きまぐれな日々

 週末は土曜日の深夜以後、ずっと木曽の御嶽山噴火のニュースをずっと追っていた。御嶽山は、東方の中部山岳から幾度となく望んだことがあるほか、西方の伊吹山から望んだこともある。どこから見ても姿の美しい山で、一度は登ってみたいと思っていたが、その機会を持たなかった。

 しかし、北海道から鹿児島まで、火山にはずいぶん登ったものだ。だから遭難された方々の不運を他人事とは思えなかった。もちろん山登りは基本的に自己責任の領域に属する行為だ。しかし、今回の御嶽山は、数週間前から火山性地震の頻発が観測されてはいたものの、噴火の危険は低いと判断され、「噴火警戒レベル」は「平常」を示す「1」にとどめられた。

 朝日新聞とともに民主党を非難することに余念のないネトウヨは、鳩山政権時代の2010年の「事業仕分け」で勝間和代が「仕分け人」として火山監視予算を縮小したと非難した(下記URL)。
http://matome.naver.jp/odai/2141182494501618101

 勝間和代はひところ一世を風靡した新自由主義者にして、中部電力のコマーシャルに出ているとして東電原発事故が起きた頃に強い批判を受けた人物だ。急に吹いた逆風に対応しようと、勝間は一時「脱原発」派に転向したが、原発再稼働に熱心な安倍政権の支持率が高止まりしている空気を読んでか、最近再び原発推進派に戻ったという話がある。私も勝間和代は大嫌いである。

 しかし、今回のネトウヨによる勝間和代批判は不当な言いがかり以外のなにものでもない。仮に勝間和代が「事業仕分け」で火山監視予算を削減すべきだとの判定を出さなかったとしても、今回の御嶽山の噴火は予知できなかった。地震の予知ができないのと同様、火山の噴火の予測など、ごく少ない例外を除いて不可能なのである。この事実を直視しようとせず、趣味とする「ミンス叩き」に血道を上げるネトウヨたちには激しい怒りを覚える。彼らには「恥を知れ」という言葉を贈りたい。

 昨夜(9/28)、火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長は、今回の御嶽山噴火のような火山の噴火を予知できないことをはっきり認めた。以下、NHKニュース(下記URL)から引用する。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140928/k10014945111000.html

予知連 藤井会長「現在の学問の限界」

御嶽山の噴火について、火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長は記者会見で「マグマ噴火と比べて今回のような水蒸気噴火を予知することは本来、非常に難しい。突発的に起こることが多く、事前に明確に把握することは困難で現在の学問の限界だ」と述べました。

そのうえで、噴火の前に山頂付近で火山性の地震が増えていたことや、地下深くで火山活動を反映しているとみられる体に感じない低周波地震が起きていたことなどについて、「異常なことが起きているということを自治体や、場合によっては直接、登山客に知らせるなど、情報伝達に工夫があってもよかったのではないか」と指摘しました。
また「比較的規模の小さな噴火でも人がいる場所では大きな災害につながる。一方で少しでも危険なら近づくなとなると、活火山にはすべて近づくなということになってしまう。前兆を把握するのは難しく、完全に安全と断定することはありえないので、丁寧な情報発信があってもいいかもしれない。今回の噴火を受けて、今後、噴火警戒レベルの上げ方なども改善の余地があると思う」と述べて、情報伝達や噴火警戒レベルの運用の在り方について、改めて検討すべきだという考えを示しました。

(NHKニュース 2014年9月28日 21時21分)


 それでも、「学問の限界」なら、まだ今後の科学の進歩で、いつかは予知が可能になるかもしれない。しかし、火山学者の早川由紀夫(この人が福島の被災者に投げつけた暴言は認めがたいが、今回は彼の専門分野にかかわるから、その意見には一定の信頼が置けると思う)は、

学問の限界ではなく、原理的に不可能なんだと思う。地震予知と同じ。

とまで言っている。だから、今回御嶽山に登って噴火に巻き込まれた方々は、航空機事故に遭遇したのと同じ「不運」としか言いようがない。

 御嶽山では、山岳写真家や山岳ガイドなど、職業で山に入る人たちも命からがら下山した。このうち、毎日新聞に報じられた山岳写真家の津野祐次さんと中央アルプスで言葉を交わしたことがあることは『kojitakenの日記』に書いた。産経新聞は「生きて帰れないと思った」という女性山岳ガイドの体験談を報じている。

 記事で山岳ガイドの小川さゆりさんの語るところによると、軽トラック大の石が飛んできて地面にぶつかって割れ、破片が四方八方に飛び散り、黒い雨が降り始め、雷のような音も鳴ったという。なんとも恐ろしい地獄絵図である。私なら生きて帰ることはできなかったかもしれないと思う。

 ところでこの御嶽山は、かつては「死火山」と思われていたが、1979年10月28日に水蒸気爆発を起こした。これが有史以来最初の御嶽山の噴火であった。それ以来、「死火山」や「休火山」という言葉は用いられなくなった。1979年の噴火の前兆として、1968年から噴気が観測されていたとのことだ。

 火山活動や地震といえば、1991年に雲仙普賢岳の大噴火、1995年に阪神淡路大震災が起きた。この頃から、普段は地震がさほど多くなかった西日本で地震がよく起きるようになり、2000年に鳥取県西部地震、2001年に芸予地震が起きた。それ以降になると2007年の能登半島地震、同年の新潟中越沖地震と、北陸での地震が目立つようになったが、2011年には西日本でも北陸でもなく東北に、東北地方太平洋沖地震、いわゆる東日本大震災が起き、この地震によって東電福島第一原発事故(東電原発事故)が引き起こされた。

 東日本大震災・東電原発事故のあと、9世紀に起きた貞観地震が東日本大震災に匹敵する大地震であったとして注目された。しかし、1000年以上昔のこの時代に起きたのは何も貞観地震のみにとどまらない。貞観地震の数年前には富士山の貞観大噴火が起き、九州では阿蘇山が噴火した。また貞観地震の数年後には、東北で鳥海山が、鹿児島で開聞岳がそれぞれ大噴火を起こし、貞観地震の9年後には関東で多数の死者を出した大地震が起きている。

 当時と同じような「大地動乱の時代」が到来しているのではないかと思えるのである。もちろん、今回の御嶽山の噴火は、上記の大噴火と比較するとごく小規模なものであって、運悪く紅葉シーズンの好天の週末に起きたために多数の死者を出してしまったものだが、それでも御嶽山の噴火としては1979年と並ぶ有史以来最大規模の噴火だった。そして、何より注目したいのは、噴火の予測は実質的に(特殊な場合を除いて)不可能であることがはっきりと示されたことである。

 むろん私が言いたいのは、安倍政権が再稼働を決めたと言っている九州電力の川内原発のことだ。首相の安倍晋三は、22日の国連総会で、原発の再稼働について、安全が再び100パーセント確保されない限り行わないと明言した。その言葉に嘘がないなら、川内原発は再稼働してはならないことになる。なぜなら、川内原発こそ日本におけるあらゆる原発の中で、火山の噴火によって重大な事故を起こす可能性がもっとも高い原発とされているからである。

 東日本大震災・東電原発事故直前の2011年1月に起きた霧島・新燃岳の噴火も予知できなかった。これまで噴火の予知に成功したのは、2000年3月の有珠山噴火など、特に「噴火を予知しやすい」限られた火山だけである。これが現実だから、川内原発に事故をもたらす火山の噴火が起きないとして安全を100パーセント保証するのは不可能である。すなわち、安倍晋三が自らの国際公約を守るためには、川内原発を再稼働してはならないという結論が導かれるのである。

 私は桜島の頂上に登ろうなどとは間違っても思わないし、そもそも桜島の登山は禁止されているが、1999年に登ったことのある開聞岳は、形から明らかに火山だとは認識していても、まさかこの山が噴火しようとは夢にも思わなかった。それが現に起きたのが今回の御嶽山だった。だから、仮にあの時開聞岳の頂上で、突如火山が爆発したらどんな恐怖を味わっただろうかと想像してぞっとしたのである。

 なお、たまたまネット検索で見つけたのだが、桜島にもかつて登山できた時代があった。桜島には北岳、中岳、南岳などがあって、最高峰の北岳(標高1117メートル)は別名御嶽(おんたけ)というそうだ。現在のように桜島が登山禁止になったのは、1955年(昭和30年)に、それまで平穏だった南岳が突然爆発して、登山客に死傷者が出たことから入山規制が始まって以来だという。
http://www.sakurajima.gr.jp/sakurajima/arekore/001518.html

 つまり、火山の安定・不安定は、人間の短い一生のタイムスケールで語られるべきではない。それどころか、「有史以来」のタイムスケールでも不十分であることは明らかだ。木曽の御嶽山は、有史以来前例のない、活動が活発な状態になったのであって、これまでのこの山に関する世間一般の「常識」は今後は一切通用しないと考えなければなるまい。

 また、御嶽山だけでなく、日本の地殻が不安定になっているのは東日本大震災が起きたからも明らかだ。つまり、世間一般の「常識」が今後通用しないのは、何も御嶽山に限らないのである。それならなおのこと、川内原発の再稼働などもってのほかであろう。
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2015.08.02 21:22  | # [ 編集 ]













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みなさま(重複失礼、拡散歓迎)FoE Japanの満田です。政府を批判する報道がつぶされ、骨のある記者やディレクターが自殺したり、おろされたりして、政府がたれながす広報をそのまま報道するメディアだけが生き残ることが心から心配です。川内原発の審査書をめぐっても同様のことが起こっています。みなさん、下記は田中俊一委員長の記者会見発言です。「科学をねじまげている」と追及するロイターの記者に対して、...

2014.10.04 07:45 | 広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)