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きまぐれな日々

今日4月16日で、当ブログは開設からまる4年を迎え、今日から5年目に入る。小学生でいうと高学年にあたる。

4月というと、新年度の始まる月でもあるから、いろいろと物思う時期でもある。今は、ブログを始めた頃のことを思い出す。4年前の今頃は、前年の郵政総選挙で自民党が圧勝したあと、その反動でもあるかのように、耐震偽装問題を皮切りに、ライブドア事件そのほか「四点セット」と呼ばれた問題で小泉政権が窮地に追い込まれながら、政権を追及する野党・民主党が「偽メール事件」の失態で自滅し、永田寿康衆院議員(当時、故人)と前原誠司代表(当時)が辞任を余儀なくされたのだった。

ブログ開設一周年の日には、『博士の独り言』という有名右翼ブログとの衝突を「市民メディア」に報じられたことも思い出深い。最初の1年目は「新参者」としての後ろめたささえ感じていたのだが、そのうち「ウェブサイトの寿命は3年」という話を聞くようになった。しかし、昨年4月に当ブログが開設3周年を迎えた時には何の感慨もなかった。その頃になると、当ブログは他のブログとつるむのを止め、わが道を行くようになった。過去4年のブログライフの中で、4年目の前半にあたる昨年4月中旬から10月中旬にかけてが、アクセス数がもっとも多かったし、手応えもあった時期だ。昨年の衆院選と政権交代も、その時期に起きた。

私は、政権が交代すればバラ色の未来が待っているなどとは全然考えていなかったから、いよいよ衆院選という昨年8月には、むしろメランコリックな気分にとらわれていたのだが、政権交代後、政治を語るブロガーたちの熱が徐々に冷めてきている現在の状況は、小泉郵政総選挙のあと耐震偽装問題とライブドア事件で騒然となったあと、偽メール事件で一気に熱が冷めた時期と似ているかもしれない、ふとそんな気がした。

権力者は、何も言われなければ好き勝手なことをやる。政権交代から7か月、長い目で見てやろうや、などと支持者たちが言っているから何もしない。消費税率を4年間上げないと公約して選挙に勝っておきながら、今になってその公約を破ろうとする。

公共サービスを行うためには財源が必要で、消費税率を上げないのであれば、税収を上げる方法を考えなければならないことは当然だ。消費税には逆進性があるから、不況時に消費税率を上げたりすると、人々の懐を冷やすから景気は上向かず、結局税収が増えるどころか減って、政府の財政はさらに悪化する。だから、不況時には景気刺激策を実施して、景気が回復すれば、まず他国と比較して際立って低い個人所得税の課税ベースを拡大し、他の税についても見直しを図る。これが神野直彦教授が委員長を務める税制専門家委員会の考え方だと理解しているし、いたってリーズナブルな考え方だと当ブログは繰り返し書いているのだが、なかなかわかっていただけないようで、普段はまっとうな考え方をされていると私が考えている読者の方からさえ、「所得税率を上げると企業活動に悪影響を与えて景気が悪化するのではないか」などという的外れなコメントをいただいたりする。それほど、財務官僚の意を受けたマスコミのデマ宣伝の弊害は深刻だ。

その最たる例が、『日本がアブナイ!』のmewさんが「た党」と呼んでいる(私は"tattoo"を連想し、同党を支持しそうな怖いヤクザのお兄ちゃんたちの入れ墨を思い出して恐怖に震え上がった)「たちあがれ日本」の与謝野馨であって、この男は口を開けば消費税増税、文章を書けば消費税増税と、消費税率を上げるために生きているような人間ではないかと私は思っている。当然、日本経済にとっては疫病神である。

実際はどうかというと、消費税と比較しても法人税と比較しても、高所得層を主なターゲットにした所得税制の改革が景気に与える悪影響は少ない。志の低い今時の日本の金持ちは、金を貯め込んで消費しないから、むしろ日本経済に悪影響を与えているからだ。

マスコミの嘘宣伝によって、所得税増税で最大のダメージを受けるのは中産階級だなどという誤解がまかり通っているが、神野直彦著『財政のしくみがわかる本』(岩波ジュニア新書、2007年)の68頁に、2004年度の所得階層別に見た所得税の実行負担率が図示されているので、一度目にしていただきたい。年間所得が2500万円以上の層は、2000?2500万円の層と比較して、税負担が低くなっていることが示されている。これは、利子所得、配当所得、不動産所得などが分離課税となって累進ではなく定率の課税になっていることや、株式の売却益については、累進課税も選択できるものの、事実上取引額の1%を払えばよいことになっているなど、「あまりにも多くの所得を分離課税している」ためだと書かれている(前掲書67?69頁)。富裕層は、給与所得よりも前記のようなその他の所得が多いので、分離課税の恩恵を受けて、高所得層ではむしろ逆進的な税制のもと、ぬくぬくと金を貯め込んで、それを使いもしないのである。もちろん、新自由主義全盛の現代社会では、金を貯め込んでおかないと不安だから彼らはそうするわけだ。

以前、消費税増税について聞かれた社民党の福島瑞穂党首が、まずムダの削減からだと言っていた。これは、世間一般で消費税増税に反対する人たちがもっとも多く持ち出す論法でもあるが、政府の公共サービスをも削減する方向に悪用されかねない、というか官僚たちは間違いなくそうしようとする。「た党」の与謝野馨などは、社会保障費の増大に手を打たない民主党政権を批判しているが、社会民主主義を掲げる党の党首が、新自由主義者に利用されやすい論法を持ち出すのは感心しない。菅直人財務相に至っては、消費税増税に積極的な発言までし始めており、論外である。とにかく、民主党と社民党を代表する菅直人と福島瑞穂が戦力として全然計算できないから、消費税増税論者の思うがままの世論誘導が進行している。

一昨日(4月14日)に、税調の専門家委員会が行われたが、産経新聞は「鳩山政権、増税路線に転換?背景に財務省の思惑にじむ」との見出しを打った記事の中で、

菅直人副総理・財務相は13日、「(増税は)必ずしも景気にマイナスではない」と発言したほか、政府税制調査会は14日に学識経験者で構成する専門家委員会を開き、消費税見直しに向けた本格議論をスタートする。

などと書いている。菅財務相の発言は「増税」についてであって、所得税も当然含むのだが、マスコミ的文脈では「増税」とは「消費税増税」を意味する。菅直人のいけないところは、消費税について余分な言及をしたことだ。しかも菅財務相の発言は事実に反しており、橋本政権当時の1997年の消費税率引き上げは、間違いなく景気に悪影響を与え、それが1998年参院選での自民党惨敗、橋本内閣総辞職につながった。

菅財務相発言については菅財務相とマスコミの双方に責任があるが、産経が「消費税見直しに向けた本格議論をスタートする」と書いた税調専門家委員会の議論はどんなものだったか。これをロイター通信が伝えている(下記URL)。
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-14818320100414

以下引用する。

消費税上げの是非で踏み込まず=税調専門家委

 [東京 14日 ロイター] 政府税制調査会は14日午後に開いた専門家委員会で、消費税についての議論を開始した。しかし、終了後会見した神野直彦委員長(関西学院大教授)は、消費税引き上げの是非や幅などは政府税制調査会で決めることで、有識者からなる専門家委員会では「踏み込んだ議論をするつもりはない」とし、消費税上げの必要性の議論は「特にしていない」と述べた。

 焦点のひとつである消費税の使途については、社会保障財源と結び付ける議論は出たが、狭い意味での目的税化を支持する意見はなかった。

 税調会長の菅直人副総理兼財務・経済財政担当相と税調会長代行の仙谷由人国家戦略担当相がそろって消費税増税に前向きの発言をしているが、同専門家委員会では、消費税の使途や逆進性対策など構造問題を中心に議論した。

 使途に関しては、消費税を社会保障財源に充当するということを明確にすべきとの主張が出たが、その場合でも狭い意味の社会保障目的税化を支持する声はなかったという。また、社会保障財源として所得税が好ましいとの意見もあったという。また逆進性対策では、所得税なども含めた税体系全体で検討すべきとの考えや、複数税率、給付付き税額控除などの考え方が挙がったが、いずれも、複雑な納税環境整備が問題点として指摘された。

 消費税引き上げの経済への影響については、経済的に悪影響を及ぼすとの意見があったという。したがって、増税を財政再建と結び付けて議論するのではなく、社会保障の充実と結び付けて議論する必要があるとの意見が出たが、この場合、社会保障の財源としては所得税の方が好ましいとの意見もあったという。

(2010年 04月 14日 23:29 ロイター通信)


神野教授が委員長を務める専門家委員会なら、こういう論調になりそうだと予想される内容だが、私が昨日ネットで見た時、前述の産経の記事とこのロイターの記事が上下に並んで掲載されていて、そのあまりの落差に苦笑した。産経は、何が何でも民主党政権に消費税率を引き上げさせたくてたまらない。たまたま目についた記事が右翼新聞として有名な産経だったが、読売もほぼ同じような記事を書いていたし、消費税増税にかけては朝日や毎日も、読売以上に熱心であることは周知の通りである。だから、税制専門家委員会の議論を事実に即して報じたロイター電が目立つのである。ロイター電が伝える神野教授の言葉は、「消費税引き上げを議論したければ政府税制調査会で勝手におやり下さい。われわれはそんな議論なんかしませんよ」と突き放しているとしか読めない。つまり、政府要人の消費税引き上げ容認発言には、専門家委員会のお墨付きは一切ないのである。

それにしても、まあいったい日本のマスコミというのは何なのだと思ってしまう。マスコミの幹部記者は、実は財務官僚の本音などよく知っている。朝日新聞の経済担当の論説副主幹に、小此木潔という人がいるが、小此木氏が書いた『消費税をどうするか―再分配と負担の視点から』(岩波新書、2009年)には下記のように書かれている。

「消費税を導入したい、引き上げたい、という思いの強さが災いして、直接税を減らしすぎた」―― 表立っては言えない「反省」の言葉を財務省幹部から聞くようになって久しい。消費税を導入し、財源として大きく育てようとする「税制改革」路線が、所得税や住民税に代表される直接税を減らす要因になってしまったというのである。官僚がこうした反省を口にするようになったのは、日本経済がデフレから回復し始めてもなかなか税収が戻らない状況が続いたためでもあるようだ。

(小此木潔 『消費税をどうするか―再分配と負担の視点から』(岩波新書、2009年) 45-46頁)


「論説副主幹」が岩波新書にはこんなことを書いているのに、なぜいつも朝日新聞は社説で消費税増税を求めているのかさっぱりわからないのだが、これが官僚であり、これがマスコミ人なのだろう。そして、官僚にもマスコミ人にもいたってウケの良い政治家だったのが与謝野馨であり、与謝野が「政策通」とマスコミに評されてきたのは、彼が大の消費税増税論者だからだ。財務官僚にとってこれほどありがたい政治家はいない。

なお、所得税率を元に戻すと、それは中所得層を直撃するものになるだろうが、それ以前に行うべきは、神野教授が指摘している分離課税だらけの所得税制の見直しではないかと思う。税収なくしてサービスなしだが、負担はまず高所得層に求め、次いで中所得層に求め、それでも足りない分を消費税増税で補うという順番で増税を行うのが筋ではないか。それを逆順にやろうというのが富裕層の狙いであって、これこそ「階級を固定するためのプロジェクト」であるとデヴィッド・ハーヴェイがいうところの「新自由主義」そのものではないかと思う次第である。


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