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きまぐれな日々

2009年の回顧をする時期になった。

今年の「流行語大賞」は「政権交代」だそうだが、そりゃそうなんだろうけれども、政権交代が確実と目された8月の総選挙の直前から、私の心はなぜか高揚することがなく、むしろメランコリーに支配されていた。来るべきものに対する懸念からだった。そして、それは現実のものとなった。

選挙が終わったばかりの頃、田原総一朗がテレビで「野党が政権をとった」と言ったことがあった。冗談じゃない。政権をとったらそれはもう与党なのだ。「政治ブログ」でも、「野党共闘政権」と表現したところがあった。田原の場合は「与党ボケ」、「政治ブログ」の場合は「野党ボケ」だといえる。与党ボケの田原総一朗は、来年3月末をもってようやく『サンデープロジェクト』の司会を降板するそうだが、「野党ボケ」政治ブログの間でも政権交代後は迷走が目立った。

ジャーナリズムには、常に批判精神が求められる。それは、与党が自民党であっても民主党であっても同じことだ。実際のマスコミは全然そうではなく、それはそれで問題なのだが、ネットが、ブログが「マスゴミ」(私の好まない表現だが)と違う、と主張するのであれば、ブログは民主党政権をも批判の対象としなければならないはずだ。

しかし、実際にはどうだったかというと、選挙前に自民党を激しく攻撃していたブログの中には、その過程で民主党への思い入れが強くなり過ぎて、民主党政権が批判を受けるとヒステリックな反応を示すところが現れた。リアルの政治では、下野した自民党と、連立政権に加わらなかった共産党が野党だから、自民党と共産党、それに公明党、みんなの党や平沼一派などが民主党政権を批判するスタンスをとっている。

実に愚かしいことに、政権交代前には民主党と城内実(平沼一派)をともに支持していた一部の右派の人たちが、政権交代後民主党への批判を強めた城内実に失望して、城内を批判するようになったそうである。彼らが民主党と城内実に何を期待していたのか、私にはよくわからない。

さらにいただけなかったのは、共産党の政権批判に切れて、共産党支持者をヒステリックに攻撃する人たちが続出したことだ。それが、正当な理由に基づく共産党批判であればまだよかったが、一部の民主党支持者の間にある共産党バッシングの空気を読んだ扇動者が共産党への批判を煽ったのが現実だった。これについては、11月9日付エントリ「植草一秀氏の共産党批判と普天間基地問題のトンデモ認識」および11月13日付エントリ「ブロガーを惑わす植草一秀氏は「ハーメルンの笛吹き男」だ」で批判した。

自民党政権時代には自民党を批判し、民主党現政権に対しても批判すべきは批判するブログに対して、「おまえらはなんでいつも世の中の少数派なん?」と書いたお馬鹿なブロガーもいた。この言葉に端的に表れているのは、少数者を疎外する論理であり、こんな論法は自民党支持者でさえほとんど用いなかったものだ。なぜなら、自民党支持者にとって敵はまず民主党であり、議席も支持者も無視できるほど少数ではなかったからだ。ところが、旧野党の勢力の間では、共産党は少数派だ。しかも、小選挙区制のせいで議席は少ないものの共産党の得票率はそこそこあるうえ、熱心な支持者が多いから声も大きい。だから民主党狂信者にとっては癪でたまらない存在であり、それが「少数派が何を言っているんだ、黙れ」という反応となって現れる。ある意味、民主党狂信者は、自民党支持者以上に全体主義への親和性が強いともいえる。

民主、社民、国民新党の三党が連立協議をしている時もそうだった。全体主義志向の強い民主党狂信者は、社民党や国民新党はごちゃごちゃ言ってないで、早く連立合意しろと喚いていた。こんなやつらの跳梁跋扈が目に見えていたから、政権交代を前にして私の気分が晴れなかったのである。懸念していた通り、いやそれ以上にひどい状態になった。

少数者の疎外という問題についていうと、現在注目すべきは、普天間基地の移設問題だろう。自民党の石破茂などは、平然と「沖縄に犠牲になってもらう」と言い放つ冷血漢だが、連立与党を形成する社民党は基地の県外・国外移設を求めており、国民新党も社民党に同調している。連立協議の時に、つべこべ言わずに早く合意しろと言っていた連中は、社民党や国民新党が民主党に何も言わず、産経・読売や日経が言うがままに、民主党政府が早期に県内移設を決定したとしても、それを批判する資格などないのである。彼らの教祖・植草一秀は書いた。

普天間飛行場の返還を確実にするためには、県外への移設を確定する時間的余裕
はないと考えられる。嘉手納基地への統合かキャンプシュワブへの移設を軸に着地点を見出す必要があると考えられる。

(植草一秀の『知られざる真実』 2009年10月27日付エントリ「平成の無血革命成功を期す鳩山首相演説」より)


だが、信者の間から、教祖さまのこの言葉を批判する意見は出なかった。そして、植草氏を批判できないのは、共産党支持者を疎外しようとしたのと同じ人たちであり、「少数者の疎外」がその共通項だ。これでは、革命は革命でも「文化大革命」だろう。植草主席か「三種の神器」か知らないが、一部ブロガーの間には、「神聖にして侵すべからず」の対象となっている人物が存在する。そういえば、現在でもなお人々の話題にのぼり続ける「事業仕分け」も文革にたとえられた。バカが一番えらい世の中。庶民感覚が大事だと称しながら、その実庶民は何も知らなくて良いと主張し、実際には多くの庶民と比較して無知にして無恥な者までもが旗を振っていたのがブログの「政権交代」キャンペーンだった。

リベラル・左派系の「政治ブログ」で、今年一番目立ったのは、「植草一秀の『知られざる真実』」のアクセス数が際立って増えたことだろう。もちろん、これに対する私の評価は肯定的なものではない。しかし、一部のネット右翼系ブログは、ブログランキングの順位を吊り上げる工作をしているが、植草氏のブログは掛け値なしにアクセス数が多い。今年は、5月にその植草氏、9月には衆議院議員に復帰したばかりの城内実が、相次いで自らが運営するブログランキングの低下はおかしいのではないかとするエントリをあげた。国民の生活が第一というよりは、自分のブログランキングが第一なのではないかと思えた。そういえば、城内実が衆議院議員に復帰したのも、覚悟していたとはいえ今年の不快なニュースの一つだった。

今年は、「政治ブログ」の世界もすっかり沈滞してしまったように思う。政権交代が実現して、国民の政治熱がピーク時と比べて低下している今は、「政治ブログ」がアクセス数を稼ぎやすい時期ではないが、逆にこういう時に種を蒔いておくことがのちのちにつながる。だから、われこそはと思われる方には、今こそブログへの参入をおすすめしたい。来年末には、「2010年はここ数年の沈滞を脱して、ブログ言論が活発さを取り戻した年だった」と評されることも、決して夢ではない。特に、全体主義への流れに力強く対抗するブログの台頭を期待したい。


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