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きまぐれな日々

先々週(2/10)の記事「東京都知事選、宇都宮健児と細川護煕がダブルスコアの敗北」に、数日前(20日)にこんなコメントをもらった。

http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-1334.html#comment17710

天皇、小泉、米国といったちょっと前まで批判の対象だった存在に無批判に依存するような姿勢が出ていることに危惧を感じる。戦争云々については「安倍晋三が中国と戦争しようとしている」というが、こういう時に中国側の意図がどうなのかについて言及がないのが疑問だ。たとえば、中国があらゆる犠牲を払っても尖閣を奪取しようと決意を固めているのか、実際は国内向けであってそんな意図がないのか、さらに日本にとっての尖閣の価値はどれほどか、によって日本の対応の評価も違ってくるのではないか。

私はといえば中国の東シナ海での脅威はかなり誇張されていて、双方首脳とも武力衝突の意図はさらさらない中で、安全保障のジレンマに陥っている感を持つ。要するに領海侵入の処理と「領土問題の有無」という点についてのメンツの張り合いであって、これさえ処理できれば関係は改善しうる。現場は双方とも極めて抑制されており、衝突に至ることはなくある程度の時間をおいて緩和に向かうだろう。

ある程度のスパンで考えるなら、やはり日米同盟のリスク要因のほうが大きい。米中の(様々な)軋轢に「巻き込まれる」危険のほうが大きいと考えるからだ。米国への警戒感が薄れていることが疑問。地政学的な要因を視野に安全保障を考えなおすことが必要。

2014.02.20 18:11 優木


小泉純一郎が応援した細川護煕と、細川を応援した「リベラル」たちを批判したエントリに、なぜこんなコメントがつくのか理解不能だが、おそらくこのコメントは、当該エントリにではなく、コメント主が投稿してきた20日に書いた『kojitakenの日記』の記事「安倍晋三のブレーン・本田悦朗もWSJで火に油注ぐ」へのコメントなのだろう。「安倍晋三一味の暴走はとどまるところを知らない」という文章で始まるその記事に、私はこう書いた。

 先の都知事選で、脱原発派の候補を細川護煕に一本化せよと叫んで人々を辟易させたさる有名ブロガーがいるが、トンデモの多いこのブロガーの主張にあって、数少ない納得できる指摘が、「宇都宮健児やその支援勢力は「安倍政権は日本を『アメリカとともに戦争できる国』にしようとしている」というが、それは違う。安倍晋三は中国と戦争を起こそうとしている」というものだ。さらに言えば、アメリカの戦争に日本が巻き込まれるのではなく、日本の(中国との)戦争にアメリカを巻き込もうとしている。だからアメリカが強く警戒するのだ。


「日本が中国と戦争を起こそうとしている」というのは、目新しい指摘でもなんでもない。石原慎太郎が以前からそれを狙っていたことは、たとえば豊下楢彦著『「尖閣問題」とは何か』(岩波現代文庫,2012)が指摘している。

岩波書店の宣伝文から引用する。

 たとえば,石原慎太郎氏がなぜこれほど尖閣問題にこだわった狙いとは何であったかが分析されています.そして日本と中国の対立が生じている中で,アメリカが実に曖昧な態度を取り続けているその真意とは何かが徹底的に抉り出されています.また日本政府の主張にある「尖閣諸島は日本固有の領土である」という主張が,実は極めて危うい論拠に立っていることも白日のもとにさらしています.そして尖閣問題だけではなく,「北方領土」問題や竹島問題も視野に収めた上で,いかにして領土問題の戦略的解決を図っていくかが構想されています.
 何としても日中両国の軍事衝突を避けなければいけないという思いで,著者はこの問題がはらんでいるあらゆる問題群に眼を配り,歴史をふりかえり,未来への提言を行っています.尖閣諸島問題について,どんな意見をお持ちの方であっても,本書から大いに刺激を受けていただくことが可能だと思っております.


石原慎太郎の狙いとは何か。豊下氏の『「尖閣問題」とは何か』から引用する。

(前略)「本当はね、国が買い上げたほうがいいんだけれど、国が買い上げると支那が怒るからね」と語っているのである。つまり、尖閣諸島の「国有化」が中国の大きな反発を引き起こすであろうことを十分に織り込んだ上での購入方針の提起であった。

 つまり、東京都による尖閣購入をうちあげ、次いで政府をして「国有化」せざるを得ない状況をつくり出し、日中関係の緊張を激化させようという訳である。それでは石原氏は、より具体的に、いかなるシナリオを描いているのであろうか。例えば二〇一〇年九月の中国漁船の領海侵入事件をめぐって同氏は、「つまり、本当の軍事紛争にはならない。軍隊まがいの人間がきて、ああいうこと(船長の逮捕)をしても、捕まえるのも(海上)保安庁だった。あれは軍隊が出て行って追っ払ったらいい。それでそれが軍事紛争になるなら、アメリカが、もっとそれを拡大したら踏み込んでこざるを得なくなる」といった見取り図を披瀝しているのである(『田原総一朗 談論爆発!』ニコニコ動画、二〇一一年五月一七日配信)。

 要するに、海上保安庁が対応しているだけでは軍事的緊張状態が生まれにくいから、自衛隊を前面に出すことによって軍事紛争を引き起こし、米国が軍事的に介入せざるを得ない状況をつくりだそう、ということなのである。だからこそ、彼が主導してきた「たちあがれ日本」はその「政策宣言」(二〇一二年七月四日)で、「尖閣諸島への自衛隊の配備」を最優先課題においているのである。このように、石原氏にとって尖閣問題は今や、その「防衛」というよりは、中国との関係をひたすら悪化させて軍事紛争の勃発を導く「引き金」として位置づけられているのである。

 二〇一二年八月一五日に香港の活動家が魚釣島に上陸する事件が起こった時に石原氏は、「首相が自分で行ったらいいよ。尖閣諸島に。野田(首相)が行ったらいいんだよ。私は首相がこの段階になって行かないのは怠慢だと思うけどね」と強調したが、韓国の李明博大統領による竹島訪問が引き起こした衝撃を考えるとき、「野田首相による尖閣訪問」がいかなる事態を引き起こすか、同氏の狙いが透けて見えるというものである。

 いずれにせよ、日本と中国の軍事紛争に米軍が出てこざるを得ない状況をつくり出すというシナリオを描いているからこそ、石原氏はワシントンの財団で尖閣購入をぶちあげ、後に触れるように米国の有力紙に「支援」を求める公告を出したのであり、だからこそ久場島や大正島がおかれている「屈辱的な現実」には一切触れようとしないのである。

 とはいえ、日本が尖閣諸島をめぐって中国と戦争するとき、果たして米国は日本を軍事的に支援するのであろうか。人も住まない小さな島々のためには米国は中国と戦争をするべきと考えるのは、石原氏が講演したヘリテージ財団に象徴される、イラク戦争を主導した好戦的で対中強硬派の勢力しか存在しないのではなかろうか。つまり石原氏は、中国との関係をひたすら悪化させるパフォーマンスには長けていても、その後の戦略的なシナリオを欠落させているのである。

(豊下楢彦『「尖閣問題」とは何か』(岩波現代文庫, 2012年)94-96頁)


石原慎太郎らの思惑は上記の通りであるとして、それでは安倍晋三はどうかといえば、安倍はもともとは石原のようなドス黒い考えを持っていたわけではなく、単に「偉大なおじいちゃん」岸信介を信奉しているだけのボンボンだったに過ぎまい。第1次安倍内閣発足直後には、おそらく当時のブレーンたちの進言を容れてであろう、安倍晋三は中国と韓国を相次いで訪問し、前任者の小泉純一郎が安倍政権発足直前の2006年8月15日に靖国神社を参拝して決定的に悪化させていた日中・日韓の関係を改善したほどであった。これは、第1次、第2次安倍内閣を通じて、唯一の「善政」であったと私は考えている。

しかし、いかんせん現在の安倍晋三は、北岡伸一をはじめとする好戦的なブレーンたちに「洗脳」され切っている。安倍晋三は、先月行われたダボス会議で、現在の日中関係を100年前の第1次世界大戦勃発直前のイギリスとドイツの関係に聞かれもしないのに自分からたとえてみせ、その発言が当のイギリスを含む世界各国から激しい批判を浴びると、「真意が理解されていない」などといかにも不満そうにしていた。安倍のたとえ話は、北岡伸一たちが日々安倍に吹き込んでいる話だったに違いないことは、容易に想像がつく。従って、現在安倍晋三が考えていることも、前述の石原慎太郎と大差あるまいと推測されるのである。

そういうことを考えていたら、集団的自衛権の政府解釈変更に関して、昨日、TBSの『サンデーモーニング』で寺島実郎が大意以下のような指摘をした。安倍晋三は(北岡伸一らのお墨付きを得て、この4月にも)集団的自衛権の政府解釈変更に踏み切ろうとしているが、これが日本とアメリカが協力して中国に対峙しようという狙いであるのは明らかだ。日本はアメリカにとって「都合の良い存在」ではなくなってきている。先にアメリカが「尖閣で日中の有事が発生しても、米軍はそれに関与しない」と言っていることに注意が必要である、と。

保守の寺島実郎でさえこう認識している。つまり、安倍晋三が日中の有事を起こすことを視野に入れているのは、もはや「常識」なのだ。

最初に紹介したコメントで、「優木」氏は

中国側の意図がどうなのかについて言及がないのが疑問だ。たとえば、中国があらゆる犠牲を払っても尖閣を奪取しようと決意を固めているのか、実際は国内向けであってそんな意図がないのか、さらに日本にとっての尖閣の価値はどれほどか、によって日本の対応の評価も違ってくるのではないか。

と書くが、ここまで述べてきたように、戦争を起こす必要を感じているのは中国ではなく、日本の右翼指導者たち(安倍晋三、石原慎太郎、北岡伸一ら)なのである。中国側の意図の如何にはよらない。

「優木」氏は、

中国の東シナ海での脅威はかなり誇張されていて、双方首脳とも武力衝突の意図はさらさらない中で、安全保障のジレンマに陥っている感を持つ。

と書くが、なぜ安倍晋三に対してそこまで無警戒でいられるのか、私には全く理解不能である。

今や、「日米同盟の脅威」よりも「安倍晋三の脅威」の方がずっと重大なのである。
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