『リテラ』の田部祥太は星浩について「保守寄りの記者だった星氏に期待などできそうにない」と書いているが、この文面だと自民党寄り、安倍政権寄りという意味にとってしまう人もいるかもしれない。しかし、先週も書いたと思うが、実際には星は民主党(現民進党)寄りにして経済右派の記者だ。つまり必ずしも自民党寄りではなく、民進党の岡田克也や野田佳彦に立場が近いとみられる。懸念されるのは、今年5月に安倍晋三が間違いなく打ち出す消費税増税延期に対して星が財政右派の立場から批判するコメントを発することだ。TBSのニュースでこれをやると、星のコメントは民進党の立場の代弁と見られて、「民進党(特に従来の民主党)=本音では消費増税派」との印象を与え、参院選というよりおそらく衆参同日選挙になるだろうが、これを自民党有利に働かせる可能性がある。もっとも民進党のスタンスは、枝野幸男が理解不能の言葉で共産、社民、生活の3党が提示した「消費税率10%への引き上げ凍結」を盛り込んだ法案の原案に難色を示したことからも明らかなように消費増税の凍結または延期に対して実際に及び腰なのだから、この政党に期待せよという方が無理だ。
さて先週マスメディアが大きく取り上げたのはベルギーのテロだったが、テロの容疑者が同国の原子力施設を攻撃する計画を立てることが報じられている。
http://www.asahi.com/articles/ASJ3T5SJ7J3TUHBI02H.html
原子力施設もテロ標的か ベルギーテロ容疑者が襲撃計画
ブリュッセル=吉田美智子、青田秀樹
2016年3月26日09時36分
死傷者約300人を出したベルギー連続テロの容疑者が、原子力施設の襲撃を検討していた疑いがあることが25日までに分かった。フランスでは24日、ベルギーやパリ同時多発テロの容疑者と同じグループの男が逮捕され、新たなテロ計画が発覚した。これまでに実行に移されたのは計画の一部にすぎない恐れがあり、当局は実態解明を急ぐ。
原子力施設の襲撃を計画していたのは、ベルギーのテロで自爆死したイブラヒム・バクラウィ(29)、ハリド・バクラウィ(27)の両容疑者らとみられる。
地元紙DHなどによると、2人は同国北部モルの原子力施設に勤める技術者の動向をひそかに撮影していた。技術者は、ベルギーの原子力研究の責任者の一人とされる。動画は昨年末、パリのテロに関連した家宅捜索で押収された。
ベルギーでは中部ティアンジュと北部ドールの2カ所で原発が稼働している。治安当局は原発などの警備を強化し、2月から計140人の兵士を配置した。また公共放送RTBFによると、3月中旬以降、ティアンジュ原発の従業員11人が何らかの理由で施設への立ち入りを禁じられた。
連続テロの発生直後には、運転や保守にかかわる必要最小限の作業員以外が原発から退避した。DH紙は「原子力施設へのテロが察知され、標的が空港や地下鉄に切り替えられた可能性がある」と指摘した。
(朝日新聞デジタルより)
ここで想起すべきは、明日3月29日に安保法が施行されることだ。参院選(あるいは衆参同日選挙)まではおとなしくしているに違いないが、選挙が終わったら自衛隊が米軍とともに「テロとの戦い」をやる局面が出てくるだろう。
その一方で、安倍晋三政権は原発再稼働にも前のめりだ。
安倍晋三が自衛隊をアメリカとともに戦う「テロとの戦い」の戦場に送り込んで全能感に浸っている201X年のある日、自称「イスラム国」だか他のグループだかのテロリストに日本の原発が狙われて、日本の広範囲に人が住めなくなる事態だって起こり得るのだ。
そのことを安倍晋三は、政権の要人たちは、自公与党はどう考えているのだろうか。
何も考えていないのではないか。
『オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史』(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)第3巻に、2001年9月11日の同時多発テロの直前に、アメリカの諜報機関はオサマ・ビンラディンがアメリカを攻撃する準備をしているという情報をつかんでおり、ブッシュをはじめチェイニー、ライス、パウエルらブッシュ政権の要人たちへのブリーフィングも行われたが、テロをやられる話など聞きたくもなかったブッシュらによって黙殺されたと、多数の参照文献を根拠に指摘している(「無視された9.11の前兆」249-252頁)。もしかしたら、あの荒唐無稽な「9.11自作自演説」はこうしたブッシュ政権の無為無策を根拠の一つにしているのかもしれない。しかし、ブッシュらがそんなことをすると考えるのは買いかぶりもいいところだ。ブッシュやチェイニーやライスやパウエルは、起きてほしくない出来事のことなど考えたくもなかったので耳を塞いだだけだ、という著者(オリバー・ストーンとピーター・カズニック)の指摘の方がはるかに説得力がある。権力者たちの頭の中など、一般人が想像するのとは全然違って空っぽなのだ(日本を無謀な戦争に引きずり込んだ戦前の指導者たちを想起せよ)。
それと似たことが、2011年3月11日の東電福島第一原発事故についてもいえる。炉心溶融を伴う原発事故の可能性など考えたくもなかった政府・経産省・電力会社によって「安全神話」がでっち上げられ、事故対策を怠っていたツケが東電原発事故を引き起こした。
集団的自衛権を発動して「テロとの戦い」にのめり込んだあげく、テロリストたちがその報復として福井や鹿児島や愛媛の原発を狙うというリスクは間違いなく存在する。四国電力は伊方原発1号機を廃炉にする見返りに同3号機の再稼働をもくろみ、安倍政権はその後押しをしている。瀬戸内海にある伊方原発なんかで重大事故が起きたりテロの対象になったりした日には、四国のみならず九州、中国、近畿の広範囲にわたって人が住めなくなることは確実だ。東部安倍晋三ら政府と自民党は、一方で集団的自衛権を前提とした安保法を成立させ、明日施行されるが、さらに明文改憲のために衆参同日選挙をやろうとしている。それらはすべてが日本のリスクを高める行動であるとしか私には思われない。安倍晋三を筆頭とする安倍政権や自公与党や官僚の要人たちの頭の中も、かつてのブッシュ政権の要人に負けず劣らず空っぽだ。権力の座に登り詰めた人間だろうが市井の人間と知能程度は何も変わらないどころか、ブッシュ・ジュニアと同様最高権力者に祭り上げられた世襲権力者である安倍晋三の場合など、平均レベルの市井の人間と比較しても、その知能程度は明らかに劣る。
第2次安倍内閣が発足して以来、早くも4度目の年度替わりを迎える。日本国民はこんなにも長く、私がいうところの「この人間だけは総理大臣にしてはいけなかった」人間の独裁を許してしまっている。私は以前、いくらなんでも第4次安倍内閣ができることなどあり得ないと一度ならず書いたが、その楽観的な予想が外れることはもはや確実になった。衆参同日選のあとに第4次安倍内閣ができれば、「崩壊の時代」の崩壊の今まで以上にその速度を速めるだろう。なんとか阻止したいものだが、それは日に日に困難さを増す一方だ。
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ただ実際の民進党は、参院選で給付型奨学金の創設・同一労働同一賃金・最低賃金引き上げと「経済左派」的なことを言ってはいるんですよね。
https://twitter.com/kama_yam/status/712464239206604800
http://www.asahi.com/articles/DA3S12271264.html
何というのか消費税引き上げ先送りに民進党自体が慎重になってしまうのも、消費税の引き上げで財源が不足すると結局"代替財源"とやらで福祉政策の縮減を招くって問題意識があるって気もするんですよ。とは言いながら(再分配に寧ろ熱心な)スティグリッツやクルーグマンでさえ消費税引き上げにダメ出しし、政権側が巧い具合に消費税増税の先送りへと世論の支持を導いただけに旗色が悪いばかりかタイミングが悪すぎるとしか・・・・・
ただ、以前の軽減税率でも同様に"代替税源"として福祉政策や給付の縮減が充てられたって経験を鑑みると消費税の増税先送りでも同じ結果になる可能性って決して低くはないかと思います。消費税増税も先送りしたんだから同時の"一体改革"でもやる予定だった福祉関係のもロハに→"代替財源"で福祉政策縮減って嫌な予感がしますから。その上、消費税引き上げ凍結を言い出した党の一つの社民党が、こともあろうに軽減税率推進論者を勉強会に招き http://www5.sdp.or.jp/policy/policy/tax/tax2012_01.htm 国会で公述人として述べさせているのですから唖然としましたよ。この方とはTwitterで散々遣り合った http://togetter.com/li/953809 んですけど当人のTwitterを見ていると陰謀論やら嫌韓・嫌中やらウヨの呟きをRTしたりしていて社民党にしてもこれは酷過ぎるとしか正直"心情的支持者"として嫌な思いをさせられました(嘆
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