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きまぐれな日々

朝日新聞は確かに昔と比較して大きく変わった。日米首脳会談で日本の首相がアメリカの大統領に冷淡に扱われたのに、それを書き立てなかった。そういう報じ方をするメディアではなくなった。もちろん他紙、たとえばしばしば主に右側の論者に「小朝日」と揶揄される毎日や、安倍晋三を積極的に後押しする論説副主幹・長谷川幸洋がいる東京新聞も似たようなものだろう。

番組冒頭でアメリカの冷淡な対応を言っていたのはTBSのサンデーモーニングだった。ネット検索しても、「記事にできないホンネを集めた脱力系ニュースサイト」と銘打たれた「ニュースの教科書」というサイトに、下記記事が掲載されていたのが目立つ程度だった。
http://news.kyokasho.biz/archives/6571

夕食会も出迎えもなし。日米首脳会談で見せ付けられた日本軽視の厳しい現実

 米国を訪問した安倍首相は、日本時間23日未明(現地時間22日午後)、オバマ米大統領とホワイトハウスで会談した。日本側は、TPP(環太平洋経済連携協定)について「全ての関税撤廃をあらかじめ約束することを求められているわけではない」ことが確認できたとして、早期に交渉に参加する意向を表明した。また日米同盟の重要性についても再確認できたとしている。

 だがオバマ大統領は、今回の首脳会談の開催そのものについて疑問視しているといわれる。当初米国側は開催について難色を示していたが、日本側のたっての望みで会談にこぎつけたという経緯がある。このため安倍首相に対する応対はかなり冷淡で事務的なものになった。

 通常、主要友好国の首脳が米国を訪問する際には、大統領主催の夕食会が開催されることが多い。2011年にドイツのメルケル首相が訪米した際は、大統領夫妻、副大統領がホワイトハウスで直接出迎え、大統領主催のディナーにメルケル首相を招待している。英国のキャメロン首相が訪米した際には、オバマ大統領は大統領専用機にキャメロン首相を乗せ、バスケットボール観戦に招待するというパフォーマンスも見せている。韓国の李明博大統領訪米の際も、ホワイトハウスで夕食会が開催された。

 だが今回の安倍首相の訪問に対する米国側の対応はかなり冷淡だ。安倍首相とオバマ大統領の会談は、ミーティング・ルームでの軽いランチを含めてわずかに1時間30分程度。
 さらに衝撃的なのが、首脳会談後の記者会見である。オバマ大統領はほとんど中身のない社交辞令的なスピーチに終始したが、その後の記者からの質問は安倍首相そっちのけで、米国政府の歳出強制削減問題に集中。見かねたオバマ大統領が「次の質問は安倍首相に向けられることを提案します」と助け舟を出す始末。

 米国における日本の重要度が下がり、日本に対する関心が薄れているというのは、以前から指摘されていたことではあるが、今回の首脳会談はその現実をまざまざと見せつけられる結果となった。
 野田前首相の訪米の際も、会談のテーマや目的などを明確化したいという米国側に対して、日本側は「とにかく会談をしたい」の一点張りで、米国側をあきれさせたといわれている。今回の訪米についても、オバマ大統領との友好関係を強調したい安倍首相が、首相就任前の訪米を無理に打診し、オバマ大統領が一蹴するという事件があった。記念写真の撮影のためだけに相手を利用するような付き合い方をくり返していては、日本への信用は低下するばかりだ。

(ニュースの教科書 2013年2月24日)


安倍はオバマに対し、「原発ゼロ」政策のゼロベースでの見直し、普天間基地の辺野古移設へ向けての埋め立て申請、TPP交渉への参加の意向などを言明した。これを指して、安倍晋三のアメリカへのすり寄りと評する向きもある。

だが私には国内向けの安倍晋三の示威行動にしか見えない。安倍晋三は専ら日本国内を意識して、自らの権力を誇示しようとし始めたのではないか。それぞれ抵抗の大きなこれらの案件を片付けるのは、政権の支持率が高い今がチャンスだとでも思っているかのようだ。私が強く感じるのは、安倍晋三の国民に対する嗜虐性である。

今回は特に原発の話に絞るが、そうそう簡単に「日本を取り戻す」とばかりに原発再推進へと政策の舵を切れるはずがない。たとえば一昨日(23日)、朝日新聞は下記のように報じている。
http://www.asahi.com/national/update/0223/TKY201302230222.html

安全適合の原発、ゼロ 規制委案、再稼働は見通し立たず

 原子力規制委員会が示した新安全基準骨子案に現時点で適合している原発は一つもないことが、朝日新聞の調べでわかった。適合のめどがたっていない原発も東京電力福島第一原発を除く全国16原発のうち、9原発に上った。7月に始まる規制委の安全審査に向けて各電力会社は安全対策を実施したり、準備を進めたりしているが、原発の再稼働は当面できない見通しだ。

 原発をもつ電力会社10社に福島第一を除く全国16原発について、福島原発事故後に着手した安全対策の進み具合をアンケートした。

 国の新安全基準骨子案で必要とされた安全対策で最も整備が遅れているのは、原子炉格納容器のフィルター付きベントだ。すべての原発で未設置だった。工事を始めたのも、東電柏崎刈羽の2基にとどまる。

(朝日新聞デジタル 2013年2月23日20時59分)


こうした原子力規制委員会の動きにヒステリーを起こしているのが自民党の議員や原発推進勢力に属する論者である。例えばノビー(池田信夫)は1月29日のブログ

反原発派に乗っ取られた原子力規制委は、民主党政権の残した負の遺産である。自民党は国会の同意を得ていない田中俊一委員長を初めとする委員の人事を見直し、まともな専門家に入れ替えるべきだ。

と書いて噴き上がっている(笑)。もっともそのノビーでさえ、2月24日のブログでは「核燃料サイクルの経済性は失われた」と書いているが、そもそも原発そのものの経済性が失われている現実をノビーは直視できないらしい。それはともかく、そもそも田中俊一は脱原発派から「原子力ムラの中心人物だ」と批判されながら、民自公の三党合意で強引に決定された人事だ。昨年8月の時点では、これに反対していたのは自民党内では河野太郎だけだった。それを棚に上げて民主党攻撃をしている自民党の国会議員たちには呆れ返る。

原発推進派の前首相・野田佳彦(「野ダメ」)は、政権の原発依存度の長期目標(2030年)の落としどころを当初「10〜15%」にしようとしたものの、結局世論の強い反対などがあって「原発ゼロ」を目指すことを余儀なくされた経緯がある。「脱原発」は選挙では全く票にならないが、原発推進政策をやろうとすると、その都度世論の強い抵抗があるのだ。古くは一昨年夏、現民主党代表、当時経産相の海江田万里が玄海原発の再稼働をもくろんでそれを当時の首相・菅直人に阻まれ、国会で悔し涙を流したことがあった。あれも菅が阻んだというより、世論が海江田を阻んだのだ。東電福島第一原発事故が今なお収束していない以上、再稼働には本来強い抵抗があって当然だ。その意味では、大飯原発再稼働を容認した橋下徹や嘉田由紀子の罪は重い。

「原子力ムラの中心人物」だった田中俊一にしたところで、最終的にはどこかの原発の再稼働を許可したいと考えているであろうことは十分推測されるが、「原子力安全神話」が崩れた以上、原発事故が起きる可能性を想定して安全基準を策定しなければならないのは学者として当然であって、だから「新安全基準骨子案に現時点で適合している原発は一つもない」ことになる。それを理解できない安倍晋三を筆頭とする自民党の議員たちは本当に頭が悪い。

前述のように、安倍晋三はオバマに「『原発ゼロ』政策のゼロベースでの見直し」を約束したが、サンデーモーニングで毎日新聞主筆の岸井成格は「年内の原発再稼働はできないのではないか。政権はそこを甘く見すぎている」と発言するとともに、いずれは自民党政権も前政権の「原発ゼロ」政策を継承せざるを得なくなるのではないかとの見通しを示していた。余談だが、7年前の第1次政権時代、『週刊ポスト』や『週刊現代』をはじめとして政権発足当初から安倍晋三叩きが過熱していた中、岸井成格は安倍晋三擁護のジャーナリストの筆頭格だったが、現在では週刊誌は安倍をほとんど叩かないことなど、えらく様変わりをしているように見える。

原発推進派のノビーでさえ否定的な核燃サイクルも、安倍政権は当然のごとく続けるのだろう。そもそもこの核燃サイクルについては「にわか脱原発」派の認識が浅いらしく、昨年、「脱原発」を掲げているはずの「国民の生活が第一」の国会議員にアンケートをとった時、「継続する」と答えた議員が過半数いて批判を浴びたものだ。核燃サイクルに投入される国費こそ、彼らの大好きな「ムダの削減」の対象として真っ先に槍玉に挙がって然るべきなあのになあと私は思ったものだが、「有権者の人気とりが第一」の彼らにとっては、有権者の関心の低い核燃サイクルなどどうでも良かったのかもしれない。それで選挙に大敗してれば世話はないが(笑)。

そういえば「アベノミクス」とやらの第三の柱は「成長戦略」らしいが、安倍晋三が実際にやろうとしていることは「成長の妨害」である。なぜかというと、安倍は相も変わらず原発を推進しようとしているからだ。現在の日本において、原発に関する技術革新の成果はきわめて乏しい一方、これまで電気自動車用に開発が進められ、今後再生可能エネルギーの比率が高まった時の負荷平準化のためにも欠かせなくなる蓄電池の技術に多くのメーカーが研究開発の投資をしている(先月のブログ記事で取り上げたボーイング787型機のトラブルは、まだ解決されたとはいえないようだが)。そんな時に、国策で原発を推進するなどは、上述の企業努力に水を差す愚行であり、むしろ原発がなければ経営が成り立たない企業など、市場から退出を願うべきなのだ。あのノビーも、相当とんちんかんではあるが、部分的には一面の真実を突いていることを述べている。

だから必要なのは金融緩和ではなく、流通や建設などの部門に残っているゾンビ企業を退場させて、遊休している労働者が新しい職場で働くことを支援するしくみである。政府が雇用調整助成金などの補助金や公共事業によって過剰雇用を温存することは、経済の停滞をまねいてデフレを長期化させるだけだ。

北欧の経験からいえることは、成長率を左右する要因として重要なのは政府の大きさではなく、労働移動の容易さだということである。それを実現する改革の方向としては、アメリカ型のドライな労働市場より、北欧に学んで負の所得税などの社会的セーフティネットを整備し、個人を守って企業を守らないしくみに変えてゆくことが現実的ではないか。これも日本のタコツボ型組織とは相容れないので容易ではないが…


産業別労組の力が強く、最低賃金制はないけれどもそんな制度は必要ないくらいの賃金を労働者が手にしていること、北欧諸国の国民負担率は日本よりはるかに高い反面、現物給付(=社会保険や公的扶助の給付のうち、医療の給付や施設の利用、サービスの提供など、金銭以外の方法で行うもの。間違っても橋下徹が「現物支給」と称するクーポン券配布と混同してはならない)も充実していること、北欧においても労働者の解雇は決して容易ではないこと、それに急激な産業構造の転換には弊害が大きいこと等々が抜け落ちているノビーの議論にはあまりにも難点が多過ぎるが、「個人を守って企業を守らないしくみに変えてゆくことが現実的ではないか」というフレーズにだけは私もノビーに同意する。労働者にしかるべき賃金を払えない企業は、かの国々では淘汰されてしまうが、そうしたゾンビ企業を守ろうとするのが安倍晋三の政策だといえるかもしれない。

第2次安倍晋三内閣のメッキは、これからボロボロと剥がれ落ちていくことになるだろう。
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