きまぐれな日々

12日、原子力安全・保安院と原子力安全委員会が福島第一原発事故を「レベル7」との暫定評価を発表した。

当ブログが「いまや『チェルノブイリ』と比較される福島原発事故の深刻さ」と題した記事を公開したのは3月25日だが、この記事は同日付の朝日新聞記事に基づいて書いたものだ。朝日新聞は、原子力安全委員会が公表したデータに基づいて、事故を「レベル6」と評価し、これを記事にした。

このことは、朝日新聞の紙面にはっきり書かれている(特に、上記リンク先には書かれていないけれども当日の5面に掲載された高橋真理子記者の署名記事「安全委は国民の前に立て」)。それにもかかわらず、ネット右翼筋からは、「朝日にレベルを決める何の権限があるんだ」などという、筋違いの悪口が聞かれた。

今回も、当ブログは「レベル7であることは3月下旬の時点でわかっていた」と批判するのだが、4月14日付の朝日新聞3面に掲載された記事「『レベル7』遅れた認定」を読むと、官邸スタッフの12日の会食で「チェルノブイリと同じ『レベル7』はおかしくないか」という意見が相次いだらしい。

だが、同じ朝日新聞記事には、

INESのマニュアルに従えば、5万テラベクレルを超えれば「レベル7」に相当する。

とある。つまり、放出された放射能放出量でレベルは決まるのだから、チェルノブイリと比較してどうこうという議論はおかしいのではないかと思うのだが、マスコミや政界を含めて奇妙な議論がまかり通っている。

どうにも納得できないので、4月12日に公表された原子力安全委員会の資料に当たってみた。
http://www.nsc.go.jp/info/20110412.pdf

この資料には、放出量の積算値の推移を示すグラフが出ている。一見、放出された放射能の大部分は3月15日から16日にかけて出ているように見えるが、よく見るとこれは片対数グラフになっている。縦軸が、100テラベクレル、1000テラベクレル、1万テラベクレル、10万テラベクレル、100万テラベクレルと、10倍間隔で刻まれているのだ。これだと、グラフの上の方では、実際にはかなりの放射能の放出があっても曲線の傾きは小さくなってしまう。

これを3月15日から24日までの部分だけ、通常の(リニアの)プロットに書き改めたグラフを示したブログがあった(下記URL)。
http://blog.goo.ne.jp/chemist_at_univ/e/4880fe4a4f204d03b8852b2e08c3f117

こちらのグラフを見ると、3月15日から16日にかけて放射性ヨウ素の大量放出があったあと、少し収まったものの22日にかけてコンスタントな放出があり、22日から24日頃にかけて再び放射性ヨウ素の放出量が増えたあとようやく放出量が減ったことがわかる。また、もとの原子力安全委員会のグラフを見ると、22日から24日にかけてはセシウム137の放出量はさほど増えていないものの、29日から30日にかけてセシウム137の放出量が目立って増えたことが読み取れる。それぞれの放出量の増加がいかなるイベントと関係しているのか私にはわからないが、何度かなんらかの危機的なイベントがあったことは想像できる。

原子力安全委員会の資料には、こう書いてある。

3月11日から4月5日までの大気中への一部の核種の放出放射能総量として、ヨウ素131が1.5×10^17Bq(15万テラベクレル)、セシウム137が1.2×10^16Bq(1.2万テラベクレル)という推定的試算値が出されました。



原子力安全委員会の「放射性ヨウ素換算」の放射能放出量は63万テラベクレルとのことだが、どうやらセシウム137の放出量を「放射性ヨウ素換算」する時には40倍するらしい(1.2万テラベクレルを40倍すると48万テラベクレルとなり、ヨウ素131の15万テラベクレルと合計して63万テラベクレルになる)。INESが定める「レベル7」の基準をとうに超えている。

ここで私が声を大にして言いたいのは、原発事故のレベルは放射性物質の総放出量で決まるから、政治的判断で「レベル4」だの「レベル7」だのと決められる話ではないということだ。このことを読者の皆さまにご理解いただきたいと思う。一部で憶測されているような、「アメリカが日本の原子力行政を支配下に置く目的で『レベル7』の判定を日本政府に強要した」という俗説は、有害な陰謀論以外の何物でもない。

議論があるとすれば測定誤差だが、朝日新聞の記事によると、原子力安全委員会が初めて「3万~11万テラベクレル」試算を公表した3月23日の段階では、「測定地点が3地点しかなく、試算値は10分の1から10倍程度の幅で誤差があると考えられた。とのことだ。この書き方だと、3月23日段階でも試算値の中心値は6万テラベクレル程度だが、真の値は6千テラベクレル程度から60万テラベクレル程度まで幅を持っているかのように読める。誤差の下限の数千テラベクレルでも「レベル6」相当だから、この時点で朝日新聞が原発事故の深刻さを「少なくともレベル6以上」と判定したことは理にかなっていたのである。ただ、この時点で朝日新聞があえて書かなかったことは、「おそらくレベル7に達している」ことだった。

このようなことは、豊富な人材を多数抱えるマスコミ各社の高給を取っている優秀な記者たちは、朝日新聞の記事を読んで理解に至ったはずだ。朝日新聞が政治的思惑だとか、ましてやアメリカの意を受けて(笑)「レベル6」と判定したと思う人がいるなら、その人は陰謀論的思考方法に侵されすぎている。

私は、朝日新聞が3月25日付紙面で「レベル6」と報じたことを評価する。「レベル7の疑いが強い」ことを、枝野幸男官房長官のみならず朝日新聞記者も気づいたであろうにもかかわらずそうは書かなかったことは適切だとは思わないが、それは政府と同様、朝日新聞にも読者をパニックに陥れないための配慮が働いたものと推測している。そして、そうした新聞報道に対して疑義を呈することが、われわれ市井の人間がとるべき態度だと考えているから、私は前記3月25日付の当ブログ記事「いまや『チェルノブイリ』と比較される福島原発事故の深刻さ」でそれを実践した次第である。

それだけに腹が立つのが、「レベル7」の見込みと原子力安全・保安院と原子力安全委員会したあとになって、読売新聞と産経新聞を代表格とする右翼マスコミや、自民党の諸政治家たち、みんなの党の渡辺喜美、民主党の小沢一郎といった獰猛な保守政治家たちが、これを菅政権転覆の口実にしようと躍起になっている姿だ。

だが彼らも皆、枝野幸男や朝日新聞記者たちと同様、3月下旬にはこの事故が「レベル7」相当だと知っていたはずだ。知らないとは言わせないし、もし本当に「知らなかった」のであれば、その程度の情報収集能力しかないのであれば、彼らはジャーナリスト失格だし、政治家失格だ。

何より、彼ら元ないし現自民党政治家及びそれを後押ししてきた右翼マスコミは熱心な原発推進勢力である。その中でももっとも悪質なのは中曽根康弘・正力松太郎につながる人脈であって、現役の政治家やマスコミ人でいうと与謝野馨、石原慎太郎、渡邉恒雄(ナベツネ)といった人たちだが、他の連中も五十歩百歩だ。

私とて菅政権の震災対応には強い不満を持っているが、上記の連中が主導するような「右からの倒閣」だと、事態はさらに悪くなる。単にトレンドに安易に乗って原発推進政策を進めたに過ぎない菅政権よりも、根っからの原発推進勢力である彼らが政権を担った方が、情報隠しはさらに徹底されて既得権益(原発利権)は守られ、その結果日本が取り返しのつかないほど破壊されてしまうことは火を見るより明らかである。

同じ保守政治家、しかも新自由主義系であっても、河野太郎のような反原発論者が首班指名を受ける政権であれば、原発政策に限っては菅政権より良くなる期待も持てるが、上記保守政治家や保守マスコミにとっては、「河野政権」など、菅政権よりさらに悪い論外の選択肢に違いない。

本来なら、3月下旬の時点で、自民党や渡辺喜美や小沢一郎が、そして読売新聞や産経新聞が「本当は『レベル7』ではないのか」との疑問の声を上げていなければならなかった。その時そういう行動をとっていて初めて、「今頃になって『レベル7』を認めるとは何をやっていたのか」と菅政権を批判する資格があるといえる。しかし、彼らは3月下旬にはそんなことは言わなかった。なぜかというと「反原発」の世論が盛り上がるのを恐れたからであり、原発推進の政策、ひいては原発利権を守りたかったからだ。

なんという卑怯な連中か、と私は怒り心頭に発している。
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2011.04.15 08:20 | 東京電力原発事故 | トラックバック(-) | コメント(7) | このエントリーを含むはてなブックマーク

まあ、レベルがどうのこうの言っても日常は流れていくんですがね。
全国紙が吠えようが原発中毒と反原発派が空中戦しようが、
実際生活している人々への想像力が欠けている。
こっちからすれば「安全圏ならなんとも言える」としか思えない。

2011.04.15 18:50 URL | 観潮楼@外国基準ならとっくに避難民 #- [ 編集 ]

チェルノブイリ級についてですが森住卓(フォトジャーナリスト)が東京民報2011年(平成23年)3月27日(日曜日)に寄稿しています。
森住記者は3月13日に双葉町へ入り測定したのですが、
最大毎時1000マイクロシーベルトまで測る事ができる測定器が持ってきた3台すべてが振り切れたとの事です。

2011.04.15 20:30 URL |        555 #- [ 編集 ]

あす午後3時よりインターネットの動画サイトで民主党元代表の小沢さんと一般市民との座談会の模様を中継するそうです。
座談会のテーマは「東日本大震災」と「福島原発大事故」です。

http://live.nicovideo.jp/watch/lv46671523
http://www.ustream.tv/channel/apfnews-live

小沢さんに関しては、民主党代表だった時代に党の原発政策を積極的なものに変更したことをもってして、原発推進論者であり原発利権政治家だと思われている方もおられるようです。
座談会では小沢さんの原発に対しての姿勢も実際に小沢さんの口からあきらかになるのでしょうから視聴をお薦めしておきます。

2011.04.15 22:16 URL | 風太 #seTEoywg [ 編集 ]

京大原子炉実験所の小出裕章氏も早くからレベルは7であろうと言われていたようで、かつ、関係機関もそれを気づいていたはずだと言われています。

京大原子炉実験所 小出裕章助教 インタビュー
【福島原発】2011/4/12/火★ 最悪の「レベル7」引き上げの意味 たねまきジャーナル
http://www.youtube.com/watch?v=ruTVbPCGAxw&feature=related

こちら↓阿修羅板 ジャック・どんどん氏による書き起こし
京大小出「彼らは事故1日目にすでに知っていた・レベル7・1万テラ」たねまきジャーナル
http://www.asyura2.com/11/genpatu9/msg/200.html
(以下、上記より引用)

小)テラっていうのは、10の12乗ということです。5万ベクレルを超えるような放出を超えるとレベル7だといのが国際事故評価尺度です。ですから1日目にもうそれにごく近いものを放出してしまったと言っているのですね。

水)1日でじゃあ、レベル7に近い状態っていうのはわかってたんですね。

小)そいうです。

水)それをレベル4と言ったというのは、えー。

平)これは、逆算してそういう判断したっていうのは、逆算っていうのは何を逆算するんですか?

小)周辺のモニタリングポストのデータであるとか、あるいは、今かなり周辺の土地の汚染の評価も進んできたわけで、きっとそういうものを逆算するというのは出来ると思います。えーそして、原子炉格納容器の中の放射線のレベルというものもはかっているわけで、どれだけのものが炉心から格納容器に中にでてきたかということも当初から知っていたと思います。特にモニタリングポストのデータなんかはもちろん当初から知っていたはずですし、かなり早くから彼らは気がついていたと私は思います。

水)はー、わからなかったという可能性はあまりないですか?

小)たぶんないと思います。

2011.04.16 00:03 URL | 桃色クジラ #- [ 編集 ]

「東日本がつぶれる」と言ったらしい菅は、福島第一の抱える潜在的リスクの大きさを当初から正確に認識していたと思う。しかし、消費税増税を唱えるのを見ると増税リスクについては認識していないようだ。「自粛」日本で消費税を上げると、景気にトドメを刺し、「日本全体がつぶれる」可能性もある。いつも思うが、菅は経済財政の基礎教養が欠けている。物理学の造詣については認めるが。
本来なら、こういう時こそ国債発行だろうが、実は、こちらも危険水域に達しており、レベル7だ。しかしリスク覚悟でやるしかないのだろう。
原発推進にひた走っているインド、中国は、計画をいったん停止するそうだ。両国とも独立した原子力の監督機関の設立を決めたらしい。情報の限られた外国でも、今回の問題の本質は的確に把握されている。
学者としてデビューし、コメディアンとして名を成した武田邦彦氏だが、彼の言っていることで一つだけ理があると思っていることは、温暖化の要因の一つを原発に求めている点だ。石油を十分に買えない途上国ではこれからも原発に傾斜して行くので、今はともかく、今後は原発が海水の温度にはっきりと影響を与えるようになるのではないか。
菅おろしで、政局は盛り上がっているが、菅おろしは小沢待望論と一緒だ。日本人は首相の首をすげ替えると何か良いことがあると信じている。首相を変えて菅の欠点を補ったとしても、その人には別の欠点があるだろう。結局、官僚支配を強めるだけなのだ。
議院内閣制は、日本に合わないと思う。

2011.04.16 12:54 URL | greenstone #- [ 編集 ]

 鬼のクビでも獲ッたかのように、震災後の小沢一郎に罵詈雑言を浴びせかけ続けているが、仙石なんか自民党の‘原発族’の議員もオッタマゲるほどのズブズブの接待を東電から受けてたってんじゃねえかい。あのバカをなんとかしろ!

2011.04.17 17:21 URL | 国有化したら、接待違法ということで、日本の将来は薔薇色だ #- [ 編集 ]

かなりの放射性物質が吐き出されていたと推測したのは、自衛隊のヘリコプターが放水に向かった時に、1機目は、かなり近づいたのですが、それ以降はあまり近づけずに”散水”で終わってしまった時です。

結局、レベル7でしたね。

原発は安全だと言い続けてきて、今度は放射能は安全だと、言われないようにしたいものです。

2011.04.17 20:22 URL | somebody #- [ 編集 ]













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