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きまぐれな日々

コイズミ率いる自民党が2005年の総選挙で圧勝したあと、コイズミ・竹中平蔵の新自由主義を批判する人たちが注目したのは、右派の関岡英之が著した『拒否できない日本』(文春新書、2004年)だった。

森田実が、この本は書店で入手が難しいと書いた。Amazonでは買えず、古本価格が3300円もするという話も聞いた。しかし、高松市中心部の百貨店の8階にある書店に行ってみたら、現物が普通に積まれていた。なんだ、ネット情報なんてあてにならないなと思って読み始めたが、本の中に当時話題になっていた耐震偽装事件の問題点を先取りして指摘しているような記述があり、興味深く読んだ。

アメリカ政府が毎年作成する「年次改革要望書」に書かれたプログラムに沿って日本の政策が決定される、という関岡の仮説は面白かったが、これはあくまで一個の仮説に過ぎず、この仮説を金科玉条にすべきでないことは言うまでもない。だが、思考が硬直した一部の(?)「リベラル・左派」はこの仮説をドグマに変えてしまった。

さらに、『拒否できない日本』ではあまり前面に出てこなかったのだが、関岡は実は平沼赳夫らに共鳴する右派民族主義者(私の用語法では「極右」)であり、講談社現代新書から出た『奪われる日本』(2006年)ではそのイデオロギーが露骨に前面に出てきた。私はこれに大いに失望し、以後関岡英之に対する懐疑派または批判派に転じた。

佐藤優が「リベラル・左派」にもてはやされているのは、関岡英之が一時「左」側からも注目を浴びたのと似た理由からだったと思うが、露骨に極右の本性をむき出しにした関岡と違って佐藤が巧妙だったのは、反ファシズムの論客を装って「左」に媚びたことだ。だが、一方で佐藤は稲田朋美や城内実ら日本会議系の人たちと同じ集会に演者として出席し、「右」に対しては国粋主義者として排外主義をアピールしているのだから、露骨な二枚舌としか言いようがない。

そんな佐藤の欺瞞を批判した、金光翔氏の「<佐藤優現象>批判」は、発表直後の2007年11月29日付の『朝日新聞』夕刊掲載の「論壇時評」で、川島真東京大学准教授によって「今月の注目論文」に挙げられた。

しかし、この論文が金氏が勤務する岩波書店の逆鱗に触れ、佐藤優に対する批判が論壇において一種のタブーになっているのは、重大な問題であると当ブログは考える。「リベラル・左派」の論者は、関岡英之の本が書店で買えないなどという大嘘を撒き散らすくらいなら、佐藤優に対する批判がタブーになっている現状をなぜ告発しないのか。「リベラル・左派論壇」のムラ社会性というか閉鎖性を痛感させる現象だと思う。関岡英之を文春が世に送り出し、赤木智弘は今はなき朝日新聞の『論座』に取り上げられてブレイクしたのに、金光翔の「<佐藤優現象>批判」は岩波書店によってなかったことにされるというのでは、「論壇」のあり方としてあまりに不健全だ。

当エントリの後半では、前のエントリ「「新自由主義」への批判と対照的な「佐藤優現象」への無批判」(12月22日付)にいただいたコメントの中から、「佐藤優現象」に関するものを紹介したい(投稿時刻順)。管理人のコメントはあえて差し挟まない。

まず、普段はあまり私と意見が合わない(笑)、秀太郎さんのコメント。
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-808.html#comment4665

非知性派ラジオ「アザーサイドジャーナル」です。
佐藤優氏の件ですが、中間的な立場で見ると、インテリジェンスの世界で生きてきた人が表の世界で生き抜くにはダブルクロス的に行動しなければならないと言う、「悲哀」は感じておりました。不徳にも今回初めて知ったのですが「左派系」の人々がそれに親和性を持っていると言う貴ブログには驚きました。本来ならば「鼻で笑う」ものだと思っていましたから・・。

何故でしょうか。改憲後の「保険」をかけたと言う事なんでしょうか?それほど切羽詰って「改憲」が迫っているとは思えず景気後退ではるかに遠のいてしまった感がしていますし、田母神論文の根拠の「浅さ」を見れば余程の事が無い限り世論にはなりえないのは明白で、護憲を貫くならば「保険」をかけるより「左派内」での「佐藤批判」を以って論理の「再構築」の時間的余裕はあるはずで、佐藤氏の言う「左右共闘」の欺瞞は暴かれるべきだと感じます。

それに反する象徴的な出来事としての金氏の迫害は「岩波」のする事とは思えません。この「スルー」は左派内部の構造変化の見えない「流れ」があるように小生の愚鈍な脳は直感するのです。もちろん金氏の論文は全文読ませていただきました。その感想はさておき、どうも「岩波かどうかは分からない何者か」が「右の田母神、左の金」としてフレームアップされるのを恐れているのかも知れません。中間層からみても「佐藤氏」はウザいのです。

2008.12.23 16:40 秀太郎


続いては、山茶花さんのコメント。
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-808.html#comment4666

はじめまして。金光翔氏の論文は何度か読みました。各項目、さらに深く論じれば優に1冊の本になるものだと思います。かれにはさらに批評していただきたい。残念なことに発表の場があまりないようです。

2008.12.23 17:22 山茶花


次は、たびたび当ブログで紹介しているjunkoさんのコメント。
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-808.html#comment4667


12月19日の「毎日新聞」夕刊に佐藤優氏のインタビュー記事が掲載されていますね。

>田母神論文は誰もがクーデターを意識させられただろうし、元厚生次官を巡る事件は、初動の段階で『年金テロ』との見立てが言論空間に広がった。クーデターやテロが起こりかねない世の中だという不安が生じる一方で、それらによる世直しへの期待もわき起こる。二つの問題は、日本人の集合的無意識を大きく変えたと思います。
>テロやクーデターは許してはならない。

と述べて田母神氏をきびしく批判していますが、佐藤氏はこの田母神氏の論文およびその後の氏の発言内容と共通点の多い(というより、むしろ相違点を見つけだすのが難しい)アパの元谷外志雄氏の著書の推薦人となっているわけです。新聞記者ならばこの事実を知らないはずはないでしょうから、田母神氏の話題が出たからにはこの点について質問をするのが当然のこと、それが新聞の役割ではないかと思います。しかし黙って言いたいように言わせ(そうしないと、後が怖い?)、佐藤氏も自身のこの行為についてなんら釈明しないですませていられるのは、これもまた<佐藤優現象>の一側面ではないかと思います。

金光翔さんは「首都圏労働組合特設ブログ」で、岩波書店から受けた「厳重注意」に関して次のように述べています。

>岩波書店側は私に対して、私の論文「<佐藤優現象>批判」の公表により、会社は不利益を被った、と主張し、その不利益の典型例として、『週刊新潮』の記事を挙げている。私が論文を書いたから、『週刊新潮』が記事にし、それにより会社が被害を被った、というのだ。

前々から気になっていたのですが、岩波書店のこの主張はひどく不合理なものに思えます。岩波は『週刊新潮』の記事(首都圏労働組合特設ブログ「『週刊新潮』の記事について」参照)の責任は『週刊新潮』にではなく、金さんの論文の発表にあるといっているのだと思いますが、それでは、たとえば春先の映画『靖国 YASUKUNI』の上映阻止騒動の場合はどうなるのでしょう。『週刊新潮』の記事やそれに動かされたとおぼしき右翼や政治家の行動に問題はなく、製作した監督やそのスタッフに騒ぎの責任があるということになるのでしょうか? 2年前には『週刊新潮』の煽動により『週刊金曜日』主催の劇団「他言無用」による皇室劇が右翼に脅迫されたようですが、この場合も公演を行なった『金曜日』と「他言無用」が悪かったということになるのでしょうか。また2004年のイラク人質事件のさいの『週刊新潮』の記事の扱いはどうなるのか。さらに遡れば、1983年、『文藝』に掲載された桐山襲著の小説『パルチザン伝説』がやはり『週刊新潮』の煽動記事によって右翼が動きだし、出版社と著者をはげしく攻撃するという事件がありました。1983年といえば今から 25年前になりますが、このときすでに「またもや『週刊新潮』の記事をきっかけに右翼が動き出すという形で、言論弾圧が組織された。」という意見が天野恵一氏によって述べられています(「パルチザン伝説」事件(作品社1987年))。『週刊新潮』の言論弾圧雑誌としての歴史はこのように古く、筋金入りなわけです。岩波書店はそのことをよく承知しているはずで、まさかこの『パルチザン伝説』事件も著者である桐山氏のせいだとは言わないと思うのですが、どうなのでしょう。いずれにせよ「私(金さん)が論文を書いたから、『週刊新潮』が記事にし、それにより会社が被害を被った」と主張して「厳重注意」処分を下すのなら、上述の多くの『週刊新潮』が惹起したと思える事件や騒動も実は今回と同様『週刊新潮』ではなくて記事の対象者が責任を負うべき問題なのか、それともそうではなく今回の場合は異質であり特殊なのか。異質だというのならどのように異質なのかを岩波は言論を扱う雑誌社、出版社なのですから公的に明らかにしてほしいものです。
エントリーから脱線してしまいましたが、ご容赦ください。

2008.12.23 17:27 junko


最後に、観潮楼さんのコメントを紹介して、結びとしたい。
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-808.html#comment4668

岩波は・・・ま、リベラル面して口封じしてたらチンピラ雑誌に叩かれるのは当然だわねと呆れましたが。
上記の『週刊現代』の連載『新聞の通信簿』では、佐藤優が非正規雇用に関する記事を評しています。
そこで「日比谷の集会を一面にもってきた『朝日』に賛同する」、「『日経』の新自由主義は相変わらず」と書いてました。
しかし、媒体に応じて書き分けや言い分けをする氏のカメレオンぶりを考えると、眉唾だなと思いますが。

2008.12.23 19:12 観潮楼



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