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きまぐれな日々

昨日(29日)投開票された堺市長選で、現職市長の竹山修身候補(無所属)が、大阪維新の会公認の西林克敏候補を大差で破って再選された。また、同日に行われた堺市議補選は、3議席がいずれも維新の会と自民党との対決構図になったが、中区と西区で自民党候補が大接戦を制し、維新の候補は南区で議席を得るにとどまった。これら3議席はいずれももとは維新の議席であったことから、市長選、市議補選とも維新は敗北した形だ。

だいぶ前から大阪市長の橋下徹が力を入れていた堺市長選での維新候補の惨敗は、昨年末の衆院選以来波がありながらも基本的には低落基調だった維新の衰勢に、今なお歯止めがかかっていないことを示すものだろう。

ところでこの選挙、マスコミはおそらく維新対既成政党連合という図式で解説するだろう。本記事は、朝日新聞の朝刊(30日付)が届く前に書いているが、朝刊に載っているであろう記事の書き出し部分が同氏のサイトに出ていて、それを見ると案の定、参院選の際に橋下が漏らしたという「自民党と民主党の票を足したらきついなあ」という言葉が紹介されていた。

でも、それは違うだろう。それは橋下がそう書いてほしい図式だろうが、本当の対立構図ではない。

今回の堺市長選について、元京都府立大学学長の広原盛明氏が、連日精力的なブログ記事を書いているが、そのブログ『広原盛明のつれづれ日記』の9月19日付記事(下記URL)のタイトルが、この選挙の本当の対立構図をよく言い表している。
http://d.hatena.ne.jp/hiroharablog/20130919/1379537697

広原氏は、

堺市長選の政治的本質は何か、それは“自民党分裂選挙”すなわち「国家保守=橋下維新」vs「地元保守=大阪自民」の戦いなのだ

と喝破する。その通りであろうと思う。以下広原氏のブログ記事の後半部分を引用する。

(前略)大阪維新の会の結党を契機にして自民党は組織的に分裂し、「国家保守=橋下維新」と「地元保守=大阪自民」に明確に分かれたのである。大阪ダブル選挙はその最初の「大戦」(おおいくさ)であったが、当時はまだ橋下維新がマスメディアの世界では「第3極」などと持て囃されていて、「国家保守=ネオコン」としての姿が露わになっていなかった。新聞論調を信じる以外にさしたる判断基準を持たない大阪府民・市民が、橋下・松井コンビを選んだのも無理はない。

 だが、堺市長選は違う。支配体制の利益を第一義的に追及する「橋下維新=国家保守=ネオコン」と地元利益を重視する「大阪自民=地元保守=旧保守」の対決構図はいまや明確すぎるほど明確だ。だから、竹山氏や大阪自民がどれだけこの事態を正確に認識しているかどうか別にして、開発主義の誤りを是正し、堺の歴史文化や都市生活の伝統を生かして堺を再生させようとするのであれば、「地元保守=大阪自民」と「革新リベラル=共産・諸派」の連携が堺市長選で成立しても何らおかしくない。むしろ当然であり、必然的な成り行きだといえる。

 堺市長選にあらわれたこの新しい対決構図、すなわち「国家保守=ネオコン=開発保守」vs「地元保守=旧保守=環境保守」+「革新リベラル=共産・諸派」は、今後同様の問題を抱える全国各地に波及していくだろう。すでに沖縄では米軍基地問題をめぐって実質的な共闘が成立しているし、原発再稼働問題を抱える福島でもその兆候があらわれている。また北海道ではTPP問題を契機にして安倍政権と「地元保守」との対立が激化しており、「革新リベラル=共産・諸派」との連携が進んでいる。

(『広原盛明のつれづれ日記』 2013年9月19日付記事より)


今回の堺市長選では、共産党が独自候補を立てずに竹山市長支持を打ち出した。ネトウヨは選挙前、「共産党がついたら票が逃げていくぞ」と笑っていたが、そうはならなかった。

そもそも自共共闘は以前から地方選挙ではしばしば行われていた。私が真っ先に思い浮かべる例は、東日本大震災の1か月前に行われた岩手県の陸前高田市長選であって、この選挙では共産党系の中里長門市長(2011年8月没)が「自共共闘」で民主党系候補を破って2期務めたあと、自民党系の戸羽太候補を共産党が支援した。対する民主党は、小沢一郎が「減税」を声高に叫ぶ新自由主義系の小沢派候補を擁立し、これに消極的だった岩手3区の黄川田徹衆院議員を名指しで詰るなどして「剛腕」をふるったが(このことが後に黄川田氏が小沢から離反する最初にきっかけになった可能性もある)、自共共闘の戸羽候補に敗れたのだった。陸前高田市長選を報じる『しんぶん赤旗』2011年2月7日付記事のURLを下記に示す。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2011-02-07/2011020702_01_1.html

広原氏は大阪維新の会を「国家保守=ネオコン=開発保守」と表現しているが、維新の会はもう一つ、極端な「新自由主義=ネオリベ」への強い傾斜を示すことは周知である。「ネオコン+ネオリベ」を指すのに、この記事では「新保守」という言葉を用いたい。一昨年の陸前高田市長選における小沢派候補も、「減税」が公約の中心だったことから明らかなように、「新保守」の範疇に属すると見て良いだろう。「減税」は新自由主義の政治家の基本的な政策の一つである。つまり、2011年2月の陸前高田市長選も、今回の堺市長選と同じ「新保守」と「旧保守」の戦いであり、今回と同様、旧保守が新保守に勝った選挙であると私は考えているのだ。

さらに言えば、「新保守」対「旧保守」の争いの構図は、国政でも見られる。明日(10月1日)にも総理大臣・安倍晋三が来年4月の消費税率引き上げを表明すると思われるが、安倍晋三は消費増税とひきかえに法人税減税や復興増税のうち法人税分の前倒しの終了などをやろうと躍起になっている。つまり「新保守」として行動しているが、それに自民党内(つまり「旧保守」)から異論が続出し、安倍(「新保守」)を止めようとした。結局自民党内の「旧保守」は復興法人税廃止については安倍晋三の意向を通す妥協をしたようだが。

今回の堺市長選では、自民党が「支持」した竹山修身市長が勝ったが、安倍晋三にとっては不本意な結果だったに相違あるまい。安倍が本心では維新の会の西林克敏の勝利を願っていたであろうことを私は確信する。なぜなら、これは多くのマスコミも言っていることだが、安倍晋三が最大の念願である改憲を実現させるために、安倍ら自民党内極右派の補完勢力である維新の会の力を借りたいと考えていることは間違いないからである。維新の会の敗北は、そんな安倍晋三にとっては大いなる不都合なのである。

もちろん、あの森喜朗(シンキロー)の「干からびたチーズ」を想起させる「DRYの会」なる「新保守」志向の新党発足をもくろんでいた連中も、今回の選挙結果に打撃を受けたはずだ。今後このアサヒビールの宣伝部隊みたいな連中の動きは確実に下火になろう。蛇足ながら、昨年まで「私の考えは橋下市長と同じだ」としきりに言っていた某元「剛腕」政治家もますます存在感を失っていく。

前記の広原盛明氏は、選挙戦最終盤の記事で、今回の選挙戦の特に後半、維新の西林候補の足を引っ張る言動を繰り返した石原慎太郎は、今後日本維新の会から橋下系列を切り捨てて自民と公明の連立も割き、(旧立ち枯れ、もといたちあがれ系勢力が)安倍政権と連携していく狙いを持っているのではないかと推測しているようだ。だが私は、石原がそのような願望を持っていることは大いにあり得るけれども、それは実現しないだろうと思う。頭の悪い安倍晋三は別として、大部分の自民党国会議員は、今の自民党政権が公明党あってのものであり、公明党との連立を切ってしまえば政権継続が不可能であることを十分理解しているであろうと想像するからだ。

仮に安倍晋三が石原一派なり「石原+橋下」の現日本維新の会全部なりと連携し、公明党を切る道を本気で模索した場合、それは自民党の分裂につながる可能性があり、仮にそうなって極右勢力が集結した方が政治としては分かり易いし安倍・石原・橋下連合を打倒するのも容易になるだろうと思うが、この構図はリアリティを全く欠いており、実現はまず考えられないと私は思う。

石原慎太郎は近い将来立ち枯れ、自民と公明の連立は当面続き、安倍晋三は野党や中韓よりももっぱらアメリカにブレーキをかけられて、短かった第1次内閣時代のように、アブナイことをあれもこれも実現させることはできないだろう。集団的自衛権の問題にしても、オバマ政権は自国の戦争の一部を日本に肩代わりさせるのは大歓迎だけれども、日中戦争に巻き込まれて日本の戦争を肩代わりするなど真っ平御免だと考えていることは明らかだ。そうは言っても安倍晋三が総理大臣の座に居座る限り日本は大きなリスクを抱え続けるから、早くこんなのを引きずり下ろさねばならないのは当然だが。

最後に橋下に話を戻すと、今回の堺市長選の得票結果がダブルスコアくらいまでいっていればもっと大喜びができたのだが、長年にわたって「たかじん」の極右番組に代表される在阪テレビ局に洗脳された関西の人たちの橋下信仰がまだまだ根強いことが、西林候補の4割強の得票に示された。害虫を完全に駆除するためには、まだまだかなりの時間がかかりそうだと思う今日この頃である。
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今回の選挙で、「維新の会」の敗北の原因についての分析については、私も同意します。

また、私も、このまま「維新の会」が一過性のブームに過ぎず、このまま終ってくれるなら、それを歓迎こそすれ拒む理由など何もありません。

しかし、国民の今の政治状況に対する「閉塞感」自体は(未だ大きくは)変わっていない事を考えると、政治における代行主義=【強いリーダーシップ】という名前の実態はポピュリズムに過ぎない、内実は財界の意を汲んだネオコン的な新自由主義勢力が、第2第3の「維新の会」の焼き直しをしてきて、国民がそれに期待するという構図は、本当の意味で今の政治を庶民への公平な再分配を含めたオールタナティブを提示できる「開かれた」新しい左翼が登場するか、既存左翼自身が自己変革し、その「公平」という規範の価値が国民に認知され、その政策の実行可能性についても評価されるまでは、終らない危機が未だにあるとも言えるでしょう。

そういった左翼の登場には、もし政治は国民(の意識)の鏡という見方をするならば、産み育て変革を実現するには長い年月を要するかもしれませんが、長い歴史には節目というものもあり、いずれ今の社会の中でも問題意識を共有したり育てていく地道な「対話」の成長の果実として、変革の時は来ると、あくまで(私は)確信しています。

子供や孫の世代に、少しでもマシな世界を残す為に、皆で頑張りましょう。

2013.09.30 14:56 URL | 伊賀篤 #Xk9Ues7M [ 編集 ]

このコメントは管理者の承認待ちです

2013.10.03 01:10  | # [ 編集 ]

今回の選挙で維新の会候補が落選したので、少しほっとしました。しかし、筆者が述べておられるように、いまだに維新の会に4割投票する人がいることが怖いです。あの阿久根市のときもそうでした。あれほどの暴君で法を無視した独裁者であるにも関わらず最後まで半数近くの市民が竹原氏に投票するという信じられないようなことがこの日本で起きたのです。
どうも最近は日本人から良識というものが失われているのではないかと危惧しています。

2013.10.03 20:46 URL | なのはな #- [ 編集 ]

大阪府民の全体的傾向として、大阪という枠組よりも、自分が生まれ育った市町村に対する思い入れのほうが強い傾向があると私は常々感じています。
今回の堺市長選の結果は、その顕著な例かと思います。
堺の住民は、大阪府民である前にまず堺市民であることを意識している人が多数派なのではないでしょうかね。
我が町が大阪府に呑み込まれるなんていうのは、気持ちとして許せない、というわけです。

ところで、大阪府出身者の著名人の中には、自分が単に大阪出身ということで話を終わらせず、出身市町村の名前まで言いたがる人が目立ちませんか?
岸和田出身の清原和博は顕著な例ですが、他にも思いあたる人物は何人もいます。
これは何も著名人に限らず、遠方に出た大阪府出身者には似通った傾向を感じることがあります(ただし大阪市出身者にはあまりみられない)。
とりわけ、京阪神を一直線に結んだラインから南側に外れた地域の出身者に多いかと。
私もそうなので、彼らの気持ちはよくわかります。
この地域の住民は、マスコミのいう「大阪」とは全く違う世界に生きていますから、必然的にそうなるというのもありますし。

かくいうものの、維新の得票率は今回もそこそこ高いのが気になるところです。
維新に入れた人たちの中で、本気で大阪都構想を支持している人はどのくらいいるのでしょうかね?
私としては、維新の政策においていちばん許せないのは大阪都構想なので、このへんは非常に気になるところです。

2013.10.03 22:12 URL | 元大阪府民からの伝言 #- [ 編集 ]

私は、維新が掲げる地方主権は、過渡に地方の裁量を増大させる結果、弱小地域の切り捨てと主権国家の弱体化を招くと危惧しているので、維新の敗北は歓迎するところです。
ただ、同時に堺の存立にこだわる堺市民の姿を見ていると、日本の地方自治体がこのままでいいのかよという気持ちになってしまいます。
日本の地方議員の報酬の高さは、諸外国と比べて突出しています。
欧米を見ると、州や県レベルまでは報酬が出ますが日本よりずっと低く、それより下の市町村レベルはほとんどが無報酬か実費支給程度です。それに比べ日本では、都道府県や大都市で1千万以上、小さな町村レベルに至るまで数百万の報酬をとっているのが現状です。議員に専念させる意味で必ずしも日本式がダメとも言えませんが、全政治家に支払う金額の差を考えると現状のままでよいとはとても言えない。
では、日本式を残したままで、どうやって効率化を進めるかといえば、やはり基礎自治体の統合、大規模化によるしかないと考えます。
郷土意識とか歴史とかもわからないわけではないが、それが結果として非効率温存につながってしまうとしたら残念なことです。
平成の大合併推進の折にも、こんな市が独立しててどないすんねんと思うようなところが、合併反対を打ち出したりしていた。
市が別であれば、市長など市職員、市庁舎、議会や議員、市民ホール、コンピュータなどもみんな別々。
大阪都構想はともかくとして、最弱政令指定都市が日本第2の都市と並んで独立している意味があったのかどうか。
歴史はすでに過去のもの、今は大阪のベッドタウンなのだから、いっしょになった方が職住一貫の政策がとりやすいのではないかと思ったりします。
博多も門司も小倉も、市長も議会もないが、歴史はちゃんと息づいていますぞ。

2013.10.05 13:40 URL | 新参者 #fbL1xQQ. [ 編集 ]

体調不良で今の今迄コメントが遅れてしまったんで、今更感もあるけど(爆

「新保守」対「旧保守」の争いの構図ってのを見ていて思うのは、ここ最近になって以前なら民主党を支持したりリベラルとかを自認していたりする層が「旧保守」とりわけ「保守左派」に転向(転進?)しつつあるんじゃないかってことなんですよね。民主党政権があんな終わり方をした絶望と共産党への如何し難い違和感(アレルギー?そう言えば同じ日の市議補選では共産党は苦戦したそうで)ってことなのか、食えないリベラルよりは食える保守ってことなのか。

ただ、そうした「保守左派」のムーブメントがkojitaken様の言う「大きなリスクを抱え続ける」現状へのオルタナティブになるかって言うと、かなり可能性が低いんじゃないかって思います。「保守左派」の言動ってのを見ていると、彼らは高度成長期や戦前・ともすれば近代以前の「国民国家」・日本ってのを理想化していて、それに対するオープンな社会や多様な価値観に対して目の敵にしている気があるんですよね。例えば「保守左派」を自認している内田樹なんて、今や脱原発派で護憲派の顔をしてますけど、ブログでは日本国憲法をアメリカの支配の道具とdisり菅直人の浜岡原発停止をアメリカのエネルギー戦略に日本を組み込む売国的行為と罵っていたりした前歴の持ち主だったりする訳です。

幸い(?)、今はアメリカが民主党のオバマ政権で少なくとも近隣アジア諸国などと事を起こしてくれるな・矢鱈戦前回帰みたいなことをしてくれるなって、ブレーキをかけている現状ですが、こうした対米追従への反感と「旧保守」「保守左派」のムーブメントが重なってしまったりすると、ともすれば今の安倍政権以上に破滅的なことをやらかす本格的ファシスト政権になる嫌な予感がしません。そもそもファシズム自体が思想的には「保守左派」の流れから出てきたものだったりしますが・・・・・

2013.10.06 22:20 URL | 杉山真大 #- [ 編集 ]

 社民党、‘ゲイ’が党首になるなんて世も末だ。風貌を見たって吹けば飛ぶようなアンちゃんをなんだが、今世紀初頭の自民の小泉みたく救世主降臨sた~~~~た!!てんで、‘ベン・ハー’でイエスに水を飲ませてもらってカンドーしている主人公の如く崇めたて祭ってるとういうような党内情勢に至ってはまさに狂気の沙汰、慰安婦発言した維新・橋下に匹敵するような異常事態だ。

2013.10.07 00:08 URL | ブラック・ジャック‘人面瘡’だった社会党、この時ブラックは無かった #- [ 編集 ]













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堺市長選:「旧保守」が自共共闘で「新保守」に勝った選挙である
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2013.10.01 10:11 | 【堺からのアピール】教育基本条例を撤回せよ