被災したとはいえない私でさえ、あの週末のことは忘れようにも忘れられない。ましてや被災された方々や現在も震災や原発事故の悪影響を受けている方々の心情はいかばかりか、察するに余りあるものがある。
一方、懲りないのが安倍晋三政権や自民党の面々であって、彼らに対しては激しい怒りを禁じ得ない。
たとえば自民党の谷垣禎一は、震災5周年の3月11日に、こんなことをほざきやがった。以下11日のTBSニュース(http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2723402.html)より。
自民・谷垣氏、東日本大震災の初動対応検証組織を立ち上げへ
自民党の谷垣幹事長は、東日本大震災の当時の初動対応を検証する組織を党内に立ち上げる考えを明らかにしました。
「5年たちますと、やはり少しみんな冷静になってきて、いろいろな行政関係者等のご発言も出てきているように思います。しっかり検証していくことが、やはり経験を蓄積しておくということが必要じゃないかということですね」(自民党 谷垣禎一幹事長)
自民党の谷垣幹事長はこのように述べ、震災当時の初動対応などを検証する組織を党内に新たに設置する考えを明らかにしました。
検証する内容として、谷垣氏は「原発事故だけでなく津波の対応なども含めて、整理をしたいと思っている」と述べ、当時の民主党政権の対応や東京電力の対応などについて検証するものとみられます。
(TBS「News i」 2016年3月11日 14:16)
何が「震災当時の初動対応などを検証する組織を党内に新たに設置する」だよ、と呆れてしまった。東電原発事故は菅政権が東電の邪魔をしたから3基の原発を炉心溶融に至らせてしまったのであって、そんなことをしなければ「原発は安全」なのだから、自民党政権だったら東電原発事故は起きなかった、とでも言うつもりなのだろうか。
どうやら自民党は、東電原発事故でも得意の「歴史修正主義」に走ろうとしているかのようである。
民主党と維新の党が野合してできる「新党」の名前も公募する(なんでも今日決定らしいが)という野党のていたらくを良いことに、自民党はちょっとつけ上がりすぎだろう。
私は覚えている。谷垣禎一が東電原発事故直後の2011年3月17日に何を言っていたかを。事故当時自民党総裁だった谷垣は同日、「現状では、原発を推進していくことは難しい状況」と述べた。しかしその1週間後には「安定的な電力供給ができないと製造業など維持できるのかという問題もある」と軌道修正した。これは2011年5月5日付朝日新聞に、「自民 原発推進派はや始動 『原子力守る』政策会議発足」との見出しが打たれた記事に基づいて書いているのだが、谷垣がわずか1週間で発言を修正したことは、「党内では『推進派から反発されたため』と受け止められた」と論評されている。
そして、事故から5年も経った今になって、すべてを民主党政権のせいにして原発の「安全神話」の再構築をしようとでもするかのように動く。厚顔無恥も極まれりと言うほかない。
自民党寄りのマスメディアも呼応するかのように動いた。たとえばフジテレビは8日、原子力安全委員会(現・原子力規制委)の委員長だったあの班目春樹にインタビューした内容を報道した。1週間近く経つが、まだその内容は参照できる(http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00318311.html)。呆れたことに、班目は「あんな人を総理にしたから天罰が当たったんじゃないかな、というふうに、このごろ運命論を考えるようになっちゃってますよ(笑)」と言い放った。震災当時似たような暴言を石原慎太郎が吐いたが、当事者の班目本人が「5年も経ったから誰も覚えてないだろう」とばかりに自分の責任を棚に上げたのだ。
リテラはこれを
と評した。また、フジテレビの報道についた「はてなブックマーク」の「人気コメント」7件は、すべて班目を批判するものだった。以下いくつかのコメントを引用する。“原発事故は菅直人を総理にした国民への天罰”──。そんな耳を疑う発言をしたのは、東日本大震災時に原子力安全委員会(現・原子力規制委)の委員長だった班目春樹・東京大学名誉教授だ。
FUKAMACHI 原子力安全委員会の班目春樹元委員長。いろいろと発言もやばいが、他人事のように笑う姿が印象的。わりと必見。
Gl17 脱原発に反感抱く層の主張に「政治マターや党派性で騒ぐな」てのがあるが、そもそも原子力行政と保守政治側の主たる問題対処がこういう「政敵に責任を擦り付ける」メソッドなんだよな。安倍メルマガのデマとか。
snobbishinsomniac こんな男が責任者だったのに菅内閣はよく辛抱強く対応したものだと改めて感じる。自民党政権だったら全ての責任を押し付けられてこんな思い出話などできなかったに違いない。
sotokichi 菅元総理にもいろいろ落ち度はあっただろうけど、事故をこの程度で済ませたのだから及第点。事故に至るまでの主に自民党による原発行政と事故防止の機会をスルーした第1次安倍政権の責任の方が問題。
自民党幹事長・谷垣禎一のありようを見ていると、「自民党政権だったら(班目春樹は)全ての責任を押し付けられてこんな思い出話などできなかったに違いない」とは、本当にその通りだと思える。そして、引用した最後のコメントにある通り、「事故に至るまでの主に自民党による原発行政と事故防止の機会をスルーした第1次安倍政権の責任」の方がよほど問題だろう。
安倍政権と自民党は「一強多弱」の現状に浮かれて、際限なく倫理を弛緩させてしまっている。斜陽国ニッポンのダメさ加減を象徴するありようとしか言いようがないが、このていたらくではいずれまたとんでもない災厄をこの国にもたらしかねない。
せめて、謙虚さを持とうとするくらいの心構えを持てないものか、などというのはないものねだりでしかないのだろう。こんな政権と政権政党は一刻も早くお払い箱にするしかないのだが、日本国民もあの政権を容認していることからもわかるように、意気阻喪してしまっていて、明るい展望は何も持てない「崩壊の時代」の今日この頃なのである。
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福島第一原発の件でここまで自民党が増長できるのも、政権与党の“圧倒的強さ”の問題もさることながら、“反原発”・“脱原発”側の問題も大きいと思いますね。
あの直後に被災地の産品・こと食料品が(福島ばかりか宮城・岩手・茨城まで含めて)放射能に汚染されているとか“脱原発”を名乗る面子が大騒ぎして、それがネットに拡散したとこで反って被災地住民が“脱原発”で騒ぐ文化人・活動家やマスコミへの不信感を強めた訳だったりしますし。最近行われた甲状腺ガン検診でも同様のことが騒がれたりしてするなど未だこうしたことは行われてますし、野党にも少なからず3/11を震災の日ではなく原発災害の日として集会をやってたりする訳ですから、被災者の“脱原発”への不信感が根強くなるのも道理ですよ。
そして何より、“脱原発”が様々なビジネスのネタにされたりニセ科学に付け入る隙を与えたりしたとこがありますよね。震災・原発事故の後に“再生可能エネルギー”とかが持て囃されてメガソーラー(太陽光発電)とか風力発電が持て囃されましたけど、前者は素人工事や国立公園地域まで含めて設置されるなどの問題が起きてますし、後者は低周波公害や景観破壊などを起こして、どちらも別の面で環境問題すら起こしてますから。で、何より“脱原発”絡みでのニセ科学の跳梁跋扈。除染絡みでナノ純銀とかEM菌とかが被災地で売り込まれたりされたばかりか、(原発推進論が地球温暖化絡みで推進された反動もあって)「右も左も無い」地球温暖化否定論が席巻して一部では俗流の反グローバリズムやユダヤ陰謀論まで絡ませた言説まで目にする様になってますし。
何というのか、震災とそれに伴う原発事故を“脱原発”側が「天佑」と見ている(それは自民党などの「天罰」と対称を為してますね)とこがあって、それに“脱原発”人士の少なからず自らを売り込む様な言動に対しても見透かされることがあって、結果的に政権側を利しているって感があります。
2016.03.14 08:28 URL | 杉山真大 #- [ 編集 ]
もうご存知かと思いますが、班目春樹について。鎌仲ひとみ氏が監督した「六ヶ所村ラプソディー」という作品中に登場します。
震災前の発言です。当時と変わらない無責任っぷりには余り驚きません。
ただただ怒りが収まりません。
http://youtu.be/zKwOxJuMhPs
2016.03.14 10:30 URL | とらよし #Xvzk4Y3Q [ 編集 ]
>あの直後に被災地の産品・こと食料品が(福島ばかりか宮城・岩手・茨城まで含めて)放射能に汚染されている
実際に汚染されているのでは?
程度はさておき事故前よりは高いでしょう。
2016.04.16 22:05 URL | Executor #- [ 編集 ]
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