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きまぐれな日々

今日(3月28日)は、1979年にアメリカのスリーマイル島原発事故が起きて満32年に当たる日だ。その日に、日本はスリーマイル島より悪い、世界の原発史上でも他に旧ソ連のチェルノブイリ原発事故しか比較する対象のない事故に苦しんでいる。しかも、事故が収束する気配は未だに見えない。

昔、社会人になった頃、同期入社の人間に原子力工学科出身者がいた。彼は、俺は原発推進論者だけども電力会社は許せないと言っていた。電力会社は作業員をちょっとばかり高い給料で雇って平気で危険な作業をさせているというのが彼の言い分だった(現在では、作業員の報酬は「ちょっとばかり高い給料」でさえなくなっているに違いないが)。だから、全然学生時代の専門とは関係ない就職先を選んだのだ、そう言っていたが、もちろん彼の言っていることが正しいかどうか、私は判断する材料を持たない。しかし、東京電力が関連会社の関電工(関西電力と紛らわしい社名だが、「関東」の「関」であり、東電との関係が深い会社である)の社員2人と同社下請け社員1人を被曝させたニュースに接して、彼が言っていたことは事実だったのかもしれないと思った。

関電工の社員2人の被曝量は、当初2?6シーベルトと報じられ(朝日新聞記事など)、昨夜のテレビのニュースでは「2?3シーベルト」と言っていた。

いつの間にか、新聞やテレビに出てくる単位が変わっている。最初はマイクロシーベルトだった。福島原発1号機が水素爆発を起こす直前の放射線量が1015マイクロシーベルトだとテレビが報じて、水素爆発後が起きたのにその後の線量がなかなか公表されないことから、緊張が高まった。今でも東電は情報公開がなっていないと批判されているが、事故発生直後が一番ひどかった。菅直人首相が東電幹部を怒鳴りつけ、事態を政府がコントロールするようになってからは、東電に対応を丸投げしていた最初の頃よりはかなりマシになった(それでも「十分」からはほど遠いけれど)。東電とは本当にどうしようもない企業だ。

単位の話に戻ると、関電工の社員2人の被曝量は、当初の報道で用いられていた「マイクロシーベルト」に言い直すと、「200万?600万マイクロシーベルト」だったことになる。大地震翌日に弁を開けた作業員が106ミリシーベルトの放射線を被曝したことが政府の資料に記されていたが、これはマイクロシーベルトでいうと10万6千マイクロシーベルトに当たる。関電工の社員の被曝量はこれより1桁多く、全身に浴びた場合死亡しても不思議はない被曝量である。それなのに朝日新聞は見出しで「やけど治療も」などというのんきなフレーズをつなげている。同じ記事に、

単純に比べられないが、全身の被曝量が3?5シーベルトだと半数の人が亡くなるという。

と書いているにもかかわらずである。朝日の記事の緊張感のなさには頭がクラクラする。

それにしても、原発を運転している東電や、原発を設計した東芝、日立など大手重電メーカーの体質は実にひどい。北海道新聞に、「『会社はコスト優先』 原発の元技術者ら ネットで自己批判」と題した記事が出ている(下記URL)ので、以下に引用する。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/topic/280370.html

「会社はコスト優先」 原発の元技術者ら ネットで自己批判

 東京電力福島原発を造った大手重電の元技術者たちが事故発生以来、インターネット放送などで自己批判と原発政策の告発を続けている。

 「もっと声を大にして言い続けるべきだった」。東芝で放射能を閉じこめる原子炉格納容器の耐性研究グループ長だった後藤政志さん(61)は話す。1979年の米国スリーマイル原発事故などで、格納容器内が異常に高圧になるとわかり、放射能物質ごと大気に放出する弁を付ける事になった。

 「フランスは、内圧が上がりにくく、放射能物質が漏れにくい巨大なフィルター付き格納容器を造った。われわれも必要、と議論したが、会社は不採用。コストだなと思った」と後藤さんは言う。

 「高台に建てたり、防水構造にしたりしていれば。想像力が足りなかった」。60年代、国内に技術がなく、津波を想定しない米国の設計図をコピーして第1原発を設計した元東芝社員小倉志郎さん(69)は悔やむ。

 4号機の設計にかかわった元日立グループ社員で科学ライターの田中三彦さんは今回「政府や公共放送が危機を正しく国民に伝えていない」と感じている。「格納容器内が8気圧になった時、普通は4気圧などと流していた。普通は約1気圧で、4気圧とは事故に備えた設計値だ。8気圧なら異常事態なのに、パニックにしないという配慮が多すぎる」

 3人はこれまでも匿名、あるいは著作、集会などで原発の危険性を訴えてきた。だが国や企業から返ってきたのは「冷笑だった」(後藤さん)。

 東京のNPO環境エネルギー政策研究所顧問竹村英明さん(59)は「日本には許認可権を持つ経産省、学者、電力会社などで作る原発ムラがある」という。竹村さんによると、ムラは強力で、疑問や批判を口にする技術者を村八分にする。3人がそうだったという。放送は、動画中継サイト「ユーストリーム」や「ユーチューブ」などで見られる。

(北海道新聞 2011年3月23日 6時55分)


記事中で、1979年のスリーマイル島原発事故を受けて格納容器に弁を設けたと書かれているが、事故後程なくして書かれた朝日新聞の記事で、東電は「日本の原発は安全」という神話を盾にとってなかなか弁を設けず、90年代半ばになってやっと弁を設けたと読んだ記憶がある。

まあなんにせよ重電メーカーや東電、特に東電の体質には呆れ返るほかない。よく、東電は運転者であって、技術的なことは原子炉を設計した東芝や日立の技術者でなければわからないと言われるが、私は経験上(前述のように原発とは全く無関係の人間だが、かつてメーカーでまかり間違えば事故を起こしかねない製品にかかわった人間として)、「プラントを運転をして利益を上げる企業」こそコスト重視による安全性切り捨てに走りやすいことをいやというほど痛感してきた。だからこそ、事故直後に「政府は何をしている、対応を東電なんかに丸投げするな」と叫び、菅首相や枝野官房長官を呼び捨てにして非難したのだ。

実際、コスト重視・安全軽視の極悪ネオリベ企業であるからこそ、東京電力は「ミスター・コストカッター」との異名をとる清水正孝なる人物を社長にしたのだし、そんな企業に原発事故の対応を丸投げした、事故発生直後の政府の対応は自殺行為というほかなかった。東電の情報の出し渋りは、事故発生直後がもっともひどかったし、菅首相が東電経営陣を怒鳴りつけたのは当たり前であって、それどころか菅首相が怒るのは遅すぎたと私は思っている。

東電が原子炉の維持を第一に考えて海水の注入が遅れたことも、もはや定説になっている。たとえば、元読売新聞編集委員の鶴岡憲一氏が書いた「東電と経産省が増幅した原発災害」という記事をご参照いただきたい(下記URL)。
http://eritokyo.jp/independent/tsuruoka-fnp001.html

東電は、大津波を伴う巨大地震について、一昨年年の経済産業省の審議会で、869年に起きた「貞観地震」の解析から再来の可能性を指摘されていたことも毎日新聞が報じている(下記URL)。
http://mainichi.jp/select/today/news/20110327k0000m040036000c.html

この記事で毎日新聞は、

東電は「十分な情報がない」と対策を先送りし、今回の事故も「想定外の津波」と釈明している。

として東電を批判している。同紙は、主筆がゴリゴリの原発推進派・岸井成格であるにもかかわらず、事故直後の13日付紙面で既に厳しい東電批判を展開しており、全国紙の中では異彩を放っていた。

一方で震災や原発事故にかこつけて、謀略報道とも思える政権批判記事ばかり掲載してきたのが産経と読売だ。その中でも産経の方にはまだ愛敬があり、見出しや文章は菅首相批判なのに、本文を読むと東電に対する怒りしか沸き上がってこない珍妙な記事さえあった。それに対して本当に悪質なのは読売だ。読売にも、かつては前述の鶴岡憲一氏のようなまともな記者もいたが、現在では骨のある記者はごく少数になっているようだ。おそらくそんな記者がいても、ナベツネやナベツネの意を受けた傀儡たちによって左遷されてしまったのだろう。歴史的に見ても、日本に原発を導入したのはナベツネの盟友・中曽根康弘と読売新聞社主の正力松太郎であり、1954年の第五福竜丸事件の際にも、読売は世論を沈静化させるべく事故を矮小化する報道に徹したのだから、読売新聞社の体質がむき出しになったと考えるべきだろう。

その読売の意図に反して、共同通信の世論調査では、「政府の原発対応を評価しない」が58%に達しているものの、菅内閣の支持率は28%と、少し上がった。私は、政府の原発対応を評価しないし、菅内閣も支持しないし、それどころか政界の癌・与謝野馨を閣内に取り込んだ菅内閣は、福島原発事故を含む震災対応が一段落した時点で総辞職すべきだと考えているが、それでも相対的な比較の問題として、自民党政権や鳩山政権下で予想される事態の推移よりは、菅?枝野ラインの方が少しはマシだったと思わざるを得ない。特に、電機労連の出身である無能な平野博文が官房長官のままだったら、原発事故への対応はどんなに醜悪なものになっただろうかと、想像するだけでもぞっとする。

飯田哲也氏のTwitterを見ていると、枝野官房長官以上に、自民党の河野太郎議員に対する評価が高い。そう、河野太郎は自民党はもちろん、民主党その他を入れた保守政治家の中でも絶滅危惧種となった原発慎重派の議員なのである。飯田氏のTwitterに、河野議員のメルマガに「19兆円の請求書」と題したプレゼン資料(下記URL)が紹介されたそうだ。ここでは資料(自民党政権時代のものである)に直接リンクを張るので、是非ご覧いただきたい。
http://kakujoho.net/rokkasho/19chou040317.pdf

河野太郎は、新自由主義に強く傾斜した経済政策を唱える政治家であり、その点については私は評価しないが、原発問題に対する姿勢は評価したい。

プレゼンの23頁に、「選挙の事情」と題して、「自民党議員は電力会社から、民主党議員は電力労連、電機労連から様々な支援を受けている」と書かれている。民主党が小沢一郎代表時代の2006年にそれまでの「原発慎重派」から「原発積極推進派」に政策を転換したのも、連合、特に電力総連や電機労連の強い要望を受けてのものだと想像される。

資料には、「ある民主党議員の声」として、「この問題を取り上げるとすぐ労組から電話がかかってくるなぁ、もっと世の中が騒いでくれると取り上げられるのになぁ」と書かれている。

そう、世論が全然騒がず、電力会社や経産省や政府に飼い慣らされて何の疑問も持たずにきたからこんなことになってしまったのだ。この期に及んで、「この国難に、××××の力を活用しよう」(××××とは民主党の原発政策を積極推進に転換させた当時の責任者の名前)などと言っているようではどうしようもない。

日本を復興し、これまでの歪んだエネルギー政策を改めさせるのは、私たち一人一人の市民なのである。
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2011.03.28 08:45 | 東京電力原発事故 | トラックバック(-) | コメント(1) | このエントリーを含むはてなブックマーク

メールよりお初です。
改めて東電の起こした原発の大事故は日本国内だけでなく世界中に広められたしまったことは完全な大恥です。
特に社長の清水正孝や会長の勝又恒久は世界中で何処も逃げられない大馬鹿野郎です。
政治家でも中曽根康弘氏などの原発推進議員も最悪です。応援する気はもうありません。
日本国民は福島原発事故の影響で福島や宮城から新潟に避難してる人が今も存在してます。
完全な無反省の清水社長ら幹部全員にもっともっとも厳しい厳罰を与えるべきです。放射能を全国にミラ下責任を取ってです。

2012.12.02 15:12 URL | トンネル職人 #- [ 編集 ]













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