きまぐれな日々

 このところ、図らずも「立憲主義って何だ」と考えるようになり、自分が全く何も知らなかったことにわれながら唖然とさせられつつ、現在の政治状況について下記の認識に至った。

 今年の安保法をめぐる攻防が敗北(もちろん相手方の人たちにとっては勝利)であったことは言うまでもないが、それはこちら側の多くの人が言うような「希望が感じられる敗北」なんかではなく、保守思想である「立憲主義」のもとに防衛戦を戦った、いわば「背水の陣」がいとも簡単に破られた致命的な敗北だった。

 共産党までもが立憲主義を打ち出すようになり、マルクス主義法学ではなく立憲主義を奉じる、憲法学の世界では「保守派」と分類される学者たちと語り合うようになるとともに、「国民連合政府」を提唱しているのが現実だ。これを「共産党の右傾化」と決めつけるのはたやすいが、共産党もそこまで追い詰められていると私は見る。そうでもしないと、フラフラしている他の野党が揃って「大政翼賛会」側に行ってしまうのではないかとの危機感が共産党にはあるはずだ。一方でミイラ捕りがミイラになる、つまり共産党も含めて「大政翼賛会」化するという懸念もあるが。

 昨今、今やすっかり安倍晋三の手下に成り下がった反知性主義者の谷垣禎一らが、来年の衆参同日選挙を示唆しているが、それに呼応するかのように、「安倍政権を支持している」とその記事の中で明言する長谷川幸洋が、「騒がれだした衆参ダブル選、その行方を教えよう~政治家にぶら下がるだけの記者には分からない『政局の読み方』」なる、長ったらしいタイトルの記事を書いている。

 記事の内容は不愉快きわまりないから引用して紹介したりはしないが、思い出すべきは、昨年(2014年)の衆議院選挙実施も長谷川幸洋が言い当てていたことだ。これは、何も長谷川が敏腕記者だからでも何でもなく、それくらい長谷川が安倍政権とべったりであって、彼らの手の内を知りうる人間だからだ。こんな人間を、どうして中日新聞(東京新聞)はいつまでも飼っておくのだろうかとか、こんな人間を「親安倍のはずがない」などとみなしていた「小沢信者」にしてリアルの活動家である某ブロガーはなんて頭が悪いんだろうか、とはいつも書くことであって、短めに終わらせようと思っていたこの記事でも書いてしまった(笑)。

 いずれにせよ、長谷川の「予言」が当たる可能性は相当程度高い。衆参同日選挙が来年行われた場合、自民党に勝つのは至難の業だが、このハードルを超えない限り、日本が戦争を始めるだけでなく、明文改憲も行われてしまう可能性が高い。

 このところ私が共産党を批判してきたのは、「国民連合政府」を唱えるのなら、「一枚岩」である現在の党の体質をも変えよ、と言ってきたものである。これをもって私が「国民連合政府」に反対していると短絡的に捉えている読者は少なくないだろうと思うが、注意深い読者なら、私が一度も「国民連合政府に反対する」と書いたことがないことにお気づきだろう。そう、私は「国民連合政府」そのものには反対しない。「背水の陣」としての戦法としては認めるほかないと思っている。

 ただ、「国民連合政府」構想のもと、来年の参院選及び同時に行われるかもしれない衆院選を行うのであれば、それをまとめる司令塔となるのは、共産党では(小沢一郎らでも)なく、外部の有識者であるべきであり、安倍クーデター政権が立憲主義を踏みにじった今であれば、立憲主義を奉じる立場の憲法学者たちが中心になるほかないだろう。私自身は好まないが、自民党時代の小沢一郎と連携してかつては「9条改憲」論を唱える一方、最近では共産党の志位和夫委員長と語り合い、「立憲主義回復はすべてに優先」するとして「 『国民連合政府』で意気投合」したという(『しんぶん赤旗』記事による)小林節あたりが適任ではないか。但し、某有名ブログが以前書いたような内閣総理大臣としてではなく、外部の司令塔のトップとしてだが。小林節は、保守系の講演会で共演した櫻井よしこが「日本国憲法には権利ばかりが書いてあって義務の規定がほとんどない」と妄言を吐いたところ、これをこっぴどく批判して櫻井をやり込め、櫻井は講演会のあと顔面蒼白になり、小林節に挨拶もせず帰ってしまったらしい(佐高信との対談本による)。

 立憲主義系の学者たちの書いた学術書を私は読んだことがないが、彼らの何人かが書いた一般書(多くは新書本や文庫本)をこのところ何冊か読んだ。樋口陽一、水島朝穂、長谷部恭男、木村草太、それに前述の小林節の佐高信との対談本など。言うまでもないが、彼らの書いた本に、立憲主義がマルクスに論拠を持つなどと書いた記述は一行もないし、民主党政権時代に小沢一郎や菅直人らが内閣法制局長官の国会答弁を禁じたことを批判する学者もいる。

 それならば、立憲主義を論拠にして、安保法の廃棄を求めて戦うことになるであろう来年の参院選(または衆参同日選挙)を共産党(や小沢一郎ら)が仕切るのは、あってはならないことだと私は考える。「国民連合政府」を掲げる陣営は、強力な司令塔を民間に置く形で戦う以外に有権者の支持を広く得られる方法はないと思う今日この頃なのである。
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kojitaken様が引いていた長谷川氏の記事を一読してみたんですけど、結構経済情勢を交えた上で説得力のある文章で敵ながら天晴れという感想を抱きました。

その上で仮に「衆参同日選」にどう立ち向かうかを考えると「立憲主義」や安保法制を争点にするのは難しい・というより多くの有権者は既に関心すら無くしているって自分は思うんですよね。既に政界でもメディアでも消費税増税の際の「軽減税率」とやらで喧々囂々としていて、『朝日新聞』でもここ最近の紙面や社説で社会政策や「再分配」の問題を取り上げていたりしているのに、「立憲主義」だ・安保法政廃止だと訴えてもあまり効果が無いって気もしちゃうんですよ。野党(や"政権批判"派)も野党でアホノミクスとか言っている「女ラビ=バトラ」とか里山何鱈とか言って共助で何とかなるとか言って安倍政権に側面から支援している藻谷某とかを珍重していては、有権者が支持を躊躇うのも当然でしょう。(そう言えば鍋党ブログ http://nabeparty744.blog111.fc2.com/ も、一年以上も更新が無くその内容が寧ろ現在から見てみれば"古く"なっている気がしますけど)

で、安保法制が通った途端に既に「護憲派」がアノミーを起こしている中で小林節を司令塔に、ですか?これでは有権者の支持を広く得られるどころか寧ろ"政権批判"な有権者が反って支持を取り止めてしまう危うさしかありません。

2015.12.07 10:13 URL | 杉山真大 #- [ 編集 ]

フランスの地域圏議会選挙では案の定、極右の国民戦線が躍進しましたね……。それどころか与党左派の社会党は新自由主義政党の共和党にすら得票率で敗れる始末。
難民問題も逆風になったのでしょうが、元はといえばオランドが政権交代の際に掲げた「積極財政」や「格差是正」の政策を翻し、ドイツの犬と化してフランス国民を裏切ったのが原因です。

今ではエマニュエル・トッドに「ドイツの副首相」と批判される程、フランス国内だけでなく欧州諸国に緊縮財政を押し付けている有り様。
リベラルの本山と言えるフランスでさえ「左派」が左派として全く機能していません。

以前、kojitakenさんがイギリス労働党党首にコービンが選ばれたことをもって、「世界は正常化しつつある中で日本だけは孤立していっている」という趣旨のことを仰っていたのに対し、「世界情勢について楽観的すぎないか?」という懸念を書き込ませていただきましたが、やはり世界は崩壊へと向かっていっています。
現代は、日本だけが左派が落ちぶれ、極右が蔓延っているなどと「楽観」できる状況ではありません。世界全体で左派が機能せず、極右が台頭しているのでしょう。
もはや日本のみならず、欧州含めた世界全体が崩壊の時代を迎えたのだという覚悟も持って臨むべき局面に来ているのです。

2015.12.07 11:24 URL | グッドマン #- [ 編集 ]

>杉山真大さん
野党がまともに経済論議できないのは本当に問題ですよね……。
本来であれば景気後退していることをもっと厳しく突いて、消費税増税の失敗を批判しながら、積極財政による経済成長と再分配を訴えるべきなのに。
まさに長谷川幸洋が書いているように、最大野党の民主党は増税推進派で、共産党は共産党で消費税増税は批判するものの、「日本はもう成長しないから成熟社会にすべきだ」などという民主党とどっこいの馬鹿げた緊縮脳に取り憑かれてる。
こんな状況で戦争法案廃止を前面に出しても、困窮している国民の心はついてきませんよね……。
それこそコービンの爪の垢でも飲ませたいです。クルーグマンでもスティグリッツでもトッドでもピケティでもいいから、頭下げて顧問について貰えよホントに。

2015.12.07 12:33 URL | グッドマン #- [ 編集 ]

同日選は必ずしも極右有利でないとおもいます。衆院は一つ取りこぼしたら、があるからです。それでもやるのなら、余程それ以後の景気に自信がないのでしょう。
それでですが、共産党が仕切ることは力学から言ってもあり得ないでしょう。鉄面皮な小林節を司令塔にすれば面白い選挙戦になりそうです。

2015.12.07 13:17 URL | 野次馬 #mQop/nM. [ 編集 ]

常識的にみても、安倍晋三の勝ち、最悪でも引き分け以上でも、実質的には勝ちである。
ゴキブリ記者が偉いのではなく、ダブル選挙こそは安倍晋三の本音である。
中国などの脅威を煽り、見せかけ(庶民は気づいていても
、民主党政権時代とさして変わらぬ台所事情ならば、見せかけの花火でも、数字が高ければマシと感じているのでは?)の株価などで、薄く自民党に勝たせてしまうだろう。全ては公明党の選挙事情に、このダブル選挙はかかっている。だからこそ、目先の
軽減税率が大切なわけ(笑)。
さて、古めかしいタイトルについて。
あの尖ったブロガーはどうでもよいが、一点だけありかもと思えることは、この国の大衆は『極めて』権威や目新しい何かに弱いので、シールズみたいな幼さプンプンの輩ではない(笑)、古舘とか後藤とか
…私なんぞには、鼻の先でせせらわらうような存在だけど
…それなりにテレビで影響力がありそうな奴らに、誉めて頂ける(笑)くらいの誰かを御輿にあげて、それを小林節さんなどが理論武装部隊として援護射撃するという展開?
その誰かってのは、間違ってもあの人みたいに、やれ細川とか、やれ小泉とかにはならんけどね。だって、もう、終わった人。旬に煩い、この国のマスコミや大衆には、過去の存在だろう。
極めてオフザケ、かつ、ナンセンスなコメントをつけてしまえば、例えば、同じ小泉でも、七光りのせがれの方ならば、あっという間に安倍晋三は崩れ落ちたりして(笑)。
クーデターっていうのなら、これくれいの荒業、奇想天外な展開もなくては?
んなこたあ、ない。
しかし、同じ幼さでも、何故か小泉Jr.だと、マスコミは神格化すらしてしまう。
たかが、陣笠議員が菅直人に委員会で噛みついただけでも
、まるでエース級の野党議員が朝刊の一面をジャックしたかのような演出をなさるってのが、テレビメディア。
ここまで、打つ手のない、絶望的な議会状況では、かような戯れ言ひとつ、言いたくもなる。
野党の勝敗ラインには『三分の一』以上を、インチキ野党議員以外で取らねばならんという条件がつく。長島や前原などもバリバリインチキなのだが、奴らをして『ついて行きかねる』傲慢ぶり、悪辣さを安倍晋三たちにやって貰うというのも、副次的効果を出すかもだが、ここで最低限、肝要なことは、立憲主義をぜったい守るという踏み絵を野党候補に踏ませること。
そうした圧力を掛けられるのは、小沢でも志位さんでもないし、そんな力量も権威もないし。それはかかって、テレビにあり!
だからこそ、自民党はマスコミ狩りに精を出す!
古舘などは、繰り返すが俗物だが(笑)、政治社会状況を相対的に捉えれば、それでも使える(使わざるを得ない)カードであろう。
問題は、小林節よりマイルドでマスコミ受けもありそうな
御輿がいるか?である。
野党が…例えば福山や有田などと、前原たちが分裂したとしても…当座の数が減少してもよい。
上記のようなマスコミを味方に引き付けられて、これまたテレビ視聴者を唸らせるような理論武装部隊(小林節や水島さんなど)とも結託できる、そして、左派とも話し合えるキャラ?
一票に拘る伊藤さんは?
やはり、線が弱いかな?

2015.12.07 15:09 URL | axfxzo #ePfhgX1o [ 編集 ]













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