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きまぐれな日々

今回の東日本大震災に伴って、福島原発で炉心溶融という、日本初の重大事故が起きた。それも、福島第一原発の1号機、2号機、3号機のすべてで起きた。1号機と3号機で水素爆発が起き、それに先立っては格納容器にある弁を開ける作業を行った。この弁を開けることは、水蒸気とともに放射性物質を大気中に放出することを意味し、日本の原発においては決して起こり得ないとされてきたことだった。2号機はさらに危険な状態にあり、弁を開けられない状態になったため、東京電力は格納容器から水を介さず、期待を直接放出した。この方法だと、水を通す場合に比べて途中で一部の種類の放射性物質が除去されにくくなるという(3月15日付朝日新聞1面記事より)。さらに、2号機で爆発音があり、圧力抑制装置が破損したという発表がなされた。TBSに出ている御用コメンテーターは、1号機や3号機と同様の水素爆発ではないかなどと言っていたが、これが見え透いた嘘であることは素人の私にだってわかる。これは格納容器のトラブルであって、1号機や3号機よりさらに深刻な状況に至ったと見られる。

政府の対応も変わってきた。朝日新聞の報道によると、

菅直人首相は15日早朝、原子力発電所の事故問題などで、政府と東京電力が一体となって情報を入手し、対策を検討するため、東電内に「統合連絡本部」を設置すると発表した。本部長には菅首相、副本部長には海江田万里経産相と清水正孝東電社長が就く。

とのことだ。私はこれまで別ブログなどで、政府が事故への対応を東電に丸投げしているように見えるとさんざん批判してきたが、事態の深刻さを受けて、政府もようやくこのような対応をとったものと見られる。私にいわせれば遅きに失しているけれど。

事態の進行につれて徐々に変わってはきたが、これまでの報道が「大気中に放出された放射性物質の量は、人間の健康に影響を与えるものではない」という説明に終始してきたことは全くいただけない。彼らマスコミは、周辺住民に無用な懸念を抱かせないという大義名分を盾にとっている。それにはもっともな部分もあるのだが、一方で彼らは見え透いた嘘も平気でしゃべる。

たとえば、放射線の被曝量をCTスキャンと比較して、大したことはないと強弁するのもその一つだ。病院でCTスキャンを受けても、それは一回こっきりだが、放射性物質が体内に残ると、人体はいつまでも放射線を浴び続けることになるのである(体内被曝)。つまり、最初に浴びる放射線量はCTスキャンよりずっと少なくても、長い間かけて浴びる放射線の総量は、体内に放射性物質を摂取した場合の方が、比較にならないほど多くなる。だから、セシウムが検出された、つまり「死の灰」が撒き散らされた福島原発の近辺には、今後長い間人間は住めない。チェルノブイリ原発の事故のあと、いまだに炉を中心として半径30kmに住むことが禁じられていることを思い出してほしい。なお、この記事をいったん書き上げたあとの、今朝(15日)の「朝ズバ」で、ようやくコメンテーターから体内被曝についてのコメントを聞くことができた。

あまりに長い間「原発安全神話」にすっかり洗脳された日本人は、原発の危険性に対して鈍感になっている。私がブログで原発を批判する記事を書くと、それじゃ電力供給量が今より20%少ない生活に、お前は我慢できるのかと迫る。なんだ、社民党か共産党かよ、という反応を示す者もいる。だが、社民党や共産党くらいしか原発を批判する勢力がなくなっている現状の方が、よほどおかしい。

東北で地震や津波に遭難して苦しんでいる被災者には目もくれずに、東京の人間は福島原発のことばかり騒いでいる、などとしたり顔で書いているブログもあった。アホか。まだ収束していない今回の原発事故が、格納容器が破損して周囲に大量の放射性物質を撒き散らす結果に至ったら(現にそうなっている可能性が高い)、もっとも大きなダメージを受けるのは、原発近辺に住む人たちではないか。そういう間抜けな文章を書くブログ主もまた東京に住んでいることを私は知っているのだが、この手のブログのお馬鹿な文章を読むにつけ、朝日新聞の方がよっぽどまともな報道をしているよなあと思う。

そう、今回の原発事故について、もっとも的を射た記事を書いているという印象を受けるのは、朝日新聞で環境・エネルギー問題を専門で扱ってきた竹内敬二編集委員の記事なのである。ところがどういうわけか、竹内編集委員の記事は、asahi.comにはなかなか載らない。原発推進の立場と思われる朝日新聞の社論と合わないからなのだろうか。3月12日付に掲載された「地震国と原発 どう共存するのか」と題する記事は、朝日をとっていなかったり、とっていても竹内記者の記事を読まない読者にも知ってもらいたいと思って、『kojitakenの日記』の「東日本大震災で崩れ去った日本の原発の『安全神話』」と題したエントリで、抜粋して紹介した。福島第一原発をめぐる推移は、結局竹内記者の見立て通りに進んだというのが私の感想だ。

3月14日付朝日新聞3面にも、竹内記者による「甘い想定 頼った『最終手段』」と題した記事が掲載されたが、この記事にも教えられるところが多かった。こちらも、asahi.comには見つからなかったので、以下に抜粋して紹介する。

今回の原発事故で、格納容器にある弁を開ける作業が行われたのは前述の通りだが、実はこの弁は、原発の建設時(1号機の場合は1971年)には「日本では炉心溶融は起こらない」として装備されていなかったそうだ。専門家は、もし弁がなければ、格納容器の爆発から大惨事に至った可能性が高かったと見ているとのことだが、この弁は1979年のスリーマイル島原発事故や1986年のチェルノブイリ原発(炉の型が違う)の炉心爆発事故のあとつけられたものだ。それも、フランス、スウェーデン、ドイツ、アメリカなどが次々と弁を取り付けたのに、日本ではその後も「過酷事故は起こらない。対策は不要」とされてきたものを、1992年に原子力安全委員会が「検討が必要」との見解を出したあとになって、ようやく電力会社が「確率はきわめて低いが安全性を高める」として方針を変えたとのことである。東京電力などがもつ沸騰水型炉(BWR)は90年代半ばから弁の設置を始めたが、関西電力などの加圧水型炉(PWR)には弁は作っていないそうだ。

竹内記者の記事の末尾近くで、今回の事故は日本人の原子力への考え方を決定的に変えるだろう、「想定外の」の繰り返しでは片づけられない、と書かれているが、今回の重大事故につながったのは、非常用ポンプを動かすためのディーゼル発電機がすべて津波にやられて動かなくなったためだった。そして、1995年の阪神大震災以降、耐震強度には注意が払われてきた原発も、津波対策は盲点になっているとは、以前から指摘されていたことだった。

たとえば、2010年3月1日付「しんぶん赤旗」の記事「チリ地震が警鐘 原発冷却水確保できぬ恐れ/対策求める地元住民」などがその例だ。この記事で想定されているのは、津波の引き波で海水の取水が不能になるケースで、今回の事故の原因とは異なるが、津波対策が不十分だったこと自体は既に指摘されていたことであって、「想定外」でも何でもない。

原子力に関する事故が起きるたびに、「想定外」「100万分の1しか起こり得ないことが起こった」などと言われるのだが、そういう文句を聞くたびに思う。「100万分の1」とはどんなタイムスパンでの話なのか。原発が稼働している数十年の間を通して一度でも事故を起こす確率が「100万分の1」であったのなら、それは「運が悪かった」ことになるのだが、それは事実とは違うだろう。確率の見積もりが間違っていたのである。それも、原子力推進という国策第一で、安全性をおろそかにしたというのが本当のところだったはずだ。「100万分の1」の事象が何度も起きれば、それは「100万分の1」などではなかったことはあまりにも当たり前であって、要するに、「想定外」の事態が何度も起きたならば、それは「想定できなかった」のではなく、意図的に「想定しなかった」のだ。「想定される事態」を意識的に無視したのだ。

先の戦争の例を引くまでもなく、権力とは、平気で人民を犠牲にするものである。今回の原発事故には、それが悪い形で表れた。

昨日の新聞記事で一番頭にきたのは、毎日新聞に掲載された、「福島第1原発3号機も水素爆発 11人けが」と題された記事の末尾だ。

3号機の燃料は上部約2メートルが冷却水から露出し、このため燃料棒が溶ける「炉心溶融」が続いたとみられ、注水の方法に問題があったことが危機的な状況を招いたという。

などと、事故現場での作業に責任を押し付けるような文章になっている。2号機で弁が開かなくなった事態が起きた件でも、現場の作業を批判するような報道が流れている。

私は、報道が現場の作業を批判するということは、事態が一段と深刻な段階になったことを示すのではないかと憂慮する。事故が起きてからの作業のミスなんかよりずっと大きな責任があるのは、原発の安全神話をうたいながら、実は国策第一で安全性をおろそかにしてきた電力会社、経済産業省、そして自民党時代から民主党に代わってからの今に至るまで続く政権である。

現場で必死に作業をされている方々を私は心から応援するし、その結果、仮に最善を尽くしたにもかかわらず最悪の結果に至ってしまったとしてもやむを得ないとさえ思っている。しかし、電力会社と経産省と政府の責任は厳しく追及しなければならないし、日本は今回の大地震と原発事故を機に、エネルギー政策を大きく転換させなければならない。


(注)この記事は、3月14日深夜にいったん書き上げたあと、3月15日早朝に加筆したものです。3月15日付朝日新聞にも竹内編集委員の解説記事が出ていますが、朝日新聞社には竹内記者の一連の記事をasahi.comに掲載してほしいと思います。
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2011.03.15 08:28 | 東京電力原発事故 | トラックバック(-) | コメント(22) | このエントリーを含むはてなブックマーク