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きまぐれな日々

 安倍政権の独裁がどこまで続くか見通しが得られなくなり、坂野潤治氏が言うところの「崩壊の時代」がいよいよ暗さを増してきた今日この頃だが、特に感じるのは「言論の萎縮」である。

 たとえば『週刊新潮』に30年前の下着泥棒の疑惑を書き立てられた高木毅すら、未だに大臣の座に居座っている。

 私が思い出すのは、1989年に『サンデー毎日』に女性スキャンダルを書き立てられた宇野宗佑であって、同年7月の参院選に自民党が惨敗したことだ。当時宇野のスキャンダルに国民は憤激し、内閣支持率は暴落した。それに対し、高木毅の大臣就任を含む第3次安倍内閣の改造で、呆れたことに内閣支持率は上昇している。例えば朝日新聞の調査(10/17, 18)では安倍内閣の支持率は41%であり、4割の大台を回復してしまった。

 「強きになびく」ことを行動原理としてイキがっている情けない国民も増えた。高木毅の一件を報じた朝日新聞記事についた「はてなブックマーク」を見てそう思った。以下コメントをピックアップする。

shinjukukumin 30年前、しかも捕まったとか訴えられたじゃなく週刊誌で報じられたことねえ…。「そんなこと知らん」で済ませていいんじゃないか。

anetah0 時効は国家権力が昔の罪を利用して、今不都合な人間を逮捕しないよう抑止する効果があると思うが、大衆が馬鹿なら時効が過ぎても罰を与えられるので意味無いね。

znd 30年前なら時効だし有罪なら罪は償ったのだろうし無罪ならなおのこと追求する話ではない。朝日新聞をはじめ、こんな下衆な話題で鬼の首を取ったように喜ぶ人たちは本当に情けないし、はしたない。

TakamoriTarou 現在59歳で、30年前は29歳。罪は償ってんでしょうし、はっきり言ってどうでもいい。


 上記のブックマークコメントがつけられた朝日新聞記事は下記。
 http://www.asahi.com/articles/ASHBJ3K7SHBJUTFK004.html

復興相「お答え控える」 30年前下着窃盗と週刊誌報道
2015年10月16日19時24分

 高木毅復興相は16日、週刊新潮などの週刊誌で高木氏が過去に女性の下着を盗んだことがあると報じられたことについて、記者団に首相官邸で事実関係を問われ、「今日はそういった場所ではございませんので、お答えを控えさせていただく」と述べた。

 週刊誌は、高木氏は約30年前、地元の福井県敦賀市で、当時20代女性の自宅に侵入し、下着を盗んだと報じている。記者団は「事実かどうか」とさらに質問を重ねたが、高木氏は答えなかった。

 高木氏は7日に発足した第3次安倍改造内閣で初入閣した。若松謙維・復興副大臣は16日、福島県庁で記者団に「詳しいことは聞いていないし、かなり昔の話でもある。大臣自身が、政治家として、しっかり説明するのではないか」と語った。

(朝日新聞デジタルより)


 「はてなブックマーク」のコメントに、「罪は償ってんでしょうし」とあったが、事実は、高木は逮捕も立件もされていない。原発に関する暴言で悪名高い、父の故高木孝一・元敦賀市長がもみ消しに走ったと、『週刊新潮』の続報(10月29日号)は伝えている。

 高木毅は、上記朝日新聞記事が出たあと、正式に疑惑を否定したが、最初は記事にあるようにノーコメントだった。否定しなかったということは事実であったと思われる。正直な人なんだろうなと思ったが、同時に頭の悪い人間なんだろうなとも思った。もちろん、閣僚の資質を欠いていることはいうまでもない。実は、高木毅が閣僚にふさわしい人間かどうかこそ問われるべきなのだが、その点で失格だと思うのである。とはいえ安倍晋三の程度とはしっかり釣り合っている(笑)。

 「(笑)」などと書いてしまったが、そんな安倍晋三の批判を人々にためらわせる「空気」が日本中に蔓延している事実は笑いごとではないことは当然である。下記のジュンク堂の一件などその典型例だろう。

 ジュンク堂は、私が高校生の頃、神戸・三宮センター街の地下に店舗があった頃からよく行っていた。数年前に東京に来てからは、数か月に一度ほどの頻度で池袋店に行っている(問題を引き起こしたのは渋谷店だが、東京本店は池袋店)。同店は、神田・神保町の三省堂書店本店1階の新刊コーナーにさえ「ヘイト本」やちきりんのクソ本などがこれ見よがしに置かれている今のご時世にあって、「ヘイト本」もあまり目立たない陳列がされている。いまどき良心が残っている貴重な本屋だと思っていたが、そのジュンク堂ですら「同調圧力」に負けるようになった。

 なお「SEALDs」及び世の「リベラル・左派」が「SEALDs」を無批判で礼賛する風潮に対して、私はこれまであまり書かなかったが、一定の批判を持っている。最近、白井聡だの加藤典洋だの池澤夏樹だのが「左折の改憲」を言い出しており、直近では想田和弘もその流れに乗っかってきているらしいが、改憲派の高橋源一郎(毎月の朝日新聞に載るこの人の「論壇時評」に私はいつもげんなりしている)とつるんでいる「SEALDs」は改憲派と共産党を含む従来の護憲派とのブリッジ役を果たそうとしているように見えるのである。しかしそれは「左」からの「SEALDs」批判論であり(私自身は自分を「左翼」であるとすら考えていないのだが、世間があまりにも激しく右傾化しているので、相対的に「左」になってしまっている)、「右」からの批判に萎縮して「SEALDs」の本を撤去することなど論外であることは言うまでもない。
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 第3次安倍改造内閣が発足し、各メディアによる内閣支持率の世論調査が出ている。

 それによると、内閣支持率は数ポイントの上昇という報道機関が多いが、中には日本テレビのように、「ほぼ横ばい」のところもあった。以下日本テレビのサイトより。
http://www.news24.jp/articles/2015/10/11/04311966.html

安倍内閣支持率39.1% NNN世論調査
2015年10月11日 19:31

 NNNが9~11日に行った世論調査によると、先週、内閣改造を行った第三次安倍改造内閣の支持率は前の月に比べ、ほぼ横ばいの39.1%にとどまった。

 世論調査で安倍内閣を「支持する」と答えた人は前の月から0.1ポイント上昇して39.1%、「支持しない」は前の月と同じ43.0%だった。先週の内閣改造について「評価する」は29.1%にとどまり、「評価しない」は39.5%だった。

 安倍首相が新たに掲げた政策目標「1億総活躍社会」については、「期待しない」が47.6%で、「期待する」の41.3%を上回った。

 また、安倍内閣で最も期待する大臣は石破地方創生相が11.5%で最も多く、岸田外相が5.0%で続いた。初入閣で最も多かったのは河野行革相の3.6%で、全体で5番目だった。

 一方、TPP(=環太平洋経済連携協定)の交渉で、日本を含め12か国が合意した内容については43.9%の人が「評価する」と答え、「評価しない」は33.3%だった。

<NNN電話世論調査>
 【調査日】10月9日~11日
 【全国有権者】2128人
 【回答率】48.5%
 http://www.ntv.co.jp/yoron/

(『日テレ NEWS24』より)


 私はよく覚えているのだが、8年前(2007年)の参院選で自民党が歴史的大敗を喫した直後に発足した第1次安倍改造内閣は、びっくりするほどの支持率の「V字回復」を見せた。Wikipediaによると、改造直前と直後の内閣支持率の変化は下記の通り。

内閣改造後の世論調査では、支持率はやや回復した。各社差はあるものの、支持率・不支持率がそれぞれ大幅に上昇・減少した。

社名   支持率           不支持率
読売新聞 44.2%(12.5ポイント上昇) 36.1%(25.3ポイント減少)
日本経済新聞 41%(13ポイント上昇) 40%(23ポイント減少)
共同通信 40.5%(11.5ポイント上昇) 45.5%(13.5ポイント減少)
産経新聞 38%(16ポイント上昇) 42.9%(21.9ポイント減少)
朝日新聞 33%(26ポイント上昇) 53%(7ポイント減少)
毎日新聞 33%(11ポイント上昇) 52%(13ポイント減少)


 上記の数字は、朝日新聞調査の「26ポイント上昇」など、一部真偽が疑わしい記載もあるが、古い世論調査の結果はたいていリンク切れになっていて調べにくいので、そのまま引用した。

 当時私は地方紙を取っていたので、接したのは共同通信の世論調査結果だった。共同調査では、第1次安倍内閣の支持率は29%から40.5%に11.5ポイント上昇したが、調査前後の支持率の差は有意差といえる。これを見て、「ありゃ、これじゃ安倍政権が続いてしまうじゃないか」と落胆していたところに、安倍晋三の突如の辞意表明があって狂喜乱舞したものだった(笑)。

 8年前には、参院選であれほど安倍政権に厳しい審判を下しておきながら、内閣が改造されるや一転して内閣支持率が激増するほど、民意の振れは大きかった。今回は、内閣が改造されてもせいぜい5ポイントの支持率上昇か、日テレのように横ばいになっている。

 政治そのものが信用されなくなっているのである。むろん、民主党政権の大失敗の記憶が人々の記憶に新しいためだ。だから、あれほど不人気な安保法が成立しても、安倍内閣の支持率はなかなか下がらない。今のところ、川内原発再稼働の直後にして「安倍談話」の発表直前というタイミングで行われた毎日新聞の世論調査の32%という数字が、全国をカバーするマスメディアの世論調査による安倍内閣支持率の最低記録になっている。ざっと3割という数字が、安倍内閣支持率の抵抗ラインとなっていて、これを突破して安倍内閣支持率を下げさせるのは簡単ではない。

 とはいえ、今は政権が何か動くだけで内閣支持率をわずかずつながら下げる要因となる。何と言っても日本経済の変調が目立ってきて、景気の諸指標も物価上昇率も下がっている。政権の頼みの綱であり、かつ投機マネーの動向に左右される株価は、このところ乱高下している。

 そこで、動きたくない安倍政権は、あろうことか臨時国会を見送りにしようと画策している。秋の臨時国会を開かなかったことなど過去に前例があるのかと、衆議院のサイトを調べてみた。
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/shiryo/kaiki.htm

 これによると、郵政総選挙のあった2005年(平成17年)に秋の臨時国会が開かれていないが、特別国会(衆議院の解散による衆議院議員総選挙後30日以内に召集しなければならない国会。2005年は9/21〜11/1)が開かれている。さらに遡ると、1984年(昭和59年)に秋の臨時国会が開かれていないが、前年の12月26日に始まった特別国会が8月8日まで開かれたあと、およそ4か月のインターバルを経て12月1日に通常国会が開かれている。どうやら、この時あたりに遡らなければ前例は見出せなさそうだ。

 あろうことか、自民党の首脳は、臨時国会について「みんな疲れているから、できればやりたくない」などと抜かしているらしい。白を黒と言いくるめて批判を浴びたから気疲れはしたに違いないが、安倍政権や自公はただひたすら論戦を逃げまくりながら強行採決で押し切っただけであって、「疲れたからやりたくない」などというふざけた言い抜けには怒り心頭に発する。

 もっとも野党も野党である。憲法53条に基づく開催要求を野党はなぜやらないのかという批判が出ているが、それに答えた枝野幸男のコメント(読売新聞記事)はいかにも歯切れが悪い。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/20151011-OYT1T50032.html

枝野氏、憲法53条使い臨時国会召集の要求示唆
2015年10月11日 12時04分

 民主党の枝野幹事長は10日、政府・与党が秋の臨時国会開催の見送りを検討していることに関し、憲法53条の規定を使い、召集を迫る考えを示唆した。

 前橋市内で記者団に対し、「あまりにも後ろ向きなら(憲法53条を)使うことも視野に入れている」と語った。

 憲法53条は、衆院か参院のいずれかの4分の1以上の議員が要求した場合、内閣は召集を決定しなければならない、と定める。衆院勢力上、民主党(72人)と共産党(21人)に、分裂状態の維新の党から26人が加われば、4分の1に達する。

(読売新聞記事より)


 こんな当然の要求をするのに、なぜ枝野幸男、というか民主党はこんなに腰が引けているのだろうか。

 この件に関しては民主党だけではなく共産党の本気度も疑われる。国民連合政府などと言い出すくらいなら、自ら音頭を取って臨時国会召集を求めて動くくらいのことはしても良さそうなものだという指摘もあるが、私もそれはもっともな意見だと思う。

 なんでも、最近、『しんぶん赤旗』に小沢一郎が登場したとかしないとかいう話があるようだ。少なくとも共産党と「生活の党と(以下略)」とが急接近していることは確からしく見える。それはそれで別に構わないが(「生活の党と何とやら」にも数合わせに必要という程度の存在意義くらいはあるだろう)、それは最近一部で危惧される「共産党の右傾化」につながるものではないかとの疑念を拭えない今日この頃なのである。