年末でアクセス数の減る祝日だが、ネットの言論においてもようやくあのうんざりする政権交代マンセーの流れが収まり、暫定税率の当面維持と「子ども手当」の所得制限の件で議論が生じてきたので、週2回更新のペースを久々に破って、エントリを上げることにした。
「子ども手当」に所得制限を設けないこと自体は、『kojitakenの日記』の12月17日付エントリ「「子ども手当の所得制限」に反対を表明する」に書いたように私は賛成であり、鳩山由紀夫首相の決断を支持する。そのエントリでも紹介したが、当ブログにいただいたぽむさんのコメントがとても素晴らしいと思うので、以下に再掲する。
http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20091217/1261050204#20091217f1
ここでは、前記『kojitakenの日記』とは異なる箇所を青字ボールドにした。そこが、当エントリの主張の核心だからだ。
そもそも、「子ども手当」に再分配の役割を持たせようとする発想が、単なる人気取りに過ぎない。そんなことをしても、余分な手間が発生し、年収860万円なんかで線引きしたら、国民の間で不必要な階級闘争が起きるだけだ。『Munchener Brucke』のエントリ「子ども手当ての所得制限についてマスコミはきちんとデータを提示した上で調査をしているのか?」の議論が興味深いので是非参照されたい。
リンク先の記事にも、
昨夜(22日)、テレビ朝日の「報道ステーション」を見ていたら、コメンテーターを務める朝日新聞編集委員の一色清が、「民主党政権は所得の再分配を目指すのか、経済成長を目指すのか」などと、あたかも両者が背反する概念であるかのようにコメントしていたが、私はこれに激怒し、それが休日早朝にこのエントリを書く動機になった。冗談じゃない。所得の再分配あっての経済成長である。一色清はいったい日本経済は誰が支えていると思っているのか。新自由主義に侵されて高給を食み、テレビで好き勝手しゃべっている大新聞社の幹部社員たちが経済を支えているわけではない。むしろ朝日新聞のごときは、いまだに竹中平蔵のネオリベ路線に親和的で、日本の経済成長を阻害している。
1979年の英サッチャー政権、1981年の米レーガン政権に続いて、1982年には日本にも中曽根康弘政権が成立し、政策がそれまでの修正資本主義路線から新自由主義路線に切り替えられた。そして、『Munchener Brucke』やJanJanの記事にもあるように、中曽根、竹下、小渕政権の時代に最高税率は引き下げられ、税率の刻み幅は粗くなった。JanJanの記事によると、
さて、昨日気づいたのだが、戦後日本経済の高度成長時代は、吉田茂首相が退陣した1954年の翌年、鳩山一郎内閣の時代に始まっている。世襲の総理大臣が何代も続くのはもちろん問題だが、鳩山由紀夫首相にとっては来年は縁起の良い年と言えるかもしれないし、好材料もある。たとえば、日本には優れた環境関連の技術力があり、多くの人を失望させたCOP15の混乱は、逆に日本が今後この分野でイニシアティブを握るチャンスをもたらしているともいえる。正直言って、私は鳩山由紀夫首相にほとんど何も期待していないが、唯一期待しているのが鳩山氏が博士号を持つ日本初の本格的な理系の首相だということだ(トンデモの趣味もお持ちらしいのが気になるが)。中国政府には大勢の理系の人間がいて、彼らはとてもしたたかだと聞く。日本にとってピンチをチャンスに変えられるのが今の時代だし、所得税の累進性を強化して高度成長を実現させた池田内閣に倣うことだって、今なら可能だ。単に最高税率の引き上げや税率の刻み幅を細かくするだけではなく、分離課税だらけで実質的にある所得水準以上では逆進課税になっているとされる税制を抜本的に改革することだ。
そもそも、お国の借金がどうだとうるさい限りだが、日本政府は誰から借金しているのか。外国からではない。国民から借金しているのだ。長年の新自由主義政策によって、富裕層の資産は積み上がり、法人税をいくら減税したところで、民間給与所得は1998年から2006年まで9年連続で減少し、やっと上向いたと思ったところで世界金融危機が発生した。つまり、「いざなみ景気」の間だって「好景気」は勤労者に恩恵をもたらさなかったし、世界金融危機では大打撃を受けた。一方、「好景気」の期間中、企業の役員報酬や株主配当は高騰し、それでも余剰な利益が内部留保として積み上げられた。富裕層の資産や内部留保が積み上がったら、政府の財政赤字は拡大するに決まっているのではないか。違うのか。だが、マスコミはこの疑問に答える報道をほとんどせず、彼らが財政再建策として決まって持ち出すのが消費税増税である。アホか。財政の主要な機能(三機能などといわれる)の一つが富の再分配である。その再分配を行う財源として、逆進性の強い消費税を用いても効果が薄いのは当たり前である。ところが、長年にわたって新自由主義者たちによって刷り込みが行われたため、この当たり前のことを言う論者は、マスコミにはほとんどいない。その結果、新聞社が世論調査を行うと、国民の半数前後が消費税増税を容認しているとの結果が出る。そりゃマスコミがあれだけ消費税を上げろと言い続ければそうなるだろう。特に、朝日、読売、日経の3紙は悪質だ。田中康夫が全国紙は毎日新聞と産経新聞だけになれば良いと言っていたのには一理ある(もちろん政治思想面での産経新聞の弊害は大きいが、それはまた別の話である)。
鳩山由紀夫内閣が経済成長を目指すのであれば、所得税を改革する、いやもっとはっきり言うと、「金持ち増税」を行う必要がある。もちろん、それだけでは財源は足りないだろうが、少なくとも「金持ち増税」は今後なすべき政策の必要条件だ。大部分の金持ちは増税しようがしまいが同じくらいしか消費しないから、金持ち増税のデメリットなどほとんどない。逆に、現在のように金持ちがどんどん金を死蔵することが日本経済に及ぼす悪影響は計り知れないものがある。いつまでも、既に誤りが結果によって証明されている竹中平蔵一派のトチ狂った主張に耳を傾けるのはやめるべきだ。再分配なくして経済成長はない。
長くなったので暫定税率の件は次回に回すが、結論を言うと私は環境税を導入すべきだと考えている。来年度の導入は見送られたものの、鳩山首相が環境税導入を考えていることは明らかだが、環境税導入には社民党、共産党、みんなの党などが賛成である一方、もっとも強硬に環境税に反対しているのが経団連であって、それが自民党が環境税導入に踏み切れなかった原因であることだけ指摘しておく。
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「子ども手当」に所得制限を設けないこと自体は、『kojitakenの日記』の12月17日付エントリ「「子ども手当の所得制限」に反対を表明する」に書いたように私は賛成であり、鳩山由紀夫首相の決断を支持する。そのエントリでも紹介したが、当ブログにいただいたぽむさんのコメントがとても素晴らしいと思うので、以下に再掲する。
http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20091217/1261050204#20091217f1
小沢幹事長が、鳩山首相に「子ども手当」に「所得制限すべきだ」と要望したそうです。
社民党や国民新党も以前から所得制限を設けるよう求めていたようですが、私は絶対反対です。
「子ども手当」は親や世帯に与えるものにしてはだめです。「親の収入にかかわらず、子供を皆ひとりの国民として平等に扱う」ことこそがが最大の意義でしょう。
財源が問題というなら累進課税の強化こそやるべきことでしょう。お金持ちの親にはたくさん納税することで義務を果たしていただき子供たちは平等に手当をもらえる、それでいいではないですか。
長妻厚労相は昨日も所得制限はしないと明言されたそうですね。長妻さんには、心からエールを送ります。
2009.12.17 11:41 ぽむ
ここでは、前記『kojitakenの日記』とは異なる箇所を青字ボールドにした。そこが、当エントリの主張の核心だからだ。
そもそも、「子ども手当」に再分配の役割を持たせようとする発想が、単なる人気取りに過ぎない。そんなことをしても、余分な手間が発生し、年収860万円なんかで線引きしたら、国民の間で不必要な階級闘争が起きるだけだ。『Munchener Brucke』のエントリ「子ども手当ての所得制限についてマスコミはきちんとデータを提示した上で調査をしているのか?」の議論が興味深いので是非参照されたい。
リンク先の記事にも、
という指摘があるが、さらにさかのぼって累進税率の変遷を記述しているのが、麻生内閣発足直後の昨年(2008年)9月25日付JanJanの記事「消費増税は誤り 格差解消は所得税の累進性復活で実現できる」である。『kojitakenの日記』のエントリ「所得税の累進性を強化した時代、日本経済は高度成長を遂げた」にも紹介したので、詳しくはそちらを参照されたいが、1955年から1973年まで18年間も続いた日本経済の高度成長にもっとも貢献が大きかったとされる池田勇人は、最低税率を8%に引き下げ、最高税率を75%に引き上げ、税率の刻み幅を13階層から15階層に細かくした。つまり、所得税の累進性を強めた池田内閣の時代に、日本の高度成長が本格期に入っていったのである。自民党政権時代も消費を刺激する施策は何度か打たれたが、定率減税や累進課税の緩和と言った高額所得者有利の施策が多かった。定額給付金は低所得者にも恩恵のある施策であったが、1回限りであった。
ちなみに最高税率は1986年まで70%であったが、1999年までの間に度々引き下げられている。
昨夜(22日)、テレビ朝日の「報道ステーション」を見ていたら、コメンテーターを務める朝日新聞編集委員の一色清が、「民主党政権は所得の再分配を目指すのか、経済成長を目指すのか」などと、あたかも両者が背反する概念であるかのようにコメントしていたが、私はこれに激怒し、それが休日早朝にこのエントリを書く動機になった。冗談じゃない。所得の再分配あっての経済成長である。一色清はいったい日本経済は誰が支えていると思っているのか。新自由主義に侵されて高給を食み、テレビで好き勝手しゃべっている大新聞社の幹部社員たちが経済を支えているわけではない。むしろ朝日新聞のごときは、いまだに竹中平蔵のネオリベ路線に親和的で、日本の経済成長を阻害している。
1979年の英サッチャー政権、1981年の米レーガン政権に続いて、1982年には日本にも中曽根康弘政権が成立し、政策がそれまでの修正資本主義路線から新自由主義路線に切り替えられた。そして、『Munchener Brucke』やJanJanの記事にもあるように、中曽根、竹下、小渕政権の時代に最高税率は引き下げられ、税率の刻み幅は粗くなった。JanJanの記事によると、
とのことだ。「税制の簡素化」によって、税金の計算の手間という「ムダを省き」、業務の効率化がなされたのだろうか。1982年から1999年というと、PC-8001からWindows98までPCが進化した時代である。お笑い種というほかない。これで格差が生じなかったら、不思議である。これだけのことを実行した理由が、なんと、“税制の簡素化”である。他に何の理由も示されていない。
さて、昨日気づいたのだが、戦後日本経済の高度成長時代は、吉田茂首相が退陣した1954年の翌年、鳩山一郎内閣の時代に始まっている。世襲の総理大臣が何代も続くのはもちろん問題だが、鳩山由紀夫首相にとっては来年は縁起の良い年と言えるかもしれないし、好材料もある。たとえば、日本には優れた環境関連の技術力があり、多くの人を失望させたCOP15の混乱は、逆に日本が今後この分野でイニシアティブを握るチャンスをもたらしているともいえる。正直言って、私は鳩山由紀夫首相にほとんど何も期待していないが、唯一期待しているのが鳩山氏が博士号を持つ日本初の本格的な理系の首相だということだ(トンデモの趣味もお持ちらしいのが気になるが)。中国政府には大勢の理系の人間がいて、彼らはとてもしたたかだと聞く。日本にとってピンチをチャンスに変えられるのが今の時代だし、所得税の累進性を強化して高度成長を実現させた池田内閣に倣うことだって、今なら可能だ。単に最高税率の引き上げや税率の刻み幅を細かくするだけではなく、分離課税だらけで実質的にある所得水準以上では逆進課税になっているとされる税制を抜本的に改革することだ。
そもそも、お国の借金がどうだとうるさい限りだが、日本政府は誰から借金しているのか。外国からではない。国民から借金しているのだ。長年の新自由主義政策によって、富裕層の資産は積み上がり、法人税をいくら減税したところで、民間給与所得は1998年から2006年まで9年連続で減少し、やっと上向いたと思ったところで世界金融危機が発生した。つまり、「いざなみ景気」の間だって「好景気」は勤労者に恩恵をもたらさなかったし、世界金融危機では大打撃を受けた。一方、「好景気」の期間中、企業の役員報酬や株主配当は高騰し、それでも余剰な利益が内部留保として積み上げられた。富裕層の資産や内部留保が積み上がったら、政府の財政赤字は拡大するに決まっているのではないか。違うのか。だが、マスコミはこの疑問に答える報道をほとんどせず、彼らが財政再建策として決まって持ち出すのが消費税増税である。アホか。財政の主要な機能(三機能などといわれる)の一つが富の再分配である。その再分配を行う財源として、逆進性の強い消費税を用いても効果が薄いのは当たり前である。ところが、長年にわたって新自由主義者たちによって刷り込みが行われたため、この当たり前のことを言う論者は、マスコミにはほとんどいない。その結果、新聞社が世論調査を行うと、国民の半数前後が消費税増税を容認しているとの結果が出る。そりゃマスコミがあれだけ消費税を上げろと言い続ければそうなるだろう。特に、朝日、読売、日経の3紙は悪質だ。田中康夫が全国紙は毎日新聞と産経新聞だけになれば良いと言っていたのには一理ある(もちろん政治思想面での産経新聞の弊害は大きいが、それはまた別の話である)。
鳩山由紀夫内閣が経済成長を目指すのであれば、所得税を改革する、いやもっとはっきり言うと、「金持ち増税」を行う必要がある。もちろん、それだけでは財源は足りないだろうが、少なくとも「金持ち増税」は今後なすべき政策の必要条件だ。大部分の金持ちは増税しようがしまいが同じくらいしか消費しないから、金持ち増税のデメリットなどほとんどない。逆に、現在のように金持ちがどんどん金を死蔵することが日本経済に及ぼす悪影響は計り知れないものがある。いつまでも、既に誤りが結果によって証明されている竹中平蔵一派のトチ狂った主張に耳を傾けるのはやめるべきだ。再分配なくして経済成長はない。
長くなったので暫定税率の件は次回に回すが、結論を言うと私は環境税を導入すべきだと考えている。来年度の導入は見送られたものの、鳩山首相が環境税導入を考えていることは明らかだが、環境税導入には社民党、共産党、みんなの党などが賛成である一方、もっとも強硬に環境税に反対しているのが経団連であって、それが自民党が環境税導入に踏み切れなかった原因であることだけ指摘しておく。
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