実質的なブログの終わりと「平成」とやらの終わりが重なったが、これはもちろん偶然だ。だがもう一つの偶然として、どうやら今の「野党共闘」の終わりが見えてきたらしいことが挙げられる。
いうまでもなく、21日に投開票が行われた衆院大阪12区の補欠選挙について言っている。この補選で、「野党統一候補」の元共産党衆院議員・宮本岳志は、10%の得票率を超えることができず、供託金没収の惨敗を喫した。
この負け方の異常さを冷静に指摘しているのは、ネットでの世論調査や選挙の分析にかけては押しも押されもしない第一人者である三春充希(はる)氏のツイートだ。以下いくつか引用する。
https://twitter.com/miraisyakai/status/1120150059109060609
#大阪12区補選 選挙結果
藤田文武氏 60,341票(得票率38.49%)当選✅
北川晋平氏 47,025票(得票率30.00%)
樽床伸二氏 35,358票(得票率22.56%)
宮本岳志氏 14,027票(得票率 8.95%)
19:19 - 2019年4月21日
https://twitter.com/miraisyakai/status/1120150873777168384
前回選挙にあたる48回衆院選(2017年)の大阪12区で、共産の松尾正利氏は22,858票を得ていた。今回、宮本岳志氏は無所属で共産・自由・社民大阪府連推薦だけれども、投票率がほぼ変わらない中で、14,027票にとどまっている。
19:22 - 2019年4月21日
https://twitter.com/miraisyakai/status/1120196971199778817
宮本岳志氏は共産党の所属だが、大阪12区補選では無所属で立候補し、共産党に加え、自由党・社民党大阪府連が推薦する形をとった。しかし得票数は14,027票で、これは過去に大阪12区で候補となったあらゆる共産党の候補よりも少ない。共産党だけを見ても、このような結果になっている。
22:25 - 2019年4月21日
https://twitter.com/miraisyakai/status/1120201862165123072
大阪12区の現場で動いていた人たち、特に共産党の人たちが何を感じ、何を思っていたのかが気になる。
22:45 - 2019年4月21日
上記4件のツイートのうち、2番目のツイートには、下記の反応があった。
https://twitter.com/Schneider_svr/status/1120173433747152896
前回は樽床氏が出ていないから前々回との比較が必要かと。
前々回 自民北川 68,817(40.0)
民主樽床 43,265(25.2)
維新堅田 41,649(24.2)
共産吉井 18,257(10.6)
それでも得票率もだいぶ下がっているので今後も厳しいですね
20:52 - 2019年4月21日
今回の補選での宮本岳志の得票は、現在の選挙制度になった1996年以降、どの衆院選での共産党の候補者より少ない。但し、政権交代選挙となった2009年と、安倍晋三が政権の座をトリモロした2012年の衆院選よりは得票率は少しだけ高い。とはいえ最後に引用したツイートが指摘する通り、樽床伸二が立候補した前々回(2014年)を得票数、得票率とも下回るから、宮本陣営は共産党支持層さえまとめきれなかったというほかない。「共闘」がうまく行かなかった時、1+1が2より小さくなる例はよく見かけるが、1+1が1より小さくなるなどという例は初めて見た。「野党共闘」とは、1+1を2より大きくして初めて成功と評価されるものであり、2016年の参院選の一人区ではそれが実現できていた。しかし今回は、2より大きくするどころか1より小さくなる、つまりもともとの候補者の支持基盤である共産党支持層の離反を招いてしまうという論外の結果に終わった。
これが、宮本岳志の政治家としての資質に問題があるとかいう話なら候補者のせいにできるのだが、周知の通りそうではない。逆に宮本岳志は次代の共産党のホープとも目される有能な政治家だ。
その宮本岳志に衆議院を辞職して無所属で「野党共闘」候補として大阪12区の補選に立候補させようと口説いたのが小沢一郎だったと言われている。朝日新聞出版のAERAの記者に宮本陣営の幹部が語ったところによると、
とのこと。実際、いかにも小沢一郎が考えそうな手口だ。共産党はこれに乗っかり、ネットを中心に、支持者たちは「本気の野党共闘」をやっているかどうかを価値基準にして、立憲民主党や国民民主党が宮本に推薦を出さないことを激しく攻撃した。要するに彼らは「自由党・共産党・社民党=善玉、立憲民主党・国民民主党=悪玉」という構図を作り上げたのだが、これは2012年の衆院選で小沢一郎が嘉田由紀子を担いで立ち上げた日本未来の党が彼らの分裂元である民主党を攻撃した構図の再現だった。そして、彼らはこの構図をを上から押しつけようとしたのだ。「共産党の現職議員を無所属にして野党が推して選挙するなんてことは聞いたことがない。到底、うちから出るアイデアじゃない。小沢さんの仕掛けだと聞いている。わざわざ、国会の最中に幹部が宮本候補を呼び出して口説いたようです」
彼らの独善的な言動は無党派層の心を全く掴めず、立民や民民の支持層ばかりではなく、お膝元の共産党支持層まで離反させてしまった。今回の衆院大阪12区補選の結果はそのように総括されなければならない。運動の矛盾が誰の目にも明らかなように露呈した選挙結果だった。
このカタストロフィの張本人は上記に指摘した通り小沢一郎だが、この小沢こそ「平成」を象徴する政治家の一人であり、1989年(平成元年)に成立した海部政権で実権を握って自衛隊の海外派遣に執念を燃やしたことに始まって、共産党を右傾化させるのに成功して比例代表で当選した共産党衆院議員を辞職させて「野党統一候補」として担いで喫した大惨敗で終わった。小沢は、小泉純一郎・安倍晋三と並んで「平成」の政治を悪くした「三悪」の一人に数えられよう。小沢が中心となって実現させた、衆院選への小選挙区制の導入を軸とする「政治改革」ほど「平成」の政治を悪くしたものはなかった。
今回の補選で、わざわざ比例代表で当選した共産党議員を辞職させたことが象徴的だ。もうほとんど誰も指摘しなくなっているが、現在の「野党共闘」は比例代表制を中心とした選挙制度の改変を事実上全く目指していない。衆院選後には必ず起きる「小選挙区制の問題点」の議論は、衆院選を数か月後に控えているかもしれない現在、全く行われていない。それはいうまでもなく、「野党共闘」の事実上の最高指導者である小沢一郎が「小選挙区制原理主義者」であって、小沢にとって比例代表制など以ての外だからだ。ここに「野党共闘」の最大の欺瞞がある。
私は、比例代表制を中心とした選挙制度の改編を目標とした野党共闘であるならば、それに大いに賛成する立場の人間だ。なぜなら、小選挙区制下の選挙では与党が圧倒的に有利で、少ない得票率で圧倒的多数の議席を得てしまうから、それを阻止するためには野党共闘が不可欠だからだ。2016年の参院選では当時民進党代表だった岡田克也の尽力もあって、ようやく一人区で1+1が2を上回る結果を出した。私はこの時初めて岡田克也を(経済政策は全く買わないけれども)評価する気になり、同時に、それまで散々批判していた「野党共闘」に期待する気もになったのだが、選挙後ほどなく岡田克也は細野豪志や前原誠司を筆頭とする当時の民進党右派の政治家たちによって下ろされてしまい、「野党共闘」に小沢一郎が占める比重がどんどん重くなっていった。もっとも、2015年に始まった「野党共闘」の仕掛け人は他ならぬ小沢一郎であり、同時に2016年当時には小沢は既に前原誠司とつるんでいたから、今にして思えば民進党右派による「岡田降ろし」は当然の出来事ではあった。
そして「野党共闘」は、「(保守)二大政党原理主義者」である小沢一郎を事実上の最高指導者に仰いだ必然的帰結として、比例代表制への改編を軸とする選挙制度の議論はタブーとされ、「野党共闘」が自己目的化していった。そこに最大の問題がある。その矛盾が露呈したのが今回の衆院大阪12区補選の結果だった。
これからの日本の政治にとって最大の課題の一つが、この比例代表制を軸とした選挙制度の再改変だと私は堅く信じる。そして、この主張をもって、この『きまぐれな日々』の更新を事実上終えることにしたい。
最後に種明かしをしておくと、このブログの最後のエントリは、安倍晋三政権がいかなる形でも終わった時に本当の「最後の記事」を書いて公開するつもりだ。なぜなら、このブログは13年前の2006年4月16日に、当時第3次小泉純一郎内閣の官房長官だった安倍晋三が総理大臣に就任するのを阻止するために立ち上げたブログだからだ(但し、最初の頃は仮面を被っていて、安倍晋三批判を始めたのは同年6月だった)。それが途中からは小沢一郎も主要な敵の一人に加わったが、最後はやはり安倍政権の終わりで締めなければならない。安倍晋三打倒の初心は今も忘れていない。
長い間ご愛読どうもありがとうございました。『kojitakenの日記』は今後も運営を継続しますので、引き続きよろしくお願いします。