きまぐれな日々

土日をはさんで24日に橋下徹と元慰安婦の面談、27日に日本外国特派員協会での会見がそれぞれ予定された。前者で橋下は大々的な「謝罪パフォーマンス」を行って注目を集める狙いだったと見られるが、元慰安婦の韓国人女性2人に面談を断られた。橋下との面談をキャンセルしたのは賢明な判断だったと思う。

日本外国特派員協会での会見で橋下は沖縄県の在日米軍司令官に風俗業活用を求めた発言のみアメリカに謝罪する一方、旧日本軍による従軍慰安婦をめぐる発言については「誤報だ」と突っぱね、撤回しなかった。以下毎日新聞の記事を引用する。
http://mainichi.jp/select/news/20130528k0000m010087000c.html

橋下氏:会見、言い繕い2時間半 「女性虐待」と質問続出

 日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長は27日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で記者会見した。沖縄県の在日米軍司令官に風俗業活用を求めた発言は「不適切な表現だった」として、撤回して謝罪したが、旧日本軍による従軍慰安婦をめぐる発言については「私が容認していると誤報された」と主張し、撤回しなかった。

 橋下氏の発言を巡り、維新は政党支持率が急落し、参院選を前に厳しい状況にある。橋下氏が発言の意図を説明することで批判をかわす狙いがあったが、会見では厳しい質問が続き、約2時間半に及んだ。

 橋下氏は冒頭、文書を読み上げ、旧日本兵が慰安婦を利用したことについては「女性の尊厳と人権をじゅうりんする決して許されないもの」と指摘。元慰安婦に対しては「誠実な謝罪とおわびを行うとともに、悲劇を繰り返さない決意をする」と強調した。内外から「女性蔑視」「人権侵害」などの批判が相次いだため、元慰安婦への配慮を強調する狙いがあり、「女性蔑視である等の報道が続いたことは痛恨の極みだ」とも述べた。

 しかし、質疑では最初から「多くの女性が虐待された」と慰安婦制度の非人道性への認識を問う質問が出た。橋下氏は「日本の過去の過ちを正当化するつもりはない」と釈明せざるを得ず、「旧日本軍の一定の関与があった」と繰り返した。さらに「外国から(女性蔑視の)懸念をもたれたことには政治家として責任がある」と追及されると「私の今回の発言に対して国民がノーと言えば、次の参院選で維新は大きな敗北になる。その結果、代表のままでいられるのか党内で議論が生じると思う」と責任論に発展する可能性も認めた。

 また、旧日本軍が一定の関与をしていた点についての見解を尋ねられると「今日皆さんに問いたいのは、戦場の性の問題。世界各国は、過去を直視していない」と一般論でかわした。さらに「米英も現地の女性を利用した。ドイツも韓国にもそういう施設があった」と列挙したうえで、「戦場の性の問題は今まさに議論しなければならない」と述べ、一連の発言は世界共通の問題に対する問題提起だったと位置付けた。

 一方で、従軍慰安婦についての政府の公式見解である河野洋平官房長官談話については「否定するつもりはない」としつつ、内容に疑問を呈した。

 橋下氏は「国家の意思として組織的に女性を拉致、人身売買した点を裏付ける証拠はないのが日本の立場だ」と説明し、拉致・人身売買については日韓両国の歴史学者による事実解明を主張。「この核心的論点について河野談話は逃げている。これが日韓関係が改善しない最大の理由だ」と述べ、日韓間の慰安婦を巡る対立は河野談話に起因しているとの主張を展開。河野談話に「表現はもっと付け足さないといけない」と述べた。

 これに対し、河野談話が元慰安婦の証言などをもとにしていることを踏まえ、「元慰安婦の証言は信用できないのか」などと追及されると「最大の論点は人身売買を国家の意思として組織的にやったかどうかだと思う」などと主張し、明確には答えなかった。【阿部亮介、林由紀子】

毎日新聞 2013年05月27日 21時30分(最終更新 05月27日 21時55分)


橋下は、質問にまともに答えず論点をはぐらかしたりしながらも、公然と河野談話の見直しを要求したのである。そのことを見出しで端的に伝えたのが「保守系」とされる時事通信の記事だった。
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2013052700609

参院選敗北なら進退判断=河野談話の見直し求める-橋下氏

 日本維新の会の橋下徹共同代表(大阪市長)は27日午後、東京・有楽町の日本外国特派員協会での記者会見で、従軍慰安婦などをめぐる自らの発言の政治責任について、「国民が『ノー』と言えば、参院選で維新は大きな敗北になる。参院選の結果を受けて、私が共同代表のままでいられるかどうか、党内で議論が生じると思う」と述べ、参院選で敗北した場合、進退の判断を迫られることになるとの認識を明らかにした。
 維新は25日の執行役員会で、「参院選は橋下氏を先頭にして戦う」との方針を確認。橋下氏もこれまで「僕から辞めることはない」としてきた。ただ、一連の発言には内外から厳しい批判が出ており、会見では進退に関して「政治家の責任は選挙で審判を受けることだ」と述べ、参院選の結果を踏まえ、決断する意向を示した。
 一方、従軍慰安婦問題への旧日本軍の関与を認めて謝罪した1993年の河野洋平官房長官談話については、「国家の意思として女性の拉致、人身売買があったか、なかったか、きちんと明確に表現すべきだ」と述べ、強制性の有無に関して見直しを求めた。その上で「日韓共同で歴史学者に事実を確認してもらいたい」と語った。
 橋下氏は「河野談話は政治的に妥結した文書だ」と指摘。談話作成の際の根拠とされた慰安婦の証言についても「信ぴょう性にはいろいろ議論がある。合理性に疑問があったという(元政府高官の)発言も聞いている」と述べた。

(時事通信 2013/05/27-17:25)


橋下は(アメリカの批判を受けて)安倍政権が「河野談話」踏襲へと方向転換したことを不服として「慰安婦発言」を行った。これが騒動の本質である。橋下は同じ会見で自らを「極めてオーソドックスな立憲主義の立場を採る者」だなどと称しているが、これはリベラル派をたぶらかすための「毛ばり」に過ぎない。例によってこの毛ばりに引っかかって「橋下くんは『超保守』とは違う、ふつ〜の保守だ」などと言い募る人がまた現れるに違いないが、現時点では「(村山談話に加えて)河野談話も踏襲する」方針をとる安倍政権を橋下が「右から」批判している構図なのである。この論点を見逃して橋下の言葉に騙されてはならない。安倍晋三の本心が橋下と同じであることも忘れてはならないけれども。

もっとも橋下の狙いは当たりそうにもない。橋下は自らの妄言が批判された直後には、「アメリカの圧力に屈する自民党」を批判して、最近孫崎享らの煽動によって増えてきたと見た「反米保守」「反米右翼」の支持を取り付けようとしたが、いっこうに橋下への支持が広がらないと見るや、アメリカにのみ謝罪し、国内向けには引き続き河野談話否定論に立つという戦略に変更した。もちろん「アメリカに屈した」として自民党を批判した発言は、橋下自身を直撃するブーメランとなった。

思うのは、少し前なら何を言っても支持された橋下が、今では何を言っても批判されるようになっていることだ。この流れはもう変わらない。今回の日本外国特派員協会での会見でも、「橋下は鎮火に失敗した」というのが一般的な評価になっている。

橋下は、「参院選で敗北すれば進退を判断する」と言っているが、参院選での「日本維新の会」の惨敗は確実である。現時点でもう公認を辞退して立候補を取りやめたいとする者も出ている。今朝の新聞に出ていた『週刊朝日』の公告を見ると、日本維新の会の予想獲得議席はわずか4議席(自民68議席、民主20議席)となっている。少し前には二人区の選挙区で維新が食い込むかもしれないと恐れていたが、どうやらそうはなりそうにもなく、選挙区で維新が獲得できるのは大阪の議席だけかもしれない。

かくして予想されるのは、参院選惨敗を受けた橋下の「日本維新の会」共同代表辞任であり、それに伴って党名も「太陽の党」または「たちあがれ日本」に戻されるのではないか。気の早い予想だが、私は石原慎太郎も遅かれ早かれ議員辞職すると見ている。石原にとっては「泡沫政党の党首」など屈辱以外のなにものでもないからだ。石原はその屈辱を回避するために「たちあがれ日本」時代には国政に復帰せず、橋下と組めることが確定して初めて国政に復帰したのである。

以上の予想が当たれば、「日本維新の会」は衆議院に余剰な議席を抱えた泥舟政党になる。前回衆院選前の民主党及び「国民の生活が第一」(現「生活の党」)と同じである。現在の「日本維新の会」には旧泥舟である民主党から逃げ出した人間が少なからずいるが、再びみっともなく維新の会から逃げ出すだろう。今度彼らが狙う受け入れ先はおそらく自民党だろうが、そうは問屋が卸してくれるだろうか(笑)。
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前回の記事のタイトルは「安倍と橋下が企んだ憲法96条先行改定の状況は一変したが」だったが、記事を公開した数時間後に飛び出した橋下の「慰安婦は必要だった」という妄言が先週の政界を塗りつぶした。

当日問題になった橋下の妄言は2つあって、最初は13日付の『朝日新聞デジタル』から引用すると、

 日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長は13日、戦時中の旧日本軍慰安婦について「銃弾が雨嵐のごとく飛び交う中で命をかけて走っていくときに、精神的にも高ぶっている猛者集団をどこかで休息させてあげようと思ったら、慰安婦制度は必要なのは誰だってわかる」と述べ、慰安婦は必要だったとの認識を示した。大阪市役所で記者団に語った。

というもの。もう1つが、同じく13日付の『MSN産経ニュース』を引用すると、

 日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長は13日夕、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)を視察し同飛行場の司令官と面会した際に「もっと日本の風俗業を活用してほしい」と促していたことを明らかにした。「風俗業を活用してもらわないと、海兵隊の猛者の性的なエネルギーをコントロールできない」と伝えたというが、司令官は「米軍では禁止されている」などと取り合わなかったという。

というもの。

これらの橋下の妄言は、直ちに全世界に報じられ、アメリカや韓国、中国のみならず、全世界が橋下を指弾した。この件に関する海外の報道を毎日新聞の和田浩明記者がリンクを張って紹介したTwitterのまとめサイトがある(下記URL)。
http://togetter.com/li/502855

これで橋下徹と大阪市の悪名は全世界に広まった。

ところで、この件に関して当ブログの前回の記事にこんなコメントをいただいている。
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-1302.html#comment16445

一連の歴史問題騒ぎは、危機管理のお手本かと皮肉りたくなるくらいの素早い収拾ぶりと、自民党らしからぬ(?)「言論統制ぶり」で苦笑しましたが、今回積極的に動いた官房長官や幹事長のような人を、首相が参院選後に「うっとおしい」と考えて遠ざけたりするかどうかが、この政権が長く続くかの試金石になる気がします。あと高村副総裁とかもね。たとえば、高市早苗なんかが官房長官、幹事長だったらもっと厄介なことになっていたでしょう。それにしてもその後にあの橋下発言が出てくるあたり、政権も悪運が強いというかなんというか。

2013.05.15 15:40 串間


上記毎日新聞・和田浩明記者のTwitterのまとめサイトについた「はてなブックマーク」にも似た趣旨のブクマコメントがついている。
http://b.hatena.ne.jp/entry/togetter.com/li/502855

natumeuashi 政治 第二次安倍内閣は発足のタイミングといい、アベノミクスとアメリカの景気回復のタイミングといい、非常に時の運に恵まれた印象があるが、今回の件で自身の歴史認識についての危機も回避できそう。おそるべき強運。 2013/05/15


これらのコメントをした人は、おそらく「穏健保守派」に属する人(たち)であって、現実主義者を自任して気の利いたことを言ったつもりなのではないかと推測する。しかし、それは全く根拠のないトンデモ楽観論だった。なぜなら、毎日の和田記者が紹介したリンク先の記事を見ると、その多くは橋下の妄言を安倍晋三の歴史修正主義発言と関連づけているからだ。そもそも、橋下が上記のような妄言を発したのは、安倍晋三に援護射撃をしようという意図があったことは明白である。海外メディアの記者の多くは安倍晋三には関心があっても橋下徹には関心が低かったと思われるから、橋下の発言を安倍晋三の歴史認識に結びつけるのは当然の発想である。

そもそも、どうして橋下が「慰安婦は必要だった」と妄言を発したら、安倍晋三の歴史認識問題を世界が忘れてくれると思ったのだろうか。国内のメディアの報道ではそれは当然なのだけれども、総理大臣である安倍の名前は知っていても大阪市長にして野党第二党の共同代表に過ぎない橋下については詳しくない海外のメディアが、橋下が起こした騒動で安倍晋三の歴史認識問題を思い出すことこそあれ、安倍の問題から目をそらされてしまうことなどあり得ないではないか。そのくらいは、少しでも現実的な想像力を持ち合わせていればすぐにわかるはずのことだと思うが、それがわからない。これが日本の「現実的保守主義者」を自任しているであろう人間の想像力なのだ。

橋下の妄言に対して特に厳しかったのはアメリカの反応だ。米国務省のジェニファー(ジェン)・サキ(Jennifer Psaki)報道官の発言はきわめて辛辣だった。共同通信の報道から引用する。

橋下氏発言は「言語道断で不快」 米報道官が初批判

 【ワシントン共同】米国務省のサキ報道官は16日の記者会見で、従軍慰安婦は必要だったとした、日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長による発言について「言語道断で不快だ」と非難した。

 橋下市長の発言をめぐっては、在日米軍に風俗業者の利用を求めたことに絡んで米国防総省のリトル報道官が、米軍が買春を拒否するのは「言うまでもない」と述べていたが、米政府当局者が公式の場で正面から批判したのは初めて。

 サキ報道官は従軍慰安婦について「性を目的に人身売買された女性たちの身に起きた出来事は嘆かわしく、とてつもなく重大な人権侵害であることは明白だ」とも指摘した。

(共同通信 2013/05/17 06:18)


このサキ報道官の発言は朝日、毎日など全国紙も報じているが、朝日や毎日は「人身売買された」に当たる部分を「連れて行かれた」と書いていた。某有名ブログの受け売りだが、サキ報道官の発言にあって朝日や毎日が「連れて行かれた」と意訳した "trafficked" は「人身売買された」と訳す方が適切なのだそうだ。朝日や毎日は、意図してのこととはまで思わないが、サキ報道官の発言のニュアンスを弱めて報道したことになる。

さすがに自民党、というより菅義偉官房長官などの切れ者は、このアメリカの反応に震え上がった。少し前に安倍晋三を総理大臣に復帰させた立役者だと朝日新聞に書かれた菅義偉は、総理大臣の安倍晋三をはじめとして稲田朋美や下村博文といったバリバリの歴史修正主義者にも橋下徹を批判するコメントを出させた。上記の「現実主義的穏健保守」を自任しているであろうコメンテーターが、

危機管理のお手本かと皮肉りたくなるくらいの素早い収拾ぶりと、自民党らしからぬ(?)「言論統制ぶり」で苦笑しました

と書いた通りである。一方、その空気が読めなかった(KY)のが政調会長の高市早苗であって、さすがは11年前に靖国問題で田原総一朗に「あなたみたいな下品で無知な人に(議員)バッジをつけて靖国のことを語ってもらいたくない」、「こういう幼稚な人がね、下品な言葉でね、靖国、靖国って言う」と罵倒されて反論できずに泣き出した女だけのことはある。今後、極右政治家として稲田朋美には警戒が必要だが、高市早苗なんかはほっといても勝手に消えていく泡沫政治家に違いあるまい。

記事が長くなったので、以下の追記の部分に、昨年8月に安倍晋三が橋下徹について語った産経新聞記事と、やはり保守系の新潮社の『Foresihght(フォーサイト)』のサイトに掲載された「安倍政権の『歴史認識』は日米間でも『火種』に」を紹介しておく。後者を読めば、

(安倍晋三は)今回の件で自身の歴史認識についての危機も回避できそう。おそるべき強運。

などという全く根拠のない楽観に基づく妄言など吐きようがないことは明白だ。
前回の記事で触れた5月5日の東京ドームにおける長嶋茂雄と松井秀喜の国民栄誉賞授与式で、安倍晋三がプロ野球・読売球団の「背番号96」のユニフォームを着用して始球式に臨むという思わせぶりな憲法96条改定キャンペーンで大はしゃぎしていたのがまるで夢か幻であったかのように、先週はその96条改憲をめぐる状況が一変した。

アメリカが憲法96条改定に異を唱えたのである。

この記事を書くために「アメリカ 96条」や「米国 96条」でGoogle検索をかけても、なぜか大新聞などの記事がほとんど引っかからない。唯一、同一の内容と思われるTBS(東京)と毎日放送(大阪)のニュースが引っかかったが、放送局のニュースサイトの常でもうリンクが切れてしまっている。そこで『kojitakenの日記』に転記しておいたTBSニュースから関連箇所を下記に示す。

(前略)アメリカの議会関係者らが安倍政権側に対し、96条改正に対する懸念を間接的に伝えていたことが明らかになりました。複数の日米関係筋によりますと、連休中に訪米した自民党議員などを通じて、「アメリカは憲法改正について9条よりも96条の改正を一番問題視している」と伝えてきたということです。

 背景には、安倍総理の歴史認識をめぐって中国や韓国が反発する中、憲法改正の要件を安易に引き下げることへの警戒感があるものと見られます。こうした懸念を受け、政府内でも空気が変わりつつあります。

 「憲法は急がなくていい。政権の最後の切り札として温めておいて最後にやる感じでいい」(日本政府関係者)

 「国民的理解をですね、96条についてまだ得られている段階ではない」(菅義偉官房長官)

 安倍総理にとって悲願ともいえる憲法改正に向け、どのような手順を踏んでいくのか、難しい舵取りが迫られそうです。

(TBSニュース 2013年5月9日 16:56)


私は「アメリカ陰謀論」には与しないが、アメリカが日本の政治に大きな影響力を持つことはもちろん認識している。ただ、それを論じる際にはエビデンスがあるかどうかを常に抑えておく必要があると思う。もちろん証拠が見つかっていない謀略は多数あるに決まっているが、それらについて「陰謀仮説」を立てる時には、それが仮説であることを言明する必要がある。そして今回についていえば、アメリカの意向が日本の政治の動向に大きく影響を与えた可能性がきわめて強い例と思われる。

安倍晋三の発言のトーンも大きく変化した。実は、安倍晋三が東京ドームで嫌らしいパフォーマンスをして見せたその日に既に、安倍は96条改憲について慎重な発言に転じていた。
http://www.asahi.com/politics/update/0505/TKY201305050081.html

憲法96条改正「熟議が必要」 安倍首相

 安倍晋三首相は5日、東京都内で、憲法改正の発議要件を緩和する憲法96条改正について「まだ十分に国民的議論が深まっているとは言えない。やはり憲法改正ですから、熟議が必要だろう」と記者団に述べ、慎重に議論を進める必要があるとの認識を示した。

 96条の先行改正に反対姿勢を示す公明党に対しても「丁寧に議論していきたい」と語り、同党に配慮していく姿勢も示した。

(朝日新聞デジタル 2013年5月5日18時46分)


ところが、安倍晋三はこの発言のわずか12日前には、こんなことを言っていたのである。
http://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin/news/20130423-OYT1T00689.htm

96条改正、参院選で堂々と掲げて戦う…首相

 安倍首相は23日午前の参院予算委員会で、憲法改正の発議要件を過半数に緩和する憲法96条の改正について、「7月の参院選でも、堂々と掲げて戦うべきだと自民党総裁として考えている」と述べ、参院選の党公約に明記し、争点とする考えを示した。

 「憲法制定以来、六十数年にわたり、全く(改正に)手をつけていない。96条の改正は、国民の手に憲法を取り戻すことにつながっていく」とも述べ、要件緩和で社会の変化に柔軟に対応する改正が可能になるとの利点を強調した。

 一方、過去の植民地支配と侵略について謝罪した1995年の村山首相談話について、「『侵略』という定義は、学界的にも国際的にも定まっていないと言ってもいい」と指摘。「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り」などとした談話の記述に関しても、「あいまいな点と言ってもいい。この談話はそういう問題が指摘されている」と述べた。

(2013年4月23日17時50分 読売新聞)


安倍晋三が連休中に熟慮して「公明党に配慮して」イケイケドンドンの発言をトーンダウンしたものであろうはずがない。「ご主人様」のアメリカの不興を買ったのでしぶしぶ消極論に転じたとしか考えられない。

実は、憲法96条改定は自民党単独で推進されようとしていたものではない。安倍晋三や内閣官房長官の菅義偉は、橋下徹の「日本維新の会」と共謀して憲法96条改定を参院選の争点にしようともくろみ、公明党には踏み絵を踏ませようとしていたのである。4月9日に橋下徹はこんな発言をしていた。
http://mainichi.jp/select/news/20130410mog00m010003000c.html

橋下徹氏:「参院選、憲法改正を争点にしたい」

 「参院選は憲法改正が大きなテーマになる。僕はこれを争点化したい。96条改正をテーマにする」

 9日午後に開かれた維新の憲法調査会で橋下共同代表は明言した。実は菅官房長官が7日、福岡市で同趣旨の発言をしており、今回の会談の地ならしとの見方がある。

 「参院選に向けた野党の共闘にくさびを入れる」(安倍政権のブレーン)との狙いもあった96条改正の争点化だが、菅氏らの発言は与党内にも不協和音を生んでいる。

 「衆参の憲法審査会の議論も終わっていない。参院選の争点になるほど熟した議論になっていない」

 公明党の山口那津男代表は9日の記者会見でこう指摘。自民党の脇雅史参院国対委員長も同日の記者会見で「国会議員は単一の争点で選ぶものではない。憲法改正を争点にする話にはならないし、してはいけない」と強調した。

 維新の憲法調査会でも「憲法は国家権力から国民を守るもの。特定の価値を宣言するような思想書的なものではない」との橋下氏の発言に対し、保守色の強い旧太陽の党系の三木圭恵(けえ)衆院議員らが「国民の義務を憲法にしっかり書き込むべきだ」と反論。改正論議の足元が定まっていない実情をうかがわせた。

(毎日新聞 2013年4月10日)


つまり、つい先日までは安倍政権と橋下が息のピッタリ合ったところを見せて、憲法96条改定に突き進もうとしていた。それに待ったがかかった形である。

私はこの1か月ほどは都合によってTBSテレビが毎週日曜日朝に放送している『サンデーモーニング』を見ていないが、それ以前から毎日新聞前主筆の岸井成格が、安倍政権が河野談話や村山談話の見直しをしようとするならアメリカが止めにかかるだろうとの見通しを口にしていた。そして岸井の予想は現実のものとなった。
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201305/2013051000932&g=pol

村山談話「全て踏襲」=菅官房長官、安倍首相答弁を修正

 菅義偉官房長官は10日午後の記者会見で、過去の侵略と植民地支配を謝罪した1995年の村山富市首相談話について「(談話)全体を歴代内閣と同じように引き継ぐと申し上げる」と明言した。
 安倍晋三首相の歴史認識をめぐり、中韓両国の反発に加え、米国にも懸念の声があることを踏まえ、村山談話を「そのまま継承しているわけではない」とした安倍首相の4月22日の国会答弁を事実上軌道修正したとみられる。 
 菅長官は、「侵略の定義は定まっていない」との首相答弁に韓国から反発が起きたことに関しても、「安倍内閣として侵略の事実を否定したことは一度もない。こうした点も歴代内閣を引き継いでいる」と強調した。

(時事通信 2013/05/10-18:47)


さすがにこの件に関しては、マスコミも「米国にも懸念の声があることを踏まえ」とはっきり伝えている。実際、今年5月1日付のアメリカ連邦議会調査局の報告書(下記URL)で、「安倍は日本帝国の侵略とアジア他国民の犠牲の物語(narrative)を拒絶する、修正主義的な歴史観を信奉している」として強く批判されている。
http://www.fas.org/sgp/crs/row/RL33436.pdf

アメリカは、日本がアメリカに従属する軍事同盟国として軍事力を強化するのは歓迎するけれども、歴史修正主義に走るのは許さないという姿勢なのだ。だから、憲法9条だけを改定する分には文句は言わないけれども、大日本帝国憲法みたいなものの復古は認めないのだろう。安倍晋三ら日本の極右政治家たちの歴史修正主義によって東アジアの緊張が高まるとアメリカの国益を大きく損ねることを考えれば、アメリカとしては当然の動きといえる。

ところで、よく「小沢信者」系の人々が、「日中や日韓の関係がこじれて特をするのはどこの国か」などと言って、アメリカが日中や日韓の関係を悪化させる工作をしているとする陰謀論を語ることがあるが(例の「孫崎史観」にも通じる)、これは明白な誤りである。また、前記ほどひどくはなくとも、例えば植草一秀は、「対米従属なのに安倍首相が米国に敬遠される理由」などと題したブログ記事を書いているが(リンクは張らない。興味のある方は直接植草のブログを確認されたい)、そもそも安倍晋三を含む日本の極右人士は、米議会のレポートにあるように、「日本は東アジアの多くを西洋諸国の植民地支配から解放したとして称賛されるべきだ」という思想を持っているのだから、そんな連中が本質的に「対米従属」なわけがないのである。孫崎享や植草一秀らの主張は、実は右翼との親和性がきわめて強い。孫崎享が、かつて南京大虐殺の否定論で名を馳せた歴史修正主義系右翼論客の名を冠した「山本七平賞」を受賞しているのはだてではないのである。「孫崎史観」に惑わされているリベラル・左派がもしいるなら、一刻も早く迷妄から脱するべきだ。

ともあれ、アメリカの動きによって、憲法96条改定の見通しは不透明になった。もしアメリカの圧力がなければなし崩しで安倍晋三と橋下徹がたくらんだ憲法96条改定へまっしぐらに進んでいたであろうと考えると、日本の民主主義の未熟さ、というよりそもそも民主主義など日本には存在しないと言っても過言ではないくらいだと思えて頭痛がしてくる。もちろん本来はアメリカの意向によってではなく、国民自らが安倍や橋下が企む憲法96条改定を阻止すべきである。

今後の選挙についていえば、都議選で日本維新の会が伸び悩み、それが参院選にも影響を与える可能性があるが、安倍晋三と自民党の堅調は続き、彼らは都議選も参院選も易々と乗り切るだろう。しかし、その先3年間国政選挙を行わなくても良い時期に、安倍晋三が「安倍カラー」、つまり歴史修正主義を大々的に打ち出して極右政治を行えるかどうかは怪しくなってきた。そうなると、安倍政権は第1次内閣の時と同様どこかで自壊するのではないかと思われるのだが、それまでに日本の政治・経済・社会にどれくらいのダメージを与えるかはちょっと想像がつかない。本当は参院選で安倍自民党を敗北させるのが一番良いのだが、間違ってもそんな結果にはならず、確実にその真逆の結果になることが予想される。この国の前途には暗い暗い展望しか持ちようがない今日この頃なのである。
今朝は都合によりブログを更新できなかったのだが、前回の記事のタイトルにもした「安倍晋三を批判する言論が絶え果てた」状況に意気阻喪気味のせいもある。

一昨日(5日)に行われた、「国民栄誉賞」にかこつけた安倍晋三の憲法96条改正パフォーマンスは、少し前だったら思いっきり怒り狂った記事を連発したところだったに違いないが、5日6日の『kojitakenの日記』で軽く(?)disったくらいだ。生中継やあれを報じたニュース番組の視聴率がどれくらいあったかは知らないが、私はその映像を未だに見ていない。あまりの汚らわしさに拒絶反応を起こしてしまったのである。

7月の参院選は安倍政権の経済政策と憲法96条改正が争点になるのだろう。前者については、不況期に財政出動と金融緩和を組み合わせた政策をとること自体は、何も総理大臣の名前を冠した経済学であるかのような仰々しいネーミングなど必要ない、普通の政策だろうと思う。しかし、安倍政権は生活保護切り下げに端的に見られるような明白なデフレ政策を打ち出している。安倍政権を批判する側は、まずこういう明々白々に誤った政策の批判から行うべきではないか。

憲法96条の改正に至っては論外で、既に多くの方面から指摘されているように、安倍晋三(自民党)や橋下徹(日本維新の怪)、それに渡辺喜美一派(みんなの党)は、憲法をどう変えたいかを棚上げにして憲法96条の改正に熱を上げている。彼らは憲法改正案の是非は本来国民が選択できる(=国民投票)のに、「3分の2」という高いハードルに阻まれていると言って国民に取り入ろうとしているが、ポピュリズム政治ここにきわまれりの観がある。その代表格が、こどもの日に東京ドームで行われたプロ野球の試合の始球式で、アンパイア役のくせに読売とかいうプロ野球球団の背番号「96」のユニフォームを着て醜悪なパフォーマンスをして見せた安倍晋三だろう。毎日新聞は5月3日の社説で

改憲案は最後に国民投票に付すことから、首相や自民党は、発議要件を緩和するのは国民の意思で決めてもらうためだと言う。こうした主張は、代議制民主主義の自己否定につながる危うさをはらむ。

と指摘したが、その通りだと思う。

なお、今日の記事にはもう少しごちゃごちゃと書き込むつもりだったが、あまりにもこなれていないので止めた。また機会があれば改めて書きたいと思う。この理由によって今日は短くそっけない記事となったが、これにて切り上げたい。