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きまぐれな日々

今回のエントリでは鳩山由紀夫首相が暫定税率分の維持を決定したことと、それに絡んで環境税のことを書くつもりだった。だが、それ以前にバカバカしさを感じることが多過ぎて気合が入らない。そこで、せっかくのクリスマスの週末だが、愚痴を書き連ねることにする。

NHKスペシャルで「ワーキングプア」が初めて取り上げられたのが、小泉政権末の2006年。その前年の2005年に、小泉純一郎は「郵政総選挙」に圧勝した。この選挙に向けた自民党のマニフェストには、「郵政民営化なくして、小さな政府なし。」と書かれている。また、同じ選挙のための自民党のパンフレット「改革を止めるな。」の初めの方にある、「小泉改革のめざすもの」の冒頭にはこう書かれている。

小泉改革のめざすもの
■小さな政府をつくります。

「小さな政府」とは、官が民の邪魔をしない政府のことです。
官の組織を小さくして、官が使うお金を減らします。官の規制や許認可を撤廃して、民間が仕事をしやすくします。
小さな政府を実現し、個人が自由に活力を発揮できる社会の中で、新しい技術・サービスを核とした起業・創業を支援します。
そして、経済と産業の国際競争力を強化し、民間主導の経済成長を持続させます。少子高齢化の中でも、国民の負担はできる限り小さく、国民の活力はできる限り大きく。それが小泉改革の目指す「小さな政府」です。


だが、この煽り文句にはウソがある。「小さな政府」とは、国民のために何もしてやらない政府のことだ。なぜ断定できるかって? 「国民の負担はできるだけ小さく」、ということは税収も少ないということであり、これでどうやって政府に金が使えるというのか。

私は、30年前から一貫して「小さな政府」という言葉をネガティブな意味でしかとらえることのできない人間であり、そんな私から見たら、こんな馬鹿なことを堂々と公約する小泉自民党が選挙で圧勝したことは悪夢以外のなにものでもなかった。2005年の総選挙当時から、安倍晋三政権の下で「改正教育基本法」が強行採決によって成立した頃までの1年数か月の政治状況は、今思い出しても背筋の凍るものだった。「小さな政府」を実現し、つまり、政府に金など与えず、民間にすべてを任せればうまくいくというのが新自由主義者の主張だったが、それを実行した結果現出したのが空前の格差社会であり、働けど食えないワーキング・プアと呼ばれる人々の激増だった。

私から見れば戦後日本政治の「谷底」だった「郵政総選挙」の直後、2005年末の耐震偽装問題や翌年前半のライブドア事件、村上ファンド摘発など、早くも変化の兆しが見られ、それがいつしか大きなうねりとなって、2007年の参院選では安倍晋三率いる自民党が大敗した。そして、ついに今年には政権交代に至った。しかし、鳩山政権が暫定税率の撤廃を断念し、「子ども手当」に所得制限を設けないことを決定するや、それまで熱に浮かされたように民主党支持の旗を振っていた人たちの一部が、政府批判に回る構えを見せるようになった。

私などは最初から民主党政権に対しては是々非々なのだが、ちょっとでも「増税」の匂いを嗅ぐと、パブロフの犬みたいに条件反射してキイキイ反対するのを見ていると、うんざりしてしまう。彼らは、結局小泉純一郎の言う「小さな政府」を支持しているのだろう。そういえば、一部左派ブロガーたちの教祖・植草一秀が理想とするのは「良い小さな政府」らしい。「良い小さな政府」が何を意味するのか、私にはさっぱり理解できない。結局人々は小泉構造改革の失敗の原因を何も理解してなくて、同じ失敗を何度も繰り返すのだろうなとしか思えない。

歳入なくして歳出なし、歳出なくして格差是正なし、などというのはあまりにも明白なことなのだが、それにも気づかないらしい。いや、気づいたところで、増税といえば消費税しかないようなマスコミの刷り込みに騙されてしまう。テレビでは年収が億単位のテレビキャスターたちが、入れ替わり立ち代わり、「国債残高がこんなにあります。そろそろ消費税の議論を国民的にしなければならないのではないでしょうか」などと、ソフトな口調で語る。それを、国民の約半数が真に受ける。上流階級に属しているわけでもないのに、累進的な増税を嫌って逆進的な増税を受け入れる人たちの理性と感性が、私には理解不能なのだ。あるいは「人生は修行だ」という信念でも皆さんお持ちなのだろうか。

暫定税率分の維持が決まると、民主党も自民党と同じだなどと言うのだが、左側では与党・社民党も野党・共産党も暫定税率の代わりに環境税の導入を求めているし、右側では「小さな政府」論をとる「みんなの党」でさえ、環境税の導入を先の総選挙でのマニフェストにうたった。環境税にもっとも強く反対しているのは経団連である。そんなことは、これまでに何度書いたことか。

地方では車がなければ生活できないとの声もあるが、その一方で地方では年々公共交通網が猛烈な勢いで衰退していっていることは、当ブログで何度も指摘した。運転に適さなくなった年代のお年寄りとか、大都市より地方に多い貧困層にとって、公共交通網の衰退は大きな問題だ。それに、温室効果ガス25%削減の中期目標を掲げた鳩山首相が暫定税率分の撤廃をするのであれば、政策に整合性がとれない。だが、それよりも何よりも、税金といえば反射的に反対という単細胞ぶりがいけない。税収がなければ、どうやって格差是正のための再分配というか政府支出が可能なのか。減税が善で増税が悪であるかのように報じるマスコミは、その一方で強硬に消費税増税を主張している。このあからさまな矛盾にどうして気づかないのか。日頃、「マスゴミは嘘ばかり書く。真実を伝えるのはネット(ブログ)だ」などと普段言っている人たちが、どうしてマスコミや経団連の思うツボでしかない「暫定税率分の撤廃に反対」、「環境税に反対」などという主張をするのか。マスコミに騙されているのはいったい誰なのか。こう考えるとイライラが募るばかりだ。

ま、短期は損気なのかもしれない。所詮は現在の鳩山民主党内閣は過渡的な性格を持つ政権に過ぎないと、私は内閣発足当時から考えていたが、そのあとに以前の自民党が戻ってくることはないにせよ、他のろくでもない政治勢力が台頭する可能性はある。特に警戒すべきは橋下徹だろう。一昨年末、私は橋下徹が大阪府知事選に当選する見込みはほとんどないと『kojitakenの日記』に書いて大恥をかいたが、「警戒すべきは橋下」というこの予言も外れてくれれば良いのだが。

だが、往々にして良い予感は全然当たらないが、悪い予感に限ってよく当たるものだ。野暮なクリスマスの愚痴は、このくらいにしておく。


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