私は、一昨日(5月31日)の報道を受けて、昨日(1日)に、鳩山首相が辞意を表明するものとばかり思っていた。月初の総理大臣の辞意表明といえば、一昨年9月の福田康夫首相(当時)の例があったな、あの時は、テレビの通常番組が突如中断されて、福田首相の記者会見の映像が流れたな、などと思いながら、テレビ朝日の『報道ステーション』を見ると、なんと鳩山首相が巻き返したと報じられていて、鳩山首相が親指を立てて不敵な笑みを浮かべる映像が流れたものだから、狼狽してしまった。
そういえば昨年6月にも、「麻生降ろし」が起きたけれども、結局森喜朗や与謝野馨らは麻生太郎首相(当時)を降ろせなかったな、などと思い出すと、冷静ではいられなくなった。
改選を控えた民主党参院議員も怒りのあまり逆上したという、親指を立ててにやりと笑う、いかにもふてぶてしく見えた鳩山首相は、実際にはその時点で辞意を固めていたのか、それとも今朝になって観念したのかは知る由もないが、結局2日午前、鳩山首相は辞意を表明したのだった。鳩山首相は次期の衆院選には立候補せず、政界を引退するという。鳩山由紀夫という男もまた、歴史的使命を終えたと私は思う。政界引退は賢明な判断であり、「第二自民党」といわれる民主党も、いつまでも森喜朗や安倍晋三がのさばっている自民党とは少しは違うところを見せることにもなる。
私の正直な感想を述べると、「ほっとした」の一語に尽きる。あの福島瑞穂大臣の罷免劇にショックを受けた私は、その後何日も怒りがおさまらず、日常生活にも支障が出るほどだったから、昨日の「鳩山首相、続投に意欲」の報道には逆上してしまった。
マスコミは「小沢一郎も幹事長を辞任」ということをやけに強調するが、師の田中角栄に倣う小沢一郎にとって、政権を奪取したあとの幹事長辞職など大したダメージにはならないと私は考えている。植草一秀は愚かにも、
などと鳩山由紀夫を非難しているが、私は小沢一郎が鳩山由紀夫のプライドに配慮して、「鳩山首相が小沢幹事長に辞任を求めた」ことにしたのではないかと推測している。鳩山由紀夫は総理大臣をクビになったら次期総選挙には立候補せず引退するしかないが、小沢一郎には闇将軍としての余生が残っている。鳩山由紀夫と小沢一郎では受けたダメージの大きさは天と地ほども違う。というより、今回の政局は明らかに小沢一郎と鳩山由紀夫の正面衝突であり、相手が総理大臣であるというハンデを負いながら、小沢一郎は鳩山由紀夫に苦もなく圧勝したのである。鳩山総理が小沢一郎民主党幹事長に対して幹事長辞任を求めたことは、参院選を控えて民主党の党勢を回復するための主張であると考えられるが、捉え方によっては、極めて重大な禍根を日本の歴史に残すことになる点に十分な留意が必要である。
この期に及んで、まだ「鳩山首相は官僚にやられた」と鳩山由紀夫を庇う人に言いたいが、昨日の『報道ステーション』では、「ゴールデンウィーク明けには、鳩山首相は、社民党を切ったら小沢さんに政局にされる、とプレッシャーを感じていた様子だった」と伝えられたのである。だが、鳩山由紀夫は最終的に沖縄と社民党と小沢一郎を捨てて、日米安保をとる道を選んだ。つまり、連休明けには、鳩山由紀夫は社民党を切る腹を決めて、小沢一郎と正面衝突する覚悟を決めていたということである。普天間基地移設先の「腹案」だとか沖縄への「思い」などは口から出まかせにすぎなかった。そして、自らの強いリーダーシップで福島瑞穂を罷免し、小沢一郎に宣戦布告したのである。
これに対し、小沢一郎は、最初は最近腹心になった細野豪志、次には参院選での苦戦が囁かれる輿石東、さらには連立を離脱したばかりの社民党幹部(又市征治や重野安正)の口を借りて、自らは何も語らずに鳩山由紀夫を辞任へと追い込んでいった。小沢一郎があそこまで深く社民党の男性幹部たちに食い込んでいたとは知らなかった。彼らの言葉は、誰が見ても小沢一郎の意志を反映していることはミエミエなのに、それでも小沢一郎自身は何も語らないのである。このやり方に、鳩山由紀夫は音を上げたのではないか。もしかしたら、鳩山由紀夫が解かなければならなかった連立方程式の変数とは、社民党というより、社民党と等号で結ばれた小沢一郎だったのではないかと思ったほどだ。
鳩山由紀夫の発言その他も「マスゴミの捏造」だと信じたい者は、勝手に信じていればよいだろう。私が言いたいのは、そんな「幻想」にしがみついて特定の政党や特定の政治家の「信者」と化した人間には何もできないということである。
昨年の小沢一郎辞意表明では、代表選は4日後だったが、今回はさらに短い2日後。明らかに小沢一郎が主導した政局である。おそらくは菅直人が次期民主党代表に就任して、7日の月曜日には菅新内閣が発足すると思うが(仮に岡田克也あたりが菅直人に勝てば、さらに別の政局が生じるが、とりあえずそれはないものとして話を進める)、まさかこんな形で菅直人が総理大臣になるとは思わなかった。かつて菅直人に期待していた私だが、菅政権ができても当面は支持する側には立てない。新幹事長は細野豪志あたりだろうか。財務大臣に亀井静香でも起用すれば少しは評価できるが、それよりも竹中平蔵あたりとも親和性のある新自由主義系の人物を据える可能性の方が高いと思う。
このエントリは特別版なので、このくらいにしておくが、鳩山由紀夫首相の辞任は当然であるとだけ最後に言いたい。言葉を信じられない人間に総理大臣を続けさせることは、私には我慢ならなかった。心からほっとした。
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社民重野、又市に深くくいこんでいた小沢。
小沢への評価は変わりました?
2010.06.02 21:22 URL | tin #- [ 編集 ]
いまの経済システムそのものが、誰がやっても、どうにかできるようなレベルにはないというのもありますが、それはともかく、菅直人が次期総理だったとしても、ほとんど変わらないような気がします
そもそも、自民党よりは少しはましでも菅直人も入れて民主党自体が終わった政党ではないか
カナダ、日本、ドイツ、フランスは国家としては、どうにかやっていけそうですが、個人単位で見れば、そこもまた悲惨ではないか
☆ 農地や水源地の保護
☆ 郵政民営化
☆ 労働環境
☆ 税制(他の読者が要望しているような
実感出来るような感じで景気は回復しないとしても、これだけ改善してくれれば、まあまあいいかという感じでしょう
2010.06.02 22:04 URL | マイケル #- [ 編集 ]
菅直人はリアリストで柔軟ですから、性格的には総理に向いているような気がしますが、逆に典型的な野党政治家という感じもあり、なんとも言えません。薬害エイズの件以降は浮沈はあれど常に政界の中心にいた割に、あまりはっきりしたビジョンが見えてこないのも、不安といえば不安です。90年代に出した本でも読み返してみるか…。まあそれだけに民主党各派が一応乗りやすいとは言えますけど。
ちょっと気になるのは与謝野馨との関係ですが、これは参院選後の話ですね。
2010.06.02 22:07 URL | こころ #- [ 編集 ]
昨日は鳩山総理が辞任してくれるであろうことを前提にツートップに同情的にコメントをしましたが、ニュースを見ても辞任の気配すらなく、絶望と苛立ちで、何も手に付かず、夜も眠れませんでした。(生方氏のブログ読んで、気持ちを静めてました) 今日、ダブル辞任となり、私自身も心底、安堵しております。
政権の表紙が変わるデメリットよりも、言葉の二転三転する総理が居座り続けるデメリットの方が大きい。 私には、いつの間にか殺人の時効撤廃が可決されていたことや、高校授業料無料化の際の差別的取り扱いもショックでした。
私はインテリぶった感じの凌雲会系の人達は好きではありませんが、それ以外は特定の政治家に過度な思い入れはありません。
なんとなく、直接的に批判されているような気がしたものですから・・・。
2010.06.02 22:29 URL | aranjuez #- [ 編集 ]
管理人よりaranjuezさんへ
> なんとなく、直接的に批判されているような気がしたものですから・・・。
いえいえ、そうではありません。とはいえ、漠然と書いたわけではなく、一部の人たちを思い浮かべて書いたのは事実ですが、aranjuezさんはその対象の中には入っていません。
2010.06.02 22:33 URL | kojitaken #e51DOZcs [ 編集 ]
>小沢一郎があそこまで深く社民党の男性幹部たちに食い込んでいたとは知らなかった。
私はこれが不気味なんですね。旧社会党時代に小沢一郎が推し進めた小選挙区制を受け入れた結果、党勢を衰退させた社民党は小沢に頼らなければやっていけなくなったということでしょうか。
親の代からの社会党~社民党支持者でした。90年代以降は疑念を持ちながらもずっとシンパシーを寄せてきた私ですが、はっきり言って連立参加後の同党の行動には完全に失望しました。
最初は反対していた国会改正法を受け入れ、自衛隊も合憲と認め、臨検特措法案にも賛成。私にとって護憲政党としての社民党は終わったと感じました。
更に、唯一の脱原発政党を党是としていたのに原発推進論者の原子力安全委員会委員への起用にも同意。その言い訳として福島氏は「閣僚として人事案に署名したが、党としては反対」と。
こうしたことによって生じた社民党への不信感は最後に筋を通したくらいでは、とてもぬぐいされるものではありません。小沢氏が参院選のマニフェストに入れる気らしい比例定数削減も特定選挙区での協力と引き替えに受け入れてしまうのではないかとさえ勘ぐっています。
今回の罷免・連立離脱で参院選ではかなり党勢を盛り返すかもしれませんが、一時的なものになるでしょう。
共産党にはできない幅広い市民層を取り込める9.25勢力の中心となることを社民党には期待していましたが、表面はそう装いながら現実のベクトルはどんどんずれていってしまっているように思えます。
鳩山氏については、もともと全く期待していなかったので今更何も言う気もしません。
2010.06.02 22:54 URL | ぽむ #mQop/nM. [ 編集 ]
火曜日のラジオで上杉隆が「鳩は九月の代表選まで粘る」と言ってたので、
「こりゃ赤っ恥だな」とw
夕方のローカルニュースで自民の地元幹部が「ウチよりひどい!」とほざいたのに、
「貴様が言うな」と呆れ笑い。
とにかく、去年の総選挙で選んだ結果がこれだから、
今度の参議院選挙は選ぶ側の責任がさらに重くなったことは確か。
2010.06.03 00:19 URL | 観潮楼 #- [ 編集 ]
国民が沖縄の問題を解決してほしくて民主党に票を入れたわけではない
鳩山首相は辞任しても続投しても非難され、結果は同じだった
2010.06.03 05:04 URL | 落とし所 #- [ 編集 ]
>落とし所さんへ
あのー
沖縄県民は日本国民ではないのですか??
2010.06.03 09:40 URL | フリスキー #iMBi6aSc [ 編集 ]
「鳩山由紀夫は最終的に沖縄と社民党と小沢一郎を捨てて、日米安保をとる道を選んだ」
これは正確ではないと思います。何故なら社民党は一枚岩ではなかったからです。小沢も鳩山を止めようとはしなかった。
「小沢・亀井・社民連立維持派(重野、又市、阿部、辻元等)は最終的に沖縄を捨てて連立維持をとる道を選ぼうとして、鳩山も自分の辞任と引き換えに連立維持でまとまるならそうするつもりだったけれど、社民連立離脱派を抑えることに失敗した」という方が当たっているのではないでしょうか。
5月28日福島罷免決定、30日社民連立離脱決定、31日辻元辞任、6月1日夜鳩山小沢輿石三者協議。
少なくとも社民連立維持派は初めから「福島を切る=社民党を捨てる=社民党としては連立離脱不可避」という認識を貫いていたのではなかった訳ですし。
小沢にしても初めから「鳩山が沖縄と社民党(と小沢)を捨てるとはけしからん、こうなったら鳩山を辞任させるしかない」と考えていたなら、もっと速やかに動いたはずなのでは。
2010.06.03 18:57 URL | Black Joker #RtNpiJ3M [ 編集 ]
newsingに投稿させていただきました。
http://newsing.jp/entry?url=caprice.blog63.fc2.com%2Fblog-entry-1079.html
2010.06.03 20:31 URL | Ursaemajpris #dDasgHZQ [ 編集 ]
私は阪神大震災の時に自衛隊や米軍による救助活動を社会党が妨害して以来、社民党には投票していません。
いかに左派の方であっても「沖縄県民の安眠の為なら兵庫県民は亡くなって構わない」なんて考えには賛同出来ないはずです!
確かに労働法に関しては社民党に少しだけ期待する気持ちもありましたが、それでも「社民党が与党でいる間に自分の住んでいる地域に大災害が起きたらまたしても死者を増やす様なふるまいをするのではないか?!」という不安が常にあったため社民党の連立離脱は個人的には痛し痒しという感じです。
菅内閣については「小泉が連れ帰った拉致被害者を北朝鮮に戻せ」と過去に口にした事がある岡田克也が外相を続投するのか?とか殺人の時効撤廃を皮切りに官僚による横領罪・背任罪・贈収賄罪の時効も撤廃するのか?(そもそも官僚は時効制度をそのために設立したのではないか?という気すらしてます)という点に注目しています。
2010.06.04 04:37 URL | A #AtAD9fD6 [ 編集 ]
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