きまぐれな日々

 新年度に入り、トランプ政権のアメリカがシリアを攻撃して安倍晋三が直ちに「支持」を表明した。また北朝鮮をめぐる情勢も緊迫の度を増し、極右夕刊紙の『夕刊フジ』などはトランプのアメリカが金正恩の首を獲るとの見出しを頻繁に掲げて煽動している。日本国内では民進党の長島昭久の離党届提出が話題を呼んでいる。

 こうしたニュースの数々によって森友学園事件はすっかり影が薄くなった。籠池泰典の証人喚問で疑惑の中心が安倍昭恵に移ったことによって注目度が下がった稲田朋美に至っては、一時期の「辞任必至」ムードはどこへやら。結局安倍晋三・昭恵夫妻も稲田朋美も迫田英典も松井一郎もみんな逃げ切ってしまいそうな勢いだ。しかもその過程において安倍政権は「閣議決定」の連発によって、オルタナティブ・ファクト(もう一つの事実、代替事実、などと訳される)の製造マシンと化し、リアル『1984』のオーウェル的恥知らず政権の正体を剥き出しにするようになった。そんな戦後最悪の政権を国民の約半分もの人間が支持している。

 まずアメリカのシリア攻撃について、これに批判的な論評をした朝日新聞と毎日新聞が同じ言葉を用いている。

http://www.asahi.com/articles/ASK475FWTK47UTFK00T.html

米のシリア攻撃、苦肉の支持 政府、化学兵器を前面に
小野甲太郎
2017年4月7日21時50分

 トランプ政権によるシリア攻撃に対して、日本政府は7日、「米国政府の決意を支持する」と表明した。日本独自の情報は限られ、国連安保理決議も採択されない中での米政権による「単独行動」。ただ、同盟国である日本は化学兵器の非人道性を前面に掲げ、米政権の軍事行動ではなく、その政治姿勢に支持を示す苦肉の策を講じた。

 攻撃判明から約2時間後の7日正午すぎ、岸田文雄外相は「事実関係の確認と調査に努めている」と記者団に繰り返した。外務省幹部は「日本政府としての対応を決めるのに、あと数時間はかかる。まず状況を確認しなければならない」と語った。

 同日午後3時すぎ、首相官邸で国家安全保障会議(NSC)の4大臣会合を開催。その場で政府の対処方針を確認した上で、終了後に安倍晋三首相が米政権の決意に対する支持と、ミサイル攻撃は「これ以上の事態の深刻化を防ぐための措置」だと位置づけて理解を表明した。

 今回、化学兵器の使用についてアサド政権が否定する中で、日本政府は「シリア軍が化学兵器を使ったという証拠を持っていない」(政権幹部)という状況だった。さらに、米政権による攻撃の正当性を担保する根拠も判然とせず、外務省幹部は「国際法的な根拠に乏しく、米政権への『支持』まで表明できない」と率直に語っていた。

 そこで日本政府が編み出したのが、英国が表明したような軍事行動そのものへの支持ではなく、米政権の姿勢に焦点を当てる手法だった。まず、化学兵器の使用についてはアサド政権を名指しせず、「化学兵器の拡散と使用は絶対に許さないとの米国政府の決意」を取り上げて支持。その上で、軍事行動をいったん「これ以上の事態の深刻化を防ぐための措置」だと位置づけ、それに理解を示すという表現にした。

 官邸幹部は「手放しの支持ではない」と認める。さらに、今回の攻撃により米ロ関係が緊張するのは必至で、ロシアのプーチン政権と北方領土交渉を進展させたい日本政府は、日ロ交渉に与える影響を懸念する。

 攻撃判明後に米政府を含む関係国から情報収集し、「決意支持」表明に至った日本。では、米国からの事前通告はあったのか――。菅義偉官房長官は7日の記者会見で問われ、「我が国と米国は常日頃から緊密に連携をとっている。コメントは控えたい」と明言を避けた。(小野甲太郎)

(朝日新聞デジタルより)


https://mainichi.jp/articles/20170408/k00/00m/010/177000c

米、シリア攻撃
日本政府 苦肉の「支持」「理解」
会員限定有料記事 毎日新聞2017年4月8日 00時32分(最終更新 4月8日 01時21分)

 米国のシリア攻撃に対し日本政府は「米政府の決意を支持」しつつ、国際法上の根拠がはっきりしない攻撃そのものへの評価は「理解」にとどめた。北朝鮮の核・ミサイル開発という身近な脅威を抱える立場で、同盟国・米国に最大限の協調姿勢を示す苦肉の表現。安倍政権はロシアとの関係も重視しており、アサド政権による化学兵器の使用を否定するロシアにも配慮したとみられる。

 過去の米国の軍事行動でも、日本は微妙な対応を迫られてきた。(後略)

(毎日新聞より)


 毎日新聞の記事は「会員限定有料記事」とあるので、無料部分のみ引用したが、朝日・毎日両紙とも「苦肉」との言葉を用いている。これはいうまでもなくニュースソースが同じことを意味する。

 私には、両紙ともアメリカのシリア攻撃を「批判」しながらも、「苦肉」の表現を用いた安倍政権に「理解」を示しているようにしか読めない。腰が引けている印象だ。ましてや、シリア攻撃を支持した読売や産経の記事がどんなものであるか、実は読んでいないのだがさぞかしひどいものに相違ない。

 いくら「苦肉の策」であろうが、アメリカがやらかす暴挙に真っ先に「支持」ないし「理解」を表明するアメリカの属国としてしかみなされないのは当然だろう。私自身は当然ながら今回のアメリカのシリア攻撃に理は全くないとの立場だ。

 その安倍政権が、一方ではアメリカが嫌うであろう教育勅語の学校教育での使用には大いに前向きだ。これには朝日・毎日はおろか日経・読売にまで批判され、支持している主要メディアは産経だけである。

 繰り返し指摘するが、「安倍政権は日本会議と手を切れ」と書いた立命館大教授・上久保誠人ら「グローバルインテリ」の提言は受け入れられなかった。毎日新聞の伊藤智永は、安倍首相は賢いから日本会議とは距離を置き始めているとの見通しを先月末の『サンデー毎日』に書いたが、先週号の同記者のコラムからはそのトーンが消えた。代わりに、安倍昭恵の右翼思想が安倍家に嫁に入って培われたこと、森友学園事件には安倍昭恵と籠池諄子という妻同士の強い結びつきが引き起こしたものであることを指摘している。

 伊藤記者はまた、毎日新聞のコラムに、安倍昭恵に「秘書」がいることや昭恵の「右翼趣味」をメディアは知っていながら、安倍晋三の妻ならこんなものかと慣れっこになっていたと書いている。つまり毎日(や朝日)を含む各メディアは、昭恵が首相公邸に陣取って「秘書」たちを従え、玉座に座ったまま面会者に「謁見」していることも、昭恵が極右であることもみな知っていながら、伊藤記者の表現を借りれば「昭恵氏の政治『権力』にまるで鈍感だった」、つまり昭恵による国政の私物化に問題意識さえ持たなかった。それどころか安倍昭恵の「家庭内野党」という虚像を作り上げるのに積極的に協力までしたのだから、毎日や朝日を含む「リベラル」系メディアの罪はあまりにも重い。

 おかげで「リベラル」はすっかり腑抜けになってしまって、安倍昭恵の証人喚問すらまともに要求できない「リベラル」が続出するありさまだ。このところ森友学園事件の追及の機運はやや下火になっているが、今回の事件を通じて、安倍昭恵が安倍政権の最大のアキレス腱であることがはっきりわかった。昭恵に関してこれまでメディアが報じなかった「黒い疑惑」やトンデモぶりが次々と明らかになっている。森友や加計などの極右教育者に対する数々の口利き疑惑に始まり、「水からの伝言」を盲信するトンデモや、あげくの果てには暴力団員との交際まで報じられた。まるでスポーツ選手か芸能人みたいだ(そういえば三宅洋平とも意気投合していた)。

 安倍晋三は昭恵について追及されるとすぐキレる。昭恵の実像を暴くことは、これまで「昭恵=家庭内野党」の虚像に騙されていた「リベラル」を初めとする人々の幻滅を誘うとともに、安倍晋三の失言を引き出す可能性がある。

 正直言って、私は安倍昭恵の追及を突破口にする以外、ここまで「安倍政権支持」で岩盤化した民意を変えさせることは難しいのではないかと思う。正攻法で挑んでも固い岩盤にはね返されてしまう。2015年の安保法案の攻防をめぐる「立憲主義」の威力は絶大だったが、最終兵器ともいうべき「立憲主義」(この保守思想は「両刃の剣」だと私は考えているが)をもってしても、毎日新聞の世論調査で安倍内閣支持率を32%に下げるのが精いっぱいだった。あの時、「リベラル」たち(私が思い浮かべるのは高橋源一郎だ)は「法案は成立したけれどSEALDsが出てきた。負けたけど勝ったようなものだ」と浮かれていた。あるいは安倍晋三が「戦後70年談話」に「4つのキーワード」を入れたことで、「これでネトウヨらの支持も安倍政権から離れて、政権が倒れる日も遠くない」と喜んでいた、自身を「中道」と思っているらしい「リベラル」のブロガーもいた。しかし、後者については、「安倍さんって極右だと思ってたけど、戦後70年談話に争点となっていた4つのキーワードを入れたりして結構普通じゃん」と思った人々の方が多く、自称「中道」氏(私は「都会保守」とみなしている)の思惑はみごとに外れた。SEALDsと共著を出した高橋源一郎の思惑もまたみごとに外れ、SEALDsの後進の団体が立ち上げられたが、彼らのデモに集まる人たちの数は激減した。

 最後に夏の都議選と長島昭久の民進党離党届提出に触れる。間違いなく「都民ファーストの会」(別ブログでは「都民ファ□ストの会」と表記しているが、こちらのブログでは正式名称で表記する)の大躍進が見込まれる都議選だが、民進党から大量の離党者が出て「都民ファースト」に参加するのが目立つ。長島昭久は自らの地元から離党者が出た責任をとって都連幹事長の役職を辞任したのだが、呆れたことに同じ日に長島自身も民進党の離党届を提出した。

 この件に関して、民進党にいては当選が覚束ないと危機感を抱く現職や元職の都議が一斉に「都民ファースト」に走ったというより、小池百合子への共感を蓮舫が表明して協力を申し出たことに対してすげない態度をとった小池百合子(やその手下である「極右中の極右」野田数)が、民進党の協力を拒絶していながら民進党の現職・元職の引き抜きを行うという外道もいいところの暴挙に出ていることを指摘しておかなければならない。民進党から「都民ファースト」に移籍した者の間から、「都民ファーストからのアプローチがあった」との複数の証言が出ているようなのである。

 しかし、「安倍昭恵=家庭内野党」という虚像に簡単に騙され、昨年末に「小池都知事と公明党と民進党の協力にちょっとワクワクして」いたような自称「中道」は、無邪気に長島の離党を喜ぶていたらくだ。小池百合子はまぎれもない極右であり、本当の中道であるならば危険視及び敵視をしなければならない政治家だと私は確信するのだが、「都民ファーストの会」の悪意を疑うこともなく、「小池新党合流に警戒も、民進党の中道路線&野党共闘に期待」などと書いていられるお花畑ぶりには呆れるほかない。

 いや、前記お花畑氏は極端な例だけれど、それ以外の「リベラル・左派」諸氏に対しても、「都民ファーストの会」への警戒心が弱すぎると思う。なんで長島昭久のような国会議員が「都民ファーストとの独自の連携」を追求すると報じられるのか、疑問に思わないのだろうか。誰が考えても、「都民ファーストの会」は単なる地域政党ではなく、かつて橋下徹がやったような国政進出を視野に入れている、というより都議選前に衆院選が行われる可能性が低いことを考えると、都議選での躍進を踏み台にして、次期衆院選に大量の候補者を立てるとしか私には想像できない。

 ここで、なぜ都議選前に衆院選が行われる可能性が低いと考えるかといえば、来年9月の自民党総裁選に3選されるつもりでいる安倍晋三は、今年9月までに衆院解散・総選挙を行うと、自らの総裁任期中にあともう一度解散総選挙を行わなければならなくなるからだ。だから安倍晋三が都議選前に解散総選挙を行う可能性は低い。「都民ファースト」の国政政党版からの立候補を考えているであろう長島昭久も、都議選前の衆議院解散はないと計算したから民進党離党に踏み切ったものと思われる。仮に都議選前に解散をやられてしまうと、長島は自民党に入るくらいしか生き残る手段がなくなってしまう。長島は東京の民進党では柿沢未途の次に得票力のある議員なので(それでも前回は選挙区で負け、海江田万里を落選に追い込んだw)民進党を離党できたが、そうではない議員はおいそれと離党できない。しかし、柿沢と長島の次に得票力があり、かつ極右である松原仁あたりは離党できる力はある。松原が離党するかどうか微妙だとは思うが。

 概して、「リベラル・左派」は小池百合子と「都民ファーストの会」を甘く見すぎだと思う。このままだと、近い将来日本の国政は自民党と「都民ファーストの会」の国政政党版という、世界でも他に類を見ない「極右二大政党制」が実現してしまう。そうなると「野党共闘」など吹っ飛んでしまうと危惧する今日この頃なのである。
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