きまぐれな日々

与謝野馨と平沼赳夫の新党の話だが、どうやら共同代表ではなく平沼赳夫が代表に就任するようだ。どうも与謝野と平沼の協議では、平沼が強気に出て「お山の大将」気分でいるらしく、この件に関しては『日本がアブナイ!』の辛辣な批評が痛快だ。

ブログ主のmewさんが書く通り、中曽根康弘や渡邉恒雄(ナベツネ)は憲法改正を実現したくてたまらず、そのために与謝野・平沼新党と民主党、公明党の組み合わせで大連立を組ませて、野党・自民党の賛成も得て憲法改正へとこぎ着けたいと思っていることは間違いない。しかし、憲法改正は一朝一夕にはできるものではなく、中曽根康弘はおろか、ナベツネの目の黒いうちにも実現することはないだろう。彼らの生涯をかけた目標は、見果てぬ夢に終わることは間違いない。

ところで、一口に改憲派といっても、中曽根康弘とナベツネでは微妙に立場が違う。ナベツネは宗教がかった「靖国右翼」を嫌う男であって、4年前に首相になった安倍晋三に対しても、安倍を支持する条件として靖国神社に参拝しないことを要求したことがある。当然ナベツネが平沼赳夫に共感しているとも考えられない。

ナベツネの本命はあくまで与謝野馨なのである。『文藝春秋』の4月号に与謝野の「論文」が載り、週末に発売される5月号では、与謝野と園田博之による新党の政策が掲載されることもその傍証である。平沼が主役であれば、平沼の主張も大々的に文春の誌面を飾るはずだが、事実はそうではない。

それなのに、なぜ平沼を野合させたかというと、単に新党に参加する人数を集める目処が立たなかったからだろう。だから、ナベツネと与謝野は、同様にもう3年前から新党を立ち上げる、立ち上げると構想を語っていながら立ち上げられずにいた平沼に目をつけ、頭を下げて合流話を持ちかけたのではないかと私は推測している。だから、麻布高校の同級生ながら1歳年上で優等生だった与謝野馨(与謝野は父親の勤務の関係でエジプトにいて、帰国後麻布高校に編入したために1年学年が遅れた)に対して、落ちこぼれの生徒だった平沼赳夫がでかい態度をとることができるのである。与謝野は内心、苦虫を噛み潰しているだろう。

もっとも、私は平沼赳夫という男は浅はかだなあと思う。なぜかというと、党首ともなれば、日曜日の午前中などにテレビで放送される党首討論で議論をしなければならないが、自民党を離れてからの平沼のテレビにおける発言というと、私が真っ先に思い出すのは、一昨年に中国のパンダ外交を平沼が批判した時のことだ。平沼は、「タイミングよくパンダのランラン(ママ)が死んで、何らかの策謀があるんじゃないかと言う人もいた」などと発言し、伝聞形とはいえ、あたかも中国がパンダ外交をやりやすくするために、上野動物園が中国の意を受けて(?)パンダを見殺しにしたとも言わんばかりの発言をしたのだ。これは、当ブログ2008年5月12日付エントリ「タカ派政治家の劣化?中曽根康弘と平沼赳夫の激しい落差」にも書いた。このエントリでは、中曽根康弘を引き合いに出して平沼を批判したのだが、その中曽根も今回の新党騒動の黒幕と見られている。中曽根にしてみれば、「たとえ平沼赳夫だろうが利用できるものは何でも利用する」と思っていることだろう。

それはともかく、自民党時代には初代の経済産業大臣に就任して、それなりに識見のある政治家とみなされ、小泉純一郎政権時代には次期総理大臣候補にも名前の挙がっていた平沼赳夫だが、何のことはない、平沼の「識見」はすべて官僚の入れ知恵だった。自民党を追い出されて、官僚の助けがなくなったヒラ議員になると、「パンダのランランは謀殺された」という程度のことしか言えない政治家、それが平沼なのである。そんな平沼が、論戦でたとえば菅直人に太刀打ちできるだろうか。平沼赳夫が菅直人を言い負かす光景は、私には想像できない。

平沼には、さらにひどい発言もある。リーマン・ショックから5か月後の昨年2月に「10年ぐらい選挙を凍結。挙国一致内閣をつくり、難局に立ち向かわないといけない」と言ったことである。憲法を停止しなければできない翼賛政治をしようと言わんばかりのこの発言は、当然ながら批判を浴び、平沼は発言の撤回に追い込まれた。

しかも、平沼の思想信条といえば、憲法「改正」ではダメだ、自主憲法の制定でなければならないというものだ。これは、平沼にとっては絶対に譲れない一線だから、当然ながら新党の政策の柱になるだろう。つまり、新党は既存政党の中でももっとも右寄りの政党になる。

一方、与謝野馨との政策協議で、平沼はあっさり消費税増税を了承した。この点に関しては、私が楽しみにしているのは、10日に発売される『文藝春秋』5月号に掲載される、与謝野と園田博之が書いたという新党の政策だ。すでに、4月号に新党の政策の筆頭に「消費税増税」が掲げられているから、これも「自主憲法制定」とともに平沼・与謝野野合新党の政策の柱となる。

要するに、この新党の政策は柱が二本あって、「自主憲法制定」と「消費税率引き上げ」である。与謝野馨が小泉構造改革の責任者の一人だったことを考え合わせると、新党は平沼赳夫と与謝野馨の「悪いとこ取り」をした政党になる。その立ち位置を示したのが、『広島瀬戸内新聞ニュース』のエントリ「与謝野・平沼新党の珍妙な立ち位置『消費税増税+サービス小+国権主義』」であって、ここに掲載された2次元ダイアグラムを見て、私は爆笑した。消費税を大増税しながら、政府のサービスは小さい。もう一つのグラフを見ると、新党は「国権主義が強いにもかかわらず、政府が国民を助けてやらない」と位置づけられている。

こんな政党を誰が支持するのだろうか。

与謝野と平沼が政策協議で綱引きをするにつれ、当初新党への参加に前向きだった人たちの腰も引けてきた。新聞報道では、新党に参加する「5人目の政治家」がいないのだという。テレビの報道では、新党は東国原英夫にも声をかけたらしい。またかの東国原だ。だが、その東国原は、若手がいないといって参加に二の足を踏んでいた。

若手の政治家というと、平沼に近い城内実を誰しも思い浮かべるだろう。城内は結党時のメンバーではないとされているが、既に見た通り、新党の政策協議では平沼が横車を押しまくっており、党首も平沼が務める。新党が結成されれば、早々に参加を表明することはほぼ間違いない。だが、城内が入れば党に清新さが生まれるかというと、そうでもあるまい。

ところで、昨年政権交代を熱心に訴えていたブロガーたちがすっかり元気を失った。特にこの新党騒ぎにまともな批判を繰り出せないのが彼らの弱さだ。その秘密は彼らの教祖・植草一秀にある。植草ブログの4月4日付エントリは、「与謝野馨新党設立は自民党の終わりの始まり」と題されているが、「みんなの党」批判を延々と繰り広げたあと、後半でようやく与謝野・平沼新党を批判しているものの、与謝野に対しては厳しく批判する一方、

 他方、平沼赳夫氏は信念を貫く政治家であり、経済政策運営でも経済重視の考えを堅持する人物であると見られるが、財政再建原理主義の与謝野氏とは隔たりが大きい。

などと書いている。

植草がここまで平沼に理解を示すのは、植草の支援者の立ち位置と関係があるらしいという噂がある。植草には、2004年に掲示板を立ち上げて熱心に支援した人がいたのだが、一昨年だか昨年だかに関係が切れた。その裏には、支援者のグループにおける内輪もめがあったと言われており、植草はその片方と結びついたのだ。その人物は陰謀論系の右翼で、平沼赳夫や城内実を熱心に支持している(もっともここ最近はブログを更新していないが)。まだ植草がブログを立ち上げたばかりの頃は、植草は私の疑問の答える姿勢を見せていて、その時には確か植草の思想信条は支援者のそれとは異なると植草自身が言明したはずだが、それならばなぜ植草は平沼赳夫に歯の浮くようなお世辞を書くのだろうか。そもそも、なぜ「信念を貫く政治家」が政策の「隔たりが大きい」人物と野合するのか。そこにいったいいかなる「信念」があるというのか。

植草は、5日以降のエントリでは「みんなの党」は相変わらず批判しているが、与謝野・平沼新党への批判は姿を消した。また、植草支持者のブログを見ていると、「平沼赳夫は、敵ながらあっぱれ、アメリカに追従することはしなかった」とか、「与謝野馨は困った増税おやじだが、アメリカ国債の暴落を予測している。これはアメリカのポチは口にしてはいけない禁句だ」などと苦し紛れの平沼・与謝野擁護論を書いて、与謝野と平沼一派は中曽根とナベツネに切り捨てられたのではないか、などとトンチンカンなことを書いている。語るに堕ちた、とはこのことを言う。

上記のブログ主に限らず、植草支持系の人たちは「マスゴミ」という言葉を用いるのが好きだが、与謝野・平沼新党はまさに彼らの言う「マスゴミ」のドン・ナベツネが応援する政治勢力だ。それを正面切って批判できないブロガー連は、要するにナベツネの掌の上で踊っているに過ぎない。こんな人たちを操るのは、ナベツネにとっては赤子の手をひねるようなものだろう。

そもそも植草一秀とは何者か。かつてテレビ番組のコメンテーターとして大活躍した元「マスコミの寵児」ではないか。植草がナベツネの息のかかった「与謝野・平沼新党」を批判できず、植草の意見表明としては珍しく全面的に近く支持できると思っていた与謝野馨に対する批判さえ、平沼との合流が報道されたあとは筆鋒を鈍らせているのを見ると、「メディアのドン」が肩入れする政党を批判すると、マスコミ界への復帰への道が完全に断たれることを恐れているのではないかと勘繰りたくなる。

一昨年来、「リベラル・左派系」ブログ界に多大な影響を与えた植草一秀は、いわば「ブログ界の権力者」のようなものだ。そんな植草にもの申すこともできないブロガーが、「マスゴミ」などという言葉を使うこと自体噴飯ものだし、今や朝日新聞など一般紙やスポーツ紙までもが、与謝野・平沼新党の応援団には中曽根康弘、ナベツネ、それに「リベラル・左派系」ブロガーの宿敵の一人である石原慎太郎がいることを伝えているのである。

マスコミでさえ平気で批判する与謝野・平沼新党をまともに批判できない「リベラル・左派ブログ」に存在価値など何もない。


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植草氏応援のバナーを張っているいくつかのブログ、たとえば「ライジングサン」とか、「ふじふじのフィルター」とかでも、平沼・与謝野新党を批判していますよ。
植草氏自身のブログも「第二自民党」と評しているのだから、完全否定しているでしょう。
この新党に遠慮しているのは、植草シンパ
じゃなくて、実質城内シンパの方じゃないでしょうか。たとえ植草氏応援バナーを張っていても、思想的に植草氏に近いかというとそうとは限りません。
また、どんな人物でもこれまでの人間関係から、多少遠慮する部分はあるでしょう。そこを指摘してしつこく攻撃するブログ主さんの姿勢も、「どうしてかな?」と常々疑問に感じますね。

2010.04.07 09:34 URL | cube #- [ 編集 ]

あれだけマンセーしていた民主や三種の神器(=植草一秀、小沢一郎、鳩山由紀夫)をここにきて批判はできない、かといって全面支援しようとすれば、原発推進やウヨク系の政策まで認めないといけない
そういう葛藤があるのでは
あとドイツからの帰国子女がなぜそこまで人気があるのか理解できません

>靖国
今考えてみれば、安倍晋三をはじめとした右派な連中は靖国神社とか北朝鮮をネタにして闘う政治家を演じて、さも仕事をしているように見せかけていただけでは
無防備にしていいと言っているわけではないですが、そもそも中国にしても北朝鮮にしても、本当に差し迫った脅威だとすれば、どうしてまたそういう地域に対外進出して相手を増長させるようなことをしたり、口に入るようなものを輸入したりするのか(北朝鮮産アサリが出回っていたり)
人民解放軍の「深せん」が日本に寄港したこともありますし
中国脅威論が活気づくのと一緒に、中国とは賛成しているわけではないですが経済的交流が活気づいていったという笑える状態だったわけです


>憲法
九条だと思いますが、改憲する必要性はないです
改憲すれば「人道支援」とか「国際貢献」と称して自衛隊を派遣しやすい状態が発生します
そもそも小難しいことを言う前に海外まで連れていかれるかもしれないと分かれば、志願者も減少します(=普通の生活感覚としては当然です
海上、航空で最低限の防衛をして、陸上については災害派遣を中心に働いて貰えばいいです

2010.04.07 09:48 URL | マイケル #- [ 編集 ]

 まあ反新自由主義=リベラル左派ではありませんからね。私は中曽根政権以来の新自由主義と国家主義的右派の蜜月関係に楔を打って、反新自由主義右派勢力の存在を明示して、愛国者ならば新自由主義を受け入れるのは当然的な風潮を止めたことは過小評価できないと思っています。
 政治は数ですから、新自由主義を妥当することが優先される時期においては、反新自由主義右派と共闘することも必要であったでしょう。ただこれはあくまでも時限共闘であって、お友達になる必要はない。場合によっては昨日の同士は明日の敵になるのが政治の常です。その辺植草某はアマチュアなんでしょうね。
 今は、なんとなく民主党に対する不満が、みんなの党支持に向かい、別に新自由主義が支持されていないのに新自由主義的政策が支持されているような選挙結果が出る危険性はありますから、反新自由主義右派と共闘を続けて新自由主義に対する警戒を続けたいのでしょうかね。
 ただ、みんなの党がマスコミが囃すほどの実力とは見ていません。今は国家主義的な勢力の復活への警戒を重視する時期かも知れません。場合のよっては、河野太郎やみんなの党の山内康一のような新自由主義リベラル派と共闘して、反国家主義で戦うことも必要だと思ってます。
 何度もいいますが、政治は数ですから、少しでも意見の違う人を批判していたら孤立します。したたかにならなければなりません。

2010.04.07 12:05 URL | kechack #1/Y8RI0s [ 編集 ]

kojitakenさんが言っているたそがれ党ですが、たちあがれ日本に決まりそうです
名付け親はなんとあの石原ジョンイル将軍なんだとか
それだけで終了したなという感じです

そもそも、石原とか橋下なんかを未だにマンセーしている人々も正常ではないですが

2010.04.07 13:45 URL | マイケル #- [ 編集 ]

衆院選前まで「政権交代が必要」とか「オバマ・小沢チェンジ」とか「よりマシなほうを選ぶのが民主主義」とか「悪徳ペンタゴン」とか言ってたやつらってさ、自民党と変わらない民主党のあり様を見ても責任を取る気がないよね。「すみませんでした私たちは間違ってました」といって、衆院選より前から民主党を批判してたブロガーとか、民主党は自民党と変わらないと言ってた共産党とか、民主党は無責任と言ってた自民党とかに頭下げないの?政権交代がなって民主党の皮が完全にはげた今、こいつらをソウカツしなければリベラル・左派ブログは前に進めないと思うよ。

2010.04.07 17:11 URL | 2ちゃんねらー #- [ 編集 ]

報道ステーションより
記事と関係ないですが、CMではTKC全国会とかいういかがわしい組織の宣伝が垂れ流されています
アメリカは激しい競争によって消費者安い牛肉を買うことができると言っていますが、その背景には著しい収奪行為が存在していることには何も言わないようです
他の市場に乱入して、日本の生産者や農家から消費者を奪うつもりでしょう
ただ、前にも書いたようにアメリカ西側は地下水が減退していて大規模農業や畜産が出来ないような事態が発生する可能性もあります
オバマやアメリカ政府はそういうことは考えているのか

2010.04.07 22:39 URL | マイケル #- [ 編集 ]

「こんな政党を誰が支持するのだろうか」
少なくとも国民新党や社民党にとっては十分脅威になるのでは。特に国民新党は、みんなの党への対抗上できれば平沼を味方に引き込みたいと思っていた訳ですから。
立ち上がれ日本の当面の目標は改革クラブや首長新党との合体でしょうかね?

2010.04.08 18:26 URL | Black Joker #RtNpiJ3M [ 編集 ]

そもそも植草氏は左でもリベラルでもないでしょう。

2010.04.10 19:02 URL | am #- [ 編集 ]

小泉竹中新自由主義との闘い、の象徴の1人である植草氏を批判する記事に初めて接しました。大変参考になりました。

2010.05.04 10:51 URL | こういち #- [ 編集 ]

「古いエントリへの批判」はコメントがつかないから削除、とありますが、8~9月前のエントリを古いと言い切ってコメントを削除してしまうのはもったいないと思います(記事やコメントは何年も残るものだからこそ有意義でしょう)。

さて、「憲法改正 小沢一郎ウェブサイト」には〈京都学派の憲法論に戻るという選択肢もある。即ち最初に述べたように、一旦日本国憲法の無効を国会で宣言し、その上で新しい憲法を作りなおして、可否を問うのである〉という一文もありますよ。
この文章は罵詈雑言やヘンな宣伝ではないのですから、「普通に」掲載してほしいものです。201119

2011.01.09 10:01 URL | アトランダム #UMtEH1cc [ 編集 ]

管理人より

古い記事へのコメントでも、内容によっては承認するのはもちろんのことです。

ただ、古い記事へのコメントには、感情的な罵詈雑言が書かれている場合が非常に多く、それらは問答無用で削除します。

2011.01.09 10:36 URL | kojitaken #e51DOZcs [ 編集 ]

なるほど。よくわかりました。有り難うございます。

2011.01.09 15:39 URL | アトランダム #- [ 編集 ]













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