きまぐれな日々

 昨日(24日)投開票が行われた衆院北海道5区補選について、前回の記事

事前のマスメディアの世論調査で大激戦とされていながら、蓋を開けてみると自公候補の圧勝に終わった年初の宜野湾市長選の悪夢が脳裏をよぎる。

と書いたが、その悪い予感は現実になった。

 衆院北海道5区補選は、自民党の和田義明候補が「野党共闘」の池田真紀候補を破って当選した。得票数は和田義明が135,842票、池田真紀が123,517票。12,325票の差がついた。池田候補よりちょうど1割多い票を和田候補が獲得したわけだ。これを「僅差」とみるわけにはいかない。予想外の大差がついたと言わねばならない。

 今回はあまりにもわかりやすい結果だったから、どこでも同じようなことが言われるに違いない。選挙前、よくTBSのニュースなどが、2014年の衆院選で故町村信孝が獲得した票と、民主・共産両党の候補が獲得した票の合計とはほぼ拮抗すると言っていた。2014年総選挙では投票率が58.43%で、町村が131,394票、民主・共産両党候補の得票の合計は126,498票だった。今回は投票率(57.63%)で14年総選挙をわずかに下回ったが、自民党候補の得票が4千票増え、「野党共闘」候補の得票は前回の民共票の合計より3千票減らした。だから前回の5千票差から1万2千票差に拡大した。

 さらに遡ると、2012年の衆院選では、投票率が60.18%、町村が128,435票、野党3党(民主、みんな、共産)の得票数合計が131,522票と、野党の得票数が町村を3千票上回っていた。また2010年10月の補選では投票率が53.48%、町村が125,636票、民共の得票数合計が109,718票だった。2009年の「政権交代総選挙」は投票率が76.32%と高く、町村も151,448票を獲得したものの、民主党の小林千代美が182,952票を獲得して圧勝した。この選挙では共産党は公認候補を立てなかった。

 上記直近5回の選挙からいえることは、まず無党派層の支持をつかまなければ自民党候補には勝てないということだ。昨日の東京は朝方天気が荒れたが、北海道5区では好天だったと聞く。しかし投票率は上がらなかった。「野党共闘」が無党派層の心をつかみ切れなかったことは明らかだ。

 さらに、より不気味なのは、「政権交代ブーム」に煽られて敵の町村信孝の得票も伸びた2009年及びそれ以前の選挙を除外して考えると、自民党候補の得票が徐々に増え続けていることだ。今回は、和田義明がどう見ても魅力に乏しい候補だった一方、池田真紀が共産党支持者にも投票しやすい印象の候補であったにもかかわらずこのような結果になった。先週の週刊文春だったかの保守系週刊誌が、民共共闘を「弱者連合」と評していたが、リベラル系メディアの多くは共産党は党勢を伸ばしていると書いていた。しかし私は、民進党も共産党もともに党勢は衰退傾向だとみていた。共産党は「国民連合政府」を言い出した昨年秋から急に党勢に翳りが見え始めた(それを象徴するのが2月の京都市長選における惨敗だった)。民進党に至っては泡沫政党・維新の党を吸収合併する以前と比較しても政党支持率を落としている。私は、「民進党」なる、かつての小沢一郎の「新進党」を思わせる政党名も災いしているのではないかと強く疑っている。つまり「野党共闘」の左右両翼(共産党と民進党)がともに有権者の心をつかめていない。

 今回の選挙以上に各党候補の得票数が少なかった1996年の衆院選の選挙結果を振り返ると興味深い。この時は町村が113,282票、新進党候補が61,846票、共産党候補が44,885票だった、進共候補の得票数合計は106,731票であり、町村の票に及ばなかった。そして新進党とはいわずとしれた小沢一郎肝煎りの野合政党だった。20年前に小沢が仕掛けた「政権交代可能な二大政党制」を有権者は支持しなかったが、現在の「野党共闘」にも同じことがいえるのではないかと思う。

 ところで、今朝(4/25)の朝日新聞1面トップの見出しは「同日選 首相見送り」(東京本社発行最終版)だった。産経は5日前に書いていたが、朝日が追随した。また北海道5区の補選を報じる毎日の記事(下記URL)にはこんなことが書いてあった。
http://mainichi.jp/senkyo/articles/20160425/ddm/001/010/200000c

(前略)参院選前の大きなハードルだった補選を乗り切ったことで、消費増税をめぐる判断など、政権運営の選択肢は広がったとみられる。ただ、北海道5区補選の選挙戦は、政府・与党幹部らの想定以上の激戦となった。安倍政権の支持率は堅調だが、経済回復の足取りが鈍いことやアベノミクスの恩恵が地方に届いていないことへの批判が影響したとの指摘もある。政府・与党は参院選に向けた対応をあらためて検討する。

 自民党内には北海道5区補選に負けた場合、野党共闘が進む参院選の議席減も免れないとして、衆院を解散し「政権選択の選挙」となる衆参同日選を実施するよう求める声があった。だが、熊本地震で被災地自治体の負担が大きくなることに加え、北海道5区補選で勝利したことから、党内からは首相が同日選を決断する可能性は遠のいたとの見方が出ている。【高本耕太】

(毎日新聞 2016年4月25日 東京朝刊)


 「消費増税をめぐる判断など、政権運営の選択肢は広がった」とはどういうことだろうか。「永田町文学」の影響を受けた「竹橋文学」でもあるのか、意味をとりにくいが、「これで消費税率引き上げ延期を表明して、それを焦点にして衆参同日選挙を戦わなくても良くなった」と言うことなのだろうか。同じことを「築地文学」(朝日新聞)はこう表現する。

 一方、来年4月に予定する消費税率10%への引き上げについて、首相は衆参同日選とは切り離して判断する考えだ。

(25日付朝日新聞1面掲載記事「同日選 首相見送り」より。朝日新聞デジタルの無料公開範囲には含まれていない)


 こちらも毎日の記事と同様、安倍晋三は消費税増税延期を表明して衆参同日選挙の争点にしなくても良くなった、と書いているようにも読める。しかし朝日の記事はそれに続いて

政府・与党内では「熊本地震と世界経済の縮小を合わせれば、増税延期の理由になる」(自民党幹部)との声が出ており、増税は難しいとの見方が強まっている。

とも書かれている。さらに朝日2面の政局解説記事を読むと、

(前略)安倍首相は2014年末、消費増税の先送りを理由に衆院解散に踏み切った。今回も同じシナリオが予想されていたが、ある閣僚経験者は「増税して信を問わなくても、消費増税先送りを世論は受け入れる。解散しなくてもいいようになった」。これも、震災対応を理由として期待する。

などと書かれている。

 だがこれも変な記事だ。「消費増税先送り」を受け入れてこなかったのは、「世論」などではなく朝日や毎日など「リベラル」系の新聞ではなかったか。そして、安倍晋三は「増税して信を問わなくても、消費増税先送りを世論は受け入れる」からではなく、震災が起きたのに政局にかまけて衆院を解散するとは何事か、と批判を受けて、せっかく消費増税策送りを切り札にするつもりができなくなることを恐れている、というのが本当のところなのではないか。

 また逆に、5月に消費税増税延期を安倍晋三が表明するなら、安倍は1986年に中曽根康弘がやったような「死んだふり解散」をやるのではないかとの疑念がどうしても拭えないのである。

 今回の北海道5区の補選の結果を見ると、6月1日に衆院を解散して衆参同日選挙をやれば、自民党が圧勝して大手を振って改憲に踏み切れる、と安倍晋三が踏んだとしても驚くには当たらないのではないか。そう思わされる補選の結果だった。
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 4月14日午後9時26分の「前震」(震度7、マグニチュード6.5)で9人の死者を出した熊本地震は、16日午前1時25分の「本震」(震度6強、マグニチュード7.3)でさらに30人を超える死者を出し、東日本大震災以後では最大の被害となった。まずは、被災された方々に心よりお見舞い申し上げる。

 この地震に対する安倍内閣の対応は、当初から疑念を感じさせるものだった。その疑念は、前震のあとに直ちに記者会見した内閣官房長官が「震度7強」という定義されていない「震度」を口走ったことから始まっているが、翌日になると菅はこの地震に絡めて憲法に緊急事態条項を創設することを「極めて重い課題」と言った。以下日経新聞記事(下記URL)を引用する。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS15H54_V10C16A4PP8000/

緊急事態条項「極めて重い課題」 熊本地震で官房長官
2016/4/16 0:33

 菅義偉官房長官は15日の記者会見で、熊本地震に関連し、大災害時などの対応を定める緊急事態条項を憲法改正で新設することについて「極めて重く大切な課題だ」と述べた。「憲法改正は国民の理解と議論の深まりが極めて重要だ」とも語り、慎重に検討すべきだとの立場を示した。

 自民党は野党時代にまとめた憲法草案で、緊急事態条項の新設を明記している。

(日本経済新聞より)


 米軍の支援の件もキナ臭い。前記の緊急事態条項が必要とした妄言を発した菅ですら、既に本震が起きた後の16日午前には下記の発言をしていた。

(前略)菅氏は、米政府が支援の用意に言及した件に関し「動員を拡大し、現地で活動することができるようになり始めているので、(自衛隊など国内の部隊だけで)対応できる」と語った。

(産経ニュース 2016.4.16 14:16)


 この発言は昨日(17日)朝放送のTBSテレビ「サンデーモーニング」でも紹介されていたが、この番組は同じ日に防衛相の中谷元が前記菅とは異なる下記の発言をしていたことには触れなかった(下記URLの毎日新聞記事参照)。
http://mainichi.jp/articles/20160416/k00/00e/010/264000c

熊本地震 「米軍支援受け入れ検討を」中谷防衛相
毎日新聞 2016年4月16日 12時50分(最終更新 4月16日 13時26分)

 中谷元(げん)防衛相は16日、熊本県などで起きた地震で、防衛省と自衛隊に米軍の支援受け入れを検討するよう指示した。同省で記者団に明らかにした。【村尾哲】


 結局安倍晋三が被災者救助の米軍支援を「調整が整い次第直ちに実施したい」と発言したのだが(産経ニュースより)、上記の経緯には、震災を政治利用しているのではないかとの疑念を強く感じさせるとともに、震災発生直後から迅速に自衛隊を増派すべきではなかったかと思わせる。安倍晋三とは、このような大災害に遭遇しても被災者よりも自らの政治的野望を優先する人間なのだなと思わずにはいられない。安倍に対する強い怒りが改めて込み上げる。

 その安倍にとって最大の痛恨事は、24日に投開票が行われる衆議院北海道5区の応援に行けなかったことではないだろうか。時事通信の世論調査でわずか4.2%の政党支持率しかない民進党の不振とは裏腹に、北海道5区の補選は大激戦らしい。この補選は民進、共産、社民、生活が推薦する無所属の池田真紀と、公明と日本のこころをなんちゃらとかいう泡沫政党が推薦する自民新人の和田義明との一騎打ちだが、朝日新聞は「池田氏・和田氏競り合う」、共同通信は「与野党横一線」と報じている。これを書いている時点で、「北海道5区 情勢 読売」を検索語にしてネット検索をかけても読売の記事は引っかからない。ところがなぜか衆院選や参院選などで読売と組んでいる日経が「北海道で自民やや優勢」との世論調査を報じている。従って読売も同様の記事を流すのではないかと思われるが、なぜか遅れている。しかし読売は18日朝、「北海道5区横一線」と報じた。自民候補の名前を先に出している。また、毎日や地元の北海道新聞は共同通信の調査結果を載せていて、自前の世論調査は行っていない模様だ。地元の北海道新聞は初めウェブサイトに共同通信の情勢記事を載せたが、18日付朝刊で「和田氏、池田氏譲らず」と、激戦を報じながらも自民候補の名前を先に出した。http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/politics/politics/1-0260511.html(以上、赤字部分は追記)。

 このようにメディアの世論調査も割れているが、仮に朝日や共同が報じる通りの大接戦であり、週末の補選で池田候補が勝つようなことがあれば、安倍晋三は「熊本の地震のせいで」17日に北海道に応援に行けなかったことに地団駄踏むのではないか。補選は是非ともそういう結果になってほしいものだが、事前のマスメディアの世論調査で大激戦とされていながら、蓋を開けてみると自公候補の圧勝に終わった年初の宜野湾市長選の悪夢が脳裏をよぎる。

 現在は、被災地やその周辺の九州の自治体からすると、「本当に7月に衆参同日選挙なんかやるつもりか、そんなことにかまけている暇があったら被災地を助けてくれ」との思いだろうが、残念ながら安倍晋三の頭の中には「おじいちゃんも果たせなかった憲法改正をボクが成し遂げるんだ」という妄執しかない。だから安倍晋三のやることなすことのすべては改憲のための政治利用だと言っても過言ではない。もちろん熊本の震災も例外ではなく、現に緊急事態条項の創設や米軍に対する国民感情の改善などを被災地の救援より優先していることは明らかであるように私には見える。

 思えば、2014年の衆院選だって不必要な選挙だった。安倍晋三がなぜいつも短い間隔で解散を打つかといえば、衆院選のあと任期満了に近づけば近づくほど、解散権という伝家の宝刀の威力が落ちるからだ。自民党が圧勝した1980年の衆参同日選挙は前年の衆院選のわずか8か月だったし、2005年の郵政総選挙もその前の衆院選から2年も経っていなかった。逆に、戦後唯一の任期満了選挙だった1976年のロッキード総選挙と、限りなく任期満了に近かった2009年の政権交代選挙(その前の郵政総選挙の3年11か月後に実施)はともに自民党が惨敗している。安倍はそうした過去の事例を間違いなく意識しているし、2006年の第1次内閣で小泉の郵政総選挙の議席を引き継いだことに安住した失敗を繰り返すまいとも思っているに違いない。

 だからといって解散の必要もない時に解散を濫発するようなわがままな総理大臣は、小泉純一郎を例外として最近はいなかった。私が安倍晋三と同じくらいわがままな総理大臣だったと思うのは、安倍の敬愛する母方の祖父の政敵だった吉田茂である。第5次内閣まで組んだ吉田は、「バカヤロー解散」をやったこともあったし、総理大臣を辞める時にも一時は解散をやろうとしたほどの恐るべき権力亡者だった。だが吉田は世論の批判を結構受けていたはずである。一方安倍晋三はNHKに籾井勝人を送り込んでこれを征圧し、TBSとテレビ朝日の夜のニュース番組を、政権に批判的な番組から人畜無害な、安倍晋三にとっては都合の良い番組に変えてしまった。だから、「必要もないのに解散総選挙ばかりやって税金を無駄遣いしやがって」という当然の批判さえろくに浴びることなく、やりたい放題を続けている。

 いったい日本国民は、いつまでこんな「バカ殿」に我慢し続けるのだろうかと激怒するばかりの今日この頃なのである。
 先週の政治(国会)に関するニュースで、心ある一部の国民(安倍内閣を支持するような不心得者はもちろん話が別)を呆れさせたのは、なんといっても「黒塗りのTPP交渉資料」の一件だろう。以下、朝日新聞デジタルの記事(下記URL)より引用する。
http://www.asahi.com/articles/ASJ455V3NJ45UTFK016.html

TPP交渉資料、全て黒塗りで公開 内容分からず 自民
2016年4月5日21時44分

 環太平洋経済連携協定(TPP)の承認案と関連法案の衆院特別委員会での審議をめぐり、自民党は5日、民進党が求めていた政府の交渉資料を、特別委の理事懇談会に提出した。ただ、全て黒塗りされ、内容は分からない状態だった。

 民進は、情報開示がないと十分な審議ができないとして、甘利明・前TPP相とフロマン米通商代表部代表の会談記録の提出を要求。自民は5日、首相官邸への報告用に論点をまとめた資料を提出したが、全て黒塗りされ、「TPPブルネイ交渉会合 平成25年9月」などというタイトルだけが上から貼り付けられていた。

 自民の佐藤勉国会対策委員長は記者団に「公開しないという国と国との約束は絶対に逸脱できない。それ(黒塗り)でもという話があった」と説明。民進の近藤洋介・特別委筆頭理事は「ここまで黒いと思っていなかった。政府の説明を徹底的に求める」と述べた。

 資料提出を受け、与野党は、特別委で6日に承認案などの趣旨説明、7、8の両日に安倍晋三首相も出席して質疑を行うことで合意。自民は、首席交渉官だった鶴岡公二氏の参考人招致にも応じた。

(朝日新聞デジタルより)


 ところが、国会に黒塗り資料が提出される一方で、衆院TPP特別委員会委員長の西川公也(自民)が書いたTPP交渉の暴露本を4月20日に発売する予定になっていた。これが国会で取り上げられた。以下ハフィントンポストの記事(下記URL)を引用する。
http://www.huffingtonpost.jp/2016/04/07/nishikawa-koya-book_n_9639480.html

西川公也氏の著書『TPPの真実』巡り国会中断 Amazonからは削除
The Huffington Post | 執筆者: 吉野太一郎
投稿日: 2016年04月08日 12時15分 JST 更新: 2016年04月08日 12時24分 JST

衆院TPP(環太平洋経済連携協定)特別委員会の西川公也委員長(自民)が、TPP交渉について出版予定の著書に、外交上の守秘義務は含まれるのか。この点を巡って、国会が混乱している。

4月8日の同委員会は、西川氏が近く出版予定の『TPPの真実-壮大な協定をまとめあげた男たち』(中央公論新社)を巡って与野党が激しく対立した。

民進党の緒方林太郎氏は、この書籍のゲラ刷りとする資料を示し、政府のTPP対策本部職員が情報提供などをしたのかと質問したが、石原伸晃・TPP担当相は「ゲラ刷りかどうか確認できない」「資料を認識していないので答弁は差し控える」などと繰り返し答弁。反発した民進党の委員が途中退席した。午前10時過ぎに西川委員長が休憩を宣言し、審議は中断している。
7日の委員会では、玉木雄一郎氏(民進)の質問に、西川委員長は「答える立場にない」と応じず、安倍晋三首相も「いま初めて知った」と答弁するなど、与党側に混乱がみられた。

発端は、野党側が求めた政府のTPP交渉資料を、5日に自民党側がすべて黒塗りで国会に提出したこと。自民党側は「公開しないという国と国との約束は絶対に逸脱できない」(佐藤勉・国会対策委員長)と、守秘義務をたてに開示を拒否したが、紀伊國屋書店ウェブストアによると、西川氏の本は「未曾有の多国間交渉での自国の将来をかけた駆け引き。自民党TPP対策委員長として最前線に立った著者が、その熾烈な内幕を明かす!」とされている。野党側は守秘義務違反に当たらないのであれば「同レベルの情報を国会議員にも出して欲しい」と求めていた。

この本は、amazonからはリンクが削除された。紀伊國屋書店ウェブストアやhontoには残っているが、どちらも予約受付は終了している。ハフポスト日本版は中央公論新社に事実関係を確認しており、回答を待っている。

西川氏は第2次安倍政権で自民党のTPP対策委員長、2014年9月からは農水相を務めた。TPP交渉の内幕を知る立場にあったが、自身の政党支部が国の補助金を受けた企業などから献金を受けていたことが発覚し、2015年2月に辞任していた。

(ハフィントンポストより)


 この西川公也が書いた暴露本について、「第一サティアン」や「最後は金目でしょ」など数多くの暴言で知られるTPP担当大臣の石原伸晃は、木で鼻を括ったような口調で知らぬ存ぜぬを決め込む答弁をしていたが、この石原のふざけた答弁に怒った民進党議員が退席したあとの国会で、なんと西川自身が当該の本を書いたことを認める雑談をしており、それを国会のマイクが拾っていた。以下日本テレビのニュースサイトより(下記URL)。
http://www.news24.jp/articles/2016/04/09/04326897.html

 TPP(=環太平洋経済連携協定)の承認案をめぐる国会審議は、野党側が衆議院TPP特別委員会・西川公也委員長の審議の進め方などに反発し、6時間あまり中断される事態となった。こうした中、西川委員長のある発言をカメラが捉えていた。

 「『TPPの真実』といわれるこの本のゲラとされるものでありますが」-民進党の緒方林太郎議員が手にしているのは、西川委員長が出版を予定していた著書の原稿。政府が守秘義務に関わるとしている交渉の経緯が書かれていると指摘した上で、西川委員長に対し、自らが書いたものなのかただした。

 西川委員長「委員長は答弁する立場ではありません」

 民進党は、こうした答弁が不誠実だとして委員会室を退席。この後、マイクが西川委員長のある会話を拾っていた。

 西川委員長「あれは全部文書からはね、今の新しいやつは消えてるんですよ。自分できれいに整理をしたやつじゃなくて、一番古いのが出てるんですよ。書き殴ったやつが。だけど認めないんでしょ。深掘りしてくるから」

 自らが書いた原稿であることを認めるような発言。民進党は週明け以降、委員長の解任決議案提出も視野に攻勢を強める方針。

(日テレニュース24より)


 なんとも国民を馬鹿に仕切った話で、私など怒り心頭に発するのだが、驚くべきことにこれほどまでにも狂犬的な、もとい強権的な政権を国民の半数近くが「支持」している。

 「NEWS23」のアンカーが岸井成格(毎日新聞)から星浩(元朝日新聞)に代わり、「報道ステーション」のコメンテーターが従来の日代わりから月〜木曜日が後藤謙次(元共同通信)の固定になった(後者は今日4月11日がその初回)ことによって、両番組が骨抜きになった(なるであろう)現在、ネトウヨの憎しみはTBS日曜朝の「サンデーモーニング」に集中することになるのだろうが、その「サンデーモーニング」で昨日(10日)、私から見ると括弧付きの「リベラル」としか思えない姜尚中がこのTPP資料問題についてコメントしていた。

 「TVでた蔵!」というウェブページを参照しながら姜のコメントを下記に示す。

 姜氏は明治維新、終戦につぐ第3の開国である(TPPという)事態で、明治開国の時は公議輿論(という)国民も皆議論する意味の言葉があり、その反対である有司専制といわれる批判語があったと説明。国民の生活が大きく変わる事態に、一切知らせないのはGHQ占領下のようだ、有司専制の歴史が150年つづいてきたのではないかと批判した。(「TVでた蔵!」より。括弧内は引用者による補足)


 「有司専制」とは、「コトバンク」によると、

官僚が独断的に事を取り計らうこと。明治初期、自由民権派が藩閥政府による専制的政治を非難したときに用いた語。(『デジタル大辞泉』より)

だ。この言葉から連想されるのは、「論語」に由来する「由らしむべし知らしむべからず」という言葉であり、こちらは、やはり「コトバンク」によると、

《「論語」泰伯から》人民を為政者の施政に従わせることはできるが、その道理を理解させることはむずかしい。転じて、為政者は人民を施政に従わせればよいのであり、その道理を人民にわからせる必要はない。 (『デジタル大辞泉』より)

という意味だ。

 安倍晋三が「日本を、取り戻す(トリモロス)」という時の日本とは、明治維新以前には遡れないとよく言われるし、私もこれまでずっとそう書いていたが、実はこれは間違い、というか安倍らを買い被り過ぎていたのではないかと最近思うようになっている。なぜなら、明治の元勲であり安倍晋三と同じ長州閥の伊藤博文は、樋口陽一の指摘する通り立憲主義をよく理解していた人間で、「そもそも憲法を創設するの精神は、第一、君権を制限し、第二、臣民の権利を保護するにあり」と言っていたのだが(実際には伊藤博文は、エスタブリッシュメント層には天皇機関説を教え、下々には天皇を現人神として信仰させるという「顕教と密教」の二枚舌の使い分けによる寡頭政治をもくろんだ悪知恵に長けた人間だったと思うが)、安倍晋三や自民党の政治家にはそれすら我慢ならず、「立憲主義とは耳慣れない言葉だ」とすっとぼけて、明治よりもっと昔の社会に回帰しようとしているとしか思われないからだ。安倍らの理想は2500年前の中国であり、今で言うなら北朝鮮であるとしか私には思えない。いや、みだりに北朝鮮など持ち出さず、戦前の日本と書くべきなのかもしれないが、戦前の日本において、密教が顕教に呑み込まれた、つまり天皇機関説が「統帥権干犯」として右翼や軍部の攻撃を受けたあげくに排除された(政党政治家でありながら軍部とグルになったのが政友会の政治家たちだった。中でも特に声高に「統帥権干犯」を叫んだのが鳩山由紀夫の敬愛する祖父・鳩山一郎だった)ことを考えると、戦時中の日本の失敗を繰り返さず、長期に安定して専制政治を行いたいという野望が安倍を筆頭とする自民党の政治家には明らかにうかがわれる。だから「顕教と密教」の使い分けによって専制政治を行おうとしたもののその60年後の破綻を呼び込んだ伊藤博文及びその延長線上にある戦前の日本には学ばず、伊藤が依拠しようとした七面倒くさい立憲主義など止めてしまえ、と彼らは考えていると想像される。してみれば、彼らが戦時中の日本を目指していると考えるのはやはり不適当であり、金王朝がその独裁制を長きにわたって維持している北朝鮮にしかたとえようがないように思われる。もっとも金王朝の独裁も遠くない将来打倒されるのではないかとの予感が日に日に強まってはいるが。

 いずれにせよ、安倍政権が戦後もっとも危険な政権であり、一刻も早く打倒しなければならない政権であることが日に日にあからさまになってきているのが今の日本だと思う。しかしこのように書いても同感の人は少ないようだ。最近はこのブログには反対意見を持つ方々からの反論がほとんどこなくなっている。強権ならぬ狂犬はほったらかしにしておけ、とでも思われているのではないかと想像する。なにせせこのブログは、安倍政権に対立する側に対しても、民進党の野合に悪態をついたり、共産党の民主集中制を批判したりして、「野党共闘」を呼びかけたりも全然しないどころかそれに懐疑の目を向けたりしているのだから、自ら敵を作りまくっているようなものだ。だから賛成意見が少ないのはわかる。だが批判のコメントまでもがいたって少ないのだ。だから狂犬扱いされてるんだろうなと思う。もっともブログのアクセス数も全盛期(2009年)と比較すると数分の一しかない。

 だが、ブログ開設から今週末ではや10年。書きたいことを好きなように書くというのが最終的に行き着いた私のブログのあり方だ。ウェブログとはもともとそういうものだと思う。
 新年度最初の更新。今月16日でこのブログは開設10周年を迎えるが、次々回(18日記事公開予定)まで続けば、1つの目標をクリアすることになる。

 先週が年度の切り替わる週だったが、3月31日に「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)は2015年度の運用実績の公表日を今年7月29日に設定した。参院選(または衆参同日選挙)の直後に当たるが、過去5年間はいずれも7月2日から10日の間に公表されてきたことと、昨年度(2015年4月〜2016年3月)の株価などから昨年度の年金資金運用はおよそ5兆円の損失となったと見込まれることから、野党は「公表を参院選後に先送りする『損失隠し』だ」(民進党・井坂信彦議員@衆院厚生労働委員会)などと反発している(以上、4月1日付毎日新聞記事及び4月3日付中日新聞記事を参照した)。

 この件に関して、年金マネーをリスクに晒すとは怪しからんというのは当然であって、たとえば前記中日新聞記事は

GPIFは安倍政権の方針に基づき一四年秋以降、運用資産のうち国債の比率を下げる一方、株式投資の比率を倍増させたが、中国経済の減速などに伴う世界的な株安もあり、裏目に出ている。変動の大きい株式を主軸に年金を運用する政策の是非が問われそうだ。

と書いている。

 ここで「一四年秋以降」とあるが、安倍政権が株式投資の運用比率倍増を行わせるのを決定したのは2014年8月だ。この頃、安倍晋三が何をやろうとしていたかというと、それは衆議院の解散・総選挙である。つまり、安倍晋三は衆院選に自民党を勝たせるためだけに株価を引き上げようとしたということだ。そしてその狙いはまんまと当たった。

 2014年当時の安倍晋三は、目先の衆院選に勝つことしか頭になかった。その後2015年4月に日経平均株価が2万円を超えた頃をピークにして株価は下落に転じたが、そうすると今度は運用実績を隠そうというわけだ。あまりにもわかりやすい。

 安倍晋三が来月「決断」するであろう(実は安倍晋三の本心ではとっくの昔に「決断」済みであるいることは今さら言うまでもないのだが)「消費税率引き上げ延期」も、わざわざスティグリッツやクルーグマンといったアメリカのノーベル賞経済学者(しかもリベラル系)を来日させて、消費税率引き上げ延期の推奨というお墨付きをいただいたりしているが、これもすべて衆参同日選挙に自民党を圧勝させるためだ。そして、衆参同日選挙に自民が圧勝したあとに安倍晋三がやることは決まっている。「憲法改正」(以下「改憲」。もちろん実質は憲法改悪あるいは「壊憲」)である。

 つまり、GPIFの株式運用比率引き上げも、スティグリッツやクルーグマンを来日させたのも、すべては改憲のためである。そして、安倍晋三がなぜ改憲に執念を燃やすかというと、それは「敬愛する(母方の)祖父」・岸信介がやろうとして果たせなかったことだからである。

 辺見庸は安倍晋三を「知的劣等感のかたまり」と評し、

A(安倍晋三=引用者註)の顔のばあい、とりわけ「取り返しのつかない仕方で露出している」のは、無知と暴力と嘘と劣等感である。

とまで書くが(『もう戦争が始まっている』,河出書房新社)、本当にその通りだと私も思う。

 「でも、東大法学部で我妻栄と首席を争ったおじいちゃんにもできなかった『改憲』をボクは成し遂げたんだ」。そう言える日に向かってひたすら執念を燃やし続けるルサンチマン(恨みの念。ニーチェの用語では、強者に対し仕返しを欲して鬱結した弱者の心)の塊。それが安倍晋三なのだ。安倍政権の経済政策もGPIFもスティグリッツもクルーグマンも、安倍にとっては自らの野望のための道具に過ぎない。普通国のトップの権力者は国益を第一に考えて行動するものだと思うが、安倍晋三の場合は私怨を晴らすために行動している。そんな安倍から容易に連想されるのは昔のドイツの独裁者だ。

 そんな独裁者のわがまま勝手のために、この国が、そして平和的生存権どころか「平和的」のつかない生存権までもが脅かされる。この理不尽さに怒らなくて良いのか、と思う。

 しかし残念ながらそんなことを考えるのは少数派のようだ。このブログを始めた10年前の2006年、私は「安倍晋三を終わらせる」という意味の「AbEnd」という造語をブログキャンペーンのために編み出したが、それに賛同した当時はリベラルだったブログ運営者の中にも、今では「反・反原発」をこじらせて今や「安倍政権の消極的支持」を言っている者さえいる。「木を見て森を見ず」とはこのことだ。

 安倍晋三に利用されたスティグリッツやクルーグマンを批判する向きもあるが、たとえばスティグリッツが来日した時のプレゼンテーション資料(官邸による和訳はこちら)を見れば、スティグリッツの本意はわかるはずだし、スティグリッツは各国の政府に向けて同様の講演をして回っているらしく、それをまとめた本の和訳『スティグリッツ教授のこれから始まる「新しい世界経済」の教科書』(徳間書店)を昨日買ってしまった。スティグリッツのプレゼン資料の和訳に、参照資料としてこの本が挙げられていたからだ。

 本はまだ1ページも読んでいないが、リベラル・左派が撃つべきはスティグリッツやクルーグマンではなく安倍晋三であることは当たり前だ。

 皆の衆、もっともっと怒れ、安倍晋三を倒せ!と、アジテーションで始める新年度なのであった。