それに気づかない者が、医療費の切り詰めを狙う財務省の後押しをする。そして今回は、その中に「反小泉」ブロガーとして有名なきっこさんもいた。それが一連の「漢方薬騒動」の本質である。そんな中にあって、『村野瀬玲奈の秘書課広報室』のコメント欄でことの本質を明らかにしようと活発な投稿を繰り返したみどりさん(ブログ『労働組合ってなにするところ?』管理人)の果敢な言論は特筆に値するものだったし、『きっこの日記』を支持したのは良いけれども、みどりさんに対して誹謗中傷を繰り返した「学士様」kaetzchenのコメントは、醜悪極まりないものだった。ブログのコメント欄やトラックバックでkaetzchenを放牧しているブロガーたちは恥を知るべきだ。
kaetzchenをコメント欄に飼っているブログの一つとして、『逝きし日の面影』がある。このブログは、私をはじめとする数人のブログ管理人を事実無根の「解同」(部落解放同盟)呼ばわりし、他にも何人かの共産党支持ブロガーを罵倒している。しかし、全く根拠のない「解同」呼ばわり(現に私は解同のメンバーではないのだから、かつて「布引洋」と名乗っていた同ブログの管理人が証拠を示せないのは当然である)に「睨まれていない」ブロガーたちは、平気で布引洋とTBを交換し合って恥じるところがない。あきれるばかりの事なかれ主義である。こういう人たちが「リベラル」だの「護憲」だのを掲げているとは、なんとひどい偽善ぶりだろうか。そして彼らは揃いも揃って腰抜けばかりだから、こうして私が非難しても、反論する勇気を持たず、仲間うちで馴れ合っているだけだ。見下げ果てたものである。
私と同じように、かつて布引洋に「解同」呼ばわりされたブログ『多文化・多民族・多国籍社会で「人として」』の管理人、仲@ukiukiさんは、布引洋を非難する『kojitakenの日記』につけた「はてなブックマーク」のコメントで、下記のように書いた。
「逝っちゃってる人」とTB交換等しながらも、諍いが起きぬまま今日まで来れた方々、いい加減自省してみるべきではないかと、http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20091206/1260058625 を読んで、思いを新たに、そして呆気に。
ここで私が何を言いたいのかというと、自分が被害に遭っていないからといって見て見ぬふりをして、平然と布引洋のような人物とTBを交換する事なかれ主義が、ファシズムを招くということだ。そのような人たちは、自ら「私は全体主義者のカモですよ」と看板を掲げているようなものである。彼らにニーメラーの詩に言及する資格はない。
そんな人たちだから、民主党政権が「無駄を削る」と称して、財務省と結託して行政サービスの縮小を図っても、これを的確に批判することができない。「彼ら」にできることは、せいぜい沖縄の米軍基地問題で「辺野古移転」を強行しようとしている岡田克也外相をスケープゴートにして、鳩山由紀夫や小沢一郎を不問に付すことだけだ。岡田外相の拙劣さはもちろん全くいただけないけれども、岡田克也一人に責めを負わせて済む話ではないことは明らかだ。しかし、「彼ら」には現実を直視することができない。
たとえば政府が医療費を削減するということは、患者に負担させるというのと同義なのである。そんなことにさえ気づかずに、政府の「事業仕分け」に拍手喝采し、批判するものを「自公の工作員」、「共産党支持者」、あるいは「解同」などと決めつけるのが、「彼ら」のやり方である。特に、「支持者」や「工作員」ならともかく、「解同」呼ばわりというのは、「解同」の構成員であると事実無根の決めつけをしているものであり、論敵を誹謗中傷するための嘘をついているものである。そういう悪意の嘘つきと親しくするような人間に、人権だの平和だのを語る資格はない。
そのような人たちだから、ブログ仲間が城内実のような極右政治家を支持すると、簡単にそれに同調してしまう。総選挙前、リベラル・平和系とされるブロガーの間で、城内実の支持者または城内実に理解を示す者は異様なくらい多かった。布引洋もその一人である。
その城内実は、先日読売新聞主筆の渡邉恒雄(ナベツネ)と会見し、ブログにナベツネとのツーショットの写真を披露している(下記URL)。
http://www.m-kiuchi.com/2009/12/03/watanabetsuneosyuhitsu/
城内実は、ナベツネを「大変ものごしが丁寧な、ほんものの紳士だ」と絶賛している。会見の内容は、「あえて詳細について書くことは差し控えたい」と書いているが、そう書いた直後に下記のように書いている。
ただ、小泉竹中構造カイカク路線に対する痛烈な批判と、現下の景気低迷期にあっては公共事業をはじめとして内需拡大をすべきであり、世界一の債権国である日本の財政が破綻するということはないと喝破されたことに、大変感銘を受けた。このことだけはしるしておく。
(城内みのるの「とことん信念」ブログ 2009年12月3日付エントリ「渡邉恒雄読売新聞社主筆(写真付)」より)
ここで赤字ボールドで示した部分だけ切り取れば、ナベツネと城内実の共通認識は正しく、「事業仕分け」などに熱中して、緊縮財政路線をとろうとした鳩山由紀夫首相や藤井裕久財務相は間違っている。ところが、妙に世論や民主党支持ブログなどが鳩山政権を持ち上げるものだから、ナベツネや城内実に正論を言われてしまうのである。
1984年から1999年にかけてナベツネが書いた論説を集めた『ポピュリズム批判』(博文館新社、1999年)を読んだことのある私は知っているのだが、ナベツネはケインズ主義を激しく攻撃した人間である。同書から、ナベツネが1990年に書いた「『ケインズ社会主義』とは何か」の一部を抜粋して紹介する。これは、1990年1月5日付朝日新聞社説「『ケインズ社会主義』の時代」をナベツネが批判したものである。
もともと、ケインズは反社会主義である。赤字財政による巨額な公共投資で有効需要を喚起し、完全雇用を達成するというその理論は、インフレによる実質賃金の切り下げを是認し、ある意味では急進的な資本主義である。戦後、英国労働党が基幹産業の国有化とともに、ケインズ的な手法を採用したが、「イギリス病」を起こして惨憺たる失政を残した。また石油ショック後の世界的スタグフレーションで、ケインズ主義の弊害が指摘された。「ケインズは死んだ」とまで言われ、対極的なハイエックの復活が論じられている。
(中略)
日本経済はやっと今年赤字国債発行から脱却した。世界的に破綻してしまったケインズ主義と社会主義を結び付けて、これからの日本に導入すれば、「大きな政府」と赤字財政に逆戻りして、非効率、浪費、重税、ついにはひどいインフレをもたらし、社会的弱者を最もいじめる結果となろう。
(渡邉恒雄 『ポピュリズム批判』(博文館新社、1999年) 128-129頁)
これは、バブル崩壊が始まる直前に書かれた文章である。引用しなかった部分に、ナベツネ自身の立場は、ケインズ主義と反ケインズ主義の中間点だと書かれているが、この文章および他の論説などを読むと、中間点とはいいながら、かなり反ケインズ主義寄りの主張をしていることがわかる。ナベツネ自身の立場はその後変化していないが、小泉・竹中政権の時代になると、政権や世論がナベツネ以上の経済右派に振れてしまったために(その中には民主党はもちろん、社民党や朝日・毎日新聞なども含まれる。2001年には社民党までもが「改革」という言葉を肯定的に用いていた)、相対的にナベツネが経済左派になっただけだ。
ここで指摘すべきは、この論説が書かれたのち、小泉・竹中やそれに先立つ橋本龍太郎政権が断行した反ケインズ的な政策は、ひどいデフレをもたらして「社会的弱者を最もいじめる結果」を招いたことだ。ナベツネの予見は当たらなかった。
景気が良くなって税収が増えれば財政が改善されることは、バブルの頂点の時期に「やっと赤字国債発行から脱却した」とナベツネ自身が書いていることからも明らかである。逆に言うと、バブル期にバラマキをやって景気を過熱させた竹下登政権の政策は間違いだったということになる。本来、財政再建はバブル期のような好況期になすべき仕事だった。深刻な不況期に「事業仕分け」で国民の人気を得ようなどという政策は、ナベツネや城内実に批判されて当然である。
問題は、ナベツネや城内実の「真の目標」は何なのかということで、もちろん彼らの最終目標は改憲(城内実の場合は「自主憲法制定」)である。本来左派がなすべき「事業仕分け」への批判を、右派にお株を奪われている現在の事態は、今後政権の経済失政が日本の不況をますます悪化させて国民の不満が高まっていったときに、ナショナリズムへの傾斜を招きかねない。私が「国家社会主義の台頭」を警戒する文章を書くようになったのは、もとはといえば、昨年10月に大阪で聴講した辺見庸の講演会に触発されたものであり、もちろん辺見庸は左翼といえる人である。城内実が国籍法改正反対に絡んで書いたレイシズムむき出しのブログ記事を何度も何度もさらしものにするのは、国家社会主義の台頭を恐れるからである。ナベツネにも城内実のブログ記事をよく読んでほしい。その上で城内実を支援するのなら、もう何も言うことはない。また、これまで城内実応援の旗を振ってきた人たちには、ナベツネと城内実の握手をどう考えるのか聞きたい。彼らは、憲法を改定するために保守勢力の再編を狙っている。一昨年にナベツネが仕掛けた「大連立」を思い出してほしい。そんなものに、「9条を守れ」と言っている人間が手を貸しても良いのか。
このままでは、左翼が先頭を切って日本を右傾化させてしまうように思えてならない。現政権が転ぶと極右が台頭する。だからこそ、政権交代の旗を振った人間であればあるほど、現政権にも厳しい目を向けていかなければならない。
↓ランキング参戦中です。クリックお願いします。
