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きまぐれな日々

 新年度最初の更新。今月16日でこのブログは開設10周年を迎えるが、次々回(18日記事公開予定)まで続けば、1つの目標をクリアすることになる。

 先週が年度の切り替わる週だったが、3月31日に「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)は2015年度の運用実績の公表日を今年7月29日に設定した。参院選(または衆参同日選挙)の直後に当たるが、過去5年間はいずれも7月2日から10日の間に公表されてきたことと、昨年度(2015年4月〜2016年3月)の株価などから昨年度の年金資金運用はおよそ5兆円の損失となったと見込まれることから、野党は「公表を参院選後に先送りする『損失隠し』だ」(民進党・井坂信彦議員@衆院厚生労働委員会)などと反発している(以上、4月1日付毎日新聞記事及び4月3日付中日新聞記事を参照した)。

 この件に関して、年金マネーをリスクに晒すとは怪しからんというのは当然であって、たとえば前記中日新聞記事は

GPIFは安倍政権の方針に基づき一四年秋以降、運用資産のうち国債の比率を下げる一方、株式投資の比率を倍増させたが、中国経済の減速などに伴う世界的な株安もあり、裏目に出ている。変動の大きい株式を主軸に年金を運用する政策の是非が問われそうだ。

と書いている。

 ここで「一四年秋以降」とあるが、安倍政権が株式投資の運用比率倍増を行わせるのを決定したのは2014年8月だ。この頃、安倍晋三が何をやろうとしていたかというと、それは衆議院の解散・総選挙である。つまり、安倍晋三は衆院選に自民党を勝たせるためだけに株価を引き上げようとしたということだ。そしてその狙いはまんまと当たった。

 2014年当時の安倍晋三は、目先の衆院選に勝つことしか頭になかった。その後2015年4月に日経平均株価が2万円を超えた頃をピークにして株価は下落に転じたが、そうすると今度は運用実績を隠そうというわけだ。あまりにもわかりやすい。

 安倍晋三が来月「決断」するであろう(実は安倍晋三の本心ではとっくの昔に「決断」済みであるいることは今さら言うまでもないのだが)「消費税率引き上げ延期」も、わざわざスティグリッツやクルーグマンといったアメリカのノーベル賞経済学者(しかもリベラル系)を来日させて、消費税率引き上げ延期の推奨というお墨付きをいただいたりしているが、これもすべて衆参同日選挙に自民党を圧勝させるためだ。そして、衆参同日選挙に自民が圧勝したあとに安倍晋三がやることは決まっている。「憲法改正」(以下「改憲」。もちろん実質は憲法改悪あるいは「壊憲」)である。

 つまり、GPIFの株式運用比率引き上げも、スティグリッツやクルーグマンを来日させたのも、すべては改憲のためである。そして、安倍晋三がなぜ改憲に執念を燃やすかというと、それは「敬愛する(母方の)祖父」・岸信介がやろうとして果たせなかったことだからである。

 辺見庸は安倍晋三を「知的劣等感のかたまり」と評し、

A(安倍晋三=引用者註)の顔のばあい、とりわけ「取り返しのつかない仕方で露出している」のは、無知と暴力と嘘と劣等感である。

とまで書くが(『もう戦争が始まっている』,河出書房新社)、本当にその通りだと私も思う。

 「でも、東大法学部で我妻栄と首席を争ったおじいちゃんにもできなかった『改憲』をボクは成し遂げたんだ」。そう言える日に向かってひたすら執念を燃やし続けるルサンチマン(恨みの念。ニーチェの用語では、強者に対し仕返しを欲して鬱結した弱者の心)の塊。それが安倍晋三なのだ。安倍政権の経済政策もGPIFもスティグリッツもクルーグマンも、安倍にとっては自らの野望のための道具に過ぎない。普通国のトップの権力者は国益を第一に考えて行動するものだと思うが、安倍晋三の場合は私怨を晴らすために行動している。そんな安倍から容易に連想されるのは昔のドイツの独裁者だ。

 そんな独裁者のわがまま勝手のために、この国が、そして平和的生存権どころか「平和的」のつかない生存権までもが脅かされる。この理不尽さに怒らなくて良いのか、と思う。

 しかし残念ながらそんなことを考えるのは少数派のようだ。このブログを始めた10年前の2006年、私は「安倍晋三を終わらせる」という意味の「AbEnd」という造語をブログキャンペーンのために編み出したが、それに賛同した当時はリベラルだったブログ運営者の中にも、今では「反・反原発」をこじらせて今や「安倍政権の消極的支持」を言っている者さえいる。「木を見て森を見ず」とはこのことだ。

 安倍晋三に利用されたスティグリッツやクルーグマンを批判する向きもあるが、たとえばスティグリッツが来日した時のプレゼンテーション資料(官邸による和訳はこちら)を見れば、スティグリッツの本意はわかるはずだし、スティグリッツは各国の政府に向けて同様の講演をして回っているらしく、それをまとめた本の和訳『スティグリッツ教授のこれから始まる「新しい世界経済」の教科書』(徳間書店)を昨日買ってしまった。スティグリッツのプレゼン資料の和訳に、参照資料としてこの本が挙げられていたからだ。

 本はまだ1ページも読んでいないが、リベラル・左派が撃つべきはスティグリッツやクルーグマンではなく安倍晋三であることは当たり前だ。

 皆の衆、もっともっと怒れ、安倍晋三を倒せ!と、アジテーションで始める新年度なのであった。
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自分も発売されて数日で購入して大急ぎで書評 http://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/R2Q6OEFPC111G8/ref=cm_cr_pr_rvw_ttl?ie=UTF8&ASIN=4272140620 を書きましたけど、「アベ政治を止めたければ本書を読め!」 の一言だけでも充分なくらい有効な安倍批判の一冊ですよ。無論、クルーグマンやスティグリッツ更にはピケティやエマニュエル=トッドの発言まで引用されていて、政権側のプロパガンダに踊らされて「安倍はケインジアン政策」などと言っているバカの目を覚まさせるにはいいクスリになるかも知れませんがw

2016.04.04 08:30 URL | 杉山真大 #- [ 編集 ]

このコメントは管理者の承認待ちです

2016.04.04 19:04  | # [ 編集 ]

狂信的な日本軍国主義者、日本帝国主義者でA級戦犯だった岸信介。
戦後も反省することなく、ひたすら日本軍国主義復活、日本帝国主義復活の夢を追い続けていました。
彼に心酔いしている孫の安倍晋三。
母方の祖父の悲願を果たすために、アベノミクスなどと称し「経済」をちらつかせることで支持率を維持、そして選挙でも「経済」を前面に打ち出し本音の改憲は封印、そして選挙で圧勝し「国民の信任を得た」と称して改憲にもっていくのが彼の描いているシナリオでしょう。
改憲の最大のターゲットは勿論「第九条」です。

2016.04.09 23:03 URL | 風てん #- [ 編集 ]













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[読書]昨日買った本
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-1434.html#comment19483 安倍の一連の経済政策が「すべては改憲のため」っていうのは、松尾匡が『この経済政策が民主主義を救う』 http://amzn.to/1SGym89 で指摘してますね。 自分も発売されて数日で購入して大急ぎで書評 http:/

2016.04.05 00:27 | kojitakenの日記