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きまぐれな日々

このところ「一人一票国民会議」の話題がいわゆる「リベラル」系のメディアでかまびすしい。私がアクセスする範囲でも、朝日新聞やTBSの『サンデーモーニング』がそうだし、安倍政権発足後見る習慣がなくなったテレビ朝日の『報道ステーション』も同じらしい。

だが、これらの報道には大きな欺瞞がある。それは、選挙区の区割りばかり言って選挙制度には全くといって言及しないことだ。

どう考えたって、大選挙区の選挙制度にすれば一票の格差は小さくなり、全国1区にすればゼロになるに決まっている。しかし、そういう議論はマスコミではほとんどなされない。まるで「タブー」であるかのように。

大選挙区と相性の良いのは比例代表制だが(他に、候補の得票順に当選者を決める、かつての参議選の全国区の方式がある)、比例代表制というと左翼政党の専売特許であって論外、と思われる風潮もありそうだ。

しかし、現実に一昨年10月、新自由主義系の保守政党である「みんなの党」が「『一人一票』比例代表(ブロック制)」というのを提案している。これをざっと見たが、議員定数を現行の480から300に削減する点を除いて(みんなの党は一院制を主張しているからこれも除いて)よくできた案だ。
http://www.your-party.jp/file/press/111021-01a.pdf

これは、「ブロック制」とはなっているが、「政党票・候補者票を政党得票として全国で合算集計した得票に基づき政党毎の議席各政党内でブロック投票に応じ各ブロックへ議席配分確定(各政党内でブロック投票に応じ各ブロックへ議席配分。各政党内の各ブロック内で候補者票が多い順に議席確定)」としている。

要するに、各党の議席数全体は全ブロック合計の総得票から決め、ブロック毎の議席数は各党の総得票に基づいて配分されるのだ。従って投票率の高いブロックは議席配分数が増える可能性がある。非拘束名簿式だから、名簿搭載順位をめぐって党内で暗闘が生じる可能性もない。非常に合理的な仕組みだ。

みんなの党は、この制度では公明党が有利ではないかと聞かれ、それでも構わないと応じたという。この方式だと、ブロックごとに得票率を競うインセンティブにもなる。地方は総じて都市部よりも得票率が高いが、それが議席配分に反映されるかもしれない。

実は、「一人一票国民会議」はこの案を高く評価していた。「みんなの党 ネット対策本部」というみんなの党のブログの2011年11月3日付エントリ「[画像あり]みんなの党選挙制度改革案を好意的に掲載」に、読売新聞に掲載された新聞広告の画像が出ている。

私は当該番組を見なかったから知らないのだが、テレビに出演して「一人一票」をアジっている「一人一票実現国民会議」の主宰者は、果たして比例代表制の導入を口にしていたのだろうか。また、「一人一票実現国民会議」の発起人・賛同者を見ると、極右と新自由主義者がやたら目立つが、新自由主義者はともかく、極右の諸氏も比例代表制の導入に賛成するのだろうか。聞いてみたい。

また、みんなの党の案とは別に、衆議院ではなく参議院の選挙制度について、公明党と社民党が共同提案を行ったというニュースが昨年(2012年)あった。NHKの報道はリンクが切れているが、2ちゃんねるのログから報道内容をたどることができるので、以下に引用する。

★公明・社民 参院選挙制度の改革案

 参議院の選挙制度を巡って、公明党と社民党は、1票の格差是正のため、
選挙区を現在の都道府県単位から、全国を11のブロックに分けた
「広域選挙区」に変更するなどとした、公職選挙法の改正案をまとめ、
各党に協力を呼びかけることにしています。

 参議院の選挙制度を巡っては、最高裁判所の判決で1票の格差を是正するよう
求められていることを踏まえて、各会派の協議会が今の国会での法改正を
目指して協議を続けていますが、意見の隔たりが大きく、難航しています。

 こうしたなか、公明党と社民党は、比例代表は現状を維持する一方、
選挙区については、現在の都道府県単位から、衆議院選挙の比例代表と同様に
全国を11のブロックに分け、人口に応じて6から22の定員を割りふる
「広域選挙区」とする、公職選挙法の改正案をまとめました。

 両党は、この制度改正が実現すれば、おととしの参議院選挙で
最大で5倍あった1票の格差が2倍以内に抑えられるとして、
各党に協力を呼びかけることにしていて、難航している協議の打開を図りたい考えです。

 ただ、民主党と自民党は、都道府県を単位とした現在の選挙区制を、
原則維持したうえで、選挙区の定員を見直すことで、格差の是正を図るべきだ
という立場を崩しておらず、両党の理解を得られるかどうかが課題となります。

NHK http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120303/t10013450651000.html


このニュースが報じられたのは民主党政権時代の2012年3月3日だったから、「民主党と自民党」という表記になっている。

現在では、民主党は小選挙区制あるいは参院選の一人区のメリットをほとんど受けない政党に転落しているが、海江田執行部はこの期に及んで衆議院の「小選挙区30削減、比例定数50削減」などという妄案を出すていたらくである。まだ小沢一郎の影響が6割ほど残っているようだ。さらにひどいのは、一昨日『kojitakenの日記』であげつらった生活の党であって、いまだに「比例定数80削減」に妄執している。あたかも「『小沢一郎語録』は一言一句違えてはならない」という教義でも存在するかのようだ。同党の望み通り本当に「比例定数80削減」が実現されたなら、間違いなく生活の党は小沢一郎の「劇団ひとり」になるだろう(笑)。

「小沢信者」のブログを見ても、マスコミの報道になびいて「選挙無効判決」が出たぞと形ばかりの記事を掲げるばかりで、選挙制度をどのように変更したいかなどということは一切書かれていない。教祖が唱えた「比例定数80削減」に逆らうわけにはいかないからである。

上記は、私の言う「同調圧力」の一例である。つまり、「小沢信者」グループの内部では、明文化はされていないものの、「小沢一郎に100%盲従しなければならない」という不文律があり、それが成員の行動を縛る。これは極端な例だが、それに類した体質は大なり小なりどんな集団(政治集団に限らない)を持っていると言いたいのだ。だから日本ではわざわざ言論統制を行う必要もない。ついでに言えば、前回のエントリの趣旨は阿部謹也の「世間」の議論から一歩も出るものではない。「世間」という言葉を用いたコメントを一件いただいたが、その方が読解された通りであって、前回言いたかったことはそれだけである。

今回の記事で言いたいのは、今の「一人一票」の議論は定数削減をめぐる議論にしかなっていないが、そういう方向に世論を誘導しようとするマスコミや寺島実郎の議論は論外であって、「小選挙区制」対「比例代表制」の対立構造の議題に転換しなければならないということだ。寺島は昨日のテレビ討論で、今の「一人一票」をめぐる議論について、「少数意見が尊重されなくなる恐れがある」と言いながら、なぜか出し抜けに定数削減を叫び始めた。全く論理がつながって折らず、この人大丈夫だろうかと見ていて心配になったほどだ。また、マスコミ報道の悪例として読売新聞の記事を挙げておく(下記URL)。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130327-OYT1T00248.htm

ここで読売はみんなの党の案について「みんなの党は180削減を主張している」と書くのみで、同党が比例代表制を主張していることは無視している。もちろん朝日新聞も選挙制度を論点にした記事などほとんど載せない。マスコミはどこも、90年代の「政治改革」を推進してきた。

これではいけない。「小選挙区制」対「比例代表制」の議論にしなければならない。「『一人一票』を言うなら小選挙区制廃止・比例代表制実施を」とタイトルに掲げた通りである。蛇足ながら付言すると、橋下徹は小沢一郎と同様に小選挙区制に固執しているが、橋下の妄論も打倒しなければならない。
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