瀬戸内新聞ニュース』は、「都会保守」が「小池百合子東京都知事を担ぐ形で、公明党と大都市インテリを支持基盤とした新『新進党』」を結成し、政権奪取を狙っていると看破する。そして、「都会の新自由主義者+公明党」とは「22年前に結成された新進党そのもの」で、経済政策においては今の安倍晋三や自民党と比べてもさらに緊縮指向(「サービスの小さな政府」指向)で新自由主義的であり、日中関係改善は狙うものの、自衛隊の海外派兵を行う点では現在の自民党の狙いと同じ、と分析している。

 そして、「今の安倍政治でも、大型ハコモノや海外ばらまきの一方で、社会保障切り捨てなど問題だらけ」だが、「新・新進党」の小池政権ができたとしたら、それは安倍政権以上に「弱者や地方切り捨て」を行う冷酷非情な政権になるだろうと予想する。

 何より危惧されるのは、「安倍批判が、小池持ち上げ、新自由主義の新『新進党』に回収される危険がある。言い換えれば大都市のインテリを中心に、安倍総理の田舎自民的な要素にくしの勢い余ってクリントン(の悪い部分を特に凝縮した)的な小池に回帰する危険がある」ことだとする。その傾向は既に表れていて、私は例によって行儀悪く『kojitakenの日記』でブログ名を名指しで批判した。「小池百合子は安倍晋三と同じ」と強く主張される方もおられるし、2人はともに極右の要素と新自由主義の要素を併せ持っていることは事実だが、思想信条の基本が国家主義であるのが安倍晋三で、新自由主義であるのが小池百合子だという違いがあると私は考える。そしてそのことは、安倍晋三には強く反発するのに、小池百合子を軸とする「小公民」の動きには「ワクワクすると共に」「期待する」と正直に表明した都会保守(本人はリベラルのつもりだろうが)のブロガー氏の存在によって証明されていると思うのだ。同様に、その昔日本新党だの新進党だのに期待した人たちには、「安倍は嫌いだけど小池には期待する」人たちが少なくなかろうと私は見ている。

 『広島瀬戸内新聞ニュース』は「安倍総理の社会保障切り捨てや歴代自民党同様の教育への冷淡さは批判しつつも、欧州左翼に倣った反緊縮をきちんと野党や市民連合は打ち出すべき」で、「間違っても小池持ち上げに走ってはいけない」と主張する。もちろん私も全面的に賛成だ。

 特に、蓮舫がわけのわからないことを口走った民進党について、 『広島瀬戸内新聞ニュース』は「25年前の都知事選挙後に新自由主義のチャンピオンだった鈴木俊一にすり寄って滅亡した東京の社会党の二の舞は避けなければいけない」と強く警告する。これまた本当にその通りだ。

 現在の欧米は、グローバリズムの弊害を受けて排外主義に走る極右政治勢力の台頭に揺れているが、日本ではいち早く2012年に安倍政権が再成立して、欧米を先取りしているというのが私の認識だ。そして、欧米では極右に取って代わられようとしているグローバリズム指向の新自由主義勢力のさらなる巻き返しが起きようとしているのが現在の小池一派の台頭だと見るべきだろう。

 残念ながら、日本では欧州左翼的な勢力が育たずに今に至ってしまった。今のままだと、来年、テレビの熱狂的な後押しを受けた「オルトオルトライト」(その実態は新自由主義の反動でしかないから、確かに「リライト」なのかもしれないが)とでもいうべき政治勢力の巻き返しがさらに激化することが予想される。衆院選が都議選の前になるのかあとになるのかさえ不透明だと私は思っているが、その新たな戦局において、リベラル(あえて括弧はつけない)が「オルトオルトライト」または「リライト」である新自由主義勢力に回収されてしまうようでは、日本の未来には絶望しかなくなるとの強い危機感を私は持っている。

 他方で、ようやく900万アクセスに到達したものの、このブログの幕引きを考えざるを得ない状態になったと自覚する今日この頃ではあるが、どのような形であれ、元気な間は意見発信を続けていこうと考えている。
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嵐の夜の灯台と、貴ブログを愛読、頼りにしておりました。「幕引き」は残念ですが、「元気な間は意見発信を続けてい」かれるとのこと、楽しみにしています。

2016.12.19 10:40 URL | redkitty #- [ 編集 ]

右翼がプーチンに好意的なのは、ソ連が崩壊したからだと思います。彼らは反共ならネオナチでも新保守主義でもなんでもありです。 だから独裁的で人権や平和など全く重視しない、社会主義を放棄したロシアには共鳴できるのだと思う。まあ、ソ連型社会主義をどう評価するかとか、社会主義はやめたけど独裁は残して資本主義を導入してるとか中国も一緒じゃんとか、そういうことは気にしないんでしょう。
重要なのは革命とか社会主義とか言わなくなった独裁国家へとロシアが変わったことであり、さらに人権とか民主主義とかロシアが言わないこと。自民党や小沢信者や世界の極右からプーチンが大人気なのはそういうところなんだと思います。
ルペンやトランプみたいにお金を貰ってればなおさらでしょう。
日本人の右派から見れば、ソ連や東欧のようなタイプの社会主義国も、世界中にある社会党や労働党や共産党などの社会主義政党も全て「アカ」であって同じものであり、それ以外の右派は保守党だろうが共和党だろうがネオナチ党だろうが仲間という扱いなんだと思います。
大日本帝国を取り戻すのが悲願の自民党がなぜかアメリカ共和党のことを仲間だと思っていたり、鈴木邦男あたりがバース党や欧州極右と仲良しだったりするのもそういうことなんだろうかと。日本の右派は過去の主張とか思想とか全く気にしないで、平和とか人権とかエコとか言わない、左翼っぽくない連中は全て共闘の対象なんでしょう

2016.12.21 12:39 URL | 竹下 #- [ 編集 ]













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