きまぐれな日々

 昨日(24日)投開票が行われた衆院北海道5区補選について、前回の記事

事前のマスメディアの世論調査で大激戦とされていながら、蓋を開けてみると自公候補の圧勝に終わった年初の宜野湾市長選の悪夢が脳裏をよぎる。

と書いたが、その悪い予感は現実になった。

 衆院北海道5区補選は、自民党の和田義明候補が「野党共闘」の池田真紀候補を破って当選した。得票数は和田義明が135,842票、池田真紀が123,517票。12,325票の差がついた。池田候補よりちょうど1割多い票を和田候補が獲得したわけだ。これを「僅差」とみるわけにはいかない。予想外の大差がついたと言わねばならない。

 今回はあまりにもわかりやすい結果だったから、どこでも同じようなことが言われるに違いない。選挙前、よくTBSのニュースなどが、2014年の衆院選で故町村信孝が獲得した票と、民主・共産両党の候補が獲得した票の合計とはほぼ拮抗すると言っていた。2014年総選挙では投票率が58.43%で、町村が131,394票、民主・共産両党候補の得票の合計は126,498票だった。今回は投票率(57.63%)で14年総選挙をわずかに下回ったが、自民党候補の得票が4千票増え、「野党共闘」候補の得票は前回の民共票の合計より3千票減らした。だから前回の5千票差から1万2千票差に拡大した。

 さらに遡ると、2012年の衆院選では、投票率が60.18%、町村が128,435票、野党3党(民主、みんな、共産)の得票数合計が131,522票と、野党の得票数が町村を3千票上回っていた。また2010年10月の補選では投票率が53.48%、町村が125,636票、民共の得票数合計が109,718票だった。2009年の「政権交代総選挙」は投票率が76.32%と高く、町村も151,448票を獲得したものの、民主党の小林千代美が182,952票を獲得して圧勝した。この選挙では共産党は公認候補を立てなかった。

 上記直近5回の選挙からいえることは、まず無党派層の支持をつかまなければ自民党候補には勝てないということだ。昨日の東京は朝方天気が荒れたが、北海道5区では好天だったと聞く。しかし投票率は上がらなかった。「野党共闘」が無党派層の心をつかみ切れなかったことは明らかだ。

 さらに、より不気味なのは、「政権交代ブーム」に煽られて敵の町村信孝の得票も伸びた2009年及びそれ以前の選挙を除外して考えると、自民党候補の得票が徐々に増え続けていることだ。今回は、和田義明がどう見ても魅力に乏しい候補だった一方、池田真紀が共産党支持者にも投票しやすい印象の候補であったにもかかわらずこのような結果になった。先週の週刊文春だったかの保守系週刊誌が、民共共闘を「弱者連合」と評していたが、リベラル系メディアの多くは共産党は党勢を伸ばしていると書いていた。しかし私は、民進党も共産党もともに党勢は衰退傾向だとみていた。共産党は「国民連合政府」を言い出した昨年秋から急に党勢に翳りが見え始めた(それを象徴するのが2月の京都市長選における惨敗だった)。民進党に至っては泡沫政党・維新の党を吸収合併する以前と比較しても政党支持率を落としている。私は、「民進党」なる、かつての小沢一郎の「新進党」を思わせる政党名も災いしているのではないかと強く疑っている。つまり「野党共闘」の左右両翼(共産党と民進党)がともに有権者の心をつかめていない。

 今回の選挙以上に各党候補の得票数が少なかった1996年の衆院選の選挙結果を振り返ると興味深い。この時は町村が113,282票、新進党候補が61,846票、共産党候補が44,885票だった、進共候補の得票数合計は106,731票であり、町村の票に及ばなかった。そして新進党とはいわずとしれた小沢一郎肝煎りの野合政党だった。20年前に小沢が仕掛けた「政権交代可能な二大政党制」を有権者は支持しなかったが、現在の「野党共闘」にも同じことがいえるのではないかと思う。

 ところで、今朝(4/25)の朝日新聞1面トップの見出しは「同日選 首相見送り」(東京本社発行最終版)だった。産経は5日前に書いていたが、朝日が追随した。また北海道5区の補選を報じる毎日の記事(下記URL)にはこんなことが書いてあった。
http://mainichi.jp/senkyo/articles/20160425/ddm/001/010/200000c

(前略)参院選前の大きなハードルだった補選を乗り切ったことで、消費増税をめぐる判断など、政権運営の選択肢は広がったとみられる。ただ、北海道5区補選の選挙戦は、政府・与党幹部らの想定以上の激戦となった。安倍政権の支持率は堅調だが、経済回復の足取りが鈍いことやアベノミクスの恩恵が地方に届いていないことへの批判が影響したとの指摘もある。政府・与党は参院選に向けた対応をあらためて検討する。

 自民党内には北海道5区補選に負けた場合、野党共闘が進む参院選の議席減も免れないとして、衆院を解散し「政権選択の選挙」となる衆参同日選を実施するよう求める声があった。だが、熊本地震で被災地自治体の負担が大きくなることに加え、北海道5区補選で勝利したことから、党内からは首相が同日選を決断する可能性は遠のいたとの見方が出ている。【高本耕太】

(毎日新聞 2016年4月25日 東京朝刊)


 「消費増税をめぐる判断など、政権運営の選択肢は広がった」とはどういうことだろうか。「永田町文学」の影響を受けた「竹橋文学」でもあるのか、意味をとりにくいが、「これで消費税率引き上げ延期を表明して、それを焦点にして衆参同日選挙を戦わなくても良くなった」と言うことなのだろうか。同じことを「築地文学」(朝日新聞)はこう表現する。

 一方、来年4月に予定する消費税率10%への引き上げについて、首相は衆参同日選とは切り離して判断する考えだ。

(25日付朝日新聞1面掲載記事「同日選 首相見送り」より。朝日新聞デジタルの無料公開範囲には含まれていない)


 こちらも毎日の記事と同様、安倍晋三は消費税増税延期を表明して衆参同日選挙の争点にしなくても良くなった、と書いているようにも読める。しかし朝日の記事はそれに続いて

政府・与党内では「熊本地震と世界経済の縮小を合わせれば、増税延期の理由になる」(自民党幹部)との声が出ており、増税は難しいとの見方が強まっている。

とも書かれている。さらに朝日2面の政局解説記事を読むと、

(前略)安倍首相は2014年末、消費増税の先送りを理由に衆院解散に踏み切った。今回も同じシナリオが予想されていたが、ある閣僚経験者は「増税して信を問わなくても、消費増税先送りを世論は受け入れる。解散しなくてもいいようになった」。これも、震災対応を理由として期待する。

などと書かれている。

 だがこれも変な記事だ。「消費増税先送り」を受け入れてこなかったのは、「世論」などではなく朝日や毎日など「リベラル」系の新聞ではなかったか。そして、安倍晋三は「増税して信を問わなくても、消費増税先送りを世論は受け入れる」からではなく、震災が起きたのに政局にかまけて衆院を解散するとは何事か、と批判を受けて、せっかく消費増税策送りを切り札にするつもりができなくなることを恐れている、というのが本当のところなのではないか。

 また逆に、5月に消費税増税延期を安倍晋三が表明するなら、安倍は1986年に中曽根康弘がやったような「死んだふり解散」をやるのではないかとの疑念がどうしても拭えないのである。

 今回の北海道5区の補選の結果を見ると、6月1日に衆院を解散して衆参同日選挙をやれば、自民党が圧勝して大手を振って改憲に踏み切れる、と安倍晋三が踏んだとしても驚くには当たらないのではないか。そう思わされる補選の結果だった。
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実際、各種出口調査を見ると無党派層では池田に票を投じたのが多いんですよね。しかし、その投票者数の政党支持では自民党支持が無党派層よりも倍近くになっていて“多数派”だったりします。

何と言うのか、有権者の多くは民主党中止の連立政権・その前の「非自民」連立や「自社さ」連立を経験してますけど、(今回の震災対応とかも含めて)自民党政権よりは余り成果を残していない・寧ろ政争にかまけていたという「悪印象」が大きくて、やはり昔ながらの「保守」だ・自民党だって信頼感みたいなのに繋がっているとこが大きいと自分は思います。

あとTPPでかなり影響を受けるという農村部で、和田が池田に対しかなり差をつけているのが印象的だったんですよね。野党統一候補ってこともあって池田もTPPに関してはかなり積極的に訴えていたのでしょうけど、当の農業の現場ではTPPが決まった以上は仕方がない→寧ろ「攻める農業」で生き残りをという具合で商社マン出身の和田の方に支持が広がった感もありますね。その上、経済政策や社会政策では批判はしていても与党以上に有効なものを提示できていない、民主→民進が比較的強いという都市部でも池田が和田に迫られているって背景には(経済・社会政策より安保法制や憲法と言った“大文字”の話題で喧々囂々としていた)そういう政策面での“疎外”色付きの文字 http://amzn.to/1WkN5pU が大きかったって気もします。

2016.04.25 08:59 URL | 杉山真大 #- [ 編集 ]

野党共闘だけが安倍政権打倒の唯一の方向性みたいな空気には耐えがたい欺瞞を感じるが、かといってほかに選択肢はないんなら、投票くらい行ったっていいのに、と思うが。一部に言われるガチガチ選挙戦からの疎外だの孤独だのって、ぴんとこないけど、辺見庸的鬱みたいなもんが蔓延してますかね。

2016.05.01 04:25 URL | #ZaUT1M7A [ 編集 ]













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