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きまぐれな日々

 残念ながら、もうよほどのことがない限り、安保法案成立は避けられない情勢となった。もちろん最後まで諦めはしないが、以前からずっとやっている野球の試合とのアナロジーで言うと、9回表に敵にダメ押しの犠牲フライを打たれ、大差で9回裏を迎えている状態だ。

 犠牲フライとは8月14日に安倍晋三が発表した「安倍談話」である。安保法案推進派ながら、戦争責任の問題に関しては一家言のある読売新聞の老ドン・ナベツネ(渡邉恒雄)の意向を安倍は受け入れ、「4つのキーワード」を談話に入れた。しかし同時に、安倍はそのことを親しい人間たちにリークし、ダメージを最小限に抑えた。具体的に言えば、産経新聞の阿比留瑠比は、「安倍談話」をワイツゼッカー談話と対比した。それどころか、下記のような「得点」を稼いでいる。以下、「談話」当日の8月14日の安倍の記者会見を記録した官邸のウェブページから引用する。
http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2015/0814kaiken.html

(内閣広報官)
 これからは幹事社以外の方の御質問をお受けしますので、御希望される方は挙手をお願いします。私が指名いたします。再度、自らお名前と社名を明らかにした上でお願いします。

(記者)
 産経の阿比留です。
 今回の談話には、未来の子供たちに謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりませんとある一方で、世代を超えて過去の歴史に真正面から向き合わなければなりませんと書かれています。
 これはドイツのヴァイツゼッカー大統領の有名な演説の、歴史から目をそらさないという一方で、自らが手を下してはいない行為について、自らの罪を告白することはできないと述べたのに通じるような気がするのですが、総理のお考えをお聞かせください。

(安倍総理)
 戦後から70年が経過しました。あの戦争には何ら関わりのない私たちの子や孫、その先の世代、未来の子供たちが謝罪を続けなければいけないような状況、そうした宿命を背負わせてはならない。これは今を生きる私たちの世代の責任であると考えました。その思いを談話の中にも盛り込んだところであります。
 しかし、それでもなお私たち日本人は、世代を超えて過去の歴史に真正面から向き合わなければならないと考えます。まずは何よりも、あの戦争の後、敵であった日本に善意や支援の手を差し伸べ、国際社会に導いてくれた国々、その寛容な心に対して感謝すべきであり、その感謝の気持ちは世代を超えて忘れてはならないと考えています。
 同時に、過去を反省すべきであります。歴史の教訓を深く胸に刻み、より良い未来を切り拓いていく。アジア、そして世界の平和と繁栄に力を尽くす。その大きな責任があると思っています。
 そうした思いについても、あわせて今回の談話に盛り込んだところであります。


 胸くそが悪くなる八百長の質疑だが、阿比留以外にも、稲田朋美応援団長を務める老極右の渡部昇一が、極右雑誌『WILL』の10月号に「『安倍談話』百点満点だ! 東京裁判史観を克服」と題した文章を書いている。

 このように、彼ら安倍の極右仲間たちは、こぞって「安倍談話」を大絶賛した。実際その中身も、「4つのキーワード」を使ってこそいるが間接話法を用いることによって「村山談話」を骨抜きにし、子孫の代には謝罪させないと宣言した舌の根も乾かぬうちに、軍事介入宣言にほかならない「積極的平和主義」を謳い上げるなど、極右の渡部昇一が「百点満点」と言うだけのことはある、リベラル・左派にとっては我慢ならないほどひどい内容である。

 しかし、軽薄な「リベラル」は「4つのキーワード」が盛り込まれただけで満足してしまい、「安倍談話」をあげつらう人間は「極左」であるとでも考えたらしい。下記は、このブログに寄せられた「リベラル」のコメントを批評したコメントである。
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-1405.html#comment19063

終戦70年の節目に発表された「安倍談話」の概要。
(1)自らは「侵略」を認めず、「おわび」はせず。
「侵略」「おわび」は入れたくなかった。
しかし内外の世論を考慮していやいや入れたということをまざまざと見せつけられました。
(2)日本帝国主義の侵略戦争「日露戦争」を正義の戦争と大嘘を抜かす。
日露戦争により日本帝国主義は、朝鮮を植民地にし、南サハリン、遼東半島、満鉄を強奪しました。
(3)「積極的平和主義」と称して、戦前のように日本が戦争をする国にすることを宣言、そして目指すは大東亜共栄圏復活です。

彼が心酔いしている狂信的な日本軍国主義者、日本帝国主義者でA級戦犯だった岸信介の亡霊であることを改めてさらけだしました。
安倍談話を聞きネトウヨが万々歳なのは当然でしょう。
リベラルなら激しく反発すべきでしょう。
理解を示すようでリベラルとはいえません。
名ばかりリベラル、ニセリベラルです。

2015.09.05 23:59 風てん


 本当にその通りだ。私も同感である。

 また、別の例も挙げる。下記は、さる「リベラル」のブログからの引用。以前にも取り上げたかもしれないが、あまりに腹が立って未だに思い出すたびにムカムカするので、改めて槍玉に挙げる。

 ただ、○○○が真ん中へんから客観的に見ると、今回の談話には、安倍氏&超保守仲間の思想や考えが、彼らがいつも主張していることの半分も反映されていないことから、安倍首相は周囲の圧力や世論に押されて、負けちゃったかな~(=超保守派の期待を裏切っちゃったかな~)という感じがするし。

 もしこれで、近い将来、拉致問題や北方領土問題にも前進がなければ、さらなる失望を招いて、そのうち党内のアンチ安倍派に加えて、超保守派の間からも「安倍おろし」が起きるかも知れないな~と(半分、期待込みで)思ったりもする○○○なのだった。


 「真ん中へんから客観的に見ると」などと書いているところがなんともイタい。しかもその大甘の見通しは大外れだった。70年代の言論状況を覚えている私から見ると、先のコメンテーターも上記のブログ主も、「保守」と分類されるならまだ良い方で、下手したら明白な「右派」あるいは「反動」として(70年代なら)強く批判されていたところであろう。そもそも、自分が「真ん中」であるとか、「客観的に」物事を判断できると思い上がっている時点で既に、人間として道を踏み外しているとしか言いようがない。こういうことを書く人は、私などを「頑迷な左翼」としか思っていないのであろう。しかし、70年代においては私などはせいぜい「中道左派」に過ぎなかった。それが今では「極左」などと呼ばれることも珍しくない。

 しかし、上記のような言説を発する人は、「リベラル」の間では決して少なくないし、この人自身にしても、「安倍談話」が出されたからといって安倍政権支持に転向することはない程度にはしっかりしているのである。現実には、もっと甘い「リベラル」たちがウヨウヨいて、安倍晋三が「4つのキーワード」を入れただけで安倍内閣支持に逆戻りしてしまうていたらくである。これでは安倍晋三は「左うちわ」だよなあとため息が出る。

 安保法案成立は確実と見て浮かれた安倍晋三は、9月4日、今や日本最悪の極右都市と化した大阪を訪れ、日本最悪の局放送局・読売テレビ制作のワイドショー『ミヤネ屋』に出演して言いたい放題だったようだ。以下読売テレビを含む系列のキー局である日本テレビのニュースより。
http://news.livedoor.com/article/detail/10553137/

首相、“安保法案”採決に踏み切る考え示す
2015年9月4日 22時16分

 安倍首相が4日、日本テレビ系列の番組「情報ライブ ミヤネ屋」に出演し、安全保障関連法案について「決めるときには決めなければいけない」と述べ、成立への強い意欲を示した。

 安倍首相「会期も大幅に延長したのですが、あとわずかになってきました。どこかの段階では、やはり決める時には決めなければいけない」

 関連法案のうち、集団的自衛権の限定的な行使を可能にする法案だけ採決を見送ることはないかと聞かれ、安倍首相は「切れ目のない対応を可能とするための法案で、全体の法制が大切だろう」と否定的な考えを示した。さらに、民主党などについて「対案は示さないで、憲法違反としか言わないのでは、議論が深まらない」と批判した。

 再来年4月に予定されている、消費税率の8%から10%への引き上げについては、「予定通り行っていく」と強調する一方、「リーマンショックのようなことが起これば別だ」と述べた。

 また、来月末にも開催することで調整が行われている日・中・韓3か国による首脳会談については、「実現することになった」と評価する姿勢を示した。さらに、「その際、ぜひ日韓首脳会談も行いたい」と述べ、2度目の首相就任以来、実現していない韓国との首脳会談開催に意欲を示した。

(日テレNEWS24より)


 国会の審議をほったらかして極右都市・大阪に凱旋して勝利の雄叫びを上げるとは呆れたものだが、安倍は安保法案採決宣言に加えて、消費税増税宣言まで行ったようだ。

 これを、「金融緩和が何よりも優先される。それができるのは安倍晋三だけ」と言って、金融緩和一点だけで安倍晋三を無条件支持する、いわゆる日本の「リフレ派」はどう考えるのか。そもそも、自民党の憲法草案には「財政健全化条項」なるトンデモ条項まで含まれているのである(さすがに、日本会議に属しているらしい政治思想右派のリフレ派も、このトンデモ条項は批判していたが)。

 よく日本のリフレ派は、ポール・クルーグマンやジョセフ・スティグリッツが安倍政権の経済政策を支持していると宣伝するが、実際には彼らが支持しているのは安倍政権の経済政策の一部に過ぎない金融政策だけである。その一点だけで、安倍政権の財政政策に触れないか、触れてもせいぜい「今後の課題」扱いにして過小評価する日本の「リフレ派」とは一体何者なのか。私はクルーグマンやスティグリッツは信頼するが、日本の「リフレ派」はこれっぽっちも信用しない。

 安倍晋三とそれを持ち上げる極右報道人の浮かれぶりに関して怒り心頭に発したのは、安倍が出演してビデオ収録された同じ読売テレビ制作の、かつて「たかじん」の冠がついていた番組が昨日(6日)放送されたらしいことだ。この番組に、「左翼(ひだり つばさ)くん」なるゆるキャラが登場して安倍晋三と握手していたらしい。『日刊安倍晋三』と題されたブログ記事によると、「左翼(ひだり つばさ)君なる安保法案に対して反対している国民を代表しているキャラクターが、出演者(なんとここのパネラーは全員安保法案に賛成している)に対して、質問を投げかけ」たらしい。

 その「パネラー」の中には、東京新聞論説副主幹の長谷川幸洋も含まれている。東京新聞(中日新聞)といえば、「安倍談話」を「評価」する社説を掲載して、反安保法案の流れに水を差した新聞だ。普段「リベラル」が目の敵にする朝日新聞が「安倍談話」を強く批判したのとは対照的だった。『日刊ゲンダイ』でおなじみの、「肝心な時に裏切る」体質を、東京新聞も持っていたと私はみなしている。

 自民党総裁選に野田聖子が出馬の意欲を見せているが、朝日新聞は「安保国会がハードル」と報じ、極右の産経新聞は、ほかならぬ安倍晋三じきじきの指名によって財政再建を目指す、政治思想極右にして経済極右の稲田朋美の「(野田氏は)総裁選をすることに意味があるというふうに言っているように思う。何を議論するかが重要であり、総裁選だけが議論の場ではない」との発言を引用している。もっとも、同じ産経の記事によると、野田聖子も「『反安保ではない』と述べ、安保関連法案に否定的との見方を自ら打ち消した」とのことで、その程度の政治家らしい。

 悪いことずくめの9月のスタートとなった。
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2015.09.07 11:42  | # [ 編集 ]













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