きまぐれな日々

 昨日(2/7)。北朝鮮が「人工衛星」(ミサイル)を発射した。見ていたTBSの「サンデーモーニング」が臨時ニュースで中断し、見たくもない安倍晋三の顔を見てしまった。

 『kojitakenの日記』にも書いたが、一昨日(2/6)未明には、つけっ放しにしていたテレビに映っていた吉木誉絵(よしき・のりえ)という若い極右の女をはじめ、右派の政治学者だかの三浦瑠麗や生活保護バッシングで悪名高い片山さつきらを見てしまい、嫌な週末になりそうだと思ったら、昨日は北朝鮮のミサイルについてコメントする安倍晋三だったというわけだ。祟られたような週末だった。

 北朝鮮のミサイル発射についてはこれ以上触れない。

 今回は、開会中の通常国会における民主党・玉木雄一郎の質問を取り上げる。玉木議員の質問の概略は、民主党のサイトに同党の広報委員会が作成した記事が公開されている(下記URL)。
https://www.dpj.or.jp/article/108294

 前記記事の冒頭部分を引用する。

 衆院予算委員会で3日に行われた2016年度本予算の基本的質疑で、玉木雄一郎議員は(1)マイナス金利決定の情報漏えい(2)「軽減税率」の財源の経済財政諮問会議での検討――等について取り上げ、政府の認識をただした。

(民主党広報委員会作成記事より)



 このうち(1)は事実であるなら明らかに問題のある行為だ。この件に関して、ブルームバーグの下記記事をリンクしておく。
http://www.bloomberg.co.jp/bb/newsarchive/O1WXB66S972K01.html

 (2)について、玉木議員は「軽減税率については、低所得者対策としては給付付き税額控除の方が制度として優れているとあらためて主張」したとのこと(カギ括弧内は民主党サイトからの引用を表す。以下同様)。これも正論だ。給付付き税額控除は、あの新自由主義の親玉であるミルトン・フリードマンの考えた「負の所得税」を応用した政策ではあるが、軽減税率と比較した場合、消費税の逆進性対策としてははるかに優れている。そもそも自公が勝手に合意した「軽減税率」は安倍晋三の裁定という茶番も含めて国民を馬鹿にした話だ。

 しかし、本エントリで私が取り上げたいのは、玉木議員の質問の最後の方にある下記の言葉だ。

「下振れしたのが戻ったからと言ってそれを他の新しい歳出に使っていては財政再建なんてできない。」


 ああ、出た。また「財政再建ガー」か、と思った。このひとことだけで、質問の他の部分にいかに見るべきところがあっても、こりゃダメだと思ってしまう。

 もちろん財政支出の使い方は問題だ。安倍政権のように公共事業偏重ではダメだ。この点は、昨年10月20日にポール・クルーグマンが書いたコラム「Rethinking Japan」についてのリフレ派の経済学者である若田部昌澄・飯田泰之両教授による論評でも指摘されていることだ。

 しかし、同時に必要なのは財政規模の拡大だ。しかるに、玉木センセイは「財政再建ガー」と宣う。これでは、民主党の経済政策は安倍政権のそれにも大きく劣るとしか言いようがない。

 もしかしたら玉木雄一郎は、民主党の方が自民党よりも再分配志向だと考えているのかもしれない。しかし、均衡財政主義とか財政再建原理主義などといわれる考え方は、典型的な新自由主義のドグマだ。財務官僚(旧大蔵官僚)出身の政治家はほぼ例外なくこのドグマに侵されていると私は考えているが、玉木雄一郎はその財務官僚出身の政治家だ(岡田克也も同じかと思い込んでいたが、旧通産省出身だった)。

 古くは福田赳夫や大平正芳も元大蔵官僚だった。1970年に財政再建を言い出したのは福田赳夫で、1978年に総理大臣に就任した大平正芳がこだわったのは「小さな政府」だった。これに対し、1973年を「福祉元年」にしようと言ったのは叩き上げの党人派政治家・田中角栄だった。

 不況下で金融と財政の規模を拡大するという安倍政権の経済政策の当初の宣伝文句はそれなりに正しかったと私は考える。しかしその実態は金融緩和にばかり偏り、財政支出は規模も不十分だった上に支出が公共事業に偏っていた。しかも安倍晋三が2013年秋に14年4月からの消費税率引き上げを決断してそれを実行したために消費は大きく冷え込み、以後景気の回復にストップがかかってしまった。しかも現段階では政権は来年(2017年)4月から最後消費税率を引き上げようとしている。「軽減税率」も消費税率引き上げありきのトンデモ政策だ。

 本来、野党第一党である民主党は、財政支出を拡大して、かつその使い道を前記若田部昌澄の言う「インフラとしての教育、基礎研究、都市部での公共投資」、飯田泰之の言う「公共施設・医療機関・学校・図書館の(建設ではなく)設備・機器の更新,雇用と待遇改善をともなう機能拡充に資金投入をする」などと同じような提言をすべきだと思うのだが、玉木雄一郎が言うのは「財政再建ガー」なのだ。どうしようもない。なお、維新の党は民主党よりさらにひどいデフレ志向の政党であり、両党が合流してできると観測されている「新党」も今の民主党よりも憲法・安全保障政策、経済政策ともにさらに右寄りの政党となり、事実上の安倍政権の補完勢力になることは目に見えている。

 余談だが玉木雄一郎は香川2区選出の四国の民主党で一番選挙に強い、というより四国の選挙区で勝てる唯一の民主党衆院議員だ(2番目に強いのは香川1区の小川淳也=自治・総務官僚=だが、小選挙区では勝てず比例復活で議席を得ている)。

 その玉木は民主党でも有数の右寄りの政治家である。また玉木はどうやら小沢一郎とのパイプもあるらしい。政治思想右派にして経済右派の玉木と親しいとは、小沢も自民党、新生党、新進党や自由党の頃と根っこは変わっていないのかと思う。

 民主党は、安倍晋三が打ち出した「同一労働同一賃金」を「本家取りされた」などと言っているとも聞くが、本家取りも何も、財政再建原理主義に未だにとらわれているあたり、自民党と比較しても何周もの周回遅れになったダメ走者以外の何物でもない。現状では参院選やもしかしたら参院選と同日に行われるかもしれない衆院選でも惨敗必至である。

 現在、反緊縮を掲げる主要政党は共産党しかない。私は参院選でも消去法で、「民主集中制」に鼻をつまみながらも共産党に投票することになると思うが、共産党の得票力には限りがあるうえ、昨日の京都市長選にも見られたように、共産党の党勢もこのところ急降下している。このままでは「富の再分配」は安倍晋三流の国家社会主義に回収されてしまうだけだ。

 民主党の一刻も早い政策の見直しを求める。


[追記](2016.2.9, am.1:27記)

 公開当初、本記事の末尾近くに政治評論家・鈴木哲夫氏に関して、事実誤認に基づく誤った文章を書いていました。お詫びして訂正します(当該の文章は削除して別の文章に差し替えました)。私が犯した事実誤認の詳細については、『kojitakenの日記』の記事「鈴木哲夫氏に関する記事についての訂正と謝罪」(下記URL)をご覧ください。
http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20160209/1454945021
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あのサンデーモーニングは自分も視ていたんですけど、日銀のマイナス金利導入が取り上げられた際にコメンテイターの寺島実郎と幸田真音がそれこそ経済右派的な物言いで“政権批判”してたんで唖然としましたよ。直ぐ様同席していた荻上チキが的確に(寧ろリベラル的な立場で)フォローしていたんですけどw

何と言うのか、濱口圭一郎氏が指摘している http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2016/01/post-83ac.html 様に、何か安倍政権を叩ける(?)「対抗軸」を探し出して攻撃しようと躍起になっているんじゃないの?って思うんですよね。こと金融緩和ネタだと30数年前の金融緩和→バブル発生の記憶が根強いってのか惰性になっているとこがあって、野党ばかりか広義の“政権批判”側に財政というのか経済全体に“質実さ”を求めている・ある種のシバき願望があるんじゃないかって気もするんですよ。

で、JNNの世論調査が今TBSニュースバードで流されているんですけど、自民党も安倍政権も支持率は高かったりしますが甘利大臣の辞任とか慰安婦での“合意”・夏の参院選での改憲勢力の“大勝”には寧ろ否定的なのが多数派だったりするんですよね。つまり(ここんとこ何度も引き合いに出して恐縮ですが)松尾匡が新著 http://amzn.to/1SGym89 で指摘している様に、タカ派的な政策などには否定的でも経済政策面で“マシ”だから安倍支持ってことの明らかな傍証になっちゃってる訳です。

これで「立憲主義」だの「安保法制」だの“意識の高い”ことを叫んでみても、社会政策や経済政策がマトモじゃないならそれを守るのさえ危ういでしょう(松尾氏も同様に指摘している訳ですが)。そうでなくても、“政権批判”のがわにさえ、内田樹だの安冨歩だの社会政策に冷淡であるばかりか“人治”や“強力なリーダーシップ”を待望する筋が結構リスペクトされている訳で、正直こういう現状にこそ危機感を抱くべきですよ。



平和憲法守りたければ、マトモな社会政策や経済政策を!
アベ政治を止めたければ『この経済政策が民主主義を救う』を読め!

2016.02.08 10:23 URL | 杉山真大 #- [ 編集 ]

管理人です。

記事に書いた鈴木哲夫氏の件につきまして、読者の方から、同姓同名の別人ではないかとのご指摘をいただきました。

現在、コメント欄での応答しかできませんが、帰宅後速やかに訂正を行うとともに、「kojitakenの日記」に謝罪の記事を公開いたします。

鈴木哲夫氏に多大なご迷惑をおかけしましたことを深くお詫びいたします。

2016.02.08 15:24 URL | kojitaken #EIWakAVs [ 編集 ]

 ご存知かとは思いますが、税収増の使途については、朝日が1月31日の社説で、民主党に「指令」を出している、あるいは「指南」をしているんですよね。

(社説)税収増の使途 議論自体がおかしい
2016年1月31日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S12186879.html

もう日にちがたって、全文読める状態じゃなくなっているので、書き起こしますね。


 税収が見込みより増えた分をどう使うか。そんな議論が熱を帯びてきた。
 政府はこれまで「上ぶれ分」と呼んできたが、どうやら「底上げ」と称するようだ。表現はともかく、深刻な財政難を考えれば、どこかを起点に税収の増加分を取り出して使途を議論すること自体がずれており、財政状況への認識が甘すぎる。
 16年度予算案で見込んだ国・地方の税収は100兆円に迫り、民主党政権が最後に編成した12年度当初予算と比べて13兆円増える(消費増税分を除く)。安倍政権はそう強調するが、16年度も国の財源不足を補うために新規国債を34兆円余も発行することを忘れたのか。
 ドイツのように新規国債発行がゼロになったのなら、前年度からの税収の増加分について「新たな事業に充てるか、借金減らしに回すか」を議論するのはわかる。日本の現状はそのはるか手前で、過去に発行した国債の元利払い費を切り離して考える「基礎的財政収支」の黒字化すら見通せない状況だ。
 税収は景気に左右され、見通しから増えも減りもする。上ぶれ分は安定財源になり得ないのに、その使い道などという議論が起きたのは、夏の参院選を意識する政府・与党が税制改革と予算編成の両面で基本を逸脱したことが直接の原因だろう。
 ひとつは、消費税率の10%への引き上げに伴う軽減税率の導入だ。低所得者ほど消費税の負担が重くなる「逆進性」対策を理由に、高所得者まで恩恵を受ける軽減税率を1兆円規模で導入することを決めた。それで計算が狂う社会保障財源の穴埋め策の一つとして、6千億円を税収増に頼ろうとする安易な発想である。
 もう一つは、今年度の補正予算に盛り込んだ「1億総活躍」関連事業の予算を今後どう確保していくかという課題だ。
 出産・子育て支援などの事業は重要で、継続すべき政策だ。ならば一時的な対応が主旨の補正予算ではなく、当初予算で向き合うべきだ。参院選までに国民に恩恵を届けようと、国会で真っ先に審議・成立させる道筋がついていた補正予算にとびついたとの批判に、政府は反論できるだろうか。
 経済を活性化し、税収を増やす努力は不可欠だ。一方で、税収が増えても手綱を緩めない。予算の全体像を見すえつつ必要な施策を絞り込み、国債発行という将来世代へのつけ回しを少しでも減らしていく。
 それ以外に、財政を再建する道はない。

2016.02.08 20:50 URL | suterakuso #- [ 編集 ]

”経済を活性化し、税収を増やす努力は不可欠だ。”

これは困難でしょう、内需では。しかも世界規模で景気が悪く、あらたに景気を勢いづかせる国など見当たらない。

2016.02.09 05:52 URL | 主の平安 #- [ 編集 ]

自分たちだけ軽減税率適用してもらった新聞社が財政についていい子ちゃんぶったこと言っても、白けるどころか笑いものでしかない。
朝日も読売も毎日も産経も、財政議論に参加する資格を持たない。出直して来い、というレベル。

2016.02.09 07:50 URL | スーベニア #- [ 編集 ]

>両党が合流してできると観測されている「新党」も今の民主党よりも憲法・安全保障政策、経済政策ともにさらに右寄りの政党となり、事実上の安倍政権の補完勢力になることは目に見えている。

これは岡田克也自ら、山崎拓と一緒に出てたテレビ討論で言っていましたね。民主党はもっと右にウイングを広げていくと。
要するに憲法改正も賛成だし、右翼的・復古的な政策にも賛成だけど、あの安倍のネトウヨ的なノリについていけない「お上品な右翼」の皆さまのニーズに応えるために、優等生的な、幅広い層の方々に御愛顧頂ける右翼政党を目指しますということです。
ただし経済・財政政策は緊縮シバキ主義で、そこは成長より財政規律優先でいくから、そこはよろしくとのことです。こんな新党は結成と同時に滅びて然るべきでしょう。
共産党は愚かな共闘路線なんか捨てて、全国区に候補を立てて野党第一党を目指せばいいんです。民主党・維新が滅びて、社民主義路線の共産党が、政治的リベラルだが経済極右でシバキ主義の民主や維新は嫌だから消去法で自民を支持してる層を取り込む方が、野党の勢力図も対抗軸もすっきりするからその方がいい。

2016.02.09 08:44 URL | スーベニア #- [ 編集 ]

憲法守りたければっていう杉爺、自分はどうなの?国家社会主義、国家分配主義で文句あるの?その点をはっきりしてほしいねえ。改正はもうすぐだ。転向するなら早い方が得だよ。
さて市場動向がよろしくない。安倍国家分配内閣の将来にも疑問符がついてきた。でも、古くは近衛に、近くは鳩山に強力内閣を期待した我が国民は当分安倍を見捨てることはないでしょう。それが続く限り、参院も衆院も圧倒的多数は取れるだろう。
その後いきなり憲法改正になると政治日程がおかしくなるので景気動向もわからない。分配至上主義者には残念だろう。

2016.02.09 12:40 URL | 野次馬 #195Lvy4Y [ 編集 ]

野次馬だかzenzaburoだか訳解らんのが大ハシャぎしてるそうだけど、ここのブログ主がこう批判しているのを読んでないんだろうねぇw

http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20160207/1454775912
http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20160207/1454809508

つか、ケインズマンセーとかはてなの方で(zenzaburoとやらが)コメントしてたけど、再分配や福祉も兎角ファシズムや独裁体制に結び付けたがるのってケインズどころかその真逆の(しかもかのミルトン=フリードマンですら「衰退と硬直の戯画」とまで言った!)ハイエクの言動マンセーってしか思えないんだがな。この輩の手にかかれば、それこそ戦後欧米の(それこそ1980年代の“保守革命”以前の)民主的な福祉国家でさえ「国家社会主義!」って非難するのかね?つか既にお前が転向済みかw

>スーベニア氏
民主党の右旋回って言えば、小沢代表時代の民主党に顕著だったりしたんだよね。いわゆる“聖域なき構造改革”で落ちこぼれた様な保守層にアピールできる層を取り込んで、「幅広い層の方々に御愛顧頂ける保守政党を目指します」という具合。尚且つ「経済・財政政策は緊縮シバキ主義で、そこは成長より財政規律優先でいく」ってのも少なからずあって、「新しい公共」だの「事業仕分け」「財源付け替え」だの言っていたり・・・・・・

2016.02.09 18:04 URL | 杉山真大 #- [ 編集 ]

 思ったんですけど、「財政赤字」とか「政府の借金」とかいう言い方は仕方ないとして、「国の借金」って言い方を撲滅するようなキャンペーンができればよいですね。かわりに、「逆再分配のなれの果て」とか「累積逆再分配」とかいう言い方を広めればよいですよね。負担すべきところが負担しなかったツケという意味で。そして、きっちり払えと。経済が停滞? 大丈夫。払ったお金は「国民」がちゃんと使うから。



 あとそれと、上の上のコメントだけど、kojitakenさんがわざわざ解説した「鍋パーティのブログ」には、杉山さんが3つの記事を投稿するという「行動」をしていますよね。それを読むくらいの「行動」をすれば? 「どうなの?」ってさ。そんなに聡明なら、読めばわかるでしょ。ま、聡明かどうかが問題じゃなくて、性格だとか根性だとかの問題ってことくらい分かってるけどさ。でもさ、kojitakenさんのブログ解説の意図をよく考えたり、尊重したりしないの? こんなことやるよりも、あなたも、自分の「行動」で人を動かそうとしたら?

 それと、確かに現状、経済重視は現状、政権を利する部分はあるでしょうよ。でも、それがだめだめなところをどうにもしなくて、憲法や人権全面ではどうにもならないことは、どうやら共産党の強い京都でもみられたわけでしょ? それと、あなたが期待するSEALDsのラップも、幟旗同様、ウケはびみょうってのは、どうやら、大阪や京都から聞こえますね。だからって、一部を除いて、むしろよいものだとは思いますけどね。一部ってのは、警察に「早く逮捕しろよ」とすごんだ「しばき隊」とかね。そういうのも、どんどん批判すべき。当り前。

2016.02.09 20:15 URL | suterakuso #- [ 編集 ]

消費税の大きな問題は逆進性です。
その緩和を政治に要求していく事は、大事だと思いますよ。
格差の問題が拡大していけば、日本の人口減少や犯罪率の問題も悪化するでしょう。
それを少しでも防ごうと話しているのをおこぼれに預かろうとしているだけと、
色眼鏡で見ることしかできない人がいるのは悲しいですね。

2016.02.09 21:03 URL | 一般的ウロタ #- [ 編集 ]

「逆再分配」とは,言い得て妙である。
但し,「逆再分配」の最大の原因は,金持ち優遇税制ではない。
日本の地価が高過ぎることである。

経済学の教科書には書かれていないが,不動産関係者にはよく知られている経験則として,
「一国の地価総額は,その国の年間GDPとほぼ等しい」
というものがある。
あくまで経験則であり,理論的根拠は不明だが,実際に多くの国では概ね成立している。
しかし,日本は例外で,バブルのピーク時で地価総額は年間GDPの6倍,現在でも2~3倍はある。

地価が高過ぎると何がまずいのか?
民間の設備・住宅投資にせよ,政府の公共投資にせよ,多くの場合で用地買収を伴う。
投資総額から用地買収費を差し引いた残り,具体的には建物や機械設備の建設費,作業者の人件費などが,付加価値の増加分として,GDPを押し上げる効果をもつ。いわゆる「真水」だ。
地価が高いほど用地買収費がかさみ,「真水」の分は少なくなり,投資の経済効果は低下する。
莫大な用地買収費は,消費者や納税者から,土地を売った地主への,所得移転となる。
つまり,「持たざる者」から「持てる者」への所得移転。これこそが「逆再分配」の正体だ。
無論,これは消費性向の高い者から低い者への所得移転であるから,経済成長を阻害する。

バブルの狂乱地価期に,莫大な対価を得て土地を売り逃げした地主。
バブル崩壊直後のまだ地価が下がりきっていなかった時期に,景気対策としての公共事業大盤振る舞いの対価として,相当の土地売却益を得た地主。
かつては企業及び住宅ローンを負った家計の,現在では政府の,膨大な過剰債務の裏には,こうした土地成金たちの膨大な過剰貯蓄があるのだ。
多額の財政支出の割に大した経済効果が得られなかったのも,支出の多くが「逆再分配」に吸い取られて「真水」が細くなってしまったことで,かなり説明がつく。
それなのに経済学者たちは,やれクラウディングアウトだ,やれマンデルフレミング効果だ,やれ日銀の陰謀だのと,てんで的外れな,トンチンカンなことばかり言っているのには,呆れるほかない。

2016.02.11 03:44 URL | 歴史は繰り返す #- [ 編集 ]

 私が思うに、落とすべき本丸は、法人課税ではなく、資産課税です。

2016.02.11 09:01 URL | suterakuso #- [ 編集 ]













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