きまぐれな日々

「STAP細胞」騒動は、理化学研究所(理研)及び産業技術研究所(産総研)を「特定国立研究開発法人」に指定し、研究者に高給を認めるなどの優遇措置をとることを安倍政権に先送りさせるという思わぬ副産物を生んだ。
http://www.asahi.com/articles/ASG49667QG49ULFA02H.html

理研の優遇法案、今国会成立を断念へ STAP問題受け

 安倍内閣は、研究者に高給を認めるなど理化学研究所を優遇する法案の今国会成立を断念する方向で調整に入った。理研はSTAP細胞の論文に不正があったと認定したが、筆頭著者の小保方晴子氏が否定し、全容が解明されていない。疑惑を招いた理研の組織的な問題も指摘されており、このままでは与野党の理解を得るのは困難と判断した。

 法案は、理研を世界最高水準の研究機関にしようと「特定国立研究開発法人」に指定するもの。内閣は今月中旬に閣議決定し、法案を国会に出す予定だった。しかし、菅義偉官房長官は9日の会見で「一連の問題にメドが立たないうちは閣議決定しない」と明言。政権幹部も「成立は難しい」と認めた。

 小保方氏が理研に求めている再調査が認められた場合、結果が出るまで最長50日かかる。6月22日の今国会会期末までに法案を提出しても、十分な審議時間を確保できないため、今国会での法案成立をあきらめる方向となった。経済産業省が所管する産業技術総合研究所も同法人の候補だが、内閣は理研と同時に指定する方針で、産総研の指定も先送りされる見通し。

(朝日新聞デジタル 2014年4月10日09時32分)


「STAP細胞」の件がなくとも、理研や産総研に対する「特定国立研究開発法人」指定など、「止めとけ止めとけ」としか私は思わない。法案は、理研や産総研を「世界最高水準の研究機関にしよう」とする狙いがあるとのことだが、権力者が「世界最高水準」と称する技術が本当に世界水準であったためしがない。その好例が安倍晋三が「世界最高水準」と称する、日本の原発関連技術である。原発関連技術は、長年にわたる政府の優遇政策によって莫大な予算がつけられ、甘やかされ続けてきたが、世界最高水準どころか日本の工業技術分野の中でも珍しく、欧米に全く太刀打ちできないレベルでしかない。

歴史的に見ても、日本の工業技術のうち世界的な競争力が特に強い電機や自動車などの分野は、「傾斜生産方式」の対象外だった。それどころか、自動車産業などは70年代の排ガス規制では政府から強い圧力を受けた。日本の自動車産業は、それを跳ね返して技術的なアドバンテージを獲得し、それが国際的な競争力につながった。

理研といえば私などは、戦時中に「ニ号研究」で原子爆弾の基礎研究を手がけながら、湯川秀樹を含む研究者は原爆が実用化できるとは誰も想像もしていなかったという恥ずかしい歴史を反射的に連想する。半世紀前でもあるまいし、いまどき「傾斜生産方式」を連想させるような「特定国立研究開発法人」指定などナンセンスだ。

「STAP細胞」の一件は、あまりにも不透明な点が多く、マスメディアは小保方晴子博士のちゃらんぽらんな研究姿勢と画像の流用、博士論文のうち序文とバックグラウンドの部分のインターネット経由のコピーアンドペーストなどを騒ぎ立てている。

しかし私がもっとも強く疑念を抱くのは、笹井芳樹博士及び理研に対してである。たとえばSTAP細胞の特許出願は、最初2012年に米国特許庁に対して仮出願がなされているが、その発明者の中に笹井氏の名前はない。その米国仮出願に基づく翌2013年の国際特許出願になって初めて笹井氏の名前が出てくるのである。そして米国出願も国際出願も、ともに筆頭発明者はハーバード大学のチャールズ・バカンティ教授だ。果たしてそんなものが「理研の研究成果」といえるのか極めて疑わしいし、この件で果たした笹井氏の役割にも疑念を抱かずにはいられない。

聞くところによると、笹井氏はその道の第一人者であり、ノーベル賞級の学者とも言われているらしい。しかしその内実はいかほどのものなのか。もしかしたら、同じ研究分野においてかつて韓国の黄禹錫(ファン・ウソク)が犯した捏造行為と同じか、それに近いことをやろうとしていたのではないか。そんな疑念さえ拭えない。

2005年末に黄禹錫がやらかしたES細胞論文の捏造や研究費等横領が明るみに出るまで、韓国政府は国を挙げて黄禹錫をバックアップしようとしていた。ちょっとネット検索をかけただけでも、問題発覚前の2005年5月30日のAP通信の記事「韓国政府がES細胞研究者に追加支援、身辺警備も」が引っかかった。

「STAP細胞」の件も、理研が小保方晴子を「客寄せパンダ」にして成果をブチ上げた直後には、安倍晋三を筆頭とする政府首脳がこれを大々的にバックアップしようとしていた。理研の理事長・野依良治に関しても芳しからぬ噂をいろいろ耳にするが、2005年の韓国政府と2014年の日本政府は、ともに浅薄さを露呈した点で共通するように私には思われる。

そもそも、金になりそうな研究を大々的にバックアップし、金にならない研究は切り捨てるという、小泉政権以来露骨に進められている政策が全く気に食わない。2005年当時の韓国は盧武鉉政権だったが、小泉政権にせよ盧武鉉政権にせよ、また現在の日本の安倍政権にせよ、いずれも新自由主義を強烈にむき出しにした政権である。政府のやるべきことはそんなことではあるまい。金儲けを追求するのは私企業だけで十分だ。

「STAP細胞」の件では、小保方晴子個人にとどまらず、笹井芳樹をはじめとする理研の関与を厳しく追及する必要があると同時に、政府が「金になりそうな研究」に予算を傾斜配分するというあり方に対しても、国民的議論が必要なのではないかと思う今日この頃である。
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数か月前に李成柱『国家を騙した科学者』 http://t.co/P6oXcDNqw2 ってのを都下某市の図書館リサイクル市でゲットし只今読んでいるんですけど、政府やマスコミがあっという間に飛びついて(捏造と解るまで)バックアップしたこととか、批判者に対する官民挙げてと言っていいほどの圧力・捏造した本人ばかりか関係者も含めた思惑など、今回のSTAP細胞の一件は黄禹錫の件と余りに似ているとこが多いので正直唖然としています。黄禹錫の件では、日本のウヨとか「保守派」とかが「これだから韓国は嘘吐きで」云々って今ならヘイトスピーチ間違いなしな言説が飛び交ってましたが、自分の頭の上のハエも追えずによくもあぁ大口を叩けたもんだなって今改めて思っています。

と言うのか、その当時の盧武鉉政権って出自もさることながら登場の仕方が今のネット時代の政治家の登場の仕方の先駆けみたいなもので、地道な市民活動家が今の国の問題を何とかしてくれる!って期待が政権発足当初には結構見られましたけど、肝心の社会的問題には(議会で少数与党だったせいもあって)殆ど手が付けられず、対米関係も及び腰・財閥改革も中途半端で、結局その後のリベラル派や市民運動系に対する冷笑を招いた訳ですから。本人も大統領を辞めた後に「政治とカネ」で追及を受け、その直後に事故死。こういう盧政権以降の韓国の動向ってのを見ていると、かの我が国の民主党やその周辺の体たらくって隣国の二の轍って気もするんですよね。

あと、傾斜生産と言えばつい先月末にTBSでドラマ化された本所次郎『小説日銀管理』 http://amzn.to/1hz2KOX で朝鮮戦争終了後で経営危機だったトヨタ自動車が取引銀行を駆けずり回った際に「機屋に貸せても車屋には貸せない」って銀行のお偉方が口にしていたんですよね。兎角、最近の経済論調を見ていると「我が国は強みのある産業を活かして」云々ってのが目立ちますけど、トヨタの経営危機とその後の隆盛ぶりを見るにつけ、結局人はその場の強弱でモノを見れないもんなんだな、とも思いたくもあるのですが・・・・・・・

2014.04.14 09:50 URL | 杉山真大 #- [ 編集 ]

新自由主義の本場であるはずのアメリカでは、基礎研究も日本よりレベルが高い(はず)ですが、どういう仕組みなのかなと思います。

キリスト教が背景にあるので、神学・哲学など直接お金にならない学問も重要な分野と認識されているとは思いますが。

2014.04.14 15:26 URL | りょう #- [ 編集 ]

「りょうさん」への、私なりの回答ですが、アメリカは海外からの留学生が多く、大学(産業)が日本よりも成り立ちやすい。それで、古くからあるオーソドックスな基礎分野の研究者を、一般(教養)教育要員として雇いやすい。そういう人的な厚味も反映されてると思います。

歴史の厚みのある分野は、天才・秀才・努力の人・・・いろんなタイプが居ることが重要と思います。

2014.04.15 04:44 URL | ふはっ #pk1Oawbg [ 編集 ]

アメリカは色んな意味で実験国家ですからねえ。新自由主義も経済学の一種の実験みたいなものですし。

研究の価値を判断する時の「目」はアメリカの方が厳しいものがあると感じます。一番違うと感じる点は、価値判断する側が日本ほど近視眼的ではない。

2014.04.15 22:18 URL | settering #- [ 編集 ]

「小保方、謝れ!」とか「全員出て来い!」とか言っている人は何をそんなに怒ってる?あんたが何かされたんかい?あんたらに不利益があったのか?

マスコミも自分たちは年中悪意ある改ざんを繰り返しているくせになにイキまく?別に法に触れてるわけじゃなし、税金の無駄遣いなんか桁違いなのが他にいくらでもあるのに、なぜ個人たたきに嬉々として参加したがるのかね。異常に思う。

2014.04.16 19:33 URL | #- [ 編集 ]

事の推移をみていると、
「自己アピールに長けた女に、すけべ親父どもがコロッと騙された」
だけの話かと。
下世話な言い方とはいえ、そこは押さえておく必要があると思う。
「オボちゃん」が男だったら、ここまで引っ張れず、袋叩きにあって終了だっただろう。
てか、ちょっと前に似たようなことがなかったっけ?
あれは冴えないおっさんだったと思うけど。

2014.04.17 05:23 URL | 元大阪府民からの伝言 #- [ 編集 ]













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