きまぐれな日々

以前から新党を結成する、結成すると言いながら全然実現できなかった平沼赳夫だが、結局与謝野馨と野合して新党を結成する運びとなった。

財政再建至上論者である与謝野馨と極右イデオロギストの平沼赳夫という、およそ水と油としか思えない組み合わせである。それ以前に鳩山邦夫あたりが暗躍していた頃には、自民党内の保守派、否、極右イデオロギストたちと平沼赳夫、城内実ら平沼一派が、鳩山邦夫をブリッジにして極右新党を結成するのではないかとの観測がなされていたし、私もひそかにそれを期待していた。『日本がアブナイ!』のmewさんも同様だったようだ。自民党には、安倍晋三を筆頭に、稲田朋美、下村博文らのトンデモ極右政治家たちがおり、昨年までは故中川昭一という大物もいた(麻生太郎も表向き彼らと同調していたが、私はそれが麻生の本心だとは考えていない)。彼らが、平沼赳夫や城内実と組めば、極右政治家が結集した政党となって、わかりやすくて良い。もちろん私は決してそんな政党は支持しないし、ことあるごとに批判するに決まっているけれども。

だが、そうはならずに与謝野馨と平沼赳夫が野合した。与謝野馨は、先月10日に発売された『文藝春秋』4月号に、「新党結成へ腹はくくった」と題した「論文」を掲載した。そのあまりにひどい内容を見て、これを批判する記事を書こうかと思ったが、他に書きたいことがあったので止めた。3月12日付エントリ「政権交代で右派政権が倒れて、右翼化が進むパラドックス」で少しだけ触れたが、そこで私は、

これは予想通り「右」からの改革を唱えたもので、「論文」中にナベツネや中曽根康弘が出てくるなど、与謝野が中曽根?ナベツネラインと直結していることは明白である。

と書いた。本エントリでは、その詳細について述べる。

ここでいう「右」とは、平沼赳夫のような政治思想的右派を意味するものではなく、経済政策における与謝野馨の立場を表す。与謝野は、財務官僚の影響を強く受けた財政均衡論者だと私は理解しているが、財政均衡論自体が「小さな政府」を志向する立ち位置であると指摘するのが、関西学院大学の神野直彦教授である。1月4日付エントリ「経団連にだまされるな ― 『小さな政府』や温暖化陰謀論の罠」で、神野教授が、少し前まで自民党内で対立しているとされていた「均衡財政派」、「上げ潮派」、「消費税増税派」はすべて新自由主義のドグマ(教義)の限界を抱えていると指摘していることを、小此木潔著『消費税をどうするか―再分配と負担の視点から』(岩波新書、2009年)から孫引きして紹介した。要するに、均衡財政派も消費税増税派も、公共サービスの増加は認めない、つまり、「小さな政府」志向という点で共通しているのである。

そのことを頭に入れて、『文藝春秋』4月号に掲載された与謝野馨の「論文」を読むと、与謝野が典型的な新自由主義者であることがよく理解できる。与謝野は、論文の冒頭でいきなり国と地方を合わせた長期債務残高が積み上がって、財政破綻が現実味を帯びてきたと書いている。そして、鳩山由紀夫首相には緊張感が全くないとか、自民党の谷垣禎一総裁には鳩山政権を倒すという気構えがないなどと批判したあと、与謝野が衆議院の予算委員会で質問に立って鳩山首相を「平成の脱税王」と呼んで非難した時、安倍晋三に電話で「もう一度質問に立ってほしい」と言われたとか、読売新聞の渡邉恒雄会長(ナベツネ)から「スポーツ新聞で大きく報じられている」といってそのスポーツ紙を送ってもらったとか、質問を行う前、総選挙後のある日、中曽根康弘に野党の心構えを聞きに行って、中曽根に「自民党は戦う野党に脱皮して、政権を倒すしかないだろう」と言われたなどと、安倍晋三や中曽根?ナベツネラインとの親密さを誇らしげに書き連ねている。

与謝野は、「鳩山政権の『六つの大罪』」を挙げているが、その筆頭も「民主党政権に長期的な財政の展望がない」ことである。そして、

私(注:与謝野馨)が経済財政担当大臣を務めていた小泉内閣時代に作成した「骨太の方針二〇〇六」では、国と地方を合わせたプライマリーバランス(基礎的財政収支)を黒字化するという目標を盛り込んだ。

などと威張っているのだが、この箇所は与謝野の「論文」の中でももっとも注目される部分だろう。つまり、与謝野は「社会保障費自然増の2200億円抑制」で悪名高い「骨太の方針2006」策定の責任者だったのだ。小泉構造改革を推進した人間、それが与謝野馨である。

与謝野は、菅直人副総理(財務相)が昨年の臨時国会で、今後の歳入見込みや歳出削減などの展望を盛り込んだ「中期財政フレーム」を今年6月までにとりまとめると言ったことをとらえて、「展望を示さずに2010年度の予算編成を行った」として批判しているが、与謝野が「示すべき展望」であると考えている内容が「消費税の大増税」であることはいうまでもない。一方、菅財務相は就任早々神野直彦教授を税調専門家委員会の委員長に招くことを決めたが、神野教授の腹づもりが、まず他国と比較して個人所得課税が著しく低い点をとらえて、所得税の課税ベース拡大から手をつけるものであることは、当ブログでも何度も紹介した。そもそも、バブル時代に税収が増えた時に、所得税減税をやり過ぎた結果が、現在の他国と比較して極端に低い個人所得課税を招いた。新自由主義のイデオロギーがほとんど批判を受けることのなかった時代にバブル経済の好況期があったことが、日本の税制を滅茶苦茶にしてしまったのではないかという気が、最近私はしている。しかし、自民党政権であれば直接税の見直しに手をつけることは考えられないし、そもそも神野教授を税調の専門家委員会に招くことなどあり得ないから、この点に関しては政権交代をして本当に良かった。自公政権が続いて、与謝野馨が経済政策の責任者なんかになったらとんでもないことになるところだった。

与謝野の「論文」で目を疑うのは、民主党政権が「供給サイドから需要サイド」というキャッチフレーズを掲げた「新成長戦略」を批判して、

そもそも需要と供給は雇用を通じて表裏一体であり、二つに分けられるものではない。鳩山首相はそうした基本的なことすら理解していないのだ。

などと書いていることだ。供給側(サプライサイド)の活動に着目した「サプライサイド経済学」と呼ばれるマクロ経済学の一派が存在することや、対照的にケインズ経済学は需要側の経済学と呼ばれることは、門外漢の私でさえ知っている。一般的には竹中平蔵はサプライサイダーとして位置づけられているのだが、おそらく与謝野はここで「小泉構造改革は『サプライサイド経済学』に基づいた政策などではない」と言いたいのだと思う。しかし、世の中に「供給側」、「需要側」と呼ばれる経済学の流派があることを意識的に無視した上記のような文章を書く与謝野馨の姿勢は、そもそも論客としてアンフェアだ。このくだりだけでも、与謝野馨が信用できない人間であると確信させるに十分なものである。

今週末の10日に発売される『文藝春秋』5月号にも、与謝野馨と園田博之が新党の政策を公表するのだそうだ。4月号にも「『新党』の六つの基本政策」が出ているから、「屋上屋を架す」という言葉を思い出す。4月号掲載の「基本政策」には「村山談話・河野談話の見直し」どころか「憲法改正」(平沼赳夫流に言えば「新憲法制定」)も出てこない。最初に出てくる文字は、予想通り「消費税」であって(笑)、「消費税を含む税制抜本改革、社会保障改革、成長戦略の三つを総合化した『復活五カ年プラン』を策定し、速やかに断行する」というのが「六つの基本政策」の筆頭項目だ。菅・神野税調では所得税を含む税制の抜本的見直しを掲げているわけだから、この違いは大きい。トラックバックいただいた『岩下俊三のブログ』は、「(与謝野は)財務官僚と同じ頭脳構造のため、税金は取りやすいところからとるという大蔵省時代からの悪習に、染まっているということである。すなはち、間接税しか考えてない欠陥がある」と指摘しているが、その通り、与謝野が考えていることは、ひたすら狂ったように消費税率「だけ」を上げることだ。周知のように消費税は逆進性が強いから、この不況時にそんなことをやったら、日本経済は再起不能の大ダメージを受ける。しかし、財務官僚に洗脳され切った自民党のロートル政治家は、何度失敗を繰り返してもそのことが理解できない。与謝野馨こそ「老害」の最たる政治家といえるだろう。

そんな与謝野馨が平沼赳夫と野合することによって、「与謝沼新党」の基本政策は、上記のような消費税大増税によるゴリゴリの財政再建路線に、「自主憲法制定」を柱とする平沼赳夫の極右イデオロギーが合体した、世にも醜怪なものになるだろう。そして、いくら「与謝沼新党」を石原慎太郎のような極右ポピュリストや読売新聞が全力で応援しようが、人々の支持が得られるはずはない。民主党や自民党に飽き足らない人々の心をとらえるのは、相変わらず「みんなの党」であり続けるのではないか。もちろん当ブログは、「みんなの党」のような新自由主義ポピュリズム政党には大反対だが、「みんなの党」と「与謝沼新党」を比較した時、後者に支持が集まる事態はまず考えられない。何より、与謝野馨も平沼赳夫も「古い自民党」の代名詞のような長老政治家である。彼らの新党にはひらがなの名前がつけられるそうだが、「たそがれ」あたりがふさわしいのではないだろうか。

ところで、この新党「たそがれ」の真の狙いは、中川秀直らのいわゆる「上げ潮派」と、社民党や民主党左派などの社民主義勢力の両方を外した「保守政界の再編」による政権づくりであって、その仕掛け人は中曽根康弘やナベツネだろうと思う。やはり老害の代表格である中曽根やナベツネは、「財政再建派」も「消費税増税派」も新自由主義の流派の一つに過ぎないことを理解しておらず、ただ単に、わかりやすい「市場原理主義者」だけを新自由主義者だと考えているに違いない。だから、政界にトンチンカンな手出し口出しをしてくるのだろうと私は思っているのだが、おそらく、「たそがれ」の与謝野馨や平沼赳夫に対して中曽根やナベツネが期待している役割は、民主党にも自民党にも飽き足らない有権者が「みんなの党」や中川秀直ら自民党内の「上げ潮派」勢力に流れるのを阻止することにあると思われる。そして、おそらく参院選後に、野党の「みんなの党」や自民党の議席を抑えたご褒美に、「たそがれ」たちが公明党ともども民主党と連立を組み、社民党と国民新党を連立から弾き出す。これが、中曽根やナベツネが描いている青写真だろう。もっと言うと、私は、小沢一郎の経済に対する理解も中曽根やナベツネと大差ないのではないかと疑っているし、与謝野馨が小沢一郎と近いといわれる点も、大いに警戒している。

だが、民主党と公明党と「たそがれ」政治家の与謝野馨や平沼赳夫の連立政権など、2000年の森喜朗内閣と何も変わらないではないか。そんな馬鹿げた政界再編を実現させてはならない。与謝野馨や平沼赳夫のごとき「たそがれ」の政治家たちを徹底的に批判していかなければならないと考える次第である。


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ネオリベとグローバリゼーションを見直して、内需拡大を図って安定した雇用を生み出す、足りないところは政府や行政が助ける(例えば前にも書いたように農家に所得補償をつけてみるとか)っていうようなやり方でないと景気は回復しないのでは
まあ自分の世代が40代に入れば冗談抜きで日本はメチャメチャでしょう
いや、もうすでにひどいですが
周りの状態を見るにつけ地方や都会でも中低所得者を救うことは不可能だし、そういう人々が安定した雇用にありつけることもないし、競争力の強化や財政出動や税制改革なんかでどうにか出来るような段階にはないと考えています(それでも実行すればいいかもしれない)
これからは、そういう地方や都会の中低所得者をいかにましな状態に持っていくかという話しのがいい気がします
これは゛マスゴミ゛や財務官僚に洗脳されたわけではなくて実際に目に見える事実です
菅直人も゛チャクジツ二ケイキハカイフクシテイル゛みたいな感じで棒読みの景気判断を唱えていくのはわかっています
どうもエコビジネスや金融業界に対しての税金投入をはじめとした最近の景気対策を見ていてわかったのが、企業の上層や投資家にだけ甘い汁を吸わせるていうような流れができつつあるようです

あと外国を見ても、アメリカに渡したカネも踏み倒されるのは確定しています
(中国やヨーロッパには埋め合わせもしますが、日本のことなどどうでもいいと考えている可能性があります
まとまりもないし、また悲観論ですが、今の状態ではこういうことしか書けないわけです

2010.04.05 11:35 URL | マイケル #- [ 編集 ]

城内実って新党に参加するんですか?
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00174920.html

2010.04.06 01:14 URL | 2ちゃんねらー #- [ 編集 ]

与謝野馨は比例復活組。自民党にいたから復活できた議員であり、議員を辞めてから自民党を離党すべきである。マスコミ関係者でその点を指摘したのは、残念ながら、なかにし礼ぐらいである。マスコミは相変わらず与謝野を良識派のように表現しているが、馬鹿ではないか。悪徳企業オリエント貿易の献金問題に触れた記事もない。そういえば、みんななんたらの党首もオリエント貿易から献金受けていたはず。

2010.04.06 07:54 URL | 負け組みの矜持 #- [ 編集 ]

小沢一郎に語るに値する経済政策なんてものはないでしょう。大連立の時、旧社会党が何をやろうが憲法改正はやろう、と小沢が言っていたことが先日の毎日新聞に書いてありましたが、もはや彼が本当にやりたいのは自衛隊の海外本格派兵に道を開くことだけのような気がします。ただ漠然とした経済観としては、案外昔から変わってない気がします。自立した個人の自己責任と自由競争みたいなものはね。

ところで金融危機を脱した後の小渕内閣(つまり小沢・公明との連立政権)~森内閣はマクロ的には経済は好調だったんだし、あの方向性でいけば小泉内閣初期の急速な落ち込みも地方の没落もなかったのでは。なんとなくバラマキ政策のように思われているけど今の民主党の比ではないし、森内閣では合理的な範囲で公共事業の削減も行われていた(小泉・鳩山ほどドラスティックではない)。小沢・森・与謝野・平沼・公明のハイブリッドなら、小渕森政権の再現だが、すくなくとも小泉路線を否定する立場から言えば、民主党が代替わりして中堅の新自由主義者たちによって経済政策が担われるよりははるかにマシなのでは。

自民党政権時代からいくつもの審議会の会長や委員を務めている神野氏が、政府税調の学者会議のトップに担がれたことがそんなに評価すべきことかは疑問ですね。どの程度政策に反映されるかが問題でしょう。

2010.04.06 15:41 URL | KYN #- [ 編集 ]

今日渋谷の演説を聞きました。
小沢のお面が似てなかったので、近くにいたスタッフさんに「あの演説してる人の顔の方が小沢に似てますね」と言ったら烈火の如く怒りだして笑いました。なので「あの演説してる人は人相が悪い」と言ったらもっと怒ってました(笑)
水島さん水島さんと言っていたので帰ってから調べたらこのブログを見つけました。
水島さん(笑)

2010.04.06 20:55 URL | NV #xYl2iXZk [ 編集 ]

3/11の午後2時46分=大地震発生前の3時間前に菅総理にも違法献金疑惑 「退陣論」勢い増す(3/11 11:47):菅総理大臣にも飛び火してますが、東京電力は原発事故による損害賠償が負担になり倒産すると言われてますが、原子力損害賠償法によれば、「天災や社会的動乱」が起きた場合は、一部国が負担する事になっており、東京電力が賠償するお金は、損害保険会社から支払われ、東京電力の支払い金額は、おそらくゼロらしい。 計画停電による経済的な損失に対して損害賠償金額においても、東京電力の約款上、損害賠償の免責は逃れられるそうで結局は我らの税金が高くなるのですよね?

2011.04.30 22:22 URL | 智太郎 #- [ 編集 ]













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