きまぐれな日々

 まず、「安倍談話」に関する朝日新聞と日経新聞の寸評を引用する。

主語「私は」使わず 安倍談話、歴代談話との違いは
久木良太 土佐茂生
2015年8月15日07時24分

 安倍談話は注目された「侵略」「植民地支配」「痛切な反省」「心からのおわび」について、首相自らの歴史認識はあいまいにしつつ、言葉を盛り込む手法をとった。「私は」という主語を使い、首相の謝罪意思を明確にした村山・小泉両談話の姿勢とは大きく異なる。戦後の歩みで中国の「寛容」に触れて配慮を示す一方、慰安婦問題は明記せずに「女性の人権」を強調する表現となった。

朝日新聞デジタルより)


70年談話、4つのキーワード網羅 「自ら謝罪」は避ける
2015/8/14 23:23

 安倍晋三首相の戦後70年談話は1995年の「村山談話」などにある「おわび」「反省」「侵略」「植民地支配」の4つのキーワードを網羅した。ただ、首相自らの言葉でおわびや反省は示していない。戦争に関わりのない世代に「謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」とし「謝罪外交」に終止符を打つ意思を表明。過去の首相談話の継承を求める公明党や中国などに配慮しながらも「安倍色」をにじませた。

日本経済新聞電子版より)


 『kojitakenの日記』にも書いたが、私はそれに加えて、安倍晋三が談話の最後で「積極的平和主義」に言及したことに注目した。

 談話発表前から岸井成格が繰り返し指摘していた通り、「積極的平和主義」とは「地球規模で自衛隊を紛争地に送って解決させるという自衛隊の活用」を意味する。これを「談話」に入れた安倍晋三は、改めて安保法案の成立に向けて強い意欲を示したといえる。談話に安倍晋三が入れたくもない「4つのキーワード」を入れたのは、そのための妥協だ。案の定、公明党や維新の党はこれを歓迎した。安倍自らの意思ではないことを暗示するために、キーワードは「間接話法」で入れた。これは安倍晋三の支持基盤である極右勢力に対するエクスキューズだ。案の定、次世代の党は安倍晋三を批判しなかった。

 安倍晋三は、これで今国会における最終目標である安保法案の成立へとラストスパートをかけるつもりだろう。反対する側も、法案の衆議院通過でやや勢いを失っている。猛暑の影響もあったとは思うが、デモの動員数も法案が衆議院を通過した7月中旬がピークだった。

 何より、ネトウヨの多くが高く評価する「安倍談話」に「理解を示す」腰抜けの「リベラル」が少なからずいるようではどうしようもない。

 他のトピックに触れると、九州電力の川内原発1号機がついに再稼働された。

 安保法案どころではなく、衆院での審議中から注目度が低かった労働者派遣法は、安保法案の影響を受けて審議が遅れているために、法案に記されている「9月1日施行」は「9月30日施行」に修正されて成立する可能性が高い。「10月1日施行」でなく「9月30日施行」であるのは、共同通信の記事を引用した『労政時報』の記事によると下記の通りである。

 政府、与党は施行を延期するが9月中の施行を目指す。民主党政権時代の前回法改正で盛り込まれた労働者保護のための規制強化策が10月1日から始まるからだ。

 これは「労働契約申し込みみなし制度」で、派遣期間の制限などに違反すれば、派遣先企業は労働者の希望に応じ社員として雇わなければならない。今回の改正案で人を入れ替えれば、期間の制限はなくなり違反は起こりにくくなる。


 つまり、9月1日施行を9月30日施行に遅らせたところで、自公与党や派遣元・派遣先企業にとっては何の痛痒もない。

 一方、「残業代ゼロ法案」と呼ばれる労働基準法改正案は、今国会での成立が見送られる。

 沖縄の米軍基地に関しては、安倍政権が安保法案への影響を考慮して辺野古の工事が一時中断された。しかし、法案成立後ほどなく再開させようと安倍晋三が考えていることは確実だ。

 こうして列挙すると、内閣支持率は50%前後から35%前後に落ちたとはいえ、政治は概ね安倍晋三のペースで進んでいるとしか言いようがない。

 それは安倍政権の経済政策の効果というわけでもない。先ほど発表された4〜6月期のGDP速報値はマイナスだった。以下日経の記事より。

4~6月期の実質GDP、年率1.6%減 消費と輸出が低迷
2015/8/17 8:50

 内閣府が17日発表した2015年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比0.4%減、年率換算では1.6%減だった。マイナス成長は3四半期ぶり。1~3月期(年率換算で4.5%増)から一転マイナス成長となった。個人消費が低迷したうえ、輸出の鈍化が成長率の下振れにつながった。

 QUICKが14日時点で集計した民間予測の中央値は前期比0.5%減、年率で1.9%減だった。

 生活実感に近い名目GDP成長率は前期比横ばいのプラス0.0%、年率では0.1%増だった。名目では小幅ながら3四半期連続のプラス成長を保った。

 実質GDPの内訳は、内需が0.1%分のマイナス寄与、外需は0.3%分のマイナス寄与だった。項目別にみると、個人消費が0.8%減と、4四半期ぶりにマイナスだった。前期(0.3%増)から一転マイナスとなった。円安を背景に食料品などの値上げが続く一方、物価上昇に賃金の伸びが追いつかず、消費者心理が冷え込んだ。6月の天候不順も消費の逆風となった。

 輸出は4.4%減、輸入は2.6%減だった。中国はじめ海外経済の減速の影響で、アジア地域などへの輸出のペースが鈍った。原油安で輸入量は減少したものの、成長率に対する外需寄与度がマイナスとなった。

 設備投資は0.1%減と、3四半期ぶりにマイナスだった。生産活動の回復が鈍く、設備投資意欲は広がりを欠いた。住宅投資は1.9%増と、2四半期連続のプラスだった。公共投資は2.6%増。民間在庫の寄与度は0.1%のプラスだった。

 総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期と比べてプラス1.6%だった。輸入品目の動きを除いた国内需要デフレーターは0.1%上昇した。〔日経QUICKニュース(NQN)〕


 安倍内閣の再分配を考慮しない(逆再分配を行っているともいえる)財政政策や、前述の労働者派遣法改悪などの一連の政策が、第2次内閣発足当初に効果をあげたかに見られた金融政策の効果を打ち消しているといえる。もっとも、安倍晋三が2014年4月からの消費税率引き上げを決断した時からこうなることは見えていたともいえる。

 自民党総裁選は、読売や産経が無投票での安倍晋三再選を予想する観測記事というより誘導記事を以前からしつこく出し続けている。これに対し、対立候補擁立の観測記事は、あのゴロツキ政治評論家の鈴木哲夫の希望的観測を載せた『夕刊フジ』や、以前から同様の記事を書く『日刊ゲンダイ』の記事が目立つばかりだ。なにしろ、ネット検索で8月3日付産経で同紙論説委員長の石井徹が

 主要政策をめぐり、党内の論客がしのぎを削るエネルギーの消失こそ「嫌な感じ」をもたらす要因にはならないだろうか。

と書いた記事が目立つほど、反対勢力の動きは不活発だ。谷垣禎一と二階俊博が早々と安倍晋三支持を打ち出してしまった影響が大きいらしい。

 一方で安倍晋三の天下がそういつまでも続くとも思えない。地方選では、岩手県知事選で小沢系の達増拓也に対して、同じ(元)小沢系の平野達男を立てようとしたが断念に追い込まれている。また、週刊誌では衆議院の解散が行われれば自民党は100議席を減らすだろう、などといった記事が出始めている。

 そうは言っても、具体的にいつ安倍晋三を退陣に追い込めるかといえば、全く目処が立たないというほかない。

 現代日本の「崩壊の時代」はまだ終わらない。
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前回記事コメントでジョン・ダワーの憲法上の「国民」に関する解釈について、皮肉をこめて紹介した。
皮肉というのは、ダワー自身がそもそも昨今流行の「日本は戦後70年間平和だった」教の教祖様のようなものだからで、しかし、そのダワーでさえ「国民」の欺瞞について『敗北を抱きしめて』で示していたからだ。

『安倍談話』というのは、まさに「日本は戦後70年間平和だった」教の信者にとって満足すべき内容だった。
日露戦争を肯定的に評価=朝鮮半島争奪戦だったことを無視。
そもそも日清戦争についての言及は一切なし。
「反省」しているふりをしているのは、満州事変~1945年の敗戦までの間のみ。
もちろん戦時性暴力についても、主体性を明示せずにただただ「名誉と尊厳が毀損された」と言っているだけ(これについては本コメント最後に関連するツイートを紹介)。
まぁアジアにはよいことした、とまるで裕仁の『玉音放送』みたいなもんだな。
そして「もう謝る必要はない」とし、安倍流「SHINE」な女性活用で世界をリードしていく、とするとともに、本記事でも触れられているように『積極的平和主義』を高らかに歌い上げている。
また、しぶしぶ中国、韓国、アセアン諸国については言及しているものの、見事なまでに朝鮮は無視している(=仮想敵国として機能させる)という念の入れようだ。

基本的に4月の米議会演説の延長線上にある「談話」だが、「普通の日本人」(=生活保守層、日本は戦後70年間平和だった教信者)をターゲットとして、見事に成功していると言わざるを得ない。
一部で指摘されていて私もその通りだと思っているが、明治日本万歳の『司馬(遼太郎)史観』と自称リベラルも大好きな『未来志向』の援用も見逃せない。
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO90567690V10C15A8EA1000/
ほらほら、日経なんぞは安堵したとばかりに社説で絶賛肯定中。
http://mainichi.jp/shimen/news/20150816ddm002010039000c.html
そして共同通信世論調査では、談話評価するが44.2%。内閣支持率は43.2%で前回調査時(7月)37.7%から5.5%アップしている。
ほんと日本「国民」とはなんとチョロい存在かと。
ちなみに読売世論調査では談話48%が支持、産経・FNN調査では『戦争法案』そのものを評価する層が16ポイントも増えた、と大はしゃぎである。

メディアはともかくも米政府筋も大歓迎。
http://csis.org/publication/prime-minister-shinzo-abes-august-14-statement-70th-anniversary-end-second-world-war
https://twitter.com/TrinityNYC/status/632698660615245824
CSISのジャパン・ハンドラー、マイケル・グリーンは「今回の談話は左寄は物足りないと批判し右寄は失望するだろうが中道には満足な内容。発表前に公明党の了解を得ており、来る法案成立を後押しするだろう」 と評価している。
https://twitter.com/nakayamanariaki/status/632707213052653568
右派の中でも8.15靖国での田久保兵衛や幸福実現党声明では『安倍談話』を糾弾しているが、しかし、中山成彬のように「安倍談話は主語がないという批判が聞こえる。まさにそれを狙ったものだ。アジア・アフリカ諸国を植民地化し収奪したのは欧米諸国で、日本もされそうな立場だった。世界中の戦場で女性が強姦され殺されたが、日本兵はそれをしなかった。慰安婦はいたが、強制連行したのではない。日本人の強さと優しさ!」と、まさに安倍の狙い通りの反応示しているやつのほうが多いだろう。
また、「反安倍とは人権をめぐる戦い」であり「戦後日本の加害の事実を直視せよ」とする、本物の左派、リベラルが極めて少数であることからして、グリーンの分析はその点で間違ってはいるが、米政府にとっては瑣末の問題であり、これで心置きなく安倍が昨年約束した5年間総額25兆円近くのグローバルホークやらF35Sやらの兵器商談に心うきうき状態なのであろう。
http://foreignpolicy.com/2015/07/16/japans-expanding-military-role-could-be-good-news-for-the-pentagon-and-its-contractors/

『戦争法案』成立後は民主党も大賛成のPKO参加(安倍は南スーダンPKO参加を示唆している)を初めの第一歩として、徐々に「地理的制約無し」に米軍の補完勢力としてどこでもいつでも国を挙げて協力していくこととなるであろう。
昨年カリフォルニアの砂漠地帯で(一線級部隊である)米ストライカー旅団と陸自が演習を行っているので、案外早く米軍の代わりに前線で陸自が活動することとなるかもしれない。
なんたって補給体制も医療体制もスルー、 捕虜となってもジュネーブ条約関係ねぇって国の軍隊だから、アメリカ様も泣いて喜んでくれるに違いない。

国会前の反安倍運動?善意で参加する一般人はともかくも、(考えなくてよいから)「30万分の一になろう」というファシズム真っ青なスローガンを掲げるフォーラム4やら、綱領が『安倍談話』そっくりで(謝罪もしないで)「日本は東アジアの平和構築をリードするポテンシャルがある」、とする「天皇の国家」大好きなリーダーが率いるSEALDsとその取り巻き、さらには彼らを無批判で大絶賛する『護憲派』やら『リベラル』やらがデカい面しているようじゃ、政府・与党は屁でもない。
というか、そもそももはや反安倍掲げる意味すらない。

http://www.asahi.com/articles/ASH8G77D0H8GUTFK01F.html
ついでに言えば、民主党、特に岡田というのは大馬鹿者なのか?何が「こういう談話を出した以上、今後この考え方で進めてもらいたい」だ。
結局、第二次安倍政権誕生の最大の功労者、野田を初めとする党内右派~松下政経塾ラインの連中ばかりではなく、現執行部もクソだということが再確認された。

とはいえ、本記事でも触れられている4-6月期GDPマイナスは深刻だ。
一時的に内閣支持率が再浮上したとしても長くは続かない。
今のところ年内に安倍が辞任するであろう個人的見立てを変えるつもりはない。
しかし、次が問題だ。
冗談抜きにして、もし稲田朋美が次期首相とかなったら、安倍以上に目も当てられない。
一部で来年の参院選自民苦戦するかも、とか、改憲は遠のいた、とか眠たいこと言ってる連中がいるが、そんなわけあるかよ。
『壊憲』は自民の悲願であり、ましてや稲田が次来たらかならずやる。
「今上陛下の深い反省」とやらに感動している暇があったら、もう一度戦後70年とは何だったのか?安倍が特殊なのか?各々が自問自答することからしか、アベ政治との戦いは始まらない。

参考になるかどうかはわからないが、『安倍談話』批判ツイートの中でも個人的にこれだ、というのをいくつか紹介しておこう。
https://twitter.com/hhasegawa/status/632355918127099904
”かつての「大東亜戦争肯定論」は、対米英戦には帝国主義同士の戦争として正戦性を主張しても、中国や東南アジアには倫理的呵責を否認しないところがあった。12月8日の開戦の詔勅を聞いて解放感を味わった、という多数の証言もこの文脈に属する。このバランスの逆転こそ「戦後レジーム」ではないか。”
→まさに日本「国民」は「戦後レジーム」を肯定しているとしか思えない。安倍だけが特殊ではないのだ。

https://twitter.com/flurry/status/632813553834065920
”安倍の談話の『名誉と尊厳を傷つけられた女性たち』は、とりあえず名誉ってのが曲者ではないかしら。女性への性暴力はしばしば「(女性が属する)家や国の名誉が傷つけられた」「むしろ、被害に遭うことで家や国の名誉を傷つけた」と扱われてきたわけで。”
→これこそ「国体護持」。家父長制。結果それが何を意味するか?決して人事ではないはずだ。

https://twitter.com/hiraigen/status/633109795608760322
”主語がない安倍談話、という言い方は的を外している。下手な自由間接話法のようなコンテクストには主格がある。米中の顔色を伺う財界がそれだ。主語がない文書に語り手を見いだしたのが、マルクス、フロイト、ニーチェのはず。立憲と議会、nationと王政にまで後退した議論の水準はそれを見ない。”
→自分で主体性~と書いておいて何なのだが、要は財界にも一応気遣っているフリしてますよ、ということであろう。
しかしながら先に示した日経社説同様、そううまくいくはずもない。
『未来志向』とは、井の中の蛙何とやらってやつで、自己中の極み思考だ。
必ずや墓穴を掘ることになる。

2015.08.18 01:23 URL | white noise #DGytXcAs [ 編集 ]

70年談話は安倍にしてやられてしまった。各社の世論調査でも評価の方が高いし、安倍政権の支持率も回復している。さらに問題なのは産経の調査で集団的自衛権に賛成の割合が20%近く増えていることだ。いくら産経の調査とはいえこの増え方はこれまでの戦争法案反対の運動が一体何だったのかむなしくさえ思う。

この安倍談話が出される前までは潮目が変わったと言われていたが、この安倍談話によって逆にその潮目が変わったということがないといいが。

2015.08.18 05:48 URL | 真鶴 #- [ 編集 ]













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